背丈の高い草をかき分けて。少しぬかるんだ土を踏みしめて。
亮子は黒の草原を駆け抜ける。汗が頬からたらりと落ちる。だが、それを気にしている様子はない
消し去れない思いを胸に足を動かす。傍から観たその様はルーチンワーク、まるで機械のようだ。
亮子は黒の草原を駆け抜ける。汗が頬からたらりと落ちる。だが、それを気にしている様子はない
消し去れない思いを胸に足を動かす。傍から観たその様はルーチンワーク、まるで機械のようだ。
「…………ぁ」
数時間前の出来事が嫌でも頭の中を占領する。血を吐き、ぐらりと倒れ落ちるその姿。
思い出すだけでも吐き気が絶え間なく襲う。口の中に酸っぱい胃液が逆流してくる。
数時間前リシアンサスを殺したという事実は亮子の中で未だに強く渦巻いていた。
思い出すだけでも吐き気が絶え間なく襲う。口の中に酸っぱい胃液が逆流してくる。
数時間前リシアンサスを殺したという事実は亮子の中で未だに強く渦巻いていた。
「…………っ!」
リシアンサスは弱かった。されど必死に抗おうと気丈に振舞った。
この理不尽な現実に負けないように。会いたい人がいたから。
精一杯の笑顔は眩しかった。男であれば惚れてしまいそうなくらいに。
リシアンサスは理由があったのだ、死ねない理由が。
この理不尽な現実に負けないように。会いたい人がいたから。
精一杯の笑顔は眩しかった。男であれば惚れてしまいそうなくらいに。
リシアンサスは理由があったのだ、死ねない理由が。
「…………!」
それを完膚なきまでに壊した。他でもない自分のせいで。
支給された水と毒薬入りの水を誤って渡してしまったばっかりに殺してしまった。
言い訳はできない。例えどんな理由があろうとも高町亮子がリシアンサスを殺したという事実には変わりないのだから。
殺した後は目の前が真っ暗になる感覚が襲った。誰もいない、ただ孤独に人殺しと罵られる。
支給された水と毒薬入りの水を誤って渡してしまったばっかりに殺してしまった。
言い訳はできない。例えどんな理由があろうとも高町亮子がリシアンサスを殺したという事実には変わりないのだから。
殺した後は目の前が真っ暗になる感覚が襲った。誰もいない、ただ孤独に人殺しと罵られる。
「助けて……」
人を殺すくらいなら死んだ方がましだ。その意志は何処へ消えた。
そもそもそんなモノを持っていたのだろうか。それは仮初のモノだったのではないか。
今の亮子は自分に自身が持てなかった。確固たる意志が見えなかった。
そもそもそんなモノを持っていたのだろうか。それは仮初のモノだったのではないか。
今の亮子は自分に自身が持てなかった。確固たる意志が見えなかった。
(ここは……お寺か)
何も考えずに、頭を空っぽにしてただ走り続けた先にあったのは。木造建築の古いお寺を囲むように建っている壁と門。
古いといっても全体的に大きく風格がある。加えて、寺内は一回りするのには苦労しそうな広さだ。
だが、草原の中にポツンと建っているその姿はとてもシュールだった。
古いといっても全体的に大きく風格がある。加えて、寺内は一回りするのには苦労しそうな広さだ。
だが、草原の中にポツンと建っているその姿はとてもシュールだった。
「入ってみるか……」
ひとまずは疲れた身体を癒したい。どこか狭い部屋でずっと一人でこもっていたい。
そんな暗い気分を背負い亮子はお寺の門をくぐった。
門の向こうに広がるのは寂れてはいるが大きなお寺。年季が入っていてどこか神聖な空気が辺りにただよっている。
そんな暗い気分を背負い亮子はお寺の門をくぐった。
門の向こうに広がるのは寂れてはいるが大きなお寺。年季が入っていてどこか神聖な空気が辺りにただよっている。
「案外広いんだな……」
そう一人ごちりながらそろそろと忍び足で寺の中に脚を踏み入れた。
ギシギシと木の床が音を立てる。
できるだけ音を立てずに歩こうとするが床が老朽化しているのか音は鳴りやまない。
そしてとある部屋の前で足を止めた。亮子はしばらく一人孤独に閉じこもる場所をこの部屋だと決めたのだ。
だが。
ギシギシと木の床が音を立てる。
できるだけ音を立てずに歩こうとするが床が老朽化しているのか音は鳴りやまない。
そしてとある部屋の前で足を止めた。亮子はしばらく一人孤独に閉じこもる場所をこの部屋だと決めたのだ。
だが。
「誰も、いませんように」
世界は、運命は、神様は。
「え……?」
「ひゃ……!」
「ひゃ……!」
“面白い”方向へ彼女を転がせる。亮子の視界に入るのは純和風の部屋。
床には檜の板が敷き詰められ、壁には誰が書いたかは知らないが達筆な掛け軸が飾られている。
それだけだったら亮子としては何も問題はなかった。
ただ一人で休みたいだけなのだから装飾その他諸々はあっても別に気にはしない。
床には檜の板が敷き詰められ、壁には誰が書いたかは知らないが達筆な掛け軸が飾られている。
それだけだったら亮子としては何も問題はなかった。
ただ一人で休みたいだけなのだから装飾その他諸々はあっても別に気にはしない。
「あ……」
それでも人を無視することは流石に出来はしない。
いるとは思わなかった人との遭遇に思わず声が裏返ってしまうほどに亮子は驚いていた。
彼女をひどく驚かせた原因――ピンク色の髪を短いポニーテールに束ねて、白のセーラー服を着た小さな少女。
少女は亮子を見てビクっと体を震わせ部屋の隅に縮こまっている。
いるとは思わなかった人との遭遇に思わず声が裏返ってしまうほどに亮子は驚いていた。
彼女をひどく驚かせた原因――ピンク色の髪を短いポニーテールに束ねて、白のセーラー服を着た小さな少女。
少女は亮子を見てビクっと体を震わせ部屋の隅に縮こまっている。
「お姉ちゃんも参加者?」
沈黙を破ったのは少女からだった。
亮子としてはこのまま無言で立ち去りたかったが自分よりも年下の少女が勇気を振り絞って話しかけたのだ、
これを無視することは亮子にはとてもじゃないが出来なかった。
亮子としてはこのまま無言で立ち去りたかったが自分よりも年下の少女が勇気を振り絞って話しかけたのだ、
これを無視することは亮子にはとてもじゃないが出来なかった。
「ああ。あたしもこのふざけたゲームの参加者だ」
――――そして一人の参加者を殺した。
そこまでは言葉に出せなかった。そんなことを言って幼い少女を怖がらせるのは忍びない。
だがその感情よりも自分が人殺しだと誰かに知られて、罵られるかもしれないという予想が先に浮かんでしまい怖かったのだ。
ただでさえ壊れかけの心だ、これ以上衝撃を与えたら自分が自分でいられなくなるかもしれない。
だがその感情よりも自分が人殺しだと誰かに知られて、罵られるかもしれないという予想が先に浮かんでしまい怖かったのだ。
ただでさえ壊れかけの心だ、これ以上衝撃を与えたら自分が自分でいられなくなるかもしれない。
(それだけは、嫌だ。あたしはもう誰も殺したくない)
ブレードチルドレンのスイッチが入ってしまったらもう手遅れ、人類抹殺のために動く人形となり果ててしまう。
そうなるくらいなら死んだ方がましだ、と心中で吐き捨てる。
そうなるくらいなら死んだ方がましだ、と心中で吐き捨てる。
「え、えっとお姉ちゃんは優希を殺すの?」
故に少女――優希の口から出た言葉は亮子のポーカーフェイスを崩すのに十分な威力だった。
自分が、このかよわい少女を殺す。想像しただけで吐き気がしてくる。
既に一人殺した身としてはそんなことを言う資格なんてないのかもしれない。
それでもまだ自分は人間だ。呪われた子供なんてモノではない。
自分が、このかよわい少女を殺す。想像しただけで吐き気がしてくる。
既に一人殺した身としてはそんなことを言う資格なんてないのかもしれない。
それでもまだ自分は人間だ。呪われた子供なんてモノではない。
「殺すわけないだろ」
だからこそ力強くこう言えた。例え一度道を踏み外そうとも戻ろうという意志があればきっと戻れるはずだから。
もう、二度と過ちを犯さないために今ここに生きている。
もう、二度と過ちを犯さないために今ここに生きている。
「ほ、本当に?」
「ああ本当だ」
「ああ本当だ」
落ち込んでばかりでは始まらない。自分は図らずもリシアンサスの命を背負うことになってしまった。
なら彼女の分まで生きなくてはならない。彼女の知り合いに謝らなくてはいけない。
やることはたくさんある。ただ、少しだけでいい。今は休みたい。一人になりたい。
そう思って此処に来た。結果としては優希と会ってしまい目論見は崩れたのだが。
なら彼女の分まで生きなくてはならない。彼女の知り合いに謝らなくてはいけない。
やることはたくさんある。ただ、少しだけでいい。今は休みたい。一人になりたい。
そう思って此処に来た。結果としては優希と会ってしまい目論見は崩れたのだが。
「お姉ちゃん、大丈夫? なんだか怖い目をしてる」
「そんなことはないよ、あたしは全然普通だ」
「そんなことはないよ、あたしは全然普通だ」
亮子は嘘をついた。依然とリシアンサスの死は背中に重みとなってのしかかっている。
その重みは押しつぶされそうなくらいに重く、精神的に痛みを与えている。
それでもその重みと痛みは背負わなくてはならないものだ。罪も罰も贖いも受け入れてこそ胸をはって生きられるのだ。
その重みは押しつぶされそうなくらいに重く、精神的に痛みを与えている。
それでもその重みと痛みは背負わなくてはならないものだ。罪も罰も贖いも受け入れてこそ胸をはって生きられるのだ。
「そうだ! お姉ちゃん疲れてるでしょ、優希お茶入れてくるね!」
そう言った優希の顔には心配と表情に出ていた。
少しでも亮子に落ち着いてもらいたい一心で出た言葉なのだろう。
少しでも亮子に落ち着いてもらいたい一心で出た言葉なのだろう。
「はぁ、年下に気を使われちゃうとはな……」
優希が部屋から出ていった後、亮子は一人溜息と同時に小さな子に気を使われるくらいに自分の顔はひどかったのかと反省する。
こんな様だと先が思いやられる、もっと表情を柔らかくしとかないと。
内面は崩れかかろうとも表面ぐらいはまともにしておきたい。優希に無理に心配をさせてしまうようではこれからのことが思いやられる。
こんな様だと先が思いやられる、もっと表情を柔らかくしとかないと。
内面は崩れかかろうとも表面ぐらいはまともにしておきたい。優希に無理に心配をさせてしまうようではこれからのことが思いやられる。
(大丈夫、まだスイッチは入っていない。あたしは人類を滅ぼすなんて考えていない)
何度も何度もしつこいくらいに自分を言い聞かせる。
湧きでてくる黒い感情は常に気を張ってでもいないと抑えきれない。
深呼吸を一つ、大きく吸って吐いて。
自我の確立はまだ出来ている。大丈夫だ、と強く言い聞かせた。
湧きでてくる黒い感情は常に気を張ってでもいないと抑えきれない。
深呼吸を一つ、大きく吸って吐いて。
自我の確立はまだ出来ている。大丈夫だ、と強く言い聞かせた。
(そうだ、皆で協力して脱出するんだ)
だが、亮子は気づかない。知らず知らずのうちに自分の中身が変革していることに。
既に彼女は崖っぷちまで追い詰められてほんの少しの衝撃でタガがはずれてしまう。
何と滑稽なことか。彼女自身は大丈夫だと思っているのに実際はもう壊れかけているという事実に気づいていない。
これを滑稽と呼ばずになんという!
既に彼女は崖っぷちまで追い詰められてほんの少しの衝撃でタガがはずれてしまう。
何と滑稽なことか。彼女自身は大丈夫だと思っているのに実際はもう壊れかけているという事実に気づいていない。
これを滑稽と呼ばずになんという!
(こんな所で死んでたまるか……!)
その言の葉には自分が今まで貫いてきた意志と人を害する殺意が混ざり合っていた。
◆ ◆ ◆
「そうか……優希はこの島に誰も知り合いがいないのか」
「うん、だから心細くて」
「うん、だから心細くて」
亮子はお茶と和菓子を持ってきた優希と一緒に机に広げて休息をとりながらちょっとした会話をしていた。
さすがにこんな小さな女の子を放って一人自分の世界に閉じこもることはできない。
亮子は先程、優希には知り合いが誰一人この島にいないということを聞いた。
知り合いが誰一人いない孤独、それは想像を絶するものだろう。
幸いのことに亮子には普段はヘタレていても有事には頼りになり、仄かな恋心を抱いている浅月香介を始め、
アイズ・ラザフォード、竹内理緒といったブレードチルドレンの仲間、
鳴海歩、結崎ひよのといったカノン・ヒルベルトとの戦いで命を預けあった者達など信頼できる仲間がそれなりにいる。
さすがにこんな小さな女の子を放って一人自分の世界に閉じこもることはできない。
亮子は先程、優希には知り合いが誰一人この島にいないということを聞いた。
知り合いが誰一人いない孤独、それは想像を絶するものだろう。
幸いのことに亮子には普段はヘタレていても有事には頼りになり、仄かな恋心を抱いている浅月香介を始め、
アイズ・ラザフォード、竹内理緒といったブレードチルドレンの仲間、
鳴海歩、結崎ひよのといったカノン・ヒルベルトとの戦いで命を預けあった者達など信頼できる仲間がそれなりにいる。
(あたしには仲間が沢山いる。だけど優希ちゃんは……)
知り合いがいない故にこの寺の部屋の片隅で一人震えていた。
それなら仲間を増やせばいいと普通はなるが会う参加者が安全とは限らない。
結局の所は一人どこかに閉じこもっているのが一番安全なのだ。
それなら仲間を増やせばいいと普通はなるが会う参加者が安全とは限らない。
結局の所は一人どこかに閉じこもっているのが一番安全なのだ。
「お姉ちゃんには友だちがいるの?」
その優希の純真な問いに亮子は笑みを浮かべてああ、と頷く。
そして優希を勇気づけるために頼りになる仲間達の話をし始めた。
いつも表情を崩さない銀髪の少年の話。
小さいながらも場の空気をいつも読んでいるロリータ少女の話。
ヘタレと思っていたけど案外頑張る時は頑張れる少年の話。
神出鬼没で何をやっていてもおかしくはない怪しい少女の話。
陸上で記録を塗り替え続けるよう努力を続けている自分の話。
そして優希を勇気づけるために頼りになる仲間達の話をし始めた。
いつも表情を崩さない銀髪の少年の話。
小さいながらも場の空気をいつも読んでいるロリータ少女の話。
ヘタレと思っていたけど案外頑張る時は頑張れる少年の話。
神出鬼没で何をやっていてもおかしくはない怪しい少女の話。
陸上で記録を塗り替え続けるよう努力を続けている自分の話。
「香介はいっつもデリカシーがないんだよ」
その中でも大きく比率を占めているのは亮子が自覚なき恋をした少年の話。
小さな頃の彼がオオアリクイと戦った武勇伝など色々と語る。
その時の亮子の顔は紛れもなく日常で見せていた笑顔と同じ、ブレードチルドレンの呪いを感じさせないものだった。
小さな頃の彼がオオアリクイと戦った武勇伝など色々と語る。
その時の亮子の顔は紛れもなく日常で見せていた笑顔と同じ、ブレードチルドレンの呪いを感じさせないものだった。
「お姉ちゃんはそのこーすけくんって人が好きなんだね」
「えっ!?」
「えっ!?」
優希の言葉に目が飛び出しそうなくらいに亮子は驚く。実際に亮子は思わず机から身体を乗り出した。
そして好きという感情について改めて考える。それはLike? それともLove? 亮子はその答えにきっともう気づいていると何となくだが感じていた。
そして好きという感情について改めて考える。それはLike? それともLove? 亮子はその答えにきっともう気づいていると何となくだが感じていた。
(あたしはきっと――――香介が好きなんだ。家族でもなく友達でもなく、一人の異性として)
だが彼とは母は違えど兄妹なのだ、現実は、常識は甘くはない。
兄妹、それはきっと一番近い間柄なのだろう。故に、手を出せない。血縁という背徳が二人の邪魔をする。
一緒にいたいという気持ちには何の偽りはないが現実と感情は別個だ。
兄妹、それはきっと一番近い間柄なのだろう。故に、手を出せない。血縁という背徳が二人の邪魔をする。
一緒にいたいという気持ちには何の偽りはないが現実と感情は別個だ。
(それでも、それを認めたら見れる夢も見れないよ)
諦めたらそこで世界は終わる。見える未来も霞んでしまう。
それならば、どれだけの苦難が待ち受けようとも突き進むしかないじゃないか。
ブレードチルドレンであったとしても、人を殺したとしても未来を見る権利はあるはずだ。
それならば、どれだけの苦難が待ち受けようとも突き進むしかないじゃないか。
ブレードチルドレンであったとしても、人を殺したとしても未来を見る権利はあるはずだ。
(そうだよ……まだ、あたしは、み、らいを)
亮子は突然の睡魔にふらふらと身体を床に倒す。まぶたが重い。
自分はこんなに疲れていたのか? 人を殺したことはここまで自分の中では重くのしかかっていたのか?
自分はこんなに疲れていたのか? 人を殺したことはここまで自分の中では重くのしかかっていたのか?
「おきた、ら、こうすけをさ、がしに」
最後にそう呟いて亮子の視界は黒に染まり、夢の世界へと落ちていった。
スヤスヤと眠る亮子の横で口を三ヶ月にして笑う優希に気づかずに。
スヤスヤと眠る亮子の横で口を三ヶ月にして笑う優希に気づかずに。
――――それは無理だよ。
亮子の言葉を皮肉る優希の声だけは何となくではあったが聞こえた気がした。
◆ ◆ ◆
最悪の目覚めだった。手首と足首に違和感がある。
起きたばっかりなのか視界が定まらなく、目をゴシゴシとこすろうにもなぜかこすることができない。
それと疑問に思ったのは視界が何故か低いことだ。
起きたばっかりなのか視界が定まらなく、目をゴシゴシとこすろうにもなぜかこすることができない。
それと疑問に思ったのは視界が何故か低いことだ。
「あれ……」
眠る前はどうしていたのだろうか。いまいち記憶が蘇らない。
亮子は自分の今置かれている状況が把握できず困惑していた。まだ頭が正常に働かず、ただぼんやりとする他ない。
亮子は自分の今置かれている状況が把握できず困惑していた。まだ頭が正常に働かず、ただぼんやりとする他ない。
「あ、お姉ちゃん目が覚めたんだね」
「ゆう、き……」
「ゆう、き……」
亮子の視界に入ってきたのはにいるのは足を伸ばしてゆったりと寝転がっている優希だった。
にこにこと笑っているその姿は少女らしくとても可愛らしかった。
にこにこと笑っているその姿は少女らしくとても可愛らしかった。
「えっと、あたしは……っ」
亮子は何とか起き上がろうとしたが上手く起き上がれず床に転がってしまう。
よく見てみると手足がロープで縛られている。ロープは固く縛られており、亮子の筋力を以てしても抜け出すことは出来ない。
刃物で切らなければ抜けだせはしないだろう。これでは芋虫のように這うことでしか動くことができない。
よく見てみると手足がロープで縛られている。ロープは固く縛られており、亮子の筋力を以てしても抜け出すことは出来ない。
刃物で切らなければ抜けだせはしないだろう。これでは芋虫のように這うことでしか動くことができない。
「!? これは……!」
「ああそれ? だってそうしないとお姉ちゃんが逃げちゃうかもしれないから」
「ああそれ? だってそうしないとお姉ちゃんが逃げちゃうかもしれないから」
この少女は今何と言ったのだろう。亮子は自分の耳を疑った。
今言った言葉が本当だとしたらこのロープを縛って自分をこんな様にしたのは優希ということになる。
今言った言葉が本当だとしたらこのロープを縛って自分をこんな様にしたのは優希ということになる。
「どうしてあたしの手足を縛ったりなんか……!」
「どうして? そんなことを聞く権利はお姉ちゃんにはないよ」
「どうして? そんなことを聞く権利はお姉ちゃんにはないよ」
嗜虐的な笑みを浮かべながら優希は思い切り亮子の腹を蹴りつける。
ごほっと口から唾液と一緒にかすれた声が零れ落ちた。
ごほっと口から唾液と一緒にかすれた声が零れ落ちた。
「あのさぁ、自分の立場わかってる? 手足縛られて動けない状態で調子に乗らないでくれる?」
「どうして……」
「さっきからどうしてどうしてしつこいなぁ。何? そんなに理由が知りたいの?」
「どうして……」
「さっきからどうしてどうしてしつこいなぁ。何? そんなに理由が知りたいの?」
優希は亮子の髪を思い切り引っ張り頭を上に持ち上げて床に落とす。
じわじわといたぶるかのごとく。そう簡単には死なせはしないという念がありありと出ている。
じわじわといたぶるかのごとく。そう簡単には死なせはしないという念がありありと出ている。
「あの、笑顔は嘘だったのか!?」
「当たり前じゃない……ただの惚気話を聞かされた身にもなってよ。
甘くて甘くてヘドが出るほどに腐った話ありがとう」
「当たり前じゃない……ただの惚気話を聞かされた身にもなってよ。
甘くて甘くてヘドが出るほどに腐った話ありがとう」
強く叩きつけられて、リズムを取るようにドンドンドンと亮子の顔は檜の床に熱いキスをする。
一つ一つの痛みはそこまで苦になるほどのものではないがこうも続けてやられては痛みもだんだん増してくる。
なんとかこの状態から脱出しなければ。クスクスと笑っている優希を尻目に亮子の頭は思考に没頭し始めた。
一つ一つの痛みはそこまで苦になるほどのものではないがこうも続けてやられては痛みもだんだん増してくる。
なんとかこの状態から脱出しなければ。クスクスと笑っている優希を尻目に亮子の頭は思考に没頭し始めた。
「…………」
「へえ、何も言わなくなったね。なにか喋ることでもないの?」
「……」
「つまんない、恨み言の一つや二つくらい言ってくれないと張り合いがないよ」
「へえ、何も言わなくなったね。なにか喋ることでもないの?」
「……」
「つまんない、恨み言の一つや二つくらい言ってくれないと張り合いがないよ」
やれやれと肩をすくめて優希はニヤリと笑う。改めて亮子はこの少女の二面性に戦慄を覚えていた。
人はここまでの二面性を内に隠しているものなのか。あの純真で可愛らしかった優希はどこへ消えたのか。
眼前にいる少女は本物ではなく偽物ではないかと考えるまでに優希は変貌していた。
人はここまでの二面性を内に隠しているものなのか。あの純真で可愛らしかった優希はどこへ消えたのか。
眼前にいる少女は本物ではなく偽物ではないかと考えるまでに優希は変貌していた。
「そう、ずっと黙ってるなんて言うならこっちにも手があるよ」
その言葉に亮子は喉がゴクリと鳴った。なぜだか自分を見る優希から目を離せない。
刹那、次に放たれた言葉に亮子は顔色を変えて動揺することとなる。
刹那、次に放たれた言葉に亮子は顔色を変えて動揺することとなる。
「お姉ちゃん、人を殺したでしょ?」
「え?」
「え?」
亮子は世界が止まったような気がした。表情が凍って口からはうまく声が出ない。
否定、は出来なかった。よくも悪くも亮子は正直者だ。嘘をつくことに慣れていない彼女には優希の問いをうまく躱すことが出来なかったのだ。
そして次に考えたのは何故、知っているという疑問。
自分は優希にリシアンサスを殺したことを伝えてはいない。それなら優希がそのことを知っているというのはおかしいではないか。
否定、は出来なかった。よくも悪くも亮子は正直者だ。嘘をつくことに慣れていない彼女には優希の問いをうまく躱すことが出来なかったのだ。
そして次に考えたのは何故、知っているという疑問。
自分は優希にリシアンサスを殺したことを伝えてはいない。それなら優希がそのことを知っているというのはおかしいではないか。
「あははははっ、図星みたいだね~」
「どうして……」
「本当にヴォキャブラリーがないね、お姉ちゃん。もっと違う言葉を使おうよ、ああ今みたいに落ち着いてもいない状態でそれを求めるのは酷か~。
それともお姉ちゃん自身バカだったり? そうだったら嫌だな~、学がない人は嫌いなんだよね~」
「どうして……」
「本当にヴォキャブラリーがないね、お姉ちゃん。もっと違う言葉を使おうよ、ああ今みたいに落ち着いてもいない状態でそれを求めるのは酷か~。
それともお姉ちゃん自身バカだったり? そうだったら嫌だな~、学がない人は嫌いなんだよね~」
呆れたと言わんばかりに優希は肩をすくめる。その仕草に亮子は無性に腹がたった。
まるで人の生き死にを軽く扱っているかの態度。別に誰が死のうと関係ないというどこまでも軽い軽い思考。
ブレードチルドレンとして数々の死を見つめてきた亮子には優希の態度は許せるものではなかった。
まるで人の生き死にを軽く扱っているかの態度。別に誰が死のうと関係ないというどこまでも軽い軽い思考。
ブレードチルドレンとして数々の死を見つめてきた亮子には優希の態度は許せるものではなかった。
「人の生命をそんなに軽く語るな……!」
「それを人殺しのお姉ちゃんがいいますか。あはっ、おもしろ~い。
というかさぁ、立場わかってる?」
「それを人殺しのお姉ちゃんがいいますか。あはっ、おもしろ~い。
というかさぁ、立場わかってる?」
優希はけらけらと笑いながら亮子の頭を踏みつける。その顔は亮子を同じ人間とは思っていないフシさえ見えた。
心底楽しく人を踏みにじっている。それがこの世の一番の快楽だと言わんばかりに優希は最高にいい笑顔だった。
心底楽しく人を踏みにじっている。それがこの世の一番の快楽だと言わんばかりに優希は最高にいい笑顔だった。
「あんた、狂ってるよ」
「褒め言葉ありがとう。人殺しに狂ってるって言われるとは思わなかったけどね」
「なんで、わかったんだよ? あたしが人を殺したって?」
「これでも優希は人を殺した人を数えきれないくらいに見ているからね、 隠そうとしたって無駄無駄。
というか血痕がその制服に少しついていたよ? 観察力がある人にはバレバレ、隠すんならもっと徹底した方がいいよ、先人からの忠告ってやつ。
おしゃべりはもういいでしょ? ここからはお楽しみタイム」
「褒め言葉ありがとう。人殺しに狂ってるって言われるとは思わなかったけどね」
「なんで、わかったんだよ? あたしが人を殺したって?」
「これでも優希は人を殺した人を数えきれないくらいに見ているからね、 隠そうとしたって無駄無駄。
というか血痕がその制服に少しついていたよ? 観察力がある人にはバレバレ、隠すんならもっと徹底した方がいいよ、先人からの忠告ってやつ。
おしゃべりはもういいでしょ? ここからはお楽しみタイム」
そう言って取り出したのは服のほつれを直す時によく使う一般的な裁縫セット。
さらにその中から縫い物をする時に仮止めなどに使うまち針を優希は手にとった。
そして、そのまち針を手の指の爪の先にねじ込んだ。
さらにその中から縫い物をする時に仮止めなどに使うまち針を優希は手にとった。
そして、そのまち針を手の指の爪の先にねじ込んだ。
「あ、ぎゃあああああぁあああ、おおおうああふぁふぁあああああああっっ!!!」
「あはっ、面白い悲鳴の上げ方~。そこまで喜んでくれて嬉しいな。
それにしても、惨めだね~、お姉ちゃんっ。あはははははははははっっっ」
「あはっ、面白い悲鳴の上げ方~。そこまで喜んでくれて嬉しいな。
それにしても、惨めだね~、お姉ちゃんっ。あはははははははははっっっ」
亮子の指先に声を挙げずにはいられない激痛が走る。
炎に当てられて焼けるような錯覚を覚えるくらいの激痛に亮子はその場でゴロゴロと転げ回る。
それを傍目に優希は声が枯れるほど大爆笑していた。
炎に当てられて焼けるような錯覚を覚えるくらいの激痛に亮子はその場でゴロゴロと転げ回る。
それを傍目に優希は声が枯れるほど大爆笑していた。
「あ~おかしい。優希を楽しませてくれたお礼にもう一本」
「げげががががぐぁががっっぎいっぎぎいぎぎあああうああああうあうあうあうあうあああああああああっ
「品がない悲鳴……そんなのだと愛しのこーすけくんに嫌われちゃうよ?」
「げげががががぐぁががっっぎいっぎぎいぎぎあああうああああうあうあうあうあうあああああああああっ
「品がない悲鳴……そんなのだと愛しのこーすけくんに嫌われちゃうよ?」
大爆笑から一転、優希は呆れたようにため息を吐き、転がりまわっている亮子の頭を強く踏みつけることで動きを止めた。
そしてもう一度爪の中にまち針を差し込んだ。
そしてもう一度爪の中にまち針を差し込んだ。
「う、あ……いっっっったいたたちあちいいっっったたい!!」
「はぁ、その年でお漏らしなんて……恥ずかしいと思わないの?」
「はぁ、その年でお漏らしなんて……恥ずかしいと思わないの?」
あまりの激痛に耐え切れず、亮子の股からじんわりと液体が流出する。その流れ出る液体は檜の板を濡らす。
亮子もしばらくしてそれに気づき、顔は熟れたりんごのように真っ赤に染まった。
それを見て優希はにやにやと失禁についてねちねちとなぶる。
亮子もしばらくしてそれに気づき、顔は熟れたりんごのように真っ赤に染まった。
それを見て優希はにやにやと失禁についてねちねちとなぶる。
「高校生なのに恥ずかしくないの? 汚いし臭い~、犬でもちゃんとするところを弁えるよ。躾から出直してきたら?」
その言葉に身体を悶えながら縛られたロープを引きちぎろうと必死に腕に力を込める。
だが、優希が再び何度も蹴りつけることで抵抗も無駄に終わった。
だが、優希が再び何度も蹴りつけることで抵抗も無駄に終わった。
「さてと、なぶるのはこのくらいにして。そういえば聞きたいことがあったんだよね~」
「あん、たに言うことなんて……」
「優希にはあるの。余計な口答えはしないでくれる」
「あ、ぎぎぎぎぎっっっいぎぎぎぎっぎぎぎあいあああああっっっ!?」
「あん、たに言うことなんて……」
「優希にはあるの。余計な口答えはしないでくれる」
「あ、ぎぎぎぎぎっっっいぎぎぎぎっぎぎぎあいあああああっっっ!?」
まち針をさらに亮子の手の指の爪の中に突き刺す。反論は無用、自分の言うことだけを聞いていればいい。
優希としては反論してくる方がいじめがいがあって嬉しいが、それを言ってしまえば亮子の反応が面白くなくなってしまう。
優希としては反論してくる方がいじめがいがあって嬉しいが、それを言ってしまえば亮子の反応が面白くなくなってしまう。
「あんな甘いことを平気で言えたお姉ちゃんがこの島でどうやって人を殺したか気になっちゃって」
「何で、そんなことをあんたに言わなくちゃ、ががががががうぇがあえらがせががあああああああっっ!?」
「二度は言わないよ、お姉ちゃんはどうやって人を殺したの?」
「何で、そんなことをあんたに言わなくちゃ、ががががががうぇがあえらがせががあああああああっっ!?」
「二度は言わないよ、お姉ちゃんはどうやって人を殺したの?」
優希は優しく、甘く亮子に問う。その言葉はカラメルのような甘さでもあり、その真逆の苦味でもあった。
言ってしまったらこの少女にどれほどの責め苦を味合わされるか。とてもではないが耐えきれそうにない。
それでも亮子はこの苦痛にもう耐えることが出来なかった。ここで耐えても先が見えない、そう諦めてしまったのだ。
言ってしまったらこの少女にどれほどの責め苦を味合わされるか。とてもではないが耐えきれそうにない。
それでも亮子はこの苦痛にもう耐えることが出来なかった。ここで耐えても先が見えない、そう諦めてしまったのだ。
「殺すつもりなんて、なかったんだ」
「へぇ……」
「あの娘が疲れてて水を渡して飲ませたら突然血を吐いて、」
「それで死んじゃったっと? 要は毒殺ってわけね」
「何の確認もしなかったあたしが悪いんだ……人を殺すのは……だ、め、なのに」
「ふぅん、そんなくっっっだらない理由だったんだ。あ~あ、聞いて損した」
「何だと……人一人を殺したことがそんなにくだらないのか!?」
「うん、だって人を殺したことぐらいでそこまで重く考えていたんだーってちょっと拍子抜けしちゃった」
「お前……!」
「へぇ……」
「あの娘が疲れてて水を渡して飲ませたら突然血を吐いて、」
「それで死んじゃったっと? 要は毒殺ってわけね」
「何の確認もしなかったあたしが悪いんだ……人を殺すのは……だ、め、なのに」
「ふぅん、そんなくっっっだらない理由だったんだ。あ~あ、聞いて損した」
「何だと……人一人を殺したことがそんなにくだらないのか!?」
「うん、だって人を殺したことぐらいでそこまで重く考えていたんだーってちょっと拍子抜けしちゃった」
「お前……!」
優希の人殺しに対するあまりの軽さに亮子は声を荒げてしまった。
生命はそんなに軽いものではない。ブレードチルドレンとして生きてきたその経験がそう物語っている。
リシアンサスのあの笑顔は紛れもなくこの島にいる知り合いの中でも特に仲が良い土見稟、ネリネにとってはかけがえのないものであったはずだ。
生命はそんなに軽いものではない。ブレードチルドレンとして生きてきたその経験がそう物語っている。
リシアンサスのあの笑顔は紛れもなくこの島にいる知り合いの中でも特に仲が良い土見稟、ネリネにとってはかけがえのないものであったはずだ。
(人を、■すのは間違っているんだ)
殺すくらいなら殺された方がましだ、この誓いは亮子の中にまだ微かに根づいていた。
だが、人としての当たり前の正義は優希の頭には当然入っていない。
だが、人としての当たり前の正義は優希の頭には当然入っていない。
「じゃあ逆に聞くけど何が駄目なの?」
「は……?」
「人を殺したらどうして駄目なの?」
「そんなの常識的に、」
「ここでの常識(ルール)は人を殺すことを許容しているよ、むしろ奨励している」
「は……?」
「人を殺したらどうして駄目なの?」
「そんなの常識的に、」
「ここでの常識(ルール)は人を殺すことを許容しているよ、むしろ奨励している」
その言葉に亮子は言葉をつまらせる。このゲーム上生き残るためには人を殺して最後の一人にならなければいけない。
生存本能からすると優希の言葉は正論だ。誰だってこんなどこともしれない島で死ぬことをよしとしないだろう。
亮子にもそれくらいはわかった。だけど。
生存本能からすると優希の言葉は正論だ。誰だってこんなどこともしれない島で死ぬことをよしとしないだろう。
亮子にもそれくらいはわかった。だけど。
「それでも、あたしは人を殺すくらいなら殺されたほうがましだ」
「それがお姉ちゃんの正義?」
「ああ……どんなことがあったとしても、あたしはこの意志を曲げない」
「それがお姉ちゃんの正義?」
「ああ……どんなことがあったとしても、あたしはこの意志を曲げない」
優希の目をしっかりと見据えながら亮子はその決意の言霊を放つ。
例えここで生命を散らしたとしてもその決意は遺していこう。
最後まで不屈の闘志を心に抱いて戦う、それが高町亮子として最後にできることだから。
例えここで生命を散らしたとしてもその決意は遺していこう。
最後まで不屈の闘志を心に抱いて戦う、それが高町亮子として最後にできることだから。
「そう、だとしたらお姉ちゃんは人として最低だね」
「お前のほうが最低だよ、人を殺すことを平気で許容している」
「まずその理念からしておかしいんだよ、お姉ちゃん。
お姉ちゃんの考えは誰かを傷つけずに生きるってことでしょ?」
「そうだよ、傷つけあうなんて間違っている」
「思考停止しているね、お姉ちゃん。ちょっとだけ話そうか。少しぐらいシリアスタイムってのも悪くないかな」
「お前のほうが最低だよ、人を殺すことを平気で許容している」
「まずその理念からしておかしいんだよ、お姉ちゃん。
お姉ちゃんの考えは誰かを傷つけずに生きるってことでしょ?」
「そうだよ、傷つけあうなんて間違っている」
「思考停止しているね、お姉ちゃん。ちょっとだけ話そうか。少しぐらいシリアスタイムってのも悪くないかな」
優希の目が今までのおちゃらけた雰囲気が抜け落ちた。まるで別人になったかのようだ。
そして亮子はその目に誰かが重なった気がした。その誰かは思い出せないがなぜかその瞳は覚えている。
そして亮子はその目に誰かが重なった気がした。その誰かは思い出せないがなぜかその瞳は覚えている。
「優希からするとお姉ちゃんの理念は白痴の境地だね、理解が出来ない」
「別に理解してもらおうなんて考えていない」
「生きるということは戦いで何かを奪い続けることなんだよ。生きるのに綺麗なままじゃいられない。
奪うことは人として当然の行為だよ」
「それは、お前の周りだけなんじゃないのか……あたしの周りにはそんな腐った性根の奴なんていない」
「別に理解してもらおうなんて考えていない」
「生きるということは戦いで何かを奪い続けることなんだよ。生きるのに綺麗なままじゃいられない。
奪うことは人として当然の行為だよ」
「それは、お前の周りだけなんじゃないのか……あたしの周りにはそんな腐った性根の奴なんていない」
亮子は一概に否定が出来なかった。ありふれた日常でテレビを見る時、誰々が誰々を殺したなどのニュースは毎日聞く定番のBGMのように流れている。
ブレードチルドレンにも呪いに耐え切れず人を殺めたなどと言われた者は何人もいた。
故に優希の言うことを声を大にして否定することなんて亮子には出来なかった。
ブレードチルドレンにも呪いに耐え切れず人を殺めたなどと言われた者は何人もいた。
故に優希の言うことを声を大にして否定することなんて亮子には出来なかった。
「違うよ、お姉ちゃんのところにも死んだほうがまし、生きている価値がない人なんて腐るほどいるはずだよ。
人は綺麗じゃない。むしろ逆かな、汚いよ。ドブ川に浮かぶゴミよりも、下水にいるネズミよりも、純度が高い汚さを持っている」
「それでも、人を殺すことは許されない!」
「何度も言うけど許されるんだよ、此処では。それが常識(ルール)なんだから」
人は綺麗じゃない。むしろ逆かな、汚いよ。ドブ川に浮かぶゴミよりも、下水にいるネズミよりも、純度が高い汚さを持っている」
「それでも、人を殺すことは許されない!」
「何度も言うけど許されるんだよ、此処では。それが常識(ルール)なんだから」
人殺しが推奨されているという常識(ルール)が優希の理論を確固たるものにする。
今、自分たちが挑んでいるのはバトル・ロワイアル。合法的に人殺しが許可されたゲーム。
つまるところ、殺すのを否定するのは生きることを否定するのと同意義なのだ。
今、自分たちが挑んでいるのはバトル・ロワイアル。合法的に人殺しが許可されたゲーム。
つまるところ、殺すのを否定するのは生きることを否定するのと同意義なのだ。
「常識(ルール)からして殺すことの否定は同時に生きることの否定……優希から視たお姉ちゃんは誰よりも狂っているね。
生命を重く見ていないという点ではだけど」
「それでも……!」
「それでも? 否定できるの? 否定すればするほどお姉ちゃんは生命を何とも思っていない狂人だって証明になるけどね。
優希にはお姉ちゃんの言うことは安全な温室でぬくぬく育った人の戯れ言としか思わない。
それにさ、今までそんな事を言ってた人は誰一人残らず死んじゃったもん、信用力はゼロだよ」
生命を重く見ていないという点ではだけど」
「それでも……!」
「それでも? 否定できるの? 否定すればするほどお姉ちゃんは生命を何とも思っていない狂人だって証明になるけどね。
優希にはお姉ちゃんの言うことは安全な温室でぬくぬく育った人の戯れ言としか思わない。
それにさ、今までそんな事を言ってた人は誰一人残らず死んじゃったもん、信用力はゼロだよ」
亮子は気づきもしなかったが、その時の優希の言葉には僅かながらの悲しみが含まれていた。
壊れた何かを懐かしむような感情。失った何かを羨むような感情。
だが、それらもすぐに閉じられて元の嗜虐的な口調に戻った。
壊れた何かを懐かしむような感情。失った何かを羨むような感情。
だが、それらもすぐに閉じられて元の嗜虐的な口調に戻った。
「シリアスタイムはここで終了。お楽しみタイムに戻るよっ」
少女特有の無邪気さが戻る。それはあのまち針で責め苦を亮子に強いたあの加虐的な笑みだ。
亮子はその笑みにひんやりとした寒気を感じた。これから行われるであろう行為の予想がついてしまったためだ。
そして、最悪なことに予想は当たってしまった。優希がデイバッグから取り出した道具を見てしまったために。
亮子はその笑みにひんやりとした寒気を感じた。これから行われるであろう行為の予想がついてしまったためだ。
そして、最悪なことに予想は当たってしまった。優希がデイバッグから取り出した道具を見てしまったために。
「や、やめろ! それだけは!」
「あーあ……こーすけくんはどう思うかな? 悲しむだろうなー。好きだった女の子が傷物で既に手垢が付いているなんて」
「ああああああああああああああああああああああああっっ!!! いやだいやだいやいやいやいいやいやいやいやいあいやいやだああっっっ!!」
「あーあ……こーすけくんはどう思うかな? 悲しむだろうなー。好きだった女の子が傷物で既に手垢が付いているなんて」
「ああああああああああああああああああああああああっっ!!! いやだいやだいやいやいやいいやいやいやいやいあいやいやだああっっっ!!」
亮子は叫び声をあげながらにじり寄る優希から逃げ出そうともがいてもがいてもがくがその逃亡はすぐに終わってしまった。
もう、逃げられない。入ってきた襖は優希によって塞がれて逃げ場はありはしない。
もう、逃げられない。入ってきた襖は優希によって塞がれて逃げ場はありはしない。
「だから品がないよ、お姉ちゃん。レディーならもっとおしとやかに、常に優雅たれってこと。わかる?」
「あ、あ……ああっ」
「幸いにも道具はいっぱいあるよっ。たっぷりと悦ばせてあげるから心配はいらないってば~。
さっ、始めようか」
「あ、あ……ああっ」
「幸いにも道具はいっぱいあるよっ。たっぷりと悦ばせてあげるから心配はいらないってば~。
さっ、始めようか」
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