猫耳少女と召使の物語@wiki保管庫(戎)

学園015

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文化祭準備中 




 誰だ。文化祭とか始めたの。
 誰だ。ウチのクラスはコスプレでプロレスやろうとか言い出したの。
 意味わかんないし。後で〆る。きゅって。
 私は密室の熱気で朦朧としながらボタンを1つあけ、溜息をついた。
 スカートが足に貼りついて気色悪い。
 ハーフパンツに履き替えればよかったのに、めんどくさがった結果がコレだ。
 こんなメイド服は陰謀に違いない。
 作ったの、私だけど。
 というか、なんでこの季節にこんなに暑いのかわからない。陰謀だ。全部陰謀に違いない。
 埃っぽいダンボールの上に腰掛け、エプロンで汗を拭う。
 頑丈な扉は、外で何かが邪魔しているらしくちっとも動かない。
 探し物だったマットレスは足元で存在感をアピールしているけど……。
 人目のないのをいい事に髪の毛に指を突っ込み、ガリガリ掻き毟り、暑苦しさを倍増させるウサミミを取ろうか悩んでやめておく。
 せっかくつけたのに、勝手に取るとりっちゃんに怒られる。
 校舎内にもかかわらず、圏外と表示された携帯電話をポケットに仕舞い、もう一度金属のドアノブをガチャガチャと回すもちっとも扉は開かない。
「りっちゃーんっ!ちーちゃーん!ニッキー!誰か居ませんかぁー?誰か開けて下さいー!」
 ガンガンと扉を叩いても、誰の気配もない。
 うう、旧体育倉庫室なんてあからさまに怪しい所、来るのヤだったのに……!
 一番早く衣装が出来上がった私が大道具係りを手伝うべく、準備表みて勝手にマットレス取りに来たのが原因なんだけど……。
 あ、しまった。誰かに伝えとくの忘れちゃったかも……。
 とすると誰かがここに来るの、相当あと……?
「やぁーん……」
 薄汚れてはいるけど冷たい壁に頬を押し付け、溜息。
 溜息多いな。
 このクセやめなきゃ、カッコ悪いし。
 重い瞼を擦ると汗がべったりとついた。
 埃まみれ汗まみれだ。想像したくない。
 お母さん、この服洗ういい方法知ってるといいんだけど。
 案外お父さんかお祖母ちゃん知ってたりしないかな。
 クリーニングはちょっと恥ずかしいし。
 お兄ちゃんなら知ってそうだな……訊くのヤだけど。
 近所の幼馴染を考え、溜息が出そうになるのを堪える。
 絶対無駄に喜ぶ。
 立ち上がって、扉をガンガン叩いていると暑さで頭が朦朧としてきた。
 あ、やばい。
 貧血かも。
 保健の先生に言わすと、成長期には良くあることらしいけど貧血ってやっぱヤダ。
 朝礼の時もしょっちゅう動けなくなるし。
 蹲って膝を抱え込んでいると、不意にガチャガチャと激しい音がして、扉が開かれた。
 朦朧としたまま顔を向けると、逆光で顔はよくわからない猫耳の長身メイド姿……。
「りっちゃん?」
 頭を振って否定の言葉を口にした彼女の顔は、確かに見覚えがない。
 黒髪に黒い瞳、薄く化粧している彼女は長身でスマート、スマートすぎて男の人かと思った。
 こんな格好してるぐらいだから、ウチの生徒のはずだけど。
 ……あ、そうか、手芸部のカルト先輩に似てるんだ。
「熱中症?」
「たぶん、そこまでいってないと思うと思うんですけど、助かりましたありがとうございます。扉、開かなくって」
 頭を振ってお礼を言う。
 ん、……呂律回ってないかも。
 足元に転がったままのマットレスを引っ張り、狭い扉を苦労して抜けると端の方がひしゃげている……。
 誰だ、金属の扉を壊したの。
 彼女も開けるの大変だっただろうに。
 彼女は大きなダンボールを抱え出てきたので、一応戸を閉めて鍵をかける。
 あとで先生に伝えておかなきゃ。
 うん。
 
 あ。

 
 気がつくとベッドだった。
 また貧血だ。鉄分摂らなきゃなぁ……背が伸びたのは嬉しいけど……。
 しばらく天井を見上げたまま心臓の音に耳を澄ませた。
 ひんやりした室温が気持ちいい。
 保健室らしく仕切りの白い布越しに人影が見える。
「あ、どうも。その節は」
 起き上がり、先程の彼女に挨拶する。
 椅子に腰掛けた長身メイドさんは目が余り良くないのか、目付きが悪い。
 眼鏡忘れたんだろうか。
 大変そうだ。
 氷の浮いたグラスを勧められるまま空にする。水が甘い。
 養護の先生は、外でも怪我人だか病人がでたらしく出払ってしまったので、彼女が仕方なく居てくれたらしい。
 申し訳ない気持ちでひたすら謝ると、表情をかえずに大した事じゃないと答えられた。
 クール!クールカッコイイ……!
 これはゆかりん先輩以来のカッコよさ!
 いや先輩とは別のカッコよさの種類だけどかっこいい!
 感動しつつ、熱中症なりかけだったらしい私は更に鮮やかな色をしたスポーツドリンクをイッキ飲みしてそのまま噎せた。
 ナニコレ、まずい。ビックリするほど美味しくないナニコレ。
 騙された。色に騙された。
 慌てて近くのティッシュを掴み、拭く。
 強い視線を感じ、思わず苦笑いを浮かべる。
「ごめんなさい。どじで」
 クールな表情は変わらず、目線は私の襟首に集中している。
「脱げ……」
 ぽつりと零された言葉に首を傾げる。
「染みになるから、脱げ」
 目が主婦だった。
 むんずと襟首を掴まれ、椅子に押し付けられる。
「いや、脱ぐのはちょっとあっちょ、待ってえっあのえっえっ!」

 そのとき、保健室の扉が勢いよく開かれた。

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