記憶の穴
<起>
夕暮れが綺麗だった
エアーズロックのような場所で、黒髪のショートで背が低いどこかの中学の制服を着た少年が穴を掘っていた
まわりを見ると何人も掘っている
シャベルで、スコップで、つるはしで、せっせとせっせと掘っている
なかなか上等な生地でできた軍服を着た十数人の少年たちは等間隔に穴を掘っている
可愛い顔立ちで黒髪の子は、この穴が何の役に立つのかを知らない
ある日気がつくとここにいて、周りの人の真似をして穴を掘り始めただけだから知らないのがあたり前だ
周りの人は彼に興味がないのか彼を無視していた。皆穴を掘るのに必死だ
しばらく掘っていると、そこに狼のような耳と綺麗な尻尾に鋭い爪を持つコヨーテの獣人が現れてオニギリを配り始めた
皆が並んだので彼も並んだ
腰まであるブラウンの髪を風に靡かせている軍服の女性は彼を見て「誰だお前は?」と驚いた
綺麗な顔立ちがもったいないくらいに驚いた
彼が「知らない」と答えると彼女は彼を連行していった
他の少年達は少し羨ましそうに彼を見送った