猫耳少女と召使の物語@wiki保管庫(戎)

ある日、町の中

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ある日、町の中♪ 




 ネコの国のとある都市
 ちょっぴり煤けた研究所に、今日もちみっこの元気な声が響きます。
「助手君助手君!」
 イチゴのような赤い瞳に白い肌、小ぶりで愛らしい顔を囲むふわふわくるくるな真っ白な髪の毛にょっきり生えた半円の白い耳。
 小さな体を包む大きな白衣、裾からはみ出る細い尻尾はピンク色。
 頭脳明晰天真爛漫なこの美幼女の名前はステファニー通称アルジャーノン博士。
「どうしました?」
 対するは、ご近所から(男女共に)「エプロン姿の細腰(普通のネコ男性に比べると)がマジ堪らん」と密かに人気なヒトオス中年の通称助手君。
 今日は憔悴し、うっすらと無精ヒゲが生えています。
 コレを見て向かいのゴメスさん(♂独身)はネコマンマ三杯いけました。
「ちょっと買い物に行ってくるよ!助手君はきっちりしっかり寝てなきゃ駄目駄目だよ?」
「気をつけ…って、駄目です。一人で買い物なんて」
 そうアルジャーノン博士は、今年で五歳のピチピチ幼女。
 道を歩けば変態さんが物陰から火傷しそうな熱い眼差しを注ぐので、助手君の苦労は絶える事はありません。
 寄る年波に耐え切れず病に倒れてしまったとはいえ、保護者として助手君は必死に止めますが、博士の決意は揺るぎません。
「そんな事を言ったって無駄無駄無駄無駄ァだよ!風邪の時はフレッシュで栄養のあるフルーティなものを食べるべきだっていったじゃないかい!!」
 いつもならば助手君と一緒に買い物をしているのですが、日頃の苦労がたたり助手君は風邪を引いてしまったのです。
 大変。
「これぐらいは寝ていれば治ります。博士は外に出ないでください」
 助手君はそういうとふらふらと布団へ戻り、そのまま突っ伏してしまいました。
 普段ならばもっとぐだぐだと説明する所なのですが、そんな気力すらないようです。
 そんなへろへろな助手君を見て、博士は決意を固くしました。
 このままでは、毎日のように研究所に顔を出す猫井技研のネコ達が、助手君に生命的にじゃないけど物凄く危険な事をしでかしますぞ!と、
 博士の普段は使わないネズミ特有生存本能が告げています。
 大変です。
 
 なんたって、助手君は博士の大事な『好きな人』なんですから。
 
 博士は、小さな手で助手君の上に半分掛かっている毛布を肩まで引っ張り上げ、タオルを濡らして絞ると頭の上に載せました。
 毛布を引っ張りすぎて口まで埋まっていたり、タオルの絞りが足らず床がびちゃびちゃになっていたり、顔半分が濡れタオルで埋まっているのは極些細な事に過ぎません。
 博士は白衣を脱いで折り畳むと、助手君がいつも使っている買い物袋とお財布を持ちました。
 顔の大半を濡れタオルで埋もれている助手君が苦しんでいます。
 博士は自分の経験から、熱が出てつらいのだろうと深く同情し、一層決意を固めました。
 天才ですからお金の計算はバッチリです。
 普段は助手君とお買い物に行くので、道順だってバッチリです。
「待っててね、助手君!」
 幸い博士は家の鍵を閉めるのは忘れたので、助手君は回覧板を持ってきた隣の奥さんによって無事、窒息死の縁から生還する事ができました。
 
 
 町の中をピコピコサンダルを鳴らしながら歩く博士。
 袋一杯に買い込んだ荷物が地面を擦っていますが、なんら問題ありません。
 商店街のみなさんは、心配と欲情の入り混じった視線で博士を見守っています。
 そんな事とは露知らず、博士は道をずんずんと進み…謎の黒い物体を踏みつけてしまいました。
 具体的に言うと、二本の平べったくて細長い耳に、ネコとは違った柔らかそうな黒毛に覆われた物体です。
 博士は違和感を感じ、しばらく足元を見つめ……感触が気持ち悪かったのでぐりぐりと踏みなおしました。
 念入りに踏み直していると、なんと!黒い物体が低い音を立て身動ぎし、突然立ち上がりました。
 足場を泣くし、しりもちをつく博士の瞳に黒い巨体が立ち塞がります。
 どんよりと鈍く光る緑色の眼に逆光のせいか、より一層黒く見える人影。
 博士は思わず目を丸くして見つめていると、黒い巨体は白く長い歯を剥きだして叫びました。
「……ロリっこモエエエエエー!!!」
 博士は慌てず騒がず助手君に持たされている黒い棒のスイッチを入れました。
 青白い光が先端に走ります。
「えい」
 飛び散る花火と同時に変態が妙な声を上げ地面を転がりだしたので、博士は気を取り直してお買い物を続ける事にしました。
 
 
 カレーは、万能食品です。
 様々な調味料は漢方にも通じ、複数の野菜に肉を煮込んだエキスは種族を問わずに栄養を補給し、胃袋と心に熱い癒しを与えてくれます。
 そんなカレーに必要不可欠なカレー粉を売ってくれる、ガネーシャさんの調味料専門店。
 博士は病気の助手君に博士は大好物の甘いカレーを作ってあげようと思いましたが、あいにく今日はお休みでした。
 ガッカリしながらお店に背を向けると、物陰にどんよりとした黒い影。
 濁った鈍い光を放つ緑の瞳が眼光鋭く博士を見つめています。
 
 博士は無言で黒い棒を握り締めましたが、なんという事でしょう。
 何も起きません。
 博士は愕然としてスイッチを入れたり振り回したり分解して接触不良化確認しようとしましたが、ドライバーがないので諦めました。
 
 我に返り慌てて逃げる博士の後を変態が鼻歌交じりに追いかけてきます。
 たくさんの人がそれを目撃していましたが、みんな自分の貞操の方が大事なので見なかったことにしました。
 半泣きで走る博士をスキップで追う変態。
 転ぶ博士。
 迫り来る黒いウサギ。
 半泣きの博士はとうとう路地の隅に追い詰められてしまいました。
  
  
「ある貧血♪モリブデン♪クラミジア♪ただいま助手君!」
 荷物を抱えた博士が帰ってくると、助手君は布団で眠ったままでした。
 出たときとは違う寝巻き姿で、一層やつれた表情を浮かべていますが、熱は下がったのか顔色はいいようです。
 台所では、冷めたおかゆと博士用の晩御飯が用意してありました。
「もう助手君てば!言う事を聞かない人にはお仕置きにお仕置き水だよ!?」
 聞こえないとわかっていつつ博士は小言を言うと、道端で落として泥まみれになったお財布を片し、膝に貼られた絆創膏を一撫で。
 
 初めての買い物に緊張したのか、瞼が落ちてきます。
 
 博士は、初めてのお使いで何があったのか助手君に話そうと思いました。


 助手君の熱が下がったら。
 

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