俺、長谷川千雨は、何かつまらない事があると屋上へ向かう。
放課後の屋上に佇んでいると、なんとなくしんみりするからだ。
何処からか聞こえる運動部の掛け声が疎外感を生み出したりして。
実際は仲間外れなんてものではなく、単に俺が好きで帰宅部を選んでいるのだが。
まぁとにかく、独りきりの放課後の屋上ってのはダウナーな思考を働かせるのには向いている。
思考の先は、俺の人生へと。
毎日同じ事の繰り返し。
朝起きて飯食って学校で馬鹿なクラスメートを横目で眺め、夜は店で深夜まで客の相手、そして帰って風呂入って寝る。
なんて単調で、つまらなく、意味のない日々。
果たしてこの生きるという作業を続ける意味なんてあるんだろうか。
放課後の屋上に佇んでいると、なんとなくしんみりするからだ。
何処からか聞こえる運動部の掛け声が疎外感を生み出したりして。
実際は仲間外れなんてものではなく、単に俺が好きで帰宅部を選んでいるのだが。
まぁとにかく、独りきりの放課後の屋上ってのはダウナーな思考を働かせるのには向いている。
思考の先は、俺の人生へと。
毎日同じ事の繰り返し。
朝起きて飯食って学校で馬鹿なクラスメートを横目で眺め、夜は店で深夜まで客の相手、そして帰って風呂入って寝る。
なんて単調で、つまらなく、意味のない日々。
果たしてこの生きるという作業を続ける意味なんてあるんだろうか。
「……死ぬかな」
放課後の屋上で一人、呟いてみた。
なるほど、声に出してみるとなかなか魅力的な案に思える。
ここから紐無しバンジーなんてやったら面白そうだ。
よし、ここは一つ死んで見るか。
俺は屋上に設置されている転落防止用の壁と向き合った。
壁はあくまで転落防止で、自殺防止ではない。乗り越えるのは簡単だ。
軽くジャンプして体を乗っけて、壁の上に立つ。
いつもより高い視界で辺りを見回し、俺は思った。
なるほど、声に出してみるとなかなか魅力的な案に思える。
ここから紐無しバンジーなんてやったら面白そうだ。
よし、ここは一つ死んで見るか。
俺は屋上に設置されている転落防止用の壁と向き合った。
壁はあくまで転落防止で、自殺防止ではない。乗り越えるのは簡単だ。
軽くジャンプして体を乗っけて、壁の上に立つ。
いつもより高い視界で辺りを見回し、俺は思った。
……なんだ、死ぬ間際になっても何の感慨も湧かないじゃないか。
急に死ぬ気が萎え、溜め息一つ吐いて屋上の内側へと降りようとすると、
「死ぬなー!」
そんな大声と共に、ドン、と外へ突き飛ばされた。
「へ」
思わず間抜けな声を上げる。
おいおいちょっと待てよ今俺は戻ろうとした所で――。
俺の体が重力に沿って落下し始めた。
「う……あぁぁぁ!?」
無我夢中で腕を伸ばす。
反応が早かったおかげか、腕はなんとか壁の上に腕が引っ掛かった。
力任せに体を引き上げ、殺人未遂犯へ怒声をぶつける。
反応が早かったおかげか、腕はなんとか壁の上に腕が引っ掛かった。
力任せに体を引き上げ、殺人未遂犯へ怒声をぶつける。
「てめぇ、朝倉、殺す気か!」
怒鳴りつけられた方、朝倉和美はにっこり笑って、
「シャレだよ」
「そんなもんシャレになるか!」
「そんなもんシャレになるか!」
「で。何で自殺なんてしようとしたの?」
「俺は戻ろうとしてたんだけどな。それと人を死地に追いやった後は、まずごめんなさいだろ?」
「ごめんなさい謝るから頭から手を離して。なんかミシミシ言ってるし」
「まぁいいだろう」
「俺は戻ろうとしてたんだけどな。それと人を死地に追いやった後は、まずごめんなさいだろ?」
「ごめんなさい謝るから頭から手を離して。なんかミシミシ言ってるし」
「まぁいいだろう」
なんとか無事に戻った俺は、朝倉の頭を圧迫していた手を尊大な態度で離してやった。
朝倉は頭を手で押さえながら、殺す気か、と呟く。
うん。お前が言うな。
朝倉は頭を手で押さえながら、殺す気か、と呟く。
うん。お前が言うな。
「でも最初は死のうとしたんでしょ?何故に自殺なんて?」
「別に。生きる事がつまらないと思っただけさ」
「あはははは!何その今時の若者っぽい発言!」
「別に。生きる事がつまらないと思っただけさ」
「あはははは!何その今時の若者っぽい発言!」
……なんだろう、今凄く馬鹿にされた気がする。
「お前だって少しはあるだろ?こう、死にたいと思った事とか」
「ん?ないけど」
「そうだろ?つまり今の俺も――なんだって?」
「私、死にたいなんて思った事ないけど」
「ん?ないけど」
「そうだろ?つまり今の俺も――なんだって?」
「私、死にたいなんて思った事ないけど」
ンな馬鹿な。
人間生きてりゃ死にたいって思う事の一つや二つ、普通あるだろ。
というか無いと変だ。
でも、コイツは『なんでそんな事思うのか不思議で仕方ない』って顔をしている。
人間生きてりゃ死にたいって思う事の一つや二つ、普通あるだろ。
というか無いと変だ。
でも、コイツは『なんでそんな事思うのか不思議で仕方ない』って顔をしている。
「本当に、一度も思った事ないのか?」
「あるわけないじゃん」
「テストの点が悪かった事は?」
「それはあるけど」
「誰かに怒られた事とか」
「あー、記事の件で部長に何度も怒られるけど」
「何かとんでもないミスをした経験は」
「そんなの人間一つや二つあるでしょ」
「あるわけないじゃん」
「テストの点が悪かった事は?」
「それはあるけど」
「誰かに怒られた事とか」
「あー、記事の件で部長に何度も怒られるけど」
「何かとんでもないミスをした経験は」
「そんなの人間一つや二つあるでしょ」
「……そういう時、少しくらい死にたいとか思わないのか?」
「全然」
「全然」
朝倉はそう言い切った。
「だってさ、テストの点は次頑張ればいいじゃん?怒られたら認められた時もっと嬉しくなるし、ミスなんてどっかで挽回できるモンでしょ」
それは。
次があった時の話で。
それは。
自分は考えもしなかった発想だった。
次があった時の話で。
それは。
自分は考えもしなかった発想だった。
「それにさ。人生って楽しいじゃん、自分で終わらすのは勿体無いって」
そう言った朝倉の顔は、本当に楽しそうで。
全く、なんて楽観的で能天気で夢見がちで、馬鹿みたいに前向きな奴。
こういう奴には敵わねぇな、と苦笑した。
全く、なんて楽観的で能天気で夢見がちで、馬鹿みたいに前向きな奴。
こういう奴には敵わねぇな、と苦笑した。
「む、何笑ってるの?」
「いや、別になんでもないさ。お前が良い女だって思ったんだ」
「なに?ひょっとして惚れちゃった?」
「そうだな、今度デートしてくれよ」
「おぉ、NO.1ホストにデートに誘われるとは光栄だね」
「いや、別になんでもないさ。お前が良い女だって思ったんだ」
「なに?ひょっとして惚れちゃった?」
「そうだな、今度デートしてくれよ」
「おぉ、NO.1ホストにデートに誘われるとは光栄だね」
軽口を言い合い、俺たちは笑った。
「さて、私はもう行かないと」
「なんかあるのか?」
「明日の記事のネタ探しよ」
「それならいいのがあるぜ。『屋上で殺人未遂発生!』てな」
「まだ根に持ってるの?」
「なんかあるのか?」
「明日の記事のネタ探しよ」
「それならいいのがあるぜ。『屋上で殺人未遂発生!』てな」
「まだ根に持ってるの?」
笑って流してよー、と言いながら朝倉は屋上を去って行った。
流せだって?冗談じゃない。
今日の事は多分ずっと忘れないだろう。
流せだって?冗談じゃない。
今日の事は多分ずっと忘れないだろう。
「さて、私も行くか」
もう壁の向こうに未練はなかった。
思考の先は、話題のデートスポットへと。
マジで誘ってやったらアイツどんな顔するかな。
飯くらいなら、奢ってやってもいいかもしれない。
俺は誘った時の朝倉の顔を思い浮かべ、含み笑いしながら歩き出した。
思考の先は、話題のデートスポットへと。
マジで誘ってやったらアイツどんな顔するかな。
飯くらいなら、奢ってやってもいいかもしれない。
俺は誘った時の朝倉の顔を思い浮かべ、含み笑いしながら歩き出した。
end