猫耳少女と召使の物語@wiki保管庫(戎)

蛇足~はみ出しモノ~06

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蛇足~はみ出しモノ~ 第6話

 
 
蛇足のアジトは、驚くほどあっさりとしたモノだった。
生活に必要最低限の品物だけが置いてあり、それぞれの個室が割り当てられている。
あまり使っていないのか、生活臭は感じられず、妙に印象に残らない場所だった。
いや、ガルナとミリアルドの部屋だけは、生活臭に溢れまくる汚い部屋だったが。
達哉は空いている部屋を一つ割り当てられ、そこを軽く掃除して、アジトを後にした。
 
達哉がそこへ行った理由は、アジトを取り囲む魔法を上書きするためらしい。
アジトの周りには魔法が掛けられていて、来るモノの方向感覚を狂わせるが、
“蛇足”のメンバーだけは、例外として魔法の効力を受けないそうだ。
そして今回は、達哉の存在を、アジトを包む魔法に対して、上書きするの必要があった。
もちろん、アジトの金庫に、この前貰った報酬を貯め込んだり。
今任務が入っていない者は、そのままアジトに居残ってくつろいだり。
そんな理由もある。一番近くの街まで、獣人の足ならそれなりの時間でいけるらしい。
クユラのように乗り物を使ったり、ミリアルドのように飛べば、もっと早い。
“蛇足”のメンバー並みに体力があれば、そんなには不便ではないようだ。
 
そして達哉は、驚くほどのスピードでアジトを後にした。
現在は、虎国の中を走る蒸気機関車に、クユラと2人きりで乗り込んでいる。
最初こそは、日本ではほとんど残っていない蒸気機関車に、楽しいと思っていた。
しかし、新幹線とは比べ物にならないくらい遅いし、乗り心地も悪い。
レトロな雰囲気を楽しむのも良いが、やはり現代日本の科学が達哉の好みだ。
 
更に、虎人は魔法が苦手なので、虎国では魔法も滅多に見る事ができないのも痛い。
クユラは先ほどからずっと、何やら本を読み始めて、達哉を相手にしてくれない。
達哉は暇を潰す本も持っていないし、何よりこちらの世界の文字が、まだ読めない。
 
「ふぁあ………」
 
大きな欠伸を一つすると、今この状況になった経緯を回想する。
 
 
 
 
 
 
 
達哉は、アジトの地下室へ連れて行かれ、意味の分からない魔法陣のようなものに投げ込まれた。
気がつけば、知らない部屋の中で、投げ込まれたのと同じ魔法陣の上にいた。
そのままキョトンとしていると、今度は達哉の上にクユラが降ってきた。
下敷きになった達哉は、ぐみゅうと情けない声を出した。
 
「タチヤ、すみませんわ。下敷きにしてしまいまして。
移動した後、魔法陣から出てくれませんと」
「え、そもそも何が起こったのか説明して……」
「あら、言うのを忘れていましたわね。
良くてよ。わたくしが説明してあげますわ」
クユラは達哉の上からどくと、もはや恒例になっている、ホワイトボードと指差し棒を構える。
達哉が腰を擦りながら立ち上がるのを待ち、自分の方を向いたのを確認して、説明を開始した。
「まず、そうですわね。今タチヤとわたくしがいるのは、虎国ですのよ。
あの魔法陣は、空間と空間を繋げる効果がありますの」
「へえ、もう何にも驚かないって自信が有ったけど、やっぱり驚くよ……」
 
クユラの説明に、達哉は驚いた表情で返した。
流石にここまで来ると、魔法の偉大さを目の当たりにして、呆気に取られてしまう。
ようするに、瞬間移動をした訳だ。最早、どう反応すれば良いかも分からない。
今までにも、充分に元々持ち合わせていた常識は破壊されていたが、もう跡形も無く壊れた。
グッバイ僕の常識。
 
「いえ、これはかなり大変な魔法ですのよ。
わたくしでも、虎国のダンジョンで発見した文献を頼りに、
この魔法陣を描くのには、200年も掛かってしまいましたわ。
まあ、おかげさまでわたくし意外に、この魔法を使える方はいませんけど。
ですが、この魔法陣のある場所にしか移動は出来ませんし、
膨大な魔力を消費しながら、三日三晩寝ないで、飲まず食わずで描き続ける必要がありますのよ。
若い頃のわたくしも、随分と無茶をやったものですわ。
魔力を大量に消費するのも、徹夜も、過度なダイエットも、全部お肌の天敵ですのにね」
 
ホワイトボードに次々浮き出てくる絵柄を、指差し棒を使って補足しつつ話すクユラ。
達哉は感心して、頷いたり相づちをうったりしながら、そのホワイトボードを凝視していた。
なんでも、魔法陣と魔法陣を移動する事しか出来ないらしい。
だとすれば、今まで行った事のある場所でないと行く事はできない。
クユラの、先ほどの嫌がりようから見ても、行ける場所は少なさそうだ。
その証拠に、犬国から狼国への移動も、あの魔法陣は使わなかった。
単に、魔法陣を使えるクユラが、一緒にいなかったからなのかもしれないが。
 
タチヤは、クユラの補足に相づちを打ち、所々で歓声を上げる。
RPGゲームなんかは好きだったが、この世界は、本当にそんな感じの世界観だ。
そんな中で、ヒールを演じる傭兵集団の一員に、自分はなっている。
子どものような想像を、どうしてもしてしまう。
これは、幸運なヒトである達哉だからこそ言える事だろうが、元の世界にいるよりも楽しい。
それは顔に出てしまったのか、クユラは少し呆れた表情をすると、指差し棒で達哉の頭を軽く小突いた。
 
「そんな楽しそうな顔はしないでくださらない?
わたくしは、この魔法陣を描くのに、大変な苦労をしましたのよ。
オマケに起動させる度、かなりの魔力を消費しますし、
“蛇足”中でも使えるのはわたくしと、オルスがなんとか出来るだけですの。
この魔法の所為で、私がどんな思いをしているか、
魔法の使えない方には、一生分からない事ですわね」
「あはは、ごめんなさい……」
 
逆ギレされてる気もしなくないが、クユラの口調につい謝ってしまう。
それでも、苦笑しながら謝られた事に、クユラはまだ満足がいかないようだ。
クユラはもっと誠心誠意謝って欲しいと思ったが、
後で代償を支払ってもらおうか、自分の中で結論を付けた。
 
「まあ、いいですわ。それよりも、今回の仕事に参りましょう」
「あ、うん。今日は仕事でここにきたんだよね」
「他にどんな理由がありまして?しょうもない理由で、大事な魔力は使いませんわ。
この若々しい身体を維持するには、あなたには想像もつかない苦労があるのですよ」
 
達哉は、またも苦笑しながら謝った。クユラも結構セコいなと思いながら。
実年齢は500歳を超えると言っているが、達哉から見れば15前後の少女にしか見えない。
それを若々しい体を維持する努力や、苦労を語られても、イマイチ実感が湧かない。
だから、魔力をケチる姿に対しても、あまり肯定的に受け止められない。
しかしいつまでそれを考えているのも、達哉の性に合わない。
そこでその考えは停止して、別の事を考える。
他にも聞きたい事はあったし、それを尋ねようとした。
だが、クユラはもうホワイトボードと指差し棒をしまっている。
今さら聞くのもどうかと思い、疑問を口にする事はなかった。
もう一度頼んでまで、答えて欲しい疑問でもない。
それに物事を教えているときの、クユラからの上から目線は、あまり気持ちの良いモノではない。
ヒトとかそれ以前に、達哉の無知に対しての上から目線であろう事は、せめてもの救いだが。
 
「ボーッとしてないで、行きますわよ。
目的地はここから結構離れていますし、まずは駅に行って蒸気機関車に乗りましょう」
 
言いながらさっさと先へ進み、クユラは部屋の外へ出るドアを開けた。
すぐに先に進んでしまうクユラを追い掛けて、達哉も部屋から出る。
そうすると、薄汚れた廊下に出る。クモの巣が張ったりして、随分と古めかしい。
クユラはその惨状に、露骨に嫌な表情をしていた。
 
「手入れを怠っていましわ。少し目を離すと、すぐ汚れてしまいますのね」
「少し掃除をサボるとすぐに散らかるのは、何処の世界も共通だなぁ」
 
元の世界の達哉の部屋も、今頃は散らかり放題なのだろうかと、不安になる。
もしかしたら、警察の家宅捜索なんかで、もっと散らかっているかもしれない。
まあ、いくら心配したところで、もう帰る事もないのだろう。意味が無い。
現実的なところに目を向けなくては。そう思って達哉は、クユラに目を向ける。
 
「ちょ、クユラさん待って」
 
達哉はスタスタと先に進むクユラを追い掛けて、小走りになった。
少し油断すると、一気に引き離されてしまう。
クユラはあれでも達哉の倍以上の体力を持っていて、ヒトとは違う存在なのだ。
華奢な体付きからは想像もつかないが、ヒトのプロレスラーとケンカしても負けないのだろう。
 
「タチヤ、少しこちらに来てくださらない?」
「あ、うん」
クユラは、廊下の突き当たりのドアの前で立ち止まると、達哉を読んだ。
達哉が慌てて近寄ると、クユラは薄汚れたドアノブを指差している。
「これはちょっと、触りたくありませんの。
申し訳ありませんが、達哉が開けてくださると嬉しいのですが」
「ああ。今開けるよ」
 
達哉はドアノブに手をかけ捻る。そしてドアを開けると、そこには大勢の虎人たちが歩いていた。
その光景に圧巻されつつも、ここが虎国だと初めて実感した。
道行く人間たちは、虎のシマシマ毛皮の男や、虎の耳と尻尾のついた女性。
こちらに来てから、まだ虎人を実際に見た事はなかったので、素直に関心を持った。
 
「さあ、行きましょう。依頼人との交渉は、私が済ませておきました。
後は、仕事の場所へ移動するだけですわ」
 
 
 
そして駅まで連れて行かれて、クユラが予め予約していた、個室付きの寝台車に乗って、今に至る。
蒸気機関車では目的地まで1日以上かかるとの事で、こうして無意味な時間を消化している訳だ。
達哉はもう一度大きな欠伸をすると、背もたれに寄り掛かって、目を瞑る。
やはり、元の世界の電車の背もたれの方が、フカフカで気持ち良い。
 
「退屈そうですわね」
「やる事がなくってさ。暇で暇で」
「そうですか。ならわたくしが落ちモノの本を持っていますが、読んでみますか?
あなた達の世界の本は、文章の構成力や発送など、
こちらの世界の本よりもレベルが高くて羨ましいですわ。
それに絵もとても綺麗で、平和だからこそ、娯楽が発展するのでしょうね」
 
クユラは、そんな事を言って笑いながら、本を一冊取り出した。
ブックカバーをしてあるので、どんな本かは分からないが、サイズはA5版くらいだ。
達哉はクユラにお礼を言いつつ、その本を開いてみる。
これでやっと、消化しきれない虚無の時間から解放される。
それを喜びながら、本の内容に目を通した。どうやらマンガのようだ。
 
『リョ○マ君、挿れるよ……!』
『あ、不○先輩……ッ!!』
 
達哉はヒトとは思えないほどの速さで腕を動かし、本を閉じる。
見てはならないモノを見てしまった。そんな感覚に頭を支配される。
絵だけでなく、文字も少し読んでしまった事で、ダメージは数倍になる。
どうやらクユラは、こちらの文字に翻訳せず、元の文字で読んでいるようだ。
 
「なんてモン読ませようとすんの?」
「ウフフ、どんな反応をするか気になってしまいましたの。
美少年同士が愛を語り合うと言うのも、中々面白いものでしてよ」
「僕はオトコ!そんなの見ても面白く無いし、寧ろ気分が悪いよ!!」
 
18禁同人本をクユラに叩き返して、達哉は叫んだ。
あんなものが落ちてきていたなんて、ヒトの世界の文化を誤解されたりしないのだろうか。
なんでもかんでも落ちてくると聞いていたが、これは想定の範囲外だ。
本屋の絶対に避けて通るコーナーの商品が、こうして落ちてきている。
なまじ原作を知っているだけにダメージも大きく、達哉は鳥肌を立てた。
 
「もう、そんなに露骨に嫌がる事もありませんのに。
すみませんでしたわ。わたくしとした事が、少し調子に乗ってしまいました。
気を取り直して、仕事のお話でもしましょう」
「う~ん……、元の話しをはぐらかされてるようで、なんか腑に落ちないな……」
 
達哉はイマイチ釈然としないまま、疑わしげな視線をクユラに向ける。
しかし、まだ仕事の内容を聞かされていなかった事も有り、一応は興味をそそられたりしている。
これは、達哉にとって初めての“蛇足”として仕事だし、レナの役に立てそうだと思うと、やる気も出る。
達哉は訝しげな表情を崩さないまま、クユラの言葉に耳を傾ける。
 
「まあ、お気になさらずに。わたくしは気にしていませんわ。
それよりも、仕事の話しですわよ」
「OK、話して」
達哉は訝しげな表情を維持する事を諦め、真面目な表情になっていた。
「まあそう焦らずに。順を追って話しますわ。
まず今回の依頼主は、虎国のとある領主ですわ。
虎国では、無数の領主がそれぞれの領地に点在しているのを、知っていますわよね」
「ああ。レナさんと2人のときに、この世界の事情は大体教えてもらったし」
「なら話しは早いですわね。今回の依頼主は、ちょっとヘマをしてしまい、
悪どい別の領主に騙されて、自分の領地を失ったお馬鹿さんですのよ。
残った全財産を掛けて『アイツを破滅させてくれ』と、依頼されましたの」
「うっわぁ……」
初めての仕事と意気込んでいたが、これでもかと言うほど私怨の依頼だ。
「あまり傭兵と言う仕事を美化しない方が良いと思いますわ。
5割方は私怨の依頼で、4割も国の間での小競り合いやら、薄汚い事ばかりですのよ。
最後の1割がその他諸々。悪意無しに依頼される事など、滅多に無いと思ってくださいな」
 
サラッと理想の傭兵像を打ち壊され、後に不快感だけを取り残される。
達哉が自分の中で、傭兵を美化し過ぎていたのは確かだ。
突き付けられた現実に、達哉はがっくりと肩を落とした。
しかし、これもレナの役に立てると自分に言い聞かせる。
達哉は自分を奮い立たせて、クユラの言葉を待った。
具体的に、達哉が何をすればいいかを、まだ聞いていない。
 
「それでタチヤには、以前わたくしが言った通りの仕事をしてもらいます。
今回の目的は、相手を殺す事ではなくて、社会的に破滅させる事です。
だから、“蛇足” で一番頭の良いわたくしと、
ヒトである事を利用して相手の懐に潜り込める、達哉が依頼を受けるのですわ。
その男ですが、かなり悪どい事をしているそうで、
内部から粗を探せば、簡単に破滅させられると思いますの。
ですから達哉は、まずその男の一人娘に近付いて、徐々にその男に近付いてください。
疑り深い男だそうですが、流石にヒトを警戒したりはしないでしょう。
本当は、最も警戒すべき存在だと言いますのにね」
 
クユラの言った事を、達哉は自分の頭の中で整理し直す。
つまり、ターゲットの一人娘に近付いて、警戒心を解かし、徐々にターゲットに近寄る。
なんと言うか、詐欺師みたいなやり方だと思った。
あまり気の進む仕事ではないが、さっきもクユラから傭兵を美化するなと言われたばかりだ。
仕事なんだと、割り切らなくてはならないところなのだろう。
 
「分かったよ。じゃ、女の子を口説く練習でもした方が良いかな」
 
達哉は、レナが聞いたら、その瞬間に張り倒されそうな冗談を言ってみる。
しかし、まずは一人娘の女の子に近付くのだから、冗談を抜きにしても、練習の必要があるかもしれない。
そう考えを巡らせながら、レナと恋人として過ごす時間が、ほとんど無かった事を悔やんだ。
まさかあそこまで周りに関係を知られる事を嫌がるとは、達哉も予想外だ。
結局、誰も見ていないところで、少しだけいちゃつく程度の時間しか無かった。
達哉としてはイマイチ不完全燃焼な調子だが、レナは今のままで満足だろうし、我慢しようとは思ってる。
そのうち、レナと2人きりの仕事の機会などもあるだろうし、それまでの辛抱だ。
 
そうやって、今の仕事とは全く関係の無い方向へ、思考がリープしていく。
そんな中で、クユラは達哉が言った冗談に、珍しく真面目に対応した。
 
「そうですわね。タチヤは女性の扱いが下手そうですし、少しくらいは学ぶ必要があってよ。
せっかくわたくしが送り込んであげても、機嫌を損ねるようならそれまでですし。
…………わたくしが、直接教えて差し上げます。しっかりと覚えてください」
「え……、クユラさんが?」
 
15かそこらの少女に、女性の扱いを教えられる。
いくら中身は500歳でも、あまりしっくりくる感覚はない。
それは、達哉がクユラの事をあまり知らず、彼女の本質を全く理解していないからだった。
彼女の事をよく知るものなら、淑やかな態度は演技で、本質的には猫人なのだと知っている。
そして今回も、クユラは達哉を手込めにして楽しもうと考えていた。
 
「そう。わたくしが直々に。
20を過ぎたばかりの若造が、わたくしに教えて貰えるなんて、とても光栄な事でしてよ」
「……ッ!?」
 
ガタンと音を立てて、クユラが手に持っていた本が床に落ちる。
その横で、クユラはタチヤの肩を掴み、押し倒していた。
電車の中とは言え、ここは高級の個室だから、見られる事を心配する必要も無い。
達哉は抵抗しようともがいているが、そこはまあ、ヒトが相手だ。取るに足らない問題と言える。
クユラは、達哉の両腕を片手で抑え込むと、空いてる方の手を達哉のズボンへ潜り込ませる。
 
「いきなりこんな事をしてしまって、すみませんわね。
ですがタチヤはこれから、女性の元へ“貢がれる”訳ですし、練習の必要がありますわ。
分かっているでしょう? あなたはヒト。
それをこの仕事に活かそうとすれば、こうなるのです」
「うっ……、それは……ッ」
 
クユラの細い指が達哉の性器を掴み、慣れた手付きで弄り回す。
男に何かを吹き込むときは、こうしながらに限った。
しかし達哉は、それでも何処か後ろめたそうな表情をしている。
単純に嫌がっている訳ではなく、誰かに申し訳ない。そう思っている表情に見えた。
達哉の様子に、クユラは自分の推測を確信へと変える。
 
「レナさんの許可なら、もう取ってありますわ。
彼女も、元々はこういう仕事に使うつもりで、あなたを拾ったのですしね。
まさか恋仲になってしまうのは、予想外だったのでしょうが」
「――なッ!!?」
達哉の呆気に取られた表情を見て、クユラはニンマリと笑った。
思った通りの反応に、思わず頬がほころんでしまった。
「2人とも初心で、隠してるつもりでも、少しぎこちないと思いますわ。
これじゃ、闘うしか能の無い犬狼とか、精通を経験してるかも微妙なお子様鳥や、
盛るだけで、女心を1%も理解できないヘビぐらいしか、騙せませんわよ」
 
クユラには、気付いているのは自分だけだと言う自信があった。
伊達に500年生きてる訳ではなく、恋愛も性交渉も、人並み以上に経験はある。
色恋沙汰に関する洞察眼には、かなりの自信を持ち合わせていた。
今回も、口ではああ言ってるが、レナと達哉の関係は、かなり巧妙に隠されていた。
レナも開けっ広げにしてしまえば楽だと言うのに、
恋愛の経験が欠如していると、妙に気恥ずかしくなるんだろう。
 
いつの間にか、達哉の性器がかなり堅くなっている。
乗り気ではなくとも、男性と言うのは体で反応してしまうものだ。
クユラはタチヤのズボンのファスナーを開けると、ズボンをパンツごと、少しずつずり下ろす。
すると、窮屈な場所から出る事の出来た肉棒は、嬉しがっているかのように、天井を目指して反り立った。
中々綺麗な形だなと思いながら、クユラはその肉棒を口に含んだ。
先走りの液がもう出始めていて、少ししょっぱい味が、口の中に広がる。
 
「ちゅ……はぁ……。ん……ちゅ……
……レナさんにこんな事をされたら、再起不能になってしまうのでしょうね?」
「や、やめてくれよッ!!」
 
達哉は初めて味わうフェラチオの感覚に、背筋がゾクゾクするのを感じた。
元の世界にいるときは、彼女とだってそんな事をする勇気はなかった。
達哉の控えめすぎる性生活が反感を買い、自然消滅した記憶がある。
そしてレナのザラザラの舌でそんな事をされれば、一生使い物にならなくなってしまう。
 
みるみるうちに、達哉は絶頂への階段を上り詰めていくのが分かった。
クユラもそれに気付き、どうするか考えたが、結局フェラチオを中断せず、口の中に出させる事にした。
最後の仕上げとばかりに、亀頭の先を舌でなぞり、陰嚢を手で軽く揉む。
そうすると、今まで相手をした全ての男は簡単に果てた。そして、今回も同じだ。
 
「あっ、うぁッ!」
 
達哉の口から声が漏れ、勢いよく射精した。クユラはそれを全て飲み干す。
出された精液を飲み込んだ後も、口の中に入れたままの肉棒を舌で舐め、軽く吸う。
それと同時に達哉の口から、再度うめき声が漏れた。
達哉の射精の速さが自分の技量を表していると、クユラは得意そうな笑みを浮かべた。
ちゅっ、と音を立てて肉棒を口から出すと、透明の糸が後を引き、そして切れる。
 
「随分と早漏れですわね。
もう少し我慢出来るようにならないと、満足させてあげられませんわよ」
 
クユラはそう話しながら達哉を寝かせ、その腹の上に座る。
しかし、達哉が諦めずに抵抗しようとするのが、少し気になった。
クユラは右手の指先に、ふっと息を吹きかける。
そしてその指先で、達哉の両手首をなぞった。
すると、達哉の手首は床に張り付き、身動きが取れなくなる。
 
「これはっ!?」
「魔法ですわ。もう少し大人しくしてくれたら、使う必要もありませんのに」
 
達哉が身動きを取れなくなった状態で、クユラは達哉の上着を脱がし始める。
ボタンをプチプチと外し、下着をまくりあげた。
男の上半身なんて、さして隠す必要も無い筈だが、それでも達哉は恥ずかしそうな顔をした。
自分は遥か昔に忘れてしまった、初心な恥じらいに、クユラはフフンと鼻を鳴らす。
こういう男性を調教して、正真正銘のプレイボーイにしてしまうのは、中々面白い。
 
「まあ、今回は程々にするので、タチヤも楽しんでください」
 
しかし、クユラとて節度はわきまえている。他人の持ち物を、勝手に調教するつもりはない。
あくまでも、少しこういう事に慣れさせて、この先の仕事に支障が無いようにする。
今回は、その為にこうして押し倒しているだけだ。
 
だが、クユラ自身がこの行為を楽しんでいるのは事実だ。
思えばヒトとの性行為など、かれこれ100年ほど御無沙汰だ。
その時は、養うつもりも無かったので、数回した後に売ってしまった。
そして今は、レナが近くにいるときは、こうして押し倒す事もままならないだろう。
今の内に、目一杯楽しんで置くのが得策だ。クユラは、そう判断した。
 
「タチヤを楽しませてあげますわ。
ですが、わたくしも楽しませて頂きますわね」
「やめ……、僕は――うぅッ…!」
 
達哉の口から出る言葉は、クユラにはあまり心地良いとは思えなかった。
だから、聞こえるのが嬌声だけになるようにする。
尻尾を使って肉棒を扱きながら、達哉の乳首を指先で弄ぶ。
乳首は、女性だけでなく、男性にとっても性感帯だったりする。
案の定、達哉は体を震わせて、素直に反応してくれる。
慣れた男と言うのは、こちらを気持良くさせてくれていいが、
達哉のように慣れてない男は、こちらから攻めた場合の、手応えが堪らない。
まるで操り人形のように、クユラの思い通りの反応をして、身悶えてくれる。
 
「ウフ、気持が良いのですね。今、もっと良くしてあげますわ」
「ひっ、ぅあ……ッ」
 
指先で軽く弄ぶだけだった乳首に、今度は爪を立てた。
痛みとも快感ともとれない、微妙な感覚に達哉はうめいた。
クユラはそのまま、達哉の胸に顔を近付けると、次はもう片方の乳首を舐め上げた。
数回舌でぺちゃぺちゃと刺激し、次はそこに口をつけて吸い上げる。
達哉はなんとかして逃れようとするが、手首は床にくっ付いて離れない。
それ以前に、絶え間無く送られてくる刺激の所為で、全身に全く力が入らない。
そんな中でも、なんとかクユラを振り払おうと、慢心の力で胴体を揺らそうとする。
だが、それは察知されてしまったのか、達哉が体に力を込めたその瞬間、乳首に歯が立てられた。
そしてそれと連動して、先ほどから肉棒を弄っていた、クユラの尻尾が、動きをいっそう激しくした。
 
「さ、早く出してください。
恥ずかしがらなくても、男だから仕方ないと、割り切ってくだされば良いのですわ」
 
クユラが一旦顔を上げ、達哉の目を覗き込みながら、そう言った。
そして今度は、達哉の耳に顔を近寄せ、口に拭くんで舐め上げた。
もはや達哉の体は出来上がっていて、迫り来る絶頂に抵抗するすべはなかった。
そのまま一気に射精して、クユラの尻尾を白濁色の液体で汚した。
 
「はっ……はぁーッ…」
「あら、もう息が上がってしまいましたの。
まだ2回しか出していませんのよ」
 
肩で息をしている達哉に、クユラは詰まらなさそうに言った。
まだ達哉を気持良くさせてやっただけなのに、と思ったからだ。
少し慌てながら、体の向きを変えて、肉棒をまた口で咥える。
肉棒に吐いた精液を舐め取り、舌先で突付いてやれば、萎えかけた肉棒は、また堅くなる。
 
「さてと。次はわたくしの番ですわね」
 
息を整えている途中の達哉を、横目で見ながら、クユラは自分の着ていたローブを脱ぐ。
その下にあるシャツのボタンを外し、下着を脱ぐと、大きさ、形、共に申し分のない胸が露わになった。
見せ付けるように、その胸の自分の手で揺らすと、達哉の視線が向けられるのが、クユラにも分かった。
達哉も目線を逸らそうとしたが、他に目のやり場が無いと言うか、
ここで視線を逸らせば、オッパイの神様に怒られそうな気がしてならなかった。
そんな達哉の反応に、クユラは満足そうに頷く。
長い時間を掛けて、最も理想的な形に仕立てた、自慢の胸だ。
 
「胸ばかり見ていても、仕方がありませんわよ。
もっと重要なのは、こっちでしょう?
タチヤがあまりに良い反応をするので、わたくしも昂奮してしまいましたわ」
「こっち……?」
 
『こっち』と言う言葉に違和感を覚えながら、次の瞬間には達哉もそれを理解した。
達哉のお腹の上に座りながら、クユラはローブの下に着ていたスパッツを脱ぎ始めた。
達哉がクユラの大胆の行動に驚いている内に、あっという間にクユラは裸になった。
股間の隙間に覗くのは、薄く毛の生えただけの、外見年齢と遜色の無い、ピンク色の恥部。
相手が500歳を超える女性だという考えは、完全に達哉の頭から消えた。
そんな中で、クユラのテクニックだけが、外見とは不相応に高いモノだった。
 
「ほら、もうこんなになってしまいましたの」
 
クユラは達哉に向けて大股を開き、指を使って自分の恥部を広げて見せた。
当然の話しだが、その恥部の中に、処女膜は無い。
ぱっくりと口を開いて、愛液を垂れ流していた。
指に着いた愛液を舐め取ると、達哉の腹に恥部を擦りつける。
ぬちゃぬちゃと卑猥な音が鳴り、愛液は達哉の肌を伝って、床に落ちる。
そんな焦らすようなクユラの行動に、達哉の肉棒は痛いほどに反り立ち、精一杯の自己主張をする。
当然ながら、それは達哉の意志ではなく、男としての生理的反応だ。
 
「んもう。こんなに堅くして。
さっき2回も出したばかりでしょう?
そんなに挿れたいだなんて、タチヤも色魔ですわね」
「ち、違ッ……!」
「あら、テンプレートな反応ですのね。
ええ、あなたは色魔などではないですわ。ですが、男です。
わたくしも、我慢するのは好きではありませんし、そろそろ挿れますわ」
 
クユラは立ち上がると、達哉の肉棒の上まで腰を持っていき、そして腰を下ろす。
自分の指で充分に馴らしておいたので、なんの抵抗も無くあっさりと入った。
 
「んっ……、素敵ですわ。とても気持良くてよ。
ほら、わたくしが締め付ける度に、こんなにビクビクいって」
「あ……ッ!」
 
クユラが腰を上下に動かしながら、緩急を付けてタイミングよく肉棒を締め付ける。
どのタイミングで刺激すれば相手が気持良くて、自分も気持ち良いか、それを見極めて体を動かす。
達哉に乗っかって上下に動きながら、クユラは自分の胸を掴んで揉み解す。
達哉にして欲しいところだが、先ほどクユラが魔法を掛けて動けなくしたばかりだ。
 
「いつでも出していいんですのよ。
どうせ妊娠はしないのですし、下腹が膨らむまででもどうぞ……ッ。
ほら、もう先走りが出てる筈ですわ。
出したくて堪らないんでしょう?我慢する必要など、これっぽっちもありませんわ」
「で、でも……ッ」
「……仕方がないですわね。すぐに出させてあげますわ」
 
クユラは達哉と自分の腰を完全に密着させて、肉棒を自分の一番奥までおさめる。
そして動きを止めた後、持てる限りの力で肉棒を締め付けた。
ピッタリとくっ付いて、逃げ場など全く無い中で、とうとう我慢できずに、達哉は射精した。
 
「あぁん…ッ!……ふぅ、これなら何処へ出しても恥ずかしくありませんわね。
あなたの行く先のお嬢さんも、さぞ喜ぶでしょう。
タチヤの所為で、自分の父親が破滅するとも知らずに」
 
楽しそうな笑みを浮かべて達哉の方を見ると、クユラの話しは聞いていないようだ。
やはり休み無く行為を続けられて、疲れてしまったようだ。
あんまりここで長引かせて、仕事のときに響いてくるのも避けたいので、ここで終わりにする事に決める。
クユラが立ち上がると、その恥部からは愛液と精液が混ざったもの、そして萎えた肉棒がずるりと出た。
 
「タチヤは、そのまま寝ていて下さってもいいのよ」
「だ…けど……ッ」
裸体の上に、直接ローブを纏いながらクユラが言うが、達哉はそれに応じない。
クユラは少し考え込んだ後、達哉の顔を見て、しゃがんだ。
「今は、眠ってください。わたくしが後で起こして差し上げますから。
オヤスミ……、タチヤ」
 
クユラは達哉の胸に指を当てて、そっと何か図形の形をなぞった。
すると、達哉は急速に意識が遠のいていくのを感じた。
最後に見たのは、クユラの外見とは不相応に妖艶な微笑み。
21歳にして、初めて女性の恐ろしさと言うのを、目の当たりにした瞬間だった。
 
「ウフフ、こんな格好で寝てるタチヤを見るのも、良いですわね。
窓の外の風景を見てるよりは、いくらかマシですわ」
 
ガタゴトと蒸気機関車は進み続ける。
いつの間にか外は夕暮れになっていて、差し込む日の光が眩しくて、クユラはカーテンを閉めた。
窓の外の風景など、見ていたところでつまらない。
それよりも、あられもない姿で床に転がり、寝息を立てている達哉の方が、随分と見応えがある。
そしてそれを見ながら、達哉がオルスに犯されていると所や、ミリアルドを犯している場面を想像した。
中々笑える光景だ。自分の想像に、クユラはくすりと笑った。
 
蒸気機関車の度はまだ続く。
目的地までは、まだ半日ほど掛かるだろう。
 
 
 
 

 
 
 
 
 

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