猫耳少女と召使の物語@wiki保管庫(戎)

笑顔のカケラ 序章

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笑顔のカケラ 序章


「ヤター!テスト終わったー!!嬉しー、バリうれしー!!」
「わかったわかった、嬉しいのは俺も同じだが、少し落ち着け」
「いーや、お前は分かってない。わかるぞぅヤーモ、そりゃあ踊りだしたくなるほど嬉しくもなるよな、ともあれ、これであとは終業式を残すのみだ」
「そーだ、打ち上げにこの後カラオケでも行かね?」
「そうだね、そうする?」
「いーよいーよ。そうときまったらすぐ行こーぜ!ワイワイやろーゼ」
「さんせー」
なんて会話をして、カラオケで何時間も騒いで、みんなと別れて、
帰り道の途中で急にクラっと来て、そこから先が思い出せない。
気がついたら、ちょっとした山みたいなとこに、仰向けで寝ていた。

数えきれない数の星、足のほうには街の光?空には月が二つある、すげー。
「キレーだな、これ・・・」
さっきすごく大事なことを考えていた気がしたが、そんなことは気にしない。
今はただ、目の前の光景が美しかった。街中ではめったに見られない、思わず目が釘付けになるほどの夜空。
普通はここまでの間に気付くだろうが、ここは日本ではなかった。
だが悲しいかな、この少年はこんな大事なことさえも、心の隅に追いやってしまうような人間。世間一般的に形容するなら、そう、バカだったのだ。

どれくらいの時間がたったのだろうか。
少年は長い間、口をポカンと開けたまま、そこから動こうとしなかった。
「どうか、なさったのですか?」
突然、話しかけられた。
「うひゃあぁ。だれ、誰?」
驚いて振り向くと、これまた信じられないくらい綺麗な女の人がいた。
「申し遅れました。私は、シンシア=ルカ=セーブルと申します」
年齢は、20かそこらぐらい。触っただけで壊れてしまいそうなほっそりとした体。
体のわりにアンバランスさを思わせる胸。
夜だからか色が分かりづらいけれど、たぶん濃いブルー・・・のパーマが胸のあたりまで伸びていて。
見るからに高そうなドレスを着て、手にはパラソルを持っていた。
そしてあと一つ。少年も今度は気づかなかったりしなかった。
彼女は、ヒツジとか、ヤギとか、そういった草食動物系の耳を持っていたのだ。
「うっひょ~っ!!すんごい美人じゃん、マジ俺ついてるー」
バカは色めき立って小躍りしている!
「ねえおねーさん、その頭に付けてるのなんなのー?もしかして、今はやりのコスプレ?」
少年は、自分の耳の所を指差して続けざまに言葉を浴びせる。
一方、お姉さんはその攻撃(?)にも動じていない!
「あらあら。・・・でも質問の前に、自己紹介からでしょう?それが相手に対する礼儀というものですわ」
優しく過ちを窘めると、少年も理解したようだった。
「俺は山本英明。今高2で、17歳っ。現在カノジョ募集中ディ~ス!!これでいいっスか?」
親指で自分の胸を刺して、言い放つ。緊張感などかけらもない。
それを見て、この世界のお嬢様はこらえきれずに、ぷっ、と吹き出した。
ひとしきり笑った後、
「うふふっ、ふふふふふ、・・・ふぅ、面白い方ですのね。にぎやかで。羨ましいですわ」
少年は、どこが女性のツボに入ったのか分からなかったが、
とりあえず褒められているらしいので、
「俺、明るいのが取り柄っスから。」
と、返した。
「ところで、気になったんだけどそれ何?やっぱコスプレっスか?」
と、今度は彼女の耳を指差して聞く。
「コスプレ?それが何を意味するかはわかりませんが、これは正真正銘、私の耳ですよ?」
少年は珍しい物を見るような目つきで相手を見た。
「何なら、触って確かめてみますか?」
「いいの!?ぜ、是非、お願いするッス」
触ってみると、それは紛れもなく本物。温かいし、時折ぴくりと動いた。
そうして確かめてから、やっとあることに気付いた。
ここは、日本じゃない。
思っていることを聞くと、すぐに答えが返ってきた。
「そうですね、ここはあなたがもといた国、ニホン、とは違います。
  ここはヒツジの国の、一小国。アルトラントというところです。」
沈黙。
「・・・マジすか」
「もちろんマジ、です。」
「えええぇぇぇ~~~~~っ!?」
それが、二人の出会いだった。

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