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空×ココネ

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
夏です。
夏休みです。
夏ともなればいろんなイベント盛りだくさんだぜウヒョーイってな人も確かにいるかもしれません。
が。

「・・・あちぃ・・・・・・」

汗だくで息をぜぇぜぇ言わせながら、かすれる声でつぶやく空。
クラス内ではいたずら三人組と呼ばれるメンバーの筆頭であるこの春日空にとって、そんなおいしいイベントはまだ大分先のご様子。
来る日も来る日も灼熱の太陽の下、ひたすらに走りこむ毎日を送っている。
そう、夏休みは生徒が授業から解放されるのと同時に、部活動の練習時間が大幅に増加するという熱心な顧問にとって――――あくまで部員とは限らない――――嬉しい副産物がついてくる。
もちろんそんなおいしい副産物を部活の顧問――――特に運動部――――が見逃すはずもなく。
結果、グラウンドや体育館といった場所のあちこちで、部員が顧問に叱咤されながら絶望的な惰性で身体を動かす光景が展開されている。
そして空もまた、その光景を構成する一員となって、ひたすらに走る、ただ走る、走り続けている。
ふざけてんのかと思うような特別メニューもこれで終わり、あとはトラックを一周すればよーく冷えたアクエリアスが飲める・・・・!!
それだけを支えに、棒のような足をひきずるようにしてトラックを走りぬき、ついに、ついにゴール!

と、先頭を走っていた部員集団が思った瞬間。

「ぃよーっし! まだまだ余裕ありそうだからあと5周追加っ! 気合入れて行けーっ!」

あああああ、そう来ますかセンセェーッ!!
無理っ、もぉー無理っ!!
勘弁しろよチクショオオオオオ!!!
そんな心の叫びを必死でかみ殺し、「うーっす・・・」とまるで地獄の底から響くような声で答える部員達。
ぶっちゃけ全員限界なんざとっくの昔に通り過ぎている。
今動いているのは『止まったら動けなくなる』という無意識の自覚と『止まったらまたメニュー増やされる』というあってほしくない事態を避けるためだけだ。
実際、部活初日に発表された夏休みメニューと普段のメニューとのあまりの差にぶっ倒れる生徒達が続出し(空はサボった)、結果怒り狂った顧問がさらにメニューを強化したという悪夢のような現実がある。
なので誰も止まろうとしないし止まりたくない。
だが体力のほうはもうダメ、死ぬ。
ああでもメニュー増やされたくないし、だけどやっぱもうダメ・・・そんなジレンマとともにただ無我夢中で足を引きずる。
滅茶苦茶修行を積んできた素晴らしい運動選手などは、こういった練習も楽しめるというが(言わないんじゃねーの?by空)、学生のそれも特に突出して素晴らしい成績を収め続けるようなレベルでもない面子では、キツイ練習はただもう『キツイ』だけである。
だがそれでもなんとか惰性と諦めとアクエリアスへの執念で全員なんとか完走し、そろいも揃って地面にぶっ倒れる。
大分見苦しい格好ではあるが、それを咎めないあたり顧問自身もキツイのは承知なのだろう。
・・・だったらメニュー軽くしろよ、という突っ込みはスルーなのはどこも変わらないが。
そして顧問があちこちでぶっ倒れてる生徒達に形ばかりの論評とサボりがちなものへの釘を刺し、部活は終了。
しばらくはみんな屍と化していたが、ひとりまたひとりと起き上がり、差し入れの入ったクーラーボックスに手を伸ばす。
空もいち早く起き上がり、差し入れのよーっく冷えたアクエリアスをぐいっと飲み、

「・・・っぷはぁ――――っ! うめぇぇぇぇぇ!」

腹の底から叫んだ。
一気に半分ほど飲み下したそれを飲み干し、まさに生き返った表情で手近なところにあったタオルを手に取る。
そのままぐいぐいと顔を拭き、流れに流れたまさに滝のような汗を拭き終えて一息ついたとき。

「おーい空ー、お前の連れが来てるぞー」

と、他の部員からお呼びがかかった。
だが、連れ?

「はぁ? 連れって誰だよオメー」

不信感満開な表情で尋ね返す。
しかしその部員のほうは、多少むっとしながらもある方向を指差し。

「いや、だって、ホラ」

と、空にそっちを見ろと促がした。
悪ふざけは俺の仕事だろ、などと微妙にズレた感想を抱きながら、仕方なしにそちらに目をやってみたらば。

「・・・・・・」

ココネが、いつもどおりの無表情で、空のほうを見ながら、立っていた。

「・・・アイツ、何してんだ?」

呆然と一言。
相手からすれば失礼極まりないが、空にしてみればここにココネがいることが不思議でしょうがないわけ。
とはいえ、陸上部でココネが用がありそうな奴といえば自分しかいないわけで。

「あーーーったく・・・・・・しょうがねぇなぁ」

タオルを肩にかけ、むすっとした表情でココネのほうに行く。
無視しても構わないが、そんな真似をしたら後でシスターシャークティかお袋にチクられるに違いない。
それならまだ、今アイツの相手をしてやったほうがいい。
などと思っていたら、後ろから、

「いいよなー空、あんな可愛い彼女がいてさぁ」

こんな台詞が飛んできた。

「アホか! 彼女じゃねーって!」

思わず怒鳴る空。
この年頃の連中は色恋沙汰になると本当に過剰な反応を示す。
だが、ココネを空の『彼女』と勘違いしている部員はニヤニヤしたまま、

「またまた~、毎日一緒に帰ってて何言ってんだか」

などとのたまっている。
これだけ聞くと確かに空の言っていることは照れ隠しか隠れ自慢かのどっちかにしか聞こえない。
だが一応空の名誉(ほぼないが)のために明言しておくと、本当に空とココネは何もない、今のところ。
空とココネが毎日一緒に下校しているのも、魔法生徒としての活動のためであって、何もやましいことがあるわけではない。
だがしかし。

「だぁーかぁーらぁー! アレはうちとあいつの家がたまたま仲良くて飯食いに来たりするからだって・・・」

・・・こんな苦しい言い訳しか出来ないのもまた事実。
ああ、魔法生徒なんかじゃなかったらこんな気がねしなくてすむのに!

「はいはい、わかったって。 さぁ早く彼女のとこに行ってやるんだ春日クン!」

「違うっつーの!」

ダメだ、まったく聞いてない。
反論する無駄さを悲しいながらも理解した空は、それ以上何も言うことなくココネのほうに黙々と近づいていく。
ココネのほうは、微動だにせず、ただひたすら空のほうをじーっと見つめている。
・・・ちょっと怖いくらいに。

「・・・で、なんだよココネ。 用があるならさっさと言えって」

だが、そんな無愛想を越えたココネの無表情に慣れ親しんでいる空はまったく恐れることなく、むしろ怖がらせそうなトーンで問い詰める。
その裏には「オメーのせいで妙なうわさ立っちまっただろがどう落とし前つけてくれんねんおー?」というココネへの恨みつらみがこもっている、かもしれない。
しかし敵もさるもの、ココネはそんな空の険悪オーラをもろともせず、

「・・・・・・・」

むぎゅっ

と、空の頬を思いっきりつねり上げた。

「――――あだだだだだぁぁぁぁぁっ!? な、何すんだバカ野郎!」

「うるさい、このバカソラ」

「んなっ・・・・・・?!」

一刀両断。
理由もわからずつねられた空の抗議も完全にスルーし、つねったまま空を連行するココネ。
混乱して流されるまま連行されていた空だったが、はっと我に返ってココネの指を振り払い(ずっとつねられっぱなし)、声を荒げて怒鳴りつける。

「・・・いい加減にしろって! 何だっつうのお前は!」

だがしかし、ココネの鉄面皮はそれくらいではびくともしない。
おもむろに空の顔を指差し、一言。

「晩御飯」

「は?」

一体何を言い出すデスカこの色黒。
空が二の句を継ごうとした、その一瞬前に。

「今日、おじさんもおばさんもいないから、私がソラの分もご飯作るって、約束」

言い切るココネ。

「・・・・・・・あ、あーあーあー! そういえば!」

・・・勝負あり。
どうやら、空がココネとの約束を忘れていただけらしい。
しかしココネさんよ、いくら忘れられてたのがムカついたからって強制連行は酷いと思うんですがね。

「にしてもさー、なんでわざわざ俺を引っ張って帰るわけ? お前が先に帰ってくれてればいいんじゃねーの? お袋からカギだって預かってるだろ」

とりあえずさっきまでの険悪さは消えたものの、拉致られた空はまだご立腹のご様子。
そんな風に文句を言って抵抗してみる。
が、論理戦では授業の大半を寝て過ごす空とすべて真面目に受けるココネとでは勝者が知れているわけで。

「・・・それでもいいけど、それならソラの部屋も掃除する。 それでソラが本棚の後ろとかベッドとお布団の間に別の本のカバーかけて隠してるやらしい本も全部かたづ」

「待て待て待て待てッ!!! な、何でお前がそんなこと知ってんだよ!?」

慌ててココネの爆弾発言を遮る空。
さすがにコレは酷い、酷すぎる。
だがココネはあくまで平然と、

「おばさんに頼まれて、何回かソラの部屋の掃除手伝ったから」

などとのたまってくださった。

「おいぃぃぃぃ!!! ま、マジかよ・・・・・・」

頭を抱え込む空。
コレは痛い、幼馴染とはいえ女子にこの手の秘密がバレてるということほど痛いことはない。
そんな空の心中を知ってか知らずか、ココネは相も変らぬ無表情で、

「・・・ソラが、まさかあんなふうなのが好みなんて知らなかった」

「違ぁぁぁぁぁぁぁぁう!!!」

ぽつり、とつぶやいた言葉を全力否定。
ちなみに『どんなふう』なのかはご想像にお任せしておく。

「主に年上のお姉さん系」

「だから違ーーーッ!!!」

・・・・・・・・・・まぁとにかく。
そんなとりとめもない他愛無いことを語りつつ、二人は並んで春日家への道を歩く。
部活がキツすぎて死ねるとか、教会でのお祈りをサボるな、とか。
会うたびに話してるはずなのにどうしても話してしまうようなことをぐだぐだとしゃべりつつ、空はこっそりとココネのほうに視線をやる。
前を向いてはいるものの、別に特に前方に注意を払っているわけでもなく、むすっとしたような、いつもどおりの顔。
見慣れてはいるけれど、いざ意識するとかなり可愛いことは認めざるをえない。
そのまま視線を落とすと、女子制服の胸元を盛大に盛り上げる立派なものが。
おそらく、うちのクラスの龍宮くらいはある、絶対ある。
空がそう断言するほど立派である、らしい、よくは知らんが。
ココネの身長自体は、やや高いと言ってもそれほどずば抜けているわけではない。
大体超とかハルナと同じくらい。
その身長でこのサイズの胸というのは・・・いやはやなかなかアレですな、ええアレです。
などという不埒なことを無意識にニヤケそうになりながら考えていると。

――――スパァーーーッン!!

「あだっ?!」

「・・・目つきがやらしいっ!」

お見事、空の後頭部に綺麗な張り手が炸裂。
さすがのココネもしか・・・もとい自分の体をじろじろと眺め回されたのは我慢ならなかったのか、頬をわずかに紅潮させて眉を吊り上げている。

「いってぇなぁ・・・いいじゃん別に、減るもんじゃないし」

「減る、ソラに見られたら減る」

「なんじゃそりゃ」

ため息のような情けない声を出す空に背を向けて、ココネは先に歩き出す。
あーあー怒っちゃったよ、飯に毒盛られなきゃいいけど、なんてことをぼやきながら、空もそのあとに従う。
そのとき。

「きゃっ・・・・・・・?!」

「危ねっ! ・・・大丈夫か?」

「う、うん・・・」

ちょっと変な方向に足首をひねってしまい転びそうになったココネをすかさず支えて助ける空。
ここだけ見ると結構かっこよく見えなくもない、かもしれない。
あんまりくっつきっぱなしだとまた何言われるかわかったもんじゃないので、さっさと体勢を立て直させてやる空。
が。

「痛っ・・・・・・」

「うお、やっぱ痛めてたか・・・ひねってたからそうかなーとは思ったけど」

痛みに思わずうずくまったココネに近寄り、足首を取って腫れ具合を確かめる。
大して腫れてないけど、一応あまり無理はしないほうがいいな、と陸上部員として当たり前の判断。
「歩けるか?」と聞いてみると、ココネは力なく首を振って否定。

さて、どうするか。
まぁ歩けないっつっててもちょっと無理すれば家までぐらいは大丈夫だろうけど、それをさせるのはさすがに男としてどーよ。
なら、無理はさせずに家まですぐ帰れてかつ大事にしない方法っつったら・・・
これしか思いつかねぇや。

そこまで考えたところで、空が取った行動。
それは。

「よっ、と・・・・・・」

「きゃっ?!」

結論、おんぶ。
ぶっちゃけ部活疲れでこういうことはしたくないが、まぁ仕方ない。

「ソ、ソラ、下ろして・・・・ッ!」

「歩けねーんだろ? だったら家まで我慢しろって」

「う・・・・・・」

慌てて抗議したココネも、さすがに自分が言ったことを論拠にされては空にすら勝ち目がない、悲しいことに。
仕方ないので、おとなしく身体を預ける。

――――なんだかソラ、おっきくなった。

そんなことを考えるのも、ちょっと懐かしい感じがしたから。
きっと、ソラは覚えてないんだろうけれど。

「――――懐かしいよなぁ、こうやってお前をおんぶすんのも」

「え?」

「いや、ちっちゃい頃なんかよく俺がお前おんぶして走り回ったりとかよくやったじゃん」

「・・・・・・うん」

それは、空とココネの幼い頃の記憶。
いつも一緒に遊んでいて、その頃から足の速かった空についていけなくて。
それで置いていかれて、泣いてしまったココネをなだめなければならなくなったとき、空はいつもココネをおんぶした。
そしておんぶしたままあちこちを走り回り、二人一緒に同じ景色を眺めて遊んだ。
それは、ちょっと仲のいい子供達なら、形は違っても誰でも持っているような、ありふれた思い出のひとつの形。
誰もが持っているのに、時間と共に誰もが忘れてしまうもの。
自分は覚えていても、空はきっと忘れている。
それでもよかった。
空の近くにいられて、その思い出を思い出せるだけでよかった。
なのに、空も覚えていてくれた。
そう思うと嬉しくて、つい子供の頃みたいに、空の首に手を回して、ぎゅっとしがみついてしまった。

「うおっ、何だよ急に」

「・・・・・・別に」

返答は普段どおり。
表情は、普段と違う、ひそやかな笑顔。
しかし、おんぶしている空はその笑顔に気付かない。

「あーあー、こちとら部活で疲れてるってのに・・・晩飯、頑張ってくれよな」

「感謝の気持ちがこもってない」

「いやそれ俺の台詞だろ」

「作る相手に感謝して食べない人に晩御飯は作りません」

「ちょ・・・降りろ、今すぐ降りろ!」

「やだ」

背負う空と背負われるココネ。
鈍い男子と素直じゃない女子。
はてさて、この二人が幼馴染の一線を越えるのはいつのことやら。
それは誰にも分からない。

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