猫耳少女と召使の物語@wiki保管庫(戎)

首蜻蛉 一話

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首蜻蛉 一話


「うぅ~…ひゃう、もうちょっと右…」
「ここ?」
「きゃう!ちべたい!もーなんで左右間違えるのよ~!!」
 こんにちは。僕は敬部。「けーぶ」って呼ばれています。ご主人様の背中に湿布を張ろうと格闘中。
趣味はご主人様の「アカネ」様に悪戯することです。たとえば、わざと湿布の張りどころを間違えたり。
「ていうか、こんなの本当に効くのぉ?」
「そりゃトンボの世界には無いでしょうけど、人間世界じゃ普及してますよ。肩こりとか、腰痛とか」
「む~…ぜったい、ちべたいだけだ~…」

 ヒトの言うトンボとは、羽とか、目とか、いろいろと人間離れした要素があります。
でもご主人様達「トンボ族」はそんなのでもないですよ。
たとえば赤の幾何学模様の羽は取り外し式。これ、魔力を固めた物なんで、割れてもすぐ構築できます。
履き慣れたクツのように感触があるので、急にさわると「ひゃう」ビックリします。
他にも、目元は「にゅー」普通の人間です。ほら、モミモミすると面白顔できますよ?
トンボらしく全天視認できることはできますが、素の状態だと人間と同じです。視力は平均30だけど。
さらに「あうー」全身は普通の人間女性。せいぜい触覚が2本生えているくらいですかね?
それに全身に幾何学模様があります。これはトンボ柄です。アカネ様はミヤマアカネだと思います。
ご主人様の本名が「深山 茜(みやま あかね)」なのは偶然のはず…。「もっと下もー」
さらにオシリから生えたシッポです。まるで装甲版のような外骨格ですが「うんにゅー♪」
意外とやわらかくて、マッサージすると蕩けてしまいます。

「おしまいです」
ご主人様の背中にタオルを挟んでまたがりもみほぐす時間は過ぎました。
「え~」
「『え~』じゃないです。ゴハンつくらないと」
「弾幕勝負したのよー、つかれたのよー。もうちょっと、ね?」
 弾幕勝負とは、トンボ流のケンカです。いえ、決闘ですね。
魔法で火の玉とか土くれとか飛ばして打ち負かすんですけど、
勝つと食材を値引きしてもらえたりします。つまり日常です。
 ご主人様のブーイングをよそに立ち上がろうとしたらうわあっ!?
 ゴチン
「えへへー、足つかまえたー」
 ご主人様は常に悪気はないんです。
でも顔からお布団の無いところに入りました。ここ、岩の洞窟にワラを編んだじゅうたんです。
保温はあっても、かたいです。いたいです。
「…ふえ」
「ほら泣かない!」

 グズり出した自分を両手でギュっと包み込んでくれます。
サラシに巻かれた胸(トンボには下着なんてありません。少数民族ですから)に顔が押し付けられて、
なんか少し悔しくなったので我慢しました。
「怒んないでよ、ごめーん」
 …その顔でBB弾ゼロ距離級の威力で何度魔法を叩き込まれたことか。(いわゆる、しつけです)
でも毎度の事ながら、物理的に脱出できない都合で、僕はここにいます。それは追々。
「…おかず、ハエとカマキリの煮付けにしますよ」
「あーんごめん、ってばあ!だからそんなババ臭いメニューは許してよう…」
胸元にホールドアップされたまま頭頂部をグリグリ撫でてきます。くすぐったいです。
ちなみにトンボは肉食です。
狩人嗜好で新鮮な大物を狩るトンボと探索者嗜好で腐肉を好むトンボがいます。
ご主人様は前者。バーベキューはレアどころかブルーが大好き。腐肉や煮付は高齢者の人気だそうです。
ぼくは断然にウェルダンですね焦げ目がいいんですよ。ナマニクとかお腹を下します。ていうか死ねますよ?確実に。

「さ、もうお米も炊き上がっているころです」
「ジェラート冷えてるかなあ!?」
 ご主人様がキラッキラの目でこちらを見ます。
「いい頃合ですよ」
 僕は微笑み返しました。
落ち物の本のレシピで作った、シャリシャリ(シャーベットランクです)の蜂蜜ジェラートが大好きなんです。
ただし作るのに半日かかるんで月に一回くらいしかやりません。
(ちなみに本気で機嫌が悪いときはジェラートにミミズ突っ込んでやりました。気がつかずに食べてました…トンボだからいっか?)

 寝室から隣の居間に二人で進むと、たくさんの妖精がいます。
「ニョホ」「ニョー」
 この一つ目のモフモフが生えている毛玉状物体は「ベアード」というそうです。
「メシクワホー」「ハラヘニョー」
 わりとしゃべります。ちなみに我が家には20体います。
手乗りサイズといいますか、直径は大小込みで5~10センチだと思います。
毛の色はこれまた七色おりまして、まあ半数は黒と白です。
これが、もっちもっち、もっちもっちと跳ねながら足元に集まってきます。
実際さわり心地はもちもちのフワフワです。
「はいはい、みんなもゴハンだね。それじゃあ冷蔵庫を…」
 ガチャリ
「…えッ、空っぽ!? どーいうことよ、ねえ!?」
 ぼくにもよくわかりません。ふとベアードたちのほうを見ると
「二十匹余さず一斉に目を逸らしただとッ!?」
「消してやるッ!貴様らの存在を消してやるうううう!!」

「わー!!!魔方陣展開しないでください外骨格召還しても狭いです家がつぶれますーーー!!!」
「また建てればよろしぃーーーーーーー!!」
「ニョホホーーーー!!!」

 チュドムッ

 食べ物の怒りは恐ろしいです。

つづく



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