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<h4>シャーラ・カ・モキスートの冒険 その二(前編) 二つの月と郷愁と決意</h4> <p style="line-height:140%;"> <br /> </p> <hr /><p> <br /> はるか東方では、神(おおいなるもの)の威光は薄れ、<br /> 木々はやせ細り、暑さと寒さが月々で変わり、<br /> 魔洸や蒸気なるものの力で、地を走る鉄の獣がおり、<br /> その力で栄えしネコが、セパタるものを使い世を治める国があり。<br /> <br /> それを大地を食いかけたイヌが羨むも、<br /> 今は絹糸の縛られ封じられてると聞きまする。<br /> <br /> ――カトリに東の果てを説明する台詞より</p> <hr /><p> <br /> <br /> 「……釣れねえ……」<br /> <br /> 拝啓皆様、俺は月光の下で夜釣りをしています。<br /> <br /> 「釣れないでする?」<br /> <br /> ああ、全然だ、俺が落ちて来たり、縛られたり、<br /> その、あんな事したりした建物、ヒルダが神殿って言ってた、<br /> 木造のギリシャ神殿っぽい外観をしている……いや、言ってる俺でも、<br /> 想像するのが難しいのは分かるんだが、そうとしか言えない建物の、<br /> 裏手に広がる、馬鹿デカイ湖である東方湖で、<br /> 食材調達と精神安定のために、釣りをしてると言うわけだ。<br /> ちなみに、餌は石の下に居た蟲、竿は木の枝、針と糸は裁縫用を加工したもので、<br /> ヒルダからの貰い物である。<br /> <br /> で、何故俺がこんな説明的な思考をしてるかと言うとだ、<br /> 隣で俺を覗き込んでる、ヒルダの谷間が見えてますっ!<br /> さらに、すぐ近くにいるので、良い匂いもするし、そして、<br /> 昨夜の事が思い出されて、うん、やーらかかったな、<br /> そうそう、いま背中に感じるよーに、ふにゃっと……<br /> <br /> 「ヒ、ヒルダさん、当たっておるのデスガ?!」<br /> 「こんなのが、好きなのでする?」<br /> <br /> はい、凄く、とっても、何故かさん付けまでしてしまうほど、凄いとです、<br /> 落ち込んでたり、もう元の世界に戻れないのも、どーでも良くなってきた。<br /> <br /> 「ごめんなさいでする」<br /> 「いや、良いって……ヒルダにも会えたしな」<br /> <br /> そう言いながら俺は、今日有った事を思い出していた。<br /> </p> <hr /><p><br /><br /> 「いっぱい……出たでする……」<br /> <br /> 俺の上でヒルダがそう呟いて、その仕草だけで可愛いと思ってしまうのは、<br /> 惚れた弱みなのだろうかと思う、実際に可愛いのだが。<br /> <br /> 「ん……元気になったのでする……ヒトって……みんなこうなのでする?」<br /> <br /> 困ったような視線を俺に向けるヒルダに、いえ、一週間ぶりなためでは無いかなとか、<br /> そんな言葉を耳元で言われたら、余計元気になりすぎますとか、<br /> 三回も出してるのにコレは俺的にも不思議です、とか頭の中で言い訳する、息子自重しろ。<br /> <br /> 「ひゃっ! ま、また大きくなったのでする?!」<br /> <br /> すみません、生きててすみません、あったかくて、やーらかくて、<br /> 困った顔を見たら、我慢出来なくなったと申しますか……死ねば良いのに、むしろ、殺して。<br /> <br /> 「わかったので、ありまする……んっ!」<br /> <br /> そう言って、体を起そうとするのだけど、力が抜けてしまったのか動けないヒルダを見て、<br /> さらに元気になって、自己嫌悪と恥ずかしさに浸っていると、耳元に囁かれた。<br /> <br /> 「んっ! ダメでするっ! 縄を解いたら……突かれて舐められて、<br /> 胎内に全部出されて、しまうでするっ!!」<br /> <br /> 起きられないならと、再び抱きしめてくれたのは良いのですが、その大変素晴らしいもののせいで、<br /> 息子が暴れすぎて、喘ぐ声が色っぽいと言いますか、もちそうにありません。<br /> <br /> 「カトリ様っ! キス……して、んっ! 良い……でする?」<br /> <br /> 頷くと同時に首筋に走る鋭い痛み、二度目の吸血(きす)による甘い痺れに、<br /> 限界だった息子は胎内に白濁を放っていた。<br /> <br /> 「すき……でする……いっぱい……」<br /> <br /> そう囁くヒルダの唇は、俺の血で赤く汚れていると言うのに、<br /> 艶やかさや色気を感じるための要素にしか、なっていないと感じる俺は、、<br /> なんとも、つまり、その、ヒルダは、かーいいなと思ってしまうと言うことで。<br /> <br /> 「え?! ヒトって……すごいでする?!」<br /> <br /> 呆れられました、俺も息子に呆れてます、むしろ、何でか全然疲れません、と言うか、<br /> 何回でもいけそうです。<br /> <br /> 「また……するでする?」<br /> <br /> それに即座に頷くと、困ったような、嬉しいような表情のあとで、<br /> すっと、手が動いたと思ったら……自由になる俺の体。<br /> <br /> 「もう……動けないので……して……ほしいのでする」<br /> <br /> ランプに照らされた室内でも分かるほど、顔を赤らめたヒルダも可愛くて、<br /> 迷わず抱きしめていた。<br /> <br /> 「んっ! 揉んだり……吸ったりは……ひゃっ! 激しいのでするっ!!」<br /> <br /> </p> <hr /><p><br /> <br /> あの後、朝までずーーっと、いたしておりまして、<br /> 我ながらケダモノかと思いましたね、うん、死にたい。<br /> <br /> <br /> じゃなくて、お昼に、ようやくこの世界、つまり異世界に来たと言う事を詳しく説明された、<br /> ヒトは落ちてくる少数が居るだけで、人間と言ったら、<br /> 男は半獣人、女は人に獣の部位を付属させる者達が主となっているらしい。<br /> まあ、羽と触角の生えた吸血鬼が目の前にいるので、他に猫耳娘や狼男がいても、<br /> 不思議では無いよなと納得したが、ふと、蚊って獣? と思っていたら、<br /> この地域は西域と呼ばれる、自然を多く残した地域で、<br /> 他の地域に比べて、幻想と魔法の時代だった頃の存在が残っていると、<br /> 微妙に答えになってない説明をされた。<br /> <br /> まあ、その話の最中に、そう言えば、昨晩は耳を舐めようとしたら無かったので、<br /> 頬を舐めたり、試しに触角はどうなのか試してみたら、<br /> 凄くヒルダが乱れたなーと、考えていたら拗ねられた、怒られるより困るなあれは。<br /> <br /> ヒトは基本的に奴隷階級らしいと聞いて、シェーラの俺に対する扱いも理解出来てしまった、<br /> 納得は出来ないが。<br /> そこで、何故ヒルダは俺を様付けで呼ぶんだろ? と思ったら。<br /> <br /> 「カトリ様はシェーラ様の所持するヒトにして、神からの賜り物で御座います」 <br /> <br /> 即答された、小さく「言わなくてはダメでございまするか?」 と、赤くなりながら、<br /> 付け加えられたのは、聞かなかった事にしないと、我慢が出来なくなりで……ふと、<br /> なら子供は出来ても、結婚とかは無理なのかと聞くとそうでも無いらしく。<br /> <br /> 「立場、種族、性別、年齢を問わず、子供が出来たら結婚するのでする」<br /> <br /> つまり、相思相愛で体液の交換を十月十日行えば、誰とでも子供が出来てしまう種の特性と、<br /> 母親の性質しか受け継がないために、相手によって血筋が変化する事も無いので、<br /> 子供が出来るほどお互いに愛しているなら、誰とでも何とでも結婚出来るのだとか。<br /> <br /> 「大抵は同族でありまする、けれど……」<br /> <br /> 異種族や言葉さえ通わない存在とすら子を成して、結婚した例が無い訳ではないらしい。<br /> そんな話をしていたら、昨夜の事を思い出してしまって、<br /> 真昼間から何考えてると俺が思っていると。<br /> <br /> 「日も高くなったでするし……またするのでするか?」<br /> <br /> 爆弾発言がきました、何でも蚊は種族的に肌が弱く、目も強い光に弱いために、<br /> 基本的に夜行性で、睦事は本来は昼にする事らしい。<br /> <br /> 文化の違いにショックを受けつつ、このまま流されると押し倒してしまいそうだったので、<br /> 話を変えるべく……帰れるのかを聞いたら、困った顔をされて。<br /> <br /> 「神(おおいなるもの)にお伺いを立てないと、分からないのでする」<br /> <br /> なんでも、蚊の部族の所にヒトが飛来して来たのが300年振りらしく、<br /> しかも、その前回来たヒトは、この地で妻を娶り天寿を迎えて神となったらしく、<br /> 参考にならないとか、なんてうらやましい。<br /> </p> <hr /><p style="line-height:140%;"><br /> 「引いてるでする?」<br /> 「え? あっ! おおっ!!」<br /> <br /> 禄でも無い事を考えていた俺は、竿が引かれるたのに気が付き、ようやく我に返った。<br /> <br /> 「あんなのでも釣れるんだな……って、引きが強すぎないか? おいっ!」<br /> 「お手伝い、するのでするっ!」<br /> <br /> 釣りは合宿で食料調達の為に経験済みな俺だが、ブラックバスとは比べられない引きだっ!<br /> 焦る俺をヒルダが助けて……って、背中に抱き付かれますと嬉しいのですが、<br /> 俺の集中力と理性が、ゴリゴリ削れるのですが?!<br /> <br /> 「ご、ごめんなさいなので……ひゃうっ!」<br /> 「あたっ! あー、逃げられちまったか」<br /> <br /> 俺の理性と本能の綱引き……では無く、即席の針では荷重に耐えられなかった様で、<br /> 勢い余った俺達は、地面に重なり合うように倒れた。<br /> <br /> 「ヒルダ、やーらかいのが当たっ……」<br /> 「どうしたんでする?」<br /> <br /> 当たってたいへんな事になってる、そう言いかけた俺は、</p> <p style="line-height:140%;">倒れた拍子に、俺に乗っているヒルダの背景……夜空を見て、</p> <p style="line-height:140%;">そこに浮かんだ、二つの月から目が離せなかった。</p> <p style="line-height:140%;"><br /> 本当に今さらだが、異世界に来たんだなと思い、お袋やダチの顔を思い出していた。<br /> <br /> 「泣いて……いるのでする?」<br /> <br /> そう言われて、初めて視界が滲んでいることに気が付いた。<br /> 俺は泣いてるのか? そう呆然と思っていると、ヒルダが顔を近づけてきて……<br /> 涙を舐め取られ(きすされ)ていた。<br /> <br /> </p> <hr /><p> <br /> <br /> 「ごめんなさいでする」<br /> <br /> どれくらい、そうしていたのだろうか? ヒルダの声に我に返る。<br /> <br /> 神(おおいなるもの)に巫女(ヒルダ)が助力を願って、ヒト(俺)が落ちて来た。<br /> この事を説明されてから、ヒルダから謝罪の言葉を聞くのはこれで三回目、<br /> その度に気にするなとは言ってるのだが、俺は内心では迷惑と思っていたのかも知れない。<br /> 情けねえっ! 好きな女を守ると決めたのに、俺がヒルダを不安にさせてどーするんだ?!<br /> こんな姿をダチに見られたら、漢じゃねえと殴られる、むしろ、俺が殴るっ!<br /> <br /> 「ヒルダ」<br /> 「なんでする?」<br /> <br /> ああ、馬鹿な俺が、うじうじ考えても仕方無いんだ、やりたい事も、やるべき事も同じ、<br /> なら俺は幸せだなと、改めて思いながら、まず、ヒルダに謝る、けじめはつけないとな。<br /> <br /> 「すまん、迷っていた」<br /> <br /> お袋やダチの事を忘れる訳じゃ無い、全部終わったらヒルダの事を紹介しないといけないしな。<br /> そしてふと、シェーラにはきっちり声に出して宣言したのに、<br /> ヒルダには言葉で伝えて無かったなと、いまさら気が付く自分が馬鹿だと思う。<br /> <br /> 「好きだ、お前と共に居たい」<br /> 「……私で良いのでする?」<br /> <br /> ヒルダを抱きしめる事で返事をする、此処が異世界だろうと、どんな相手と喧嘩をする事になっても、<br /> もう戻れなくなかったとしても、うん、この思いは間違いじゃないっ!!<br /> </p> <hr /><p> </p> <p> 馬鹿と言う奴は、単純なだけに強い。<br /> 迷う事も無いほど、好きになっちまった俺は、<br /> だから、今、本当の意味で馬鹿になったんだと思う。 </p> <p> </p> <hr /><p> </p> <p> ちなみに、後の守護者カトリの主であるはずのシェーラ様は、<br /> 冷めてしまったご飯を前に、早く帰ってこないかなと、待ちぼうけでありまする。<br /> <br /> つづける? (Y/<a target="_self" href="http://www9.atwiki.jp/nekomimi-mirror/?page=%EF%BD%BC%EF%BD%AC%EF%BD%B0%EF%BE%97%EF%BD%A5%EF%BD%B6%EF%BD%A5%EF%BE%93%EF%BD%B7%EF%BD%BD%EF%BD%B0%EF%BE%84%E3%81%AE%E5%86%92%E9%99%BA">N</a>)</p> <hr />
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