まったく、今回ばかりは自分という人間にほとほと愛想が尽きるです。
なんでよりにもよって、こんなことになってしまったのでしょう?
――――ハルキを、好きになるなんて。
なんでよりにもよって、こんなことになってしまったのでしょう?
――――ハルキを、好きになるなんて。
「夕映、このページのこことこことここのベタとトーン頼む!」
「わかりました、こっちはどうします?」
「えっとそれは・・・こことここの修正とベタで!」
「了解です」
私の返事を聞きもしないで、ハルキはさっさと次の仕事へ取り掛かっている。
ちょっとむっとしないでもないけれど、ぶっちゃけ滅茶苦茶切羽詰ってるので何も言わないでおいてあげることにする。
私は手元に置かれた何枚かの同人誌のページに眼を落とし、頼まれた箇所の仕上げを手際よく――――自分で言うのもなんだが、何度も手伝わされたせいで大分上達してしまった――――片付けていく。
いつもならのどかもここにいてハルキを手伝っている、というか手伝わされているのだが今日はいない。
私が頼んだのだ、『今日はハルキと二人きりにさせてほしい』と。
なぜなら――――今日、私は、ハルキに告白しようと思っていたから。
のどかになら聞かれていてもいい、むしろ一緒にいてくれたほうが安心できると思っていた。
だから、のどかも一緒にいるときに告白しようとした、最初は。
けれど、どうしても恥ずかしくてできなかった。
心の底から信頼している友人にさえ、自分の想いを聞かれるのが怖かった。
身勝手だな、そう心の底から思った。
だけど、それでものどかは、私のわがままを聞いてくれて、「頑張ってね」と励ましてくれた。
その優しさが凄く凄く嬉しくて、ちょっと泣いてしまった。
あののどかの優しさを無駄にしないためにも、絶対に言わなければ。
・・・そう思っているのだが。
ちょっとむっとしないでもないけれど、ぶっちゃけ滅茶苦茶切羽詰ってるので何も言わないでおいてあげることにする。
私は手元に置かれた何枚かの同人誌のページに眼を落とし、頼まれた箇所の仕上げを手際よく――――自分で言うのもなんだが、何度も手伝わされたせいで大分上達してしまった――――片付けていく。
いつもならのどかもここにいてハルキを手伝っている、というか手伝わされているのだが今日はいない。
私が頼んだのだ、『今日はハルキと二人きりにさせてほしい』と。
なぜなら――――今日、私は、ハルキに告白しようと思っていたから。
のどかになら聞かれていてもいい、むしろ一緒にいてくれたほうが安心できると思っていた。
だから、のどかも一緒にいるときに告白しようとした、最初は。
けれど、どうしても恥ずかしくてできなかった。
心の底から信頼している友人にさえ、自分の想いを聞かれるのが怖かった。
身勝手だな、そう心の底から思った。
だけど、それでものどかは、私のわがままを聞いてくれて、「頑張ってね」と励ましてくれた。
その優しさが凄く凄く嬉しくて、ちょっと泣いてしまった。
あののどかの優しさを無駄にしないためにも、絶対に言わなければ。
・・・そう思っているのだが。
「ハルキ、次の仕事は?」
「えっと、これとこれとこれのゴムかけとあとこれのこことここにトーン!」
「わかりました」
・・・言う暇がない。
この修羅場の間にこっそり暴露してしまおうと思っていたのだが、これではそんな余裕もなさそうだ。
・・・ずるいとか言わないでください、本当に恥ずかしいんですから。
誰にともなく言い訳をしつつ、与えられた(というか押し付けられた?)仕事を黙々とこなし、さぁ次へ。
そう思った瞬間、突然伸びたハルキの手が、私の手元から原稿をひったくった。
この修羅場の間にこっそり暴露してしまおうと思っていたのだが、これではそんな余裕もなさそうだ。
・・・ずるいとか言わないでください、本当に恥ずかしいんですから。
誰にともなく言い訳をしつつ、与えられた(というか押し付けられた?)仕事を黙々とこなし、さぁ次へ。
そう思った瞬間、突然伸びたハルキの手が、私の手元から原稿をひったくった。
「・・・何をするですか、ハルキ」
人に頼んでおいてそれを突然横合いから奪い取るなんて失礼にもほどがある。
さすがにむっとした表情でハルキを睨むと、ハルキは妙にあたふたしながら私の眼から原稿を隠そうとしだした。
さすがにむっとした表情でハルキを睨むと、ハルキは妙にあたふたしながら私の眼から原稿を隠そうとしだした。
「い、いや実はこれまだ手ぇ加えなきゃいけないとこがあってさ、仕上げしてもらってからじゃ間に合わないし悪いかなーって・・・あ、アハハ」
しどろもどろになりながらの下手な言い訳。
普段のハルキならひょいひょいとごまかすようなことでこれだけ慌てるということは・・・
普段のハルキならひょいひょいとごまかすようなことでこれだけ慌てるということは・・・
「――――エッチなシーンなわけですか」
「うっ」
想定の範囲内、というか想像通りの反応を返してくれたハルキに思わず溜息。
いや普通ならそれで取り返して当たり前だろうと思うかもしれないが、この男本気で切羽詰ると私やのどかに普通にそういうシーンの原稿を押し付けてきた前科がある。
なので私やのどかも不本意ながらそういう内容には多少の免疫ができてしまった。
・・・・・・本当に不本意なことだ、我ながら。
いや普通ならそれで取り返して当たり前だろうと思うかもしれないが、この男本気で切羽詰ると私やのどかに普通にそういうシーンの原稿を押し付けてきた前科がある。
なので私やのどかも不本意ながらそういう内容には多少の免疫ができてしまった。
・・・・・・本当に不本意なことだ、我ながら。
「いまさら隠すようなことでもないでしょう。 今までだって何度も何度もそういうシーンの原稿を押し付けてきたくせに」
「うぐっ」
ばつの悪そうな顔をして頭を下げるハルキ。
やれやれ、と首を振りつつ、良い機会なのでまとめて愚痴をぶつけさせてもらおう。
やれやれ、と首を振りつつ、良い機会なのでまとめて愚痴をぶつけさせてもらおう。
「大体、いつもギリギリになるとわかっていながらどうしてもっと早く準備できないのですか? 勉強や図書館探検部としての活動の時間を除いても十分時間はあったはずですが」
そうだ、ハルキはいつもいつもこうなのだ。
自分のことは後回しで、他人のことにばかり気を配って。
自分のことは後回しで、他人のことにばかり気を配って。
「その原稿の件にしてもそうです、私やのどかに見られたくないのであれば自分だけで書くなり最初に別なところに置いておくなりすればいいのです。 目の前のことにばかり気とられるからそうなるです」
目の前で誰かが悩んでいたりすれば、おせっかいだとわかっていても口を出さずにはいられなくて。
「そのくせ他人のことは先々までお見通しみたいな口ぶりで励ましたりするのですから、本当にしょうがないです」
その人が踏み出すことを迷っている一歩を踏み出せるよう、たしかな言葉をかけてくれて。
「――――まったく、こんな男性を好きになった自分が不思議でしょうがないです」
いつの間にか、そんなハルキが好きになってしまっていた。
ここまで一息で言い終えて、ちらっとハルキのほうを見ると、ハルキはなにやら大口を開けてなんというか・・・間抜け面としか言いようがない顔をしている。
人の愚痴を聞いてなぜそんな顔をするのかわかりませんが・・・・・・まぁいいでしょう、言いたいことは言ってしまいましたし、続きを手伝ってあげます。
そんなことをいいながら私がまだぼーっとしているハルキの手元から原稿を奪い取り、作業を始めようとした、そのとき。
ここまで一息で言い終えて、ちらっとハルキのほうを見ると、ハルキはなにやら大口を開けてなんというか・・・間抜け面としか言いようがない顔をしている。
人の愚痴を聞いてなぜそんな顔をするのかわかりませんが・・・・・・まぁいいでしょう、言いたいことは言ってしまいましたし、続きを手伝ってあげます。
そんなことをいいながら私がまだぼーっとしているハルキの手元から原稿を奪い取り、作業を始めようとした、そのとき。
「・・・ゆ、夕映? えーっと、今言ったのって、本気?」
「・・・・・・・・・は?」
一体何を言い出すのだろう、ハルキは。
愚痴を聞いて本気かどうかなどと・・・わけがわかりません。
愚痴を聞いて本気かどうかなどと・・・わけがわかりません。
「愚痴に本気も何もないでしょう、アホですか貴方は」
「い、いやそこじゃなくて・・・あのその、えーっと・・・・・」
そこじゃない?
じゃあどこのことだというのだろう。
自分の発言におかしいところはなかったか、今一度思い返してみる。
じゃあどこのことだというのだろう。
自分の発言におかしいところはなかったか、今一度思い返してみる。
「い、いや、聞き間違いだったりしたらホント悪いんだけど、一応聞かせてくれ」
たしかまず、ハルキの手際の悪さについてしゃべって。
「夕映が言ったことは全部夕映の言うとおりだし俺が悪い、ごめん」
まったくその通りです。
ええと、その次が確か目の前のことしか見てないとこき下ろして。
ええと、その次が確か目の前のことしか見てないとこき下ろして。
「でも、でもだ。 なんつーか、その・・・最後にお前――――」
最後?
最後って、何でもかんでもわかったようなことを言うな、ということでしょうか。
いえ違います、確か私は、最後にもうひとつ・・・・・・
最後って、何でもかんでもわかったようなことを言うな、ということでしょうか。
いえ違います、確か私は、最後にもうひとつ・・・・・・
「――――お、俺のことが、好き、って・・・・・・」
ああそうそう、なぜハルキを好きになったりしたのかわからないと・・・・・・あああああああああ?!?!?!
「あ、あれは、ち、違っ! わ、私は、別にハルキが好きなんか、じゃ・・・・・・」
違わない、好きなのに。
なのに、やっぱり素直に言葉にできない。
自分の馬鹿さ加減が恥ずかしくて、顔が真っ赤なのが自分でもわかるほど熱くて。
この期に及んで素直になれない自分が嫌いで、ぼろぼろ涙が出てくるくらい悲しくて。
もう、あとは泣くだけ。
ハルキが途方にくれているのも構わずに、ひたすら泣いた。
もっと、ちゃんと『好き』って言いたかったのに。
もっと、素直になりたかったのに。
もっと――――そばにいられるようになりたかったのに。
自分がすごく、すごくみすぼらしく感じられて、泣くことしかできなかった。
どれくらい泣いたのだろう、泣きすぎて涙が出なくなり始めた頃。
なのに、やっぱり素直に言葉にできない。
自分の馬鹿さ加減が恥ずかしくて、顔が真っ赤なのが自分でもわかるほど熱くて。
この期に及んで素直になれない自分が嫌いで、ぼろぼろ涙が出てくるくらい悲しくて。
もう、あとは泣くだけ。
ハルキが途方にくれているのも構わずに、ひたすら泣いた。
もっと、ちゃんと『好き』って言いたかったのに。
もっと、素直になりたかったのに。
もっと――――そばにいられるようになりたかったのに。
自分がすごく、すごくみすぼらしく感じられて、泣くことしかできなかった。
どれくらい泣いたのだろう、泣きすぎて涙が出なくなり始めた頃。
「――――きゃあっ!?」
いきなり後ろから、ハルキに抱き上げられた。
抗議する間もなく、あぐらをかいたハルキの膝に座らされる。
そのままぎゅっ、と抱きしめられて、一瞬ぼーっとしてしまう。
・・・一瞬です、本当に一瞬。
すぐに我に返って首を捻じ曲げ――――きつく抱きしめられているので体が動かせない――――キッとハルキを睨みつける。
抗議する間もなく、あぐらをかいたハルキの膝に座らされる。
そのままぎゅっ、と抱きしめられて、一瞬ぼーっとしてしまう。
・・・一瞬です、本当に一瞬。
すぐに我に返って首を捻じ曲げ――――きつく抱きしめられているので体が動かせない――――キッとハルキを睨みつける。
「い、いきなり何するですかハルキ! 早く離すです!」
「んなこと言うなって・・・これでも精一杯の愛情表現なんだからさぁ」
「んなっ・・・・・・・?!」
あ、あああ愛情表現!?
いきなり何を言い出すですかこのバカハルキ!
いきなり何を言い出すですかこのバカハルキ!
「いやだってさ、目の前であんなふうに泣かれたら何か気の利いたこと言わなきゃとか思ったんだけど・・・何も出てこなくてさぁ。 口で言えないなら態度で示すのが一番早いかなーと思って、こうしてるわけ」
そ・・・そんな同情なんて、いらないです。
同情なんかで慰められるくらいなら、いっそ『なんとも思ってない』ってはっきり言ってくれたほうが・・・
口ごもりながら、ついそんな憎まれ口を叩いてしまった。
そうしたら。
同情なんかで慰められるくらいなら、いっそ『なんとも思ってない』ってはっきり言ってくれたほうが・・・
口ごもりながら、ついそんな憎まれ口を叩いてしまった。
そうしたら。
ごつっ
「――――あうっ」
いきなり後頭部をぶたれた。
多分手加減はしたのだと思うが、それでも大分痛い。
不意の一撃に私がひるむのを見計らって、ハルキが答える。
多分手加減はしたのだと思うが、それでも大分痛い。
不意の一撃に私がひるむのを見計らって、ハルキが答える。
「・・・馬鹿、そんなんじゃないって。 夕映が強情なのはとっくの昔っから知ってんだから、同情なんて意味ないのもわかってる。 だから、これは、そんなんじゃなくて、本当の俺の気持ち。 どぅーゆーあんだすたん?」
「いぇすあいどぅー・・・なんていうとでも思ったですか?」
「いや全然」
…コイツは。
「でもな夕映、俺はお前が俺のこと好きだって言ってくれて、ホント嬉しいんだぜ?」
むすっとうつむいた私の頭を軽く撫でながら、ハルキが言う。
その声のお気楽さが癪に障って、また、気持ちとは反対なことを言ってしまう。
その声のお気楽さが癪に障って、また、気持ちとは反対なことを言ってしまう。
「嘘つくなです。 そもそもハルキが私に好かれて嬉しい理由がありません。 私は、発育が極端に悪いですし、皮肉ばかりでちっとも可愛くなんてありませんし、それに・・・・・・」
「あーはいはい、ストップストップ。 ネガティブなのもほどほどにしようぜー、夕映」
「・・・・・・うるさいですね、ほっといてください。 全部事実なんですから」
どうしてこんな言い方しかできないのだろう、本当に。
素直に嬉しいといえばいいのに。
我ながら不思議で、馬鹿らしくて仕方がない。
そんな私にあきれたのか、ハルキは「やれやれ」と溜息をついている。
そう思った、瞬間。
素直に嬉しいといえばいいのに。
我ながら不思議で、馬鹿らしくて仕方がない。
そんな私にあきれたのか、ハルキは「やれやれ」と溜息をついている。
そう思った、瞬間。
「――――じゃあ、証拠見せれば信じてもらえるかな」
「――――は? ・・・んぐっ!? むぅ、うんっ・・・・・・・!」
いきなり顔をハルキのほうに向けられ、口をふさがれる。
突然のことに頭がぼーっとして、ハルキのなすがままになる。
真っ白だった頭が段々もやがかかったような感じになって、何も考えられなくなる。
突然のことに頭がぼーっとして、ハルキのなすがままになる。
真っ白だった頭が段々もやがかかったような感じになって、何も考えられなくなる。
「・・・ぷは。 やわらかいな、夕映」
「う、あうう・・・・・・」
何もいえない。
いきなり何をするんだこのスケベ、みたいな憎まれ口も、キスしてくれて嬉しい、みたいな素直な気持ちも。
ただ、目の前で優しく笑うハルキが愛おしくて、それしか考えられなかった。
自分でもどれくらいハルキの顔を見つめ続けていたかわからない。
その眺めていた笑顔が、ふといたずらっぽく崩された瞬間。
私は――――床に押し倒されていた。
いきなり何をするんだこのスケベ、みたいな憎まれ口も、キスしてくれて嬉しい、みたいな素直な気持ちも。
ただ、目の前で優しく笑うハルキが愛おしくて、それしか考えられなかった。
自分でもどれくらいハルキの顔を見つめ続けていたかわからない。
その眺めていた笑顔が、ふといたずらっぽく崩された瞬間。
私は――――床に押し倒されていた。
「・・・・・・は、ハルキ? い、一体何を・・・・・・」
「何って、ナニを」
――――――――ハイィィィィィ?!
な、ナニってまさかもしかして、ほ、ほほほ本番!?
む、むむむ無理、絶対無理!
な、ナニってまさかもしかして、ほ、ほほほ本番!?
む、むむむ無理、絶対無理!
「ちょっ、ちょちょちょっと待ってください! ま、まだ心の準備が・・・・・・っ」
「大丈夫、優しくするからさ」
「そういう問題じゃな・・・・んむぅぅぅ」
また口をふさがれた私は、何も抵抗できなくなる。
その間にハルキは私の服に手を伸ばし、着々と準備を進めている。
最初こそ、やめて、恥ずかしい、嫌、なんて言葉が切れ切れに浮かんでいた。
けれど、そんな拒絶の言葉も浮かばないくらいふわふわした気持ちになっていって、頭の中に浮かんだ考えはたったひとつだけ。
――――――――大好き、ハルキ、と。
ただ、それだけしか考えられないまま、私はゆっくりと眼を閉じた。
その間にハルキは私の服に手を伸ばし、着々と準備を進めている。
最初こそ、やめて、恥ずかしい、嫌、なんて言葉が切れ切れに浮かんでいた。
けれど、そんな拒絶の言葉も浮かばないくらいふわふわした気持ちになっていって、頭の中に浮かんだ考えはたったひとつだけ。
――――――――大好き、ハルキ、と。
ただ、それだけしか考えられないまま、私はゆっくりと眼を閉じた。
・・・え? その後どうなったのか話せ?
何馬鹿なこと言ってるですか、話せる訳ないでしょう。
――――ただ、ひとつだけ言うならば。
ハルキが私を本当に好きでいてくれているのが、よくわかったと、それだけは、言っておきましょう。
あとでハルキに機嫌を損ねられても厄介ですから。
・・・まぁ、それはそれで、幸せですが。
何馬鹿なこと言ってるですか、話せる訳ないでしょう。
――――ただ、ひとつだけ言うならば。
ハルキが私を本当に好きでいてくれているのが、よくわかったと、それだけは、言っておきましょう。
あとでハルキに機嫌を損ねられても厄介ですから。
・・・まぁ、それはそれで、幸せですが。