終業のチャイムが鳴ってから大分経って、日が傾きかける頃。
誰もいなくなった教室で、僕は一人、夕日を眺めていた。
僕は相坂小夜、この教室で60年自縛霊をやってる。
ただ、僕、幽霊の才能がないみたいで、ほとんど誰にも気づかれてない・・・
でも、何人かの人には僕が見えるみたいで、そういう人と“ともだち”になれて、今はすごい幸せ。
幸せ、なんだけど・・・
誰もいなくなった教室で、僕は一人、夕日を眺めていた。
僕は相坂小夜、この教室で60年自縛霊をやってる。
ただ、僕、幽霊の才能がないみたいで、ほとんど誰にも気づかれてない・・・
でも、何人かの人には僕が見えるみたいで、そういう人と“ともだち”になれて、今はすごい幸せ。
幸せ、なんだけど・・・
小夜朝SS 「いつもそばにいるよ」
「んあ~・・・つっかれた~!」
突然教室の扉が開くと同時に、大きなため息まじりの声を出して教室に入ってきたのは、朝倉和美さん。
僕のことが見える数少ない人の一人。
凄い美人で、頭もよくて・・・僕の、憧れの女の人・・・
・・・な、ななな何言ってるんだろう僕、いけないいけない!
でも、なんだか今日の朝倉さん、様子が変だなぁ・・・
いつもにこにこしてるのに、心なしかちょっと落ち込んでるみたいな・・・
僕のことが見える数少ない人の一人。
凄い美人で、頭もよくて・・・僕の、憧れの女の人・・・
・・・な、ななな何言ってるんだろう僕、いけないいけない!
でも、なんだか今日の朝倉さん、様子が変だなぁ・・・
いつもにこにこしてるのに、心なしかちょっと落ち込んでるみたいな・・・
「ど、どうしたんですか? 朝倉さん」
「あ~、小夜君・・・いやね、ちょ~っと部長にしぼられてさぁ・・・これからここで記事作らなきゃいけないわけ」
「そうなんですか・・・大変ですね」
「ん~、でも好きでやってることだかんね、頑張るっきゃないか」
そういいながら記事を広げる朝倉さん。
でも、記事を書くための鉛筆は止まったまま。
少し前、「最近スランプなんだよね~」って、ちょっと苦笑いしながら言ってた。
朝倉さんの机の近くまで飛んでいって、横に並べてある資料を読んでみたけど・・・60年前に死んだ僕にはよくわからないことばかりだった。
何か手伝おうにも、幽霊の僕じゃすり抜けるばかりで、資料を取って渡してあげたり、差し入れを持ってきてあげることも出来ない。
こういうとき、すごく、すごく自分が歯がゆく思える。
朝倉さんは、誰も気づいてくれなかった僕に気づいてくれて、こうして“ともだち”になってくれたのに、僕は朝倉さんのために何もできない。
僕はなんて非力なんだろう、僕はなんて無能なんだろう、僕は、なんて――――――――
でも、記事を書くための鉛筆は止まったまま。
少し前、「最近スランプなんだよね~」って、ちょっと苦笑いしながら言ってた。
朝倉さんの机の近くまで飛んでいって、横に並べてある資料を読んでみたけど・・・60年前に死んだ僕にはよくわからないことばかりだった。
何か手伝おうにも、幽霊の僕じゃすり抜けるばかりで、資料を取って渡してあげたり、差し入れを持ってきてあげることも出来ない。
こういうとき、すごく、すごく自分が歯がゆく思える。
朝倉さんは、誰も気づいてくれなかった僕に気づいてくれて、こうして“ともだち”になってくれたのに、僕は朝倉さんのために何もできない。
僕はなんて非力なんだろう、僕はなんて無能なんだろう、僕は、なんて――――――――
「・・・・・・ごめんなさい」
「え?」
気づいたら、いつの間にか僕は朝倉さんに謝っていた。
朝倉さんはきょとん、としちゃってるけど、僕にとっては、これくらいしか、今の朝倉さんにできることがないように思えたから。
朝倉さんはきょとん、としちゃってるけど、僕にとっては、これくらいしか、今の朝倉さんにできることがないように思えたから。
「朝倉さんは僕と“ともだち”になってくれたのに、僕は、今みたいに朝倉さんが困ってるときに何もできなくて、見てることしかできなくて・・・だから、ごめんなさい」
そういって、今度は深く頭を下げる。
にじんできた涙を、見せたく――――見られたく、なかったから。
にじんできた涙を、見せたく――――見られたく、なかったから。
「・・・たくもう、馬鹿だなぁ・・・」
朝倉さんの、優しさのにじむ言葉で、胸が痛くなる。
ああ、僕みたいに何もできない幽霊に優しくなんてしないで。
その優しさに報いるだけのことが、僕にはできないから――――
ああ、僕みたいに何もできない幽霊に優しくなんてしないで。
その優しさに報いるだけのことが、僕にはできないから――――
「私は、小夜君が見ててくれるだけで、そばにいてくれるだけでいいんだよ?」
「え――――――――?」
思わず顔を上げると、そこには、朝倉さんの優しい、綺麗な笑顔があった。
「私は小夜君が好きだから、小夜君がそばにいてくれるのが一番幸せ。 私が困ってるときは、小夜君が私のそばで励ましてくれたら、私はいくらでも頑張れちゃうからさ。 だから、そんなこと気にしなくて、いいんだよ?」
朝倉さんが、僕のことを、好き――――――――?
嘘、そんな、僕、幽霊なのに、死んじゃってるのに。
僕と朝倉さんじゃつりあわない、わかりきってることなのに、うれしくて、うれしくて、涙が、止まらなかった。
僕が朝倉さんに言えたのはひとつだけ。
それは――――
嘘、そんな、僕、幽霊なのに、死んじゃってるのに。
僕と朝倉さんじゃつりあわない、わかりきってることなのに、うれしくて、うれしくて、涙が、止まらなかった。
僕が朝倉さんに言えたのはひとつだけ。
それは――――
「――――僕は、ずっと、朝倉さんの、そばにいます。 ずっと、ずっと、何があっても――――」
涙でぐしゃぐしゃの顔だったけど、しっかりと、朝倉さんの目を見つめて、はっきりと誓う。
ぼやけた目で見た朝倉さんの顔は、なぜか僕と同じで、泣いてるように見えた――――
ぼやけた目で見た朝倉さんの顔は、なぜか僕と同じで、泣いてるように見えた――――