選択


(まさかこんなことに巻き込まれるとは……)
小日向雄真(27番)は、はあと一度ため息をついた。

聖杯戦争――幼い頃どこかで聞いたことがあった。
所有者の願いを叶えるという聖杯を賭け、魔術使たちが殺し合うことで聖杯に自身が最強であることを証明する儀式………
自分たちは今その戦いに放り込まれてしまったのである。


(子供の頃に得た知識がこんなところで役に立つなんてな……)
そう。先ほどから今に至るまで雄真がそれなりに平静でいられたのは彼が聖杯戦争というものをある程度知っていたからだ。

(問題はこの戦いに乗るべきか乗らないべきかだ……)

もちろん。本当なら雄真だってこの殺人ゲームに乗るつもりはない。
しかし、ゲームからの脱出――主催者に反旗を翻すことで、結果として何人の者が傷つくだろうかとも考えてしまう。

(――それなら、あえてゲームに乗って、最後に聖杯にゲームで死んだ人たちを生き返らせてもらってもいいかもしれない……)

しかし、仮に自分がゲーム乗ったら義母の音羽や義妹のすももは絶対に自分を止めようとするだろう。

(さて……どちらが正しい判断だろうか………)
雄真はしばらく考えてみることにした。
しかし、しばらく考えつづけた結果、考えれば考えるほどどちらも正しいと思えてきた。

(こうなったらこれで決めるか…)
らちがあかなくなったので、雄真はポケットから10円を取り出した。


(表が出たら主催者と戦う。裏が出たらゲームに乗る……)
そうして雄真はコイントスをした。
ピンと音がして10玉が宙を舞い、そして落ちる。
結果は………




「なーにやってるの、ゆ~まっ!?」
床に10円玉が落ちる前にやってきた渡良瀬準(62番)がそれをキャッチしてしまったので出なかった。
「……なんだよ準?」
「ん~…雄真はどうするのかなーと思って」
「それはゲームに乗るか乗らないかってことか?」
「もちろん♪」
「……まだ決めてないよ」
「よかったー。雄真がゲームに乗ってたりしたら私どうしようかと……」
「ああそう…」
「雄真」
「なんだ?」
「私……雄真を守るためなら修羅の道に墜ちてもいいわ!」
準は雄真にずいっと顔を近付けた。
「あ…ああ」
準の決意に満ちた目に少し動揺する。
間違いなくマジだ、と雄真は思った。

「それじゃあ雄真。また後でねー」
「おい。10円返せよ」
「心配しない。聖杯戦争が始まった後無事に再開できたら返してあげるから」
そう言って準は自分の席に戻った。
「お守りゲット~♪」などという嬉しそうな声を発しながら。



 【時間:11時45分】
 【場所:教会(大聖堂)】

 小日向雄真
 【所持品:携帯電話】
 【状況:ゲームに乗るか乗らないか考えている】

 渡良瀬準
 【所持品:携帯電話、雄真の10円玉】
 【状況:ゲームに乗る・乗らない関係なく雄真を守る】




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始まりの日 小日向雄真 殺戮者の誕生
GameStart 渡良瀬準 Funnyboy on the run







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最終更新:2010年06月27日 16:37