「おい亜貴、お前の背中の傷見せてみろよ」
「うわ、スゲェな・・・なんでそうなったんだ?」
「大変だよな~、ま、頑張れよ」
・・・またか。
ボクの背中の傷のことなんて、サッカー部の中やったらとうに知れ渡っとるはずやのに。
それでも、こうやってボクの傷を見たがる奴がなくならへんのは・・・
やっぱ、他のみんなとはちゃうからなんやろうな。
部活の帰り道、ボクはそんなことを考えながら、寮への帰り道を歩いとった。
ボクの背中の傷のことなんて、サッカー部の中やったらとうに知れ渡っとるはずやのに。
それでも、こうやってボクの傷を見たがる奴がなくならへんのは・・・
やっぱ、他のみんなとはちゃうからなんやろうな。
部活の帰り道、ボクはそんなことを考えながら、寮への帰り道を歩いとった。
「・・・・・・しんど」
はぁ~あ、とでっかい溜息をついて、思わず一言。
あかんなぁ、こういうこと口に出したら余計気が滅入るだけやってわかっとんねんけど。
でもやっぱしんどいもんはしんどいし、自分でなんとかできる分は自分で気持ちの整理してまわんと。
そう思て、いっぺん立ち止まって深呼吸。
吸ってー、吐いてー、吸ってー、吐いてー。
・・・うん、とりあえず大丈夫。
ちょっとしんどいことがあったとき、ボクはこんな風に帰り道の人気のないところでゆっくり深呼吸する。
そうすると気分が落ち着くし、胸のもやもやも吐いた息と一緒にちょっとだけどっかに飛んでいってまう気がする。
・・・気がするだけで、消えてまうわけやないんやけどな。
でも、それでも随分気が楽にはなるから、絶対に欠かさずやるようにしてる。
え、何でかって?
何でも何もそんなん・・・・・・あ、ちょうど部屋着いたわ、すぐわかるよ。
あかんなぁ、こういうこと口に出したら余計気が滅入るだけやってわかっとんねんけど。
でもやっぱしんどいもんはしんどいし、自分でなんとかできる分は自分で気持ちの整理してまわんと。
そう思て、いっぺん立ち止まって深呼吸。
吸ってー、吐いてー、吸ってー、吐いてー。
・・・うん、とりあえず大丈夫。
ちょっとしんどいことがあったとき、ボクはこんな風に帰り道の人気のないところでゆっくり深呼吸する。
そうすると気分が落ち着くし、胸のもやもやも吐いた息と一緒にちょっとだけどっかに飛んでいってまう気がする。
・・・気がするだけで、消えてまうわけやないんやけどな。
でも、それでも随分気が楽にはなるから、絶対に欠かさずやるようにしてる。
え、何でかって?
何でも何もそんなん・・・・・・あ、ちょうど部屋着いたわ、すぐわかるよ。
「ただいま~」
「おっかえりー! ねぇねぇ亜貴、今日の晩御飯、私すっごい頑張ったんだよー! ほら、早く食べて食べて!」
・・・な?
こんな無邪気な笑顔見せられたら、疲れたような顔なんてしとれへん。
それに、そんな顔しとってまき絵に心配かけてもうたら、なんか、情けないやん?
やから、辛くなったら深呼吸、ってワケ。
こんな無邪気な笑顔見せられたら、疲れたような顔なんてしとれへん。
それに、そんな顔しとってまき絵に心配かけてもうたら、なんか、情けないやん?
やから、辛くなったら深呼吸、ってワケ。
「もー亜貴ー! 何やってるの~、早く早く!」
「あああ、ごめんごめん。 すぐ着替えるわ」
おとと、急がな。
せやないとまたまき絵が機嫌悪うして拗ねてまう。
靴をぱぱっと脱いで並べて、自分の部屋に入る。
まき絵、いっぺん拗ねたらなかなか機嫌直してくれへんからなぁ。
それでご機嫌取りにいっつもお菓子とか買って・・・アレ?
もしかしてボク、上手いこと騙されてる?
せやないとまたまき絵が機嫌悪うして拗ねてまう。
靴をぱぱっと脱いで並べて、自分の部屋に入る。
まき絵、いっぺん拗ねたらなかなか機嫌直してくれへんからなぁ。
それでご機嫌取りにいっつもお菓子とか買って・・・アレ?
もしかしてボク、上手いこと騙されてる?
「亜~貴~~~っ! 早く食べてよ、冷めちゃうよ~!」
「わっ、わかったわかった、今行くから!」
あかんあかん、そんなこと言うてる場合ちゃうわ。
えっと、服はこっち、カバンはあっち、あ、宿題だけ先出しとかな・・・・・・
えっと、服はこっち、カバンはあっち、あ、宿題だけ先出しとかな・・・・・・
「・・・・・・あれ? なんやコレ」
今日出された英語の課題プリントを取り出したときについてきた、ノートの切れ端。
おかしいなぁ、今日はノート忘れたりしてへんかったと思うけど・・・・・・
いつこんなんカバンに入れたんやろ。
首をかしげながら、何の気なしにその切れ端を開く。
そして、そこに書かれた文字が目に映った瞬間。
おかしいなぁ、今日はノート忘れたりしてへんかったと思うけど・・・・・・
いつこんなんカバンに入れたんやろ。
首をかしげながら、何の気なしにその切れ端を開く。
そして、そこに書かれた文字が目に映った瞬間。
「――――――――――――ッ!」
頭の中が一気に真っ白になって、手がガタガタ震えだした。
呼吸がどんどん速くなって、でも血の気は逆にどんどん引いていく。
ボクがカバンにその切れ端を入れた覚えがないのも当たり前や。
だって、そこには――――
呼吸がどんどん速くなって、でも血の気は逆にどんどん引いていく。
ボクがカバンにその切れ端を入れた覚えがないのも当たり前や。
だって、そこには――――
『背中の傷とかキモいんだよ ろくに運動もできないくせにサッカー部来んな』
悪意のこもった走り書きで、そう書いてあったんやから。
自分で入れたんやったら苦労せぇへんかったやろなぁ。
でも、ボクが入れたわけやない。
サッカー部の、部員の、誰か。
ボクを気に食わへん誰かが、これをこっそりボクのカバンに入れたんやと思う。
似たようなことなら何度も言われてきたし、こんな嫌がらせかてもう慣れてまうくらいされてきた。
やけど、やけどやっぱり、キツイ、よね。
自分で入れたんやったら苦労せぇへんかったやろなぁ。
でも、ボクが入れたわけやない。
サッカー部の、部員の、誰か。
ボクを気に食わへん誰かが、これをこっそりボクのカバンに入れたんやと思う。
似たようなことなら何度も言われてきたし、こんな嫌がらせかてもう慣れてまうくらいされてきた。
やけど、やけどやっぱり、キツイ、よね。
「亜貴~、どうかしたの~?」
あ、あかん、まき絵にコレ見られたらあかん。
そう思ってそのメモを隠そうとしても、身体が上手く動いてくれへん。
え、何で動かへんの?
こんなんいっつもやん、気にするようなことちゃうやん。
早く、早く――――――――
そう思ってそのメモを隠そうとしても、身体が上手く動いてくれへん。
え、何で動かへんの?
こんなんいっつもやん、気にするようなことちゃうやん。
早く、早く――――――――
「・・・亜貴? ホントどうしたの・・・って、それなーに?」
「あ、ち、ちがっ・・・・・・・」
立ち直るより前に部屋のドアが開いて、まき絵がひょっり顔を覗かせた。
慌ててメモを隠そうとしたんやけど、まき絵の反射神経にかなうはずなくて、取られた。
そのメモを読んだまき絵は、まず一気に顔が青ざめて、そんで段々顔が赤くなっていって。
慌ててメモを隠そうとしたんやけど、まき絵の反射神経にかなうはずなくて、取られた。
そのメモを読んだまき絵は、まず一気に顔が青ざめて、そんで段々顔が赤くなっていって。
「――――何これっ!? 酷すぎるよこんなの!」
鼓膜が破けそうなくらいの大声で、怒鳴った。
「ま、まき絵、落ち着いて・・・・・・」
「落ち着いてなんてられないよ! 亜貴が怪我のことどれだけ気にしてるかなんて、バカな私でもわかることなのにこんなの・・・もー怒った! 私が犯人見つけて絶対亜貴に『ごめんなさい』って言わせてやるんだから!」
頭から本当に湯気が出てきそうな勢いのまま、まき絵は部屋を飛び出そうとした。
もちろん、そのままほっとけるわけなんてなくて。
もちろん、そのままほっとけるわけなんてなくて。
「ま、待って待ってまき絵! 大丈夫、大丈夫やから!」
「大丈夫なわけないでしょ?! 亜貴、こんなこと言われて悔しくないはずなんてないもん! どうしてそんな嘘つくの?!」
思わずまき絵の服を掴んで止めたとこまではよかったんやけど、多分頭に血が昇ってもうとるまき絵は、逆にボクに詰め寄ってきた。
そうやろうなぁ、普通はこんな風に、怒るんやろうな。
でもな、ボクはあんま怒る気になれへんねん。
やって――――――――
そうやろうなぁ、普通はこんな風に、怒るんやろうな。
でもな、ボクはあんま怒る気になれへんねん。
やって――――――――
「・・・やって、そんなこと言う奴らより、こんな風に心配してくれるまき絵のほうが、ボクは大事やもん」
「・・・・・えっ?」
きょとん、とした顔で見つめてくるまき絵にちょっと笑って、ちゃんと説明する。
「ホンマはな、そのメモみたいなこと言われて、ボクも正直辛いねん。 けどな、それよりも今みたいにボクのこと心配してくれるまき絵とか裕奈とかアキラとか、そういうみんなのほうが大事やねん。 やから、ボクはそんなメモどうってことないから、危ないことせんといて。 な、まき絵?」
「・・・・・・うん」
こくん、とうなずくまき絵。
よかった、ちゃんとわかってくれたんや。
ボクがほっと一安心した、そのとき。
よかった、ちゃんとわかってくれたんや。
ボクがほっと一安心した、そのとき。
ぎゅうっ・・・・・・・!
突然、まき絵が、ボクを、思いっきり、抱きしめた。
「――――ま、ままままままき絵っ?! ど、どどどどないしたん?!」
思わずテンパってもーて、全然呂律回ってへん。
でも、突然女の子に抱きつかれたらこうなるやろ?!
とはゆーても無理に引き剥がすこともできひんし、おろおろしとったら。
でも、突然女の子に抱きつかれたらこうなるやろ?!
とはゆーても無理に引き剥がすこともできひんし、おろおろしとったら。
「・・・でも、でもね。 亜貴が辛いときは、私がこうして慰めてあげるから、そばにいてあげるから。 ・・・だから、もっと、頼ってほしいよ、甘えてほしいよ、亜貴――――」
静かに、優しい声で、しっかりと、囁く声。
嬉しいのとか恥ずかしいのとか色々ごっちゃになって、気の利いたことが思い浮かばんかった。
でも、これだけは、ちゃんと言えた。
嬉しいのとか恥ずかしいのとか色々ごっちゃになって、気の利いたことが思い浮かばんかった。
でも、これだけは、ちゃんと言えた。
「・・・ありがとな、まき絵」
どんなに辛くても、信じてくれる人がいる。
どんなに悲しくても、励ましてくれる人がいる。
どんなに苦しくても、そばにいてくれる人がいる。
それがわかってるから、ボクは、前を見て歩いていけるんやと思う。
どんなに悲しくても、励ましてくれる人がいる。
どんなに苦しくても、そばにいてくれる人がいる。
それがわかってるから、ボクは、前を見て歩いていけるんやと思う。