同盟 ◆o9OK.7WteQ





 深夜。
 静寂が支配するはずの森の中に、それを乱す声があった。

 一方は帽子をかぶり、男装をした小さな少女。
 もう一方は、サイドに白髪が一筋入ったオールバックの男。

「落ち着いたかね」
「君の方は落ち着いてるのかな?」

 佐山の態度に、蒼星石は眉間に皺を寄せた。

「私は冷静だとも。しかし、武器を収めてくれて助かった」
「……もうあんな事は勘弁してもらいたいな」

 蒼星石は、先ほど尻を撫で回されたことへの抗議のつもりで言った。
 しかし、

「いや、見事な尻を前にして触らないという事は出来ん」
「……反省という言葉の意味を知っているかい?」
「勿論だとも。しかし、何を反省しろというのかね? 私は褒めているのだが」

 はぁ、と蒼星石はため息をついた。
 佐山はそれを見ていたが、意に介している様子はまるで見られない。
 蒼星石は思っていた。
 この人間は、今まで接してきた人間とは違うと。

「とりあえず自己紹介をしておこうか。僕はローゼンメイデン第四ドール、蒼星石」

 だが、今は誰だろうと選り好みしている場合ではない。
 今はとにかく情報を得ることが先決だ。
 先ほどは取り乱していたが、冷静さを取り戻した蒼星石はその結論に至った。

「これは丁寧にどうも。私の名前は佐山・御言。お兄ちゃんと呼んでくれて構わない」

 ……だが、それは容易な事ではないだろうと蒼星石は眉間に皺を寄せながら思った。



     ・    ・    ・

「さて、先ほど私が言った事を覚えているかな?」
「交渉、というやつかな?」

 その通り、と佐山は頷いた。
 あの後、二人は簡単に自己紹介を済ませていた。
 そして、佐山はある提案をした。

「蒼星石くん。私と手を組まないか」

 佐山のその言葉を聞き、蒼星石は考えた。
 そして、浮かんだ疑問をそのまま口にする。

「手を組むというのは、どういう意味でだい?」
「君はどういう意味だと思う?」

 正直、蒼星石はこの男の考えがまるでわからない。
 問い返してきたのも、可能な限り自分の手の内を明かさないでおこうという事なのだろうとは思った。
 しかし、蒼星石は本心を包み隠さず言った。
 ここで下手に嘘をつき、見破られた場合は厄介な事になりそうだから。

「……手を組んで殺し合いに参加しようっていうのならお断りだね」
「それは何故」
「僕は、誇り高いローゼンメイデン第五ドールの蒼星石だから。それが理由さ」

 佐山は蒼星石の言葉を聞き、その顔を見つめた。
 沈黙。
 そして、

「すまない。試すような真似をした」
「試す、だって?」

「私が手を組もうと言ったのは、生き残るためだ」



 佐山は考えていた。
 この状況で生き残るのは、単独ではほぼ不可能だと。
 いかに気を使っていても、人間の生理現象は止められない。
 寝ている最中を襲われればひとたまりも無いし、

「他にも、私が排泄をしている時に見張りをしてくれると助かる」
「……下品だね」

 佐山の包み隠さない物言いに、蒼星石は不快感を露にした。

「君は人形、っと失礼。ドールだから生理現象はないだろうが、私は違う。
 排泄を行い、食事を必要とし、休息をとらざるを得ず、魅力的な尻があれば触る。普通の人間だ」

 どこまで話していいものかと蒼星石は悩んだ。
 だが、

「ふむ、決め付けてしまっていたな。謝罪しよう。
 君程良く出来ているドールならば、ある程度まで生理現象も再現されているだろうな。―――違うかね?」
「…………ご名答」

「協力していく上で、それがどの程度のものなのかは聞いておきたい所だ。
 個人的には、究極の少女を目指して作られた人形が排泄をするか否かは興味がある。どうなのかな?」
「……君が何故そんな事に興味を持ったのかは知らないけれど、僕達ドールはそんな行為を必要としないよ」

「ふむ、君の製作者は意外にもノーマルだったようだ。てっきり私は救いようの無いロリコンだと思ったのだがね」
「?」

 ロリコンという言葉の意味を知らないのならば良い、と佐山は首を振った。
 蒼星石は思った。
 この人間は接していて非常に疲れる、と。

「……ふぁ」

 思わずあくびが出た。
 それにローゼンメイデンは定期的に鞄で眠らないといけないので、この時間まで起きていたら当然の事だった。
 蒼星石は仕方のない事とはいえ、自らの迂闊さを呪った。
 無論、佐山はそれを見逃さなかった。

「なる程。ローゼンメイデンは休息を必要とするのか」


     ・   ・   ・

「早く新庄くんと合流せねば」

 佐山は、蒼星石の眠っている鞄を手に持ち移動を開始した。
 可能な限り振動をあたえないように、そして、周囲に気を配りながら歩を進める。

 佐山は、派手に動き回って無用な戦いを呼び込むのは得策ではないと判断していた。
 優先すべきは、参加者名簿に名前があった新庄を探すことだ。
 それまでに自分が倒れてしまっては意味が無い。
 そのための同盟だった。
 聞けば、蒼星石も知り合いが参加者としているらしいではないか。

「それにしても、最初に蒼星石くんと会えたことは幸運だったな」

 もし相手が問答無用で戦いを挑んでくる相手だったら、状況は厳しいものとなっていただろう。
 だが、蒼星石もまだ何か隠している事があるようだ。
 無論こちらも手の内を全て明かしたわけではないのでお互い様なのだが。

 そう、この同盟はお互いの利益を追求した結果組まれたものだ。
 情報を得、生き残るために。

 しかし、

「僕っ娘二人が揃う所を見てみたいものだ」

 佐山は本気でそうも思っていた。
 そのためには、自らの姓の任ずることをしよう。
 そして、自らの正逆である少女と並び立とう。

 佐山の姓が任ずること。
 それ、すなわち―――

 ―――悪役。




【D-8 キャンプ場/一日目 深夜】
【佐山・御言@終わりのクロニクル】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1~3(確認済み)

[思考・状況]
1.新庄くんと合流する。
2.ひとまず蒼星石くんと協力する。
3.球体間接というものも趣があるものだ。


【同上】
【蒼星石@ローゼンメイデン】
[状態]:健康、精神的疲労、睡眠
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2、天候棒(クリマ・タクト)@ワンピース

[思考・状況]
1.翠星石と合流する。
2.佐山を利用する。
3.現状では、ゲームに参加する意思は無い。


※お互い簡単な自己紹介は済ませました。
 どこに向かうかは次の人に任せます。



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エレガントにまロく! 蒼星石 小鳥の遊び
エレガントにまロく! 佐山・御言 小鳥の遊び



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最終更新:2012年12月20日 02:59