グラハム・スペクターは銃弾に倒れ、ロベルタは殺戮の幕を開ける ◆2V9iuI0CbI




「嗚呼、悲しい。とてもとても悲しい話をしよう」

深い深い森の中。
そこに立つ青い作業着の男グラハム・スペクター
男は一人、静かに流れ行く河の前に立ち、独りで語っていた。

「目覚めたら姐さんが死んでいた。ラッドの兄貴が悲しんでいた。これはどういうことだ。嗚呼!さっぱり訳が分からない。
………嗚呼駄目だ。人は悲しみの中で成長し、楽しみの怠惰の中で生を謳歌するという。だが、俺は成長する気など全く無い。
ただ楽しみの怠惰の中で堕落したいだけなんだ!俺をこれ以上成長させてどうする気だ!何処に連れて行く気だ。
ルーアの姐さんが殺された?ラッドの兄貴の目の前で?嗚呼。何者だ!この世にラッドの前で姐さんを殺せる奴など…………
いるというのかああああっっっ!!!!」

グラハムは興奮冷めやらぬ様子で語り続ける。

「しかも何が殺し合いだ!俺からレンチを奪っておきながら殺し合いとはどういうつもりだ?何をどうするつもりだ?
何だこの小型レンチは?俺にこれで後ろから殴って殺せか?何がしたいんだ?何をどうするつもりだ!
嗚呼……ありえない。とてもとても悲しい」

グラハムは無造作に作業着の胸ポケットに小さい作業用レンチを入れると、デイバッグを担ぎ上げた。
そしてゆっくりと一本の木に向かい歩き出す。

「駄目だ駄目だ駄目だ。こんな事認められない」



グラハムは何度か木に頭突きをしながらぼやきだす。

「認められないが事実だ。それが俺には許せなーい。許せないならどうすればいい!………そうだ!俺が壊す。俺がこれを壊す。
……このシステムをこわーす。ラッドの兄貴は主催者を決定的にこわーす!俺は計画全てをこわーす!完璧だ。これは素晴らしい!」

グラハムは笑いながら木の上に立ち、河を背にし、宣言する。

「…………悲しくも楽しい話をしよう。俺には楽しく、あの男(ギラーミン)には悲しい話を……」

そう呟き、歩き出そうとした時。

一つの銃声が闇夜の森に響いた。

「なっ!?」

グラハムが感じたのは胸への衝撃。
ただそれが何かも理解できず、グラハムの身体はゆっくりと傾いていく。
そして冷たい河へと落ちていく。暗く冷たい河へ…………







ロベルタは物音を立てず、慎重に木陰に隠れながら森の中を歩き続けている。

――名簿の中にガルシア坊ちゃまの名前はありません。それなら問題はありませんね。この場に居る64人を速やかに殺害。
――その後、主催者であるあの男も速やかに殺害し、ガルシア坊ちゃまの元へと帰る。それだけです。
――ですが……どうすべきでしょう。私に渡された武器は拳銃のみ。
――あの男の解説では私を含め、全員が何らかの強さを隠し持っている。無謀な突撃は避けるべきでしょうが……しかし


ロベルタは冷静に現在の状況を把握し、今後の方針を纏め始める。
だが、そこにある男の声が聞こえてきた。

「何が………んだ……………………あり……………しい」

――!?男の声……でしょうか?

ロベルタは物音を立てないよう最新の注意を払いながら声のほうへと歩き出す。
するとそこでは木に向かい頭突きをしながらぼやいている金髪男の姿があった。

――狂っている?あれではむやみに近寄って情報を入手は困難でしょうか。姿を見せるのもリスクが高いですし。

ロベルタは冷静に相手の観察を行う。
しかし、ロベルタの観察結果とグラハムに対し実行すべき行動方針変わる事はなかった。

――少々テンションに波がありますが、冷静に話し合いが行えるかは未知数。リスクは犯さない方が賢明でしょうね。

最終判断も早急に済ましてしまうと、拳銃を構えた。

「まずは一人」

小さく呟くと引き金を引いた。
銃弾は狙いと寸分違わずに作業着の男の左胸へと吸い込まれ、落下し大きな水音が森内に響いた。

「………残り63人……いいえ64人ですね」

冷静に残り人数をカウントを数えながらロベルタの姿は漆黒の暗闇へと消えていった。




「うーん。どうしようかな?」

竜宮レナは川に沿って森の中を歩いていた。
市街地に向かうには川沿いを歩く方が迷う可能性が少ないという判断からであった。

「圭一くんや魅ぃちゃんや詩ぃちゃんは一人でも大丈夫と思うけど……沙都子ちゃんと梨花ちゃんは危ないよね。
早く見つけてあげないと」

レナは部活メンバーを探して市街地に向かい歩き続けた。
テレポートされた場所が良かったのもあるが、市街地に着くのに時間は掛からない。
無論普段から山道を歩きなれているレナの歩行速度によるものが大きいのではあるが。

――それじゃまずはどこか人が集まりそうな場所を探さないと。えっと………ってええっ!?

市街地について今後の移動先を思案していると、突然川から一人の金髪の男が流されてくるのに気付いた。
男の金色の髪は暗闇の中でも、一際目立っているのにすぐに気付いたのだ。

――死んでる?

そのまま川の淵に引っかかっている男に近づいて触ってみるが、反応が無い。

「……はうぅ。死んでる?死んじゃってるのかな?かな?」

少し高めの声で独り言のように呟く。
だが、その声に対し若干反応を感じられた。

「うっ………くっ、はっ………」
「苦しいの?ねえ、苦しいの?」
「ぐっ、あっ」

男はうなされているがそこでレナは一つの結論が頭に浮かぶ。

――ひょっとして水を飲んじゃったのかな?なら吐き出させないと危ないよね。だけど………人工呼吸?
――はうぅ!私圭一くんにもしたことないのに?だけどやらないとこの人死んじゃうよね。………はうぅ。どうしたらいいの?

レナは脳内ではしなければならないことが分かっていた。
しかし、乙女であるが故に、それを実行出来ずにいた。



――どうしよう?

「うぅ!」

そこでグラハムの様子が変わりだした。
かなり苦しそうな表情を見せている。

――ああっ、このままじゃ死んじゃうのかな?かな?………うぅ、私の初めて

嫌ながらも、事情が事情だけに迷いながらも気道を確保し、人工呼吸の準備へと入る。
後は口付けをし、酸素を送り込むだけだ。

「はうぅ、何だかこの人………近くで見るとカッコいいよ。だけど……圭一くんにもした事ないのに……」

レナの脳内は緊張と狼狽と焦燥でいっぱいだった。
だが、もう後には引き返せない。

――ごめんね。圭一くん。だけど……これは人助けだからっ!

意を決し口付けを実行に移そうという時。

「がっ!」

誰もが予想だにしなかった事態が襲った。

「きゃあっ!」

レナを襲ったのは水しぶき。
そう。
グラハムは水を吐き出し、それがレナの上半身を襲ったのだ。
それが数秒続き、水を吐き出し終えたグラハムは落ち着いた表情で再び眠ってしまった。
そのグラハムを横目にみながらレナは小さく呟いた。

「はうぅ。これからどうしよう」

上半身を濡らし、若干透けてしまった服でレナは呟いた。



それから数十分後。
レナとグラハムの姿は一軒の民家内にあった。
未だ目覚めないグラハムを床に寝かせながらレナは考えていた。
手にはグラハムの胸ポケットにレンチを握りながら。

「これって……この人撃たれたのかな?」

レナの握るレンチはちょうど螺子回しにあたるところに銃弾が食い込んでいた。
これがグラハムを銃弾から救っていたのだ。

「やっぱり……殺し合いに乗る人もいるんだ?早く止めないと」

レナはようやく自身が置かれている状況に実感を持つが、すぐに行動に移すか迷いかねていた。

――けど……この人置いていけないし、だけど早くしないと皆が……どうしよう。

レナの逡巡は終わらない。




【B-2 森 1日目 深夜】
【ロベルタ@BLACK LAGOON】
[状態]:健康
[装備]:コルト・ローマン(5/6)@トライガン・マキシマム
[道具]:支給品一式 コルト・ローマンの予備弾42 確認済支給品0~2(武器の可能性は低い)
[思考・状況]
1:優勝する為に参加者を皆殺し
2:冷静な思考の相手に対しては情報を集めて後に殺害


【B-4 市街地 民家内 1日目 深夜】
【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康 上半身が濡れている
[装備]:小型レンチ
[道具]:支給品一式 未確認支給品1~3
[思考・状況]
1:この人を置いていく?それとも目覚めるまで待つ?
2:部活メンバーと合流
3:何とかして首輪を外したい

【グラハム・スペクター@BACCANO!】
[状態]:健康 全身ずぶ濡れ
[装備]:無し
[道具]:支給品一式 確認済支給品0~2
[思考・状況]
1:気絶中
2:殺し合い自体壊す
3:ラッドの兄貴と合流、兄貴がギラーミンを決定的に壊す!



時系列順で読む


投下順で読む



Back Next
GAME START ロベルタ 一触即発
GAME START グラハム・スペクター Doubt & Trust
GAME START 竜宮レナ Doubt & Trust





タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年12月06日 04:05