自然に満ちた人形劇 ◆YhwgnUsKHs
「うーん、木々の生い茂る中に飛ばされてきたってのはやっぱり喜ぶべきだよね。
なにしろ、こんな状況でも元気に咲いている花々とかを見ることが出来るんだもの
うん、僕は幸運だなぁ」
ある林の中。
デイパックを背負った青年、
クリストファー・シャルドレードは腕を広げて天を仰ぎながらそう呟いた。
見上げる先にあるのは、天高くそびえる木々の群。
薄暗い中では暗緑色のそれはさながら彼を囲む牢獄か、彼を見つめる観客か。
けれど、自然が好きな彼はそれを見るだけで楽しい気分になってきていた。
「さて、殺し合いって状況なわけだけど、どうしようかなー。
当然ヒューイ氏の指示なんてない訳だし」
彼は『吸血鬼(ラミア)』という組織と関係があり、その組織の統括存在といえるヒューイ・ラフォレットの指示で今まで動く事が多かった。
指示の一例を挙げるなら、『実験』の名の下にあるビルにいる社員を全員殺害、など。
故に、彼の指示がない、というのだとどうするか少しは迷いがある。
「まあ、僕はそこまでヒューイ氏頼りな優柔不断青年じゃあないけれど……。
人を殺しまくる。誰かを助ける。草花を眺めてずっと寝ている。
実はどれでもいい、とも思ってるんだよね……。
……うん、個人的には3番目が僕にお勧めだな」
クリストファーは顎に手を添えて悩んでるような仕草をする。
彼は酷く気まぐれな性格だ。
組織において人を殺す事に長け、その暦年も長い。実力は凄腕であり、ある超自信家元殺し屋に「今まで戦った奴らでもトップ3に入る」
と言わしめたほどの実力。
それでいて、気分屋なのだ。
彼にとって殺人は禁忌などではない。でも人を助けるのも別にいいかもしれない。なにせヒューイの指示などないわけだから。
なにしろ殺人の時刻までに、人探しをしていたある見知らぬ青年を一晩中助けていたこともある。
それほどまでに、気まぐれ。
「で? そこで僕を見ている女の子は……どうするのかな?」
自分を見つめる視線などとうに気付いていた。
それが少女である、ということも。
その視線の中に、恐怖と言う感情がふんだんに含まれていることも。
「とりあえずそこから出て来たらどうだい?
まずはこの――」
クリストファーは茂みの方を振り向き、できるだけの笑顔でそう言った。
青年の優しい微笑み。
少女はその笑顔に安心して――。
くれなかったようで、茂みでガサガサ音がした後、走り去っていく音がクリストファーには聞こえた。
「…………あれ?」
クリストファーはきょとん、とした顔でその場に立ち尽くしていた。
ちなみにクリストファーの容姿を説明しておくと、貴族のようなフリルのついた服。
後ろで束ねた茶色い髪。
長身。
そして……牙のように全て尖り生え揃った異常な八重歯。通常の人間ならば黒い部分が白く、白い部分が紅くなっている異常な眼。
これを夜に笑顔をしているのを見て、逃げ出さない子供がいたらそれはそれで怖いといえる顔であった。
*****
「はぁ……はぁ……!」
森の中を少女、
北条沙都子は走る。
ただひたすら走る。必死で走る。
足に枝が引っ掛かった。痛い。それでも走る。
止まってはいけないと心が訴える。
止まったら、止まったら*される。
怖くて怖くてたまらない。だから、走る。
(怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!
助けて助けて助けて助けて!
にーにー!圭一さん!ねーねー!梨花!レナさん!魅音さん!
助けて!)
北条沙都子は本来ならば勝気な少女だ。
それでいて冷静なところもあり、トラップマスターと呼ばれる罠を使う手腕は確かだ。
しかし、彼女には重度のある病気が存在する。
『雛見沢症候群』。人を疑心暗鬼に陥らせ、恐慌に至らせる。
沙都子はそれにより一度過ちを犯しており、今まではある治療薬や処置でそれが抑えられており日常生活を行う事ができた。
だが、それは重度のストレス、によってあっさりと瓦解してしまう。
突然の拉致。突然の説明。突然の死。突然の転移。
症状を起こすには充分の環境。
そして、近くにいた男。しばらくは様子を見守っていた。気付かれていないと思った。
これでも『部活』で気配を隠す事に自信がないわけではない。
だが、気付かれた。その上振り向いた男の顔は……ありていに言えば『お化け』としか言いようがないもので、
沙都子の恐怖を後押しするものだった。
生え揃った牙。
それは沙都子の肉を裂き、骨を砕く凶器。
血の様な眼。
それは沙都子の心を捉え、一睨みで沙都子の心を砕く魔眼。
その異様な容姿は、沙都子の恐怖をより促進させてしまっていた。
今彼女の雛見沢症候群は少し顔を覗かせる程度。
彼女の平静を崩し、恐怖の錯乱状態に陥れている。
しかし、これがもっと進行してしまったなら――。
「きゃっ!」
「なああっ!!」
何かにぶつかった。自分と同じか、少し低い程度の何か。
いつもならそんなことはなかった。冷静に逃走経路を見据える事が出来た。だが、今の彼女にはそれができず、障害物にぶつかってしまった。
それほどまでに沙都子は錯乱していた。
体勢を崩し、地面に膝を付いてしまう。軽くすりむいたかもしれない。
「こ、こらぁぁ!いきなり何するですかちび人間!!」
しかも、その障害物が口を聞いた。
「!?」
驚いた沙都子がそれを見やる。
自分と同じように地面に尻をついた、少女。
緑色を基調にしたフリルのついた洋服。茶色の長い髪。
印象的な左右で違うオッドアイ。端正な顔つきに、怒りを滲ませながら沙都子に文句を言っている。
「いきなりこの
翠星石に体当たりをかましやがるとはいい度胸してやがるです!
翠星石はさっさと真紅たちに会いたいですから、お前なんかとは関わってる暇はないのです!
ですがそっちがやる気なら上等なのです!
なにしろあんなギラなんとかというアホ人間のお陰で翠星石はえらく不機嫌なのです!
翠星石は――」
*****
そこで少女とぶつかったローゼンメイゼンが一人、翠星石は気がついた。
カチューシャの少女の視線は明らかにこっちにあっていない。
翠星石の文句の途中で、その視線が微妙にずれた。
具体的に言うなら、翠星石の顔よりやや上に。
さらに付け加えると、その顔には、絶望が感じられた。
とてつもない、絶望。
「も、もしかして…」
翠星石がゆっくり振りかえり、見上げる。
そこには、フリルのついた服、束ねた髪、そして生え揃った八重歯に赤と白の眼をした、笑顔の青年が立っていた。
「やあ。とりあえず僕はこれからどうしようかまだ決めていないから、まだ友達にはなれないけど……。
だってほら、友達になってすぐ……なんてのは僕も嫌だし。
それでも走って逃げられちゃって僕たちのこの出会いを台無しにするのはなんか、どうかと思うんだよね。
でもやっぱり追いかけてよかった!なにせ今度は別の女の子にも出会えたし。
やっぱり行動って大事だね。
君を追いかける途中いくらか自然を踏み壊してしまったのが残念だけど、後で戻って直したり植林したりすればきっと大丈夫さ。
あ、でも植える為の木はどこから持ってこようか…買えれば1番だけど売ってるかな?
いや、売ってなくてもきっとどこかにある!なぜなら自然は懸命だ!どこでだって生きているものだからね。
まあ、それは後にして……。
で、君たちに追いついた僕は……うん、やっぱりそれがいい。
まずは今僕たちを取り囲む、この自然について語り合う事から始めよう」
「状況がさっぱり飲み込めないですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
森の中に人形の声が響く。
相対するは、不自然な作られた人間。
それに恐怖するは、ある悪魔の脚本の演者(ドール)の1人。
差異はあれど、人形と呼べる3者。
演じられる人形劇は、喜劇か悲劇かそれとも惨劇か。
【H-1 森/1日目 深夜】
【クリストファー・シャルドレード@BACCANO!】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 不明支給品(1~3)
[思考・状況]
1・目の前の少女たちと自然について語り合う。その後は……。
2・ゲームに乗るか、乗らないかは未定。
※参戦時期は未定。ですので、人を殺せる状態か殺せない状態かは後続の書き手に任せます。
※名簿はまだ見ていません。
【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:やや擦り傷 恐怖と錯乱状態 L4?
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 不明支給品(1~3)
[思考・状況]
1・目の前のお化けから逃げたい(翠星石のことは忘れてる)。
2・部活メンバーに会いたい。
3・死にたくない。
※参戦時期は具体的には不定。ただし、詩音を『ねーねー』と呼ぶほどに和解しています。
※名簿は確認したようです。
※雛見沢症候群の進度は具体的には不明。L5まで進行した場合、極度の疑心暗鬼と曲解傾向、事実を間違って認識し続ける、などの症状が現れます。
説得による鎮静は難しいですが不可能ではありません。治療薬があれば鎮静は可能ですが、この場にあるかどうかは不明です。
【翠星石@ローゼンメイデン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 不明支給品(1~3)
[思考・状況]
1・もしかして翠星石は巻き込まれてる状態です!?
2・真紅たちに会いたい。
3・ゲームに乗るつもりはない。
※参戦時期は具体的には不定。ですので、
蒼星石についての反応は後続の書き手に任せます。
※名簿を確認したかは不明。
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最終更新:2012年12月06日 04:08