取り扱い注意にて。
ヒトは弱い。
少し力加減を間違えただけで簡単に骨が折れるし、ちょっと体を冷やせばすぐに風邪をひいて寝込む。
とにかくデリケートで、体力もなければ、寿命も短い。
「飲め」
通常の五倍の濃さのブラックコーヒーを、ヒト奴隷に差し出す。
ヒト奴隷は嫌な顔をしながら、舐めるように少しだけ口に含んだ。
このヒト奴隷、実は尋常じゃない甘党である。
辛いもの、渋いもの、苦いものは、ほぼ食べられない。
「残すな」
ヒト奴隷はしぶしぶコーヒーを口に運ぶが、なかなか飲み込めずに、四苦八苦する。
きゅっと目を閉じて苦味に耐えるその表情が、まるでコトの最中のようで。
「苦い……」
コクリと喉を鳴らした後、ヒト奴隷が涙目で訴えきて、思わずニヤリとした。
あぁ、ホットだったら体が温まって頬が染まるだろうかと思い、次からは熱々にしようと考える。
ヒトは弱い。
どうすれば負担をかけずに楽しむことができるのか――
取り扱い注意の高級品を前に、模索は続く。