(ちょっと前の一連の流れに、ちょっとだけ反抗してみるテスト)
……ロボ研の研究室を覗くと、彼女は例によって研究に没頭しているようだった。
何日目になるのか分からぬ、着たきり雀なアインシュタインのTシャツ。彼女のお気に入り。
片方だけずり下がった靴下。室内のあちこちに散らばった制服。
彼は小さく溜息をつくと、モニターに没頭しつつカ○リーメイトに手を伸ばす彼女に声をかける。
何日目になるのか分からぬ、着たきり雀なアインシュタインのTシャツ。彼女のお気に入り。
片方だけずり下がった靴下。室内のあちこちに散らばった制服。
彼は小さく溜息をつくと、モニターに没頭しつつカ○リーメイトに手を伸ばす彼女に声をかける。
「……だめだヨ、そんなモノ食べてちゃ。せっかく差し入れ持てきたのに」
「あ、チャオくん~、ど~も~。もう東医研の方はいいんですか~?」
振り返った聡美の、柔かな微笑み。見るもの全てを和ませる微笑み。
超は湯気を立てる肉まんを机の上に置くと、聡美の肩越しにモニターを覗き込む。
「東洋医学の方は、動物実験の結果待ちネ。しばらくやれるコトないから、コッチを手伝えるヨ。
で、どうなてるかナ、例の対魔法使い用のステルス・システムは?」
「なんとかなりそうですね~。部品の精度が問題だったんですが、注文してた品が届きましたし~。
この調子なら、学園祭までには実用レベルの試作品が作れると思います~」
「ふふ、ハカセは本当に有能ネ。お陰で色々助かるヨ」
オールラウンダーな天才少年である超だったが、しかしやはり実用工学では聡美に一歩譲る。
彼が「ちょっと反則的な事情によって」知っている基礎理論を元に、聡美がそれを実現化する。
この2人の才能の組み合わせによって、2人の周囲では大幅に時間が加速されていた。
この時代には未だ見られぬはずの超技術が、次々と生まれていた。
「あ、チャオくん~、ど~も~。もう東医研の方はいいんですか~?」
振り返った聡美の、柔かな微笑み。見るもの全てを和ませる微笑み。
超は湯気を立てる肉まんを机の上に置くと、聡美の肩越しにモニターを覗き込む。
「東洋医学の方は、動物実験の結果待ちネ。しばらくやれるコトないから、コッチを手伝えるヨ。
で、どうなてるかナ、例の対魔法使い用のステルス・システムは?」
「なんとかなりそうですね~。部品の精度が問題だったんですが、注文してた品が届きましたし~。
この調子なら、学園祭までには実用レベルの試作品が作れると思います~」
「ふふ、ハカセは本当に有能ネ。お陰で色々助かるヨ」
オールラウンダーな天才少年である超だったが、しかしやはり実用工学では聡美に一歩譲る。
彼が「ちょっと反則的な事情によって」知っている基礎理論を元に、聡美がそれを実現化する。
この2人の才能の組み合わせによって、2人の周囲では大幅に時間が加速されていた。
この時代には未だ見られぬはずの超技術が、次々と生まれていた。
「……にしてもハカセ、泊り込みは仕方ないけどネ、ちゃんと片付けなきゃだめヨ。
女の子なんだから、もっと色々気を使わないト……」
「ん~、ほふでふね~(そうですね~)」
散乱する制服を拾いながら、いつもの文句を言う超。肉まんを頬張りながら生返事の聡美。
超は女物の制服を慣れた手つきで綺麗に畳む。脱ぎ捨てられていた靴下なども拾っていく。
片付けの途中で、明らかに彼女のモノらしきブラジャーとパンツを見つけ、流石に苦笑。
女の子なんだから、もっと色々気を使わないト……」
「ん~、ほふでふね~(そうですね~)」
散乱する制服を拾いながら、いつもの文句を言う超。肉まんを頬張りながら生返事の聡美。
超は女物の制服を慣れた手つきで綺麗に畳む。脱ぎ捨てられていた靴下なども拾っていく。
片付けの途中で、明らかに彼女のモノらしきブラジャーとパンツを見つけ、流石に苦笑。
「ねぇハカセ、流石にコレ放っておくのはまずいヨ。洗濯とか、ちゃんとしてる?」
「あ~、そうですね~。今度まとめてしておきます~」
「……もういいヨ。僕がしておいてあげるヨ、いつもみたいにネ」
生返事を返しつつ、研究に没頭する聡美。超は溜息をつきつつ、彼女の汚れ物を袋に詰める。
はっきり言ってこんなこと、男友達に任せていいものではない。けれどこれが、2人の日常。
超自身も多忙で研究最優先の生活ではあったが、しかし彼は欠点のない万能型の天才。
料理のみならず、家事全般をもそつなくこなす。聡美よりは周囲を気遣う余裕もある。
だからこうして、忙しい時間の合間を縫っては世話を焼いているのだった。
「あ~、そうですね~。今度まとめてしておきます~」
「……もういいヨ。僕がしておいてあげるヨ、いつもみたいにネ」
生返事を返しつつ、研究に没頭する聡美。超は溜息をつきつつ、彼女の汚れ物を袋に詰める。
はっきり言ってこんなこと、男友達に任せていいものではない。けれどこれが、2人の日常。
超自身も多忙で研究最優先の生活ではあったが、しかし彼は欠点のない万能型の天才。
料理のみならず、家事全般をもそつなくこなす。聡美よりは周囲を気遣う余裕もある。
だからこうして、忙しい時間の合間を縫っては世話を焼いているのだった。
とりあえずの「ノルマ」である洗濯物をまとめ、部屋を出ようとして……超は、戸口で立ち止まった。
聡美は相変わらずモニタの前で何やら作業中。出て行く超を振り向きもしない。
「…………ハカセ。いや――聡美サン」
「ん~、なんですか~?」
「これからの作戦が成功したら、ネ……」
超の「目的」を知り、それでもなお協力してくれる聡美。超の大事な右腕である聡美。
研究のこと以外はまるでダメで、1人では到底人間らしい生活などできないであろう聡美。
目的のためには非情たらん、と思いつめがちな超を、自然と和ませてくれる聡美。
――けれども、超の作戦が成功したら。超が「故郷に帰らねばならない」時が来たら。
彼女は、どうなってしまうのだろう? 彼女の面倒を、誰が見るのだろう?
いや超自身、本当に「彼女を置いて行く」ことができるのだろうか?
お互い何よりも理性を重視する性格、全ては了解済みであるはずのことだったが……
この感情は、計画になかった。天才少年にも、どうしたらいいのか分からないまま。
「……イヤ、何でもないネ。また来るヨ」
「はい~。いつもありがとうです~。愛してますよ~、チャオくん♪」
苦いものを噛み殺しながら、戸を閉じる超。
振り返りもせずに見送った聡美の声は、あくまで明るく、柔かだった。
聡美は相変わらずモニタの前で何やら作業中。出て行く超を振り向きもしない。
「…………ハカセ。いや――聡美サン」
「ん~、なんですか~?」
「これからの作戦が成功したら、ネ……」
超の「目的」を知り、それでもなお協力してくれる聡美。超の大事な右腕である聡美。
研究のこと以外はまるでダメで、1人では到底人間らしい生活などできないであろう聡美。
目的のためには非情たらん、と思いつめがちな超を、自然と和ませてくれる聡美。
――けれども、超の作戦が成功したら。超が「故郷に帰らねばならない」時が来たら。
彼女は、どうなってしまうのだろう? 彼女の面倒を、誰が見るのだろう?
いや超自身、本当に「彼女を置いて行く」ことができるのだろうか?
お互い何よりも理性を重視する性格、全ては了解済みであるはずのことだったが……
この感情は、計画になかった。天才少年にも、どうしたらいいのか分からないまま。
「……イヤ、何でもないネ。また来るヨ」
「はい~。いつもありがとうです~。愛してますよ~、チャオくん♪」
苦いものを噛み殺しながら、戸を閉じる超。
振り返りもせずに見送った聡美の声は、あくまで明るく、柔かだった。