殺戮者の誕生
森林地帯を抜けた新都との境界付近。そこに3人の参加者がいた。
25番・小日向音羽。26番・小日向すもも。そして、27番・小日向雄真である。
「――じゃあ、俺は行くから……」
そう言って自身の支給品である日本刀を手に雄真は先程まで自分たちが歩いて来た森へと戻っていった。
「気をつけてね雄真くん」
「兄さん。必ず姫ちゃんたちを助けてあげてください」
「わかってるよ」
音羽とすももに笑顔で答えると雄真は草木のなかに消えていった。
「――『助けてあげてください』か……」
森の中を歩きながら雄真は先程すももが自身に言った言葉を思い出していた。
「――悪いけど、今はできないな」
先程、雄真は音羽とすももと別行動を取る際に理由として「みんなを探す」と2人に言った。
しかし、それは嘘だった。
あの時――準に10円玉を取られた後、雄真はもうひとつ10円玉を取り出してコイントスをしたのだ。
そして、出た面は――――裏だった…………
そう。雄真はゲームに乗ったのだ。
しかし、母と妹にそのことを明かすわけにはいかなかった。絶対に止められると思ったからだ。
だから雄真はスタート直後に合流した2人が安全な場所に避難できるまでは一緒にいてあげることにした。
その後、「みんなを探す」という理由で2人と別れた後はゲームに乗った1人の殺戮者になる……それだけだ。
(――罪を背負うのは俺だけでいい………)
自分はもう過去に罪を背負っている。罪を背負うのには慣れていた。
その罪が何であったのかは自身もよく覚えていないが………
「できれば知り合いには会いたくないな………」
そう呟くと雄真は日本刀を一度鞘から抜いてぶんと振ってみた。
刀のことはよく判らないが、自身に支給されたソレ――『皆琉神威』と銘うたれた刀はかなりの業物のようだった。
覚悟は決まった………
「――さて。行くか」
刀を鞘に戻すと雄真は再び歩きだした。
全ては自身のため。そして、この殺し合いに参加している全参加者のために……
小日向雄真
【時間:1日目・午後4時】
【場所:森林地帯】
【所持品:皆琉神威(冥夜の刀)、他支給品一式】
【状態:マーダー化。目標は自身が優勝して聖杯で全参加者を生き返らせること】
小日向音羽
【時間:1日目・午後3時45分】
【場所:新都付近】
【所持品:支給品一式(ランダムアイテム不明)】
【状態:ゲームには乗っていない。すももと行動】
小日向すもも
【時間:1日目・午後3時45分】
【場所:新都付近】
【所持品:支給品一式(ランダムアイテム不明)】
【状態:ゲームには乗っていない。音羽と行動】
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最終更新:2010年06月27日 16:15