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アル×ナギ♀

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匿名ユーザー

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ざくっ、つるっ、ごん、どかっ、ごろごろ。

「・・・・・またやっちゃった・・・」

これで何度目だろう、自分でも溜息が出る。
やることといったら、皮をむいて、切って、あとは煮込むだけなのに。
たったそれだけのこともできないのかな。
・・・アイツに、食べてもらいたいのに。



「・・・おっと、もうこんな時間ですか。 そろそろ夕飯の支度をしなくてはね」

読んでいた分厚い書物を閉じ、台所へと向かう青年。
随分にこやかな表情ではあるが、これが彼の普段の表情であり、この笑顔の裏で色々とんでもないことを考えたりもしちゃってる結構な策士。
それが彼、サウザンドマスターの従者、アルビレオ・イマである。
戦闘時においてはナギの補助を努める彼だが、普段は主に家事全般を受け持っている。
ガトーは家事に興味を示そうとしないし、タカミチはそのガトーの修行についていくのに精一杯。
詠春も家事が出来ないではないが進んでやるタイプではない。
そしてナギは絶望的なまでの不器用。
ぶっちゃけ包丁なんて持たれたらいつ怪我するかヒヤヒヤもので見ちゃいられない。
ということで、アルが料理をはじめ掃除洗濯片付け諸々を一手に引き受けているわけだ。

「さて、今日は何を作りましょうか。 肉じゃがも久々ですしハンバーグという手も・・・」

・・・メニューが妙に所帯じみているのはナギの好みのせいである。
他にも色々と献立を考えながら、アルは台所へ入った。
そして、ありえない光景を見た。

「・・・・・・・・・?」

ナギが台所に立っている。
あの、じゃがいもの皮をむこうとしたら包丁をじゃがいもに突き刺すようなナギが!
いやそんなはずはない、きっとこれは夢、もしくはさっきまで本を読み通しだった目の疲れによる錯覚に違いない。
というわけで、はいバックバック。
目をこすって、深呼吸をしてもう一度。
アルは台所へ入った。

「・・・・・・・・・」

「げ!? あ、アル?!」

・・・なんてことだ。
再び台所に入りなおしたアルのささやかな期待は見事に裏切られた。
そう、あちこち滅茶苦茶になった(食器類が割れていないのがせめてもの救いか)台所の真ん中で包丁を握っているのは、間違いなくナギだった。

「・・・えー、一応お聞きしておきますが・・・あなたは何をしているんでしょうかね、ナギ?」

「な、何って・・・台所でエプロン着て包丁持ってすることっつったら料理しかないだろ!」

いや普通はそうなんですけどね、そんなことを小声でぼやきながらアルは台所の奥――――ナギの近くへと進む。
改めて思う、酷い有様だ。
“元”材料であったろう野菜や肉のなれのはてやら調味料やらが散乱してもう素晴らしいカオスを形成している。
慣れないことはさせるものではありませんね、心の中で溜息をつきつつ、アルは聞いた。

「で、何を作ろうとしてたんです?」

大方大それたものを作ろうとして失敗したんだろう、そう思っていた。
だが。

「・・・・・・・カレー」

「は?」

「カレーだよカレー! 皮むいて切って煮込むだけのカレーだよっ!」

顔を真っ赤にして、涙目になって怒るナギ。
アルはといえば、呆気にとられて目をぱちくり。
ナギが不器用なのはわかっているつもりだったが、どうやらナギのそれは想像を絶するものだったようだ。
よくよく周囲を見渡せば、なるほど、転がっているのはじゃがいもにんじんたまねぎお肉、そしておそらくルーの残骸とカレーの材料ばかりだ。

「・・・なるほど、カレーですか。 しかし、なんでまた急にカレーを作ろうなどと思い立ったんです?」

無理にフォローしようとするとボロが出るのはわかりきっているので軽く流し、最大の疑問を聞いてみる。
実際、ナギも自分が(一般的な)女として致命的なまでに――――料理裁縫洗濯掃除整理整頓全部ダメ――――不器用なことはよくよく理解していたはずだ。
それなのになんでまた無理に料理など始めたのか、付き合いの長いアルにも理解しかねることだった。
するとナギは、エプロンの端をぎゅっと握り締め、アルから顔を背けながら、頬を赤くして少し間を置いて、こう答えた。

「――――お前に、食べてもらいたかったから」

「・・・・・・え?」

予想外の答えにアルが面喰らっていると、ナギはぱっとアルに背を向け、ひときわ明るい声で続けた。

「ほら、私って不器用じゃんか。 だからずっとアルに料理とか任せっぱなしで――――たまには私がアルのために料理して、喜んでもらおうとか思ったんだけどさ・・・あはは、やっぱダメだった」

声は明るく、あっけらかんとしている――――だが、らしくない。
無理に明るい顔をして自分をごまかすなど。
やれやれ、と首を振り、そっとナギの背中に近づき、そして――――抱きしめた。

「・・・ひゃっ?! あ、アル、何す・・・・・・」

「まったく・・・あなたは本当に不器用な方ですね。 私はそんな気遣いをしていただかなくとも、あなたのそばにいられるだけで幸せだというのに」

本心からの言葉。
だが普段が普段なせいだろう、アルの台詞にナギはうつむいて口を尖らせた。

「ば、バカっ! そんなこと言ってごまかそうたってそうは行かないんだから・・・・・・」

「おや、本当ですよ? あなたのような可愛い女性が、自分のために料理を作ろうとして果たせずに涙まで流してくれて、嬉しくないはずがありません」

そこまで言われた瞬間、元から赤かったナギの顔がさらに真っ赤になる。
アルの腕から逃れようと暴れながら顔を背けた。

「だっ、誰が泣いてなんか――――っていうかもう離せ! いいから離せ今すぐ離せっ!」

うがーっ!と吼えながら振り回されるナギの腕をかわし、その肩を掴んで自分に向きなおさせる。
いきなり身体を回転させられたと思ったら、目と鼻の先にアルの顔があったナギは思わず息を呑んでおとなしくなる。
そんなナギににこやかに微笑みかけ、アルはひとつ提案を持ちかける。

「では、こういうのはいかがです? ――――私と二人でカレーを作る、というのは。 これならあなたも大きな失敗をしなくてすみますし、私もあなたが怪我をしないかと気を揉まなくてすむ」

アルにそういわれ、一瞬顔を輝かせたナギだったが、すぐに不満げな顔になり、

「で、でもそれだったら、結局お前も料理することになってお礼の意味が――――」

ナギが皆まで言う前にさらに顔を接近させて、ダメ押しの一言。

「私は、ナギと一緒に料理ができるだけでも十分嬉しいですよ?」

「うッ・・・・・・・」

ナギはこうされると弱い、長い付き合いのうえで理解した性質のひとつだ。
・・・別に何も妙なことをしたりしたわけではまったくない。
ともかく、ナギを(ある意味力ずくで)納得させたアルは、とりあえず台所を復旧した後、ナギと二人仲良くカレー作りを開始した。
どうしても包丁を握る!と言い張るナギを説得しきれずにヒヤヒヤしたが、アルがそばについたおかげで怪我ひとつなく料理は出来上がった。
いやまぁ、危ないところが多少なかったというわけでは・・・多少というほど少なくも・・・まぁできたからいいか。
とにもかくにもカレーは無事完成し(ナギの要望で甘口)、早速アルが他の面々を呼びに行こうとした――――のをナギが止め、二人分だけを先に皿に持ってテーブルについた。

「他の皆さんはお呼びしないのですか?」

「いーんだよ。 ・・・ちょっとやりたいことがあるんだ」

「やりたいこと?」

アルが不審そうに首をかしげるのを尻目に、ナギは自分の皿から一口分を掬い取り――――アルの口元に持っていった。

「・・・はい、あーん♪」

・・・嬉しそうに笑いながらナギにそうされて、アルがすべきことはただひとつ。
素直に言うとおりにしてやって、一言――――「おいしいですよ」と言ってあげるだけだった。

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