小鳥遊無双? ◆FoU.wbC/ko
「う、嘘だろ……?どうなってるんだよ……!?」
呆然と立ち尽くす彼の名は、
小鳥遊宗太。
高校に通うかたわら、ファミレス「ワグナリア」でバイトをこなす日々を送っている。
周囲にいる人間は皆、強力な個性をもった人ばかり。始めは彼らに翻弄されていたが、今ではそれが日常に変わった。
そのことを差し引いても、彼は「普通の」高校1年生。
人間離れした戦士達が集まるこのバトルロワイアルにおいては、むしろ異質な存在ですらあった。
そんな少年に、当然事態が呑み込めるはずもなく。
(夢だと思ったのに……ひどい夢だけど、目が覚めたら現実に戻れるはずなのに……
でも、いま首に付いている、これは……!)
悪夢から逃れた彼が立っていたのは、自分の部屋ではなく大きな池のほとり。
そして視線の先にはなぜかワグナリアの制服姿で、首に銀の首輪をはめられた自分の姿があった。
恐る恐る首輪に手を伸ばすと、ヒヤリとした冷たい触感が指に伝わる。
頭から冷水をかけられたような悪寒が全身を襲い、これがまぎれもない現実だと気付かせた。
(……待て、待て。落ち着け、小鳥遊宗太。
俺はさっきまで何してた?そうだ、今日もワグナリアでバイトだ。
久しぶりに音尾さんが来たのも、山田さんが3枚も皿を割ったのも覚えてる。間違いない。
それで、仕事が終わって着替えようとして――)
その後どうなったのだろうと必死に頭を働かせるが思い出せない。
消しゴムで消されたように、すっぽりと記憶が抜け落ちている。
思い出せるのは見ず知らずの人々で一杯の部屋と、そこで起きた惨劇。
(そういえばあの人、「殺し合いをしろ」とか言ってたような……
まさか俺、拉致されてここに……!?ど、どうしよう……?
携帯は?ポケットに入れてたのに……だめだ、どこにもない。)
オロオロとしていると、ぽつねんと草むらに置かれたバッグが目に入った。
まさか開けたら爆発とかしないよな――とこわごわデイバッグを開ける。
中の物を1つずつ取り出す。水、パン、懐中電灯、コンパス、時計――
棒状の固いものに触れ、それを引き抜く。すると、小さなデイバックから予想外に長い物体が飛び出した。
(わっ!……これ、刀だ。これで他の人を殺せってことか。
そんな気はないけど、身を守るぐらいなら、まぁ……)
刀を置き、荷物の確認を続けていると2枚の紙が出てきた。片方は地図。そしてもう片方は名簿だった。
(――中国人?)
(――え?道路標識?)
(――本名?いや、あだ名……だよな、これ?
なんなんだこの名簿?本当に……)
(――!!あった、俺の名前……って、伊波さん!?)
再び電流のような衝撃が走り、さまざまな思いが頭の中でぐるぐると渦巻く。
(なんで伊波さんまで……いや、そんなことよりも。
彼女もやっぱり、どこかこの近くに一人で置き去りになってるんじゃ!?)
さ、探さないと!!どこかの誰かに殺されちゃうよ!
あの人に殺し合いなんて、できるわけ……)
できるわけない、と思いかけたところで別の考えが浮かんできた。
(伊波さんにもなんか武器が支給されてるんだよな、たぶん。
ってことは、だ。もし誰かが彼女を助けようとしても、その人が男だったら――
伊波『な…なんなんですか?ここどこですか?
なんで私、殺し合いなんかさせられてるんですか?シクシク』
紳士『やぁ、お嬢さん、大丈夫かい?泣いていないで、私と』
伊波『(びくぅ)きゃーっ!!来ないでーーっ!!』
ズガン!
紳士『ぎゃああぁぁぁ……』
【紳士 死亡確認】
……とかなんとか。
ま、まずい!まずいぞ!一刻も早く探さないと、どこかの誰かが危ない!!)
あわてて荷物の確認を中断し、デイバッグに詰め込んで立ち上がろうとしたとき――
「おい、ちょっといいか」
不意に後ろから声をかけられる。振り向くと、男が立っていた。
派手な緑色の髪。
左耳につけた3連ピアス。
筋肉質の体に、威嚇するような目つきの悪さ。
ポケットに手を突っ込み、肩をいからせる歩き方。
「ん?おぅ、いいもん持ってんじゃねーか。俺にくれよ」
(も……ものすごくベタな不良だ!!)
あっけにとられる小鳥遊をよそに、近づいてくる不良風の男。
「な、な、何の用でしょう?」
「お前に用はねぇんだがな……その刀が欲しいんだよ」
脇に抱えていた刀を指さす。
「か、刀?これのこと?でもこれが無いと……」
「何だ」
「あ、あのその、もし誰かから襲われたりしたときに、身を守れない、というか」
「あぁ?俺がそんな風に見え」
「とんでもない!」
全力で首を振り否定する。男は舌打ちをし、持っていたデイバッグをあさり始めた。
「まぁ、そうだな……お前弱そうだからな、丸腰じゃぁすぐ殺されちまいそうだ」
「え、ええ、そうですね、ハハハ……」
「渡したくないってんならしょうがねぇ」
ゆっくりと、デイバックから引き抜かれた男の手。
その手には不気味に黒光りする物体が握られていた。
「この」
それが何なのかを認識するのに、長くはかからなかった。
「銃を」
拳銃だ。
脳裏に、あの部屋で起きた光景がフラッシュバックのように蘇る。
「お前に」
(こ……殺される!?)
声にならない悲鳴をあげ、思わず刀を掴んでいた。
(やっぱり素直に差し出してればよかったんだ……!!
こんなこ……!?な、何だ?体が勝手に……!?)
「うわあああああああああああぁ!!」
不意を突かれた男の右手にきれいに小手がきまる。拳銃が宙を舞い、くるくると回転し地面に落ちた。
「のわっ!?て、テメェ……」
「ひぃぃ!ご、ごめんなさ……あれ?」
右手を押さえて、こちらを睨みつける男。
たしかに刀で斬ったはずなのだが、なぜか一滴も血が出ていなかった。
「何だ?その刀、ただの模擬刀なのか?」
「え?……あ、本当だ。触っても切れない。
よ、よかった……ってあれ、ちょ、ちょっ」
「……分かった。そんなもんいらねぇから、とっとと失せ」
ガツン、と派手な音がして言葉を打ち切る。
振り出した刀が男の緑髪をかき分けて、頭部にクリーンヒットしていた。
一気に、その場に張りつめた緊張感が広がっていく。
(な、何だよこの刀!?持ってると体が言うことを……いやそれよりも、怒ってる、怒ってるよこの人!)
「……虫も殺せねぇようなツラしてると思ってたが……どうやら違ったみてぇだな」
「ち、違いますよ!いや、違うっていうか違わないって言うか、その……わっ!」
そう言っている間にも、体は勝手に構えをとり次の攻撃を繰り出そうとする。
動かないように踏ん張っているのだが、ピョコピョコと相手に向かっていってしまう。
「い、嫌だーーー!戦いたくない!!」
「ふざけてんのかコラァ!どの口が……」
腰の引けた体勢から繰り出される無数の斬り、突き。
それは、並の戦士なら耐えられないほどの猛攻。しかし相手が悪かった。
賞金額一億ベリー越え、しかも三本の刀を振るう”超”が付く一流剣士。
落ち着いて剣筋を読み、巧みなステップでそれらを次々にかわす。
そして一瞬のすきを突き――振り下ろされた刀の刀身を、素手でがっちりと掴んだ。
「!?」
「つ・か・ま・え・た・ぜ」
もう一方の手で、小鳥遊宗太の右手を掴む。
常人離れしたその握力に右手首は悲鳴をあげ、思わず手を離してしまった。
男と視線が合う。口元は笑っているが、その眼に込められているのは明らかな殺意。
「ひ……」
「手こずらせやがって……覚悟できてんだろうなぁ?」
ドスの利いた声が頭の中に響くが、その意味は全く認識できない。
小鳥遊宗太は、刀と一緒に意識をも手放していた。
★ ☆ ★
小さな液晶画面に<D-7>の文字が踊る。
ボタンを操作し地図を右にスライドさせると、表示が<D-8><D-1><D-2>と変化していく。
(地図の上下、左右でループしている……?なんなんだここは。
ふざけやがって、あのギラーミンとかいう男、ただでは済まさんぞ……)
林の中で一人奥歯をギリギリとかみしめる男は
吉良吉影。
誰よりも平穏な日常を望む彼にとって、今の状況は最悪と言っていいだろう。
(今日はなんて日だ……
広瀬康一、
東方仗助、それにジョータローとか言う男……
素顔も名前もスタンド能力も知られてしまった。その上気がついたら見知らぬ土地にいるとは。
殺し合いだと?誰がそんなことをするかッ!!
私は静かに暮らしたいんだ、植物のように静かな日常を……)
一通り荷物の確認を終え、最後に出てきた名簿に目をやる。
(クソッ……広瀬康一も東方仗助もいるじゃあないか……
この二人は一刻も早く消さねばならない……他の参加者に私のことを話す前にだ。
とにかく、ここを動くとしよう――)
「そこのお前、待てよ」
(……遅かったか)
声の主を探すと、先ほどまで闘っていたガラの悪い男がこちらに近づいてきていた。
吉良はこの戦い一部始終を、こっそりと林の中からうかがっていた。
「……よく気づいたな。隠れていたつもりだったんだがね」
「フン。戦いには慣れてねぇみたいだな……
全然気配が隠れてなかったぜ。それに」
「それに?」
男はニヤリと笑う。
「臭うんだよ、テメェは。血の匂いがする。
そこらの人間とは違う。俺と同じ匂いだ。……なぁ、テメェ何者だ?」
ジロジロと吉良の全身を観察するように見る緑髪の男。
その視線が吉良の胸元に止まる――お気に入りの、ドクロ柄のネクタイ。
男が元いた世界では、それが意味するものは即ち「海賊」。
「はっ、同業者か!どうりで……ははぁ、なるほどな」
良く分らないうちに勝手に同類扱いされ、カッと頭に血が昇りそうになる。
(このカスが……貴様のような馬鹿とは生き方が違うんだよ。
私のキラー・クイーンは最強だ、貴様も消してやろうか?)
「……さっきのガキは殺したのか」
「いや。睨みつけたら勝手に気絶しやがった。
刀の扱いには慣れてるみたいだったが……強いんだか弱いんだか分かりゃしねぇ」
「そうか。それで?私に何の用だ?」
「刀を持ってないか。ここに集められた時から、俺の刀がねぇんだ……
あいつが持ってたのは、ありゃオモチャだ。」
「……持っていたとして、初対面の人間にタダで殺しの道具を譲るとでも?」
「分かってるよ。タダとは言わん、これと交換してくれ。
こんな小さいのでも、刀よりは役に立つんじゃないのか?」
男はデイバッグから拳銃を取り出す。
(ふむ、拳銃か……確かに、何が起こるか分からないからな……
接近戦なら負ける気はしないが、離れた相手にはキラー・クイーンでは分が悪い。持っていて損はないか)
「……もし刀を手に入れたとして、これからどうするつもりだ?
あのギラーミンとかいう男に従って、他の参加者を皆殺しにするつもりか?」
「あぁ?別にアイツに従うつもりはないな……とりあえず、何人か知り合いがいるから探してみるつもりだ。
あぁ、まぁ強そうな奴がいたら戦ってみたい気はするな。特に剣士なら最高だ」
「ほぅ、そうか」
その答えを聞き、一つの決断を下した。
自分のデイパックから、一振りの刀を取り出す。
「いいだろう、お望みのものだ。交換といこうか」
「なんだ、持ってるじゃねぇか……ほらよ、交換だ。
なるほど、悪くねぇ刀だ……」
男は刀を腰にさし、吉良は拳銃をスーツの内ポケットにしまう。
その時、吉良が思い出したように一枚のメモ用紙を取り出した。
「忘れていたよ……その刀についてたものだ」
「?『
トウカの刀』だと?なんだ、トウカって」
「名簿の中にトウカ、という名前があった。持ち主の名前だろうな。
おそらく没収された武器を再分配したのだと思う。つまり……」
「……俺の刀も誰かが持ってる、ってことか。
そりゃぁ良かった。なにしろ、形見の品もあるんでな」
「多分誰かが持っているだろうさ。取り返したければ他の参加者に聞いて回ることだな。
さて、私は失礼するよ」
「何だ、一人で動くのか?いろいろ聞こうと思ってたんだが」
男の言葉に耳を貸さず、荷物を担ぎおもむろに立ち上がる吉良。
「悪いかね?私は一人が好きなんだ。話し相手は他をあたってくれ……じゃぁな」
「まて、せめて名前ぐらい……おい!」
そう言うと、吉良はまた林の中へと向かっていった。
後ろでまだ何事かわめいているようだが、それを無視して振り切るように歩き続ける。
(誰が貴様なんぞと仲良くするか!この場で消してやりたいぐらいだッ!
……まぁいい。なかなか好戦的な男だったし、他の奴らと潰し合ってくれるだろう。
あの部屋にいた人間、何人が殺し合いに乗ったのかは知らんが……
この調子なら仗助に康一も、じきに戦闘に巻き込まるだろうさ。
私が手を下すのはまだ後でいいだろう。しばらく人のいなさそうな所で様子を見るとするか。
この先は『ゴミ処理場』に『温泉』。まさか戦いを求めた人間は来ないだろう……)
振り返ると、気絶したままの少年を担ぎ反対方向へ歩いて行く男の姿があった。
それを確認した後、吉良は踵を返し森の奥へと歩を進めた。
【D-7 林の中/1日目 深夜】
【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康
[能力]:スタンド「キラー・クイーン」
[装備]:ニューナンブM60(残弾5/5)、GPS
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1・なるべく戦闘に参加しない。
2・東方仗助、広瀬康一は始末する
3・とりあえず北へ向かう。
※参戦時期は単行本39巻「シアーハートアタックの巻⑩」から。シンデレラによる整形前の顔です。
また、第三の爆弾バイツァ・ダストは使えません。
※キラー・クイーンの能力制限にはまだ気が付いていません。
【D-7 湖のほとり/1日目 深夜】
【
ロロノア・ゾロ@ワンピース】
[状態]:健康
[装備]:トウカの刀
[道具]:支給品一式 秘剣”電光丸”不明支給品(0~2)
[思考・状況]
1・自分の刀(特に、和道一文字)を回収する。
2・こいつ(小鳥遊宗太)から情報を得る
3・ゲームにはのらないが、襲ってきたら斬る(強い剣士がいるなら戦ってみたい?)
4・ルフィ、
ウソップ、チョッパーを探す
※参戦時期は未定。
※秘剣”電光丸”の能力には気づいていません。
※吉良吉影のことを海賊だと思っています。
【小鳥遊宗太@WORKING!!】
[状態]:気絶
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 不明支給品(0~2)
[思考・状況]
1・この男はヤバイ!
2・伊波まひるを一刻も早く確保する。
3・ゲームに乗るつもりはない。
※参戦時期は具体的には不定。
<支給品情報>
【トウカの刀@うたわれるもの】
トウカが愛用している刀。
【秘剣”電光丸”@ドラえもん】
持っているだけで勝手に体が動き、剣の達人のような立ち居振る舞いができる。
具体的には相手の動きをセンサーで検知し、コンピュータで判断した作戦を実行する。
死亡状態でない限り、持ち主の状態に関係なく作動する。(目を閉じている、眠っているなどの状態でも可。)
ただし刃が付いていないので、殴るだけである。またバッテリーが切れると動かなくなる。
【ニューナンブM60@現実】
日本警察が正式採用するリボルバー。弾丸は装填済み。
【GPS@現実】
小型のGPS。
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最終更新:2012年11月26日 23:28