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対戦車戦で満足するしかねぇ!鬼柳京介のバトルロワイアル - (2012/05/05 (土) 01:44:21) の最新版との変更点
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*対戦車戦で満足するしかねぇ!鬼柳京介のバトルロワイアル ◆RXvcy0alTE
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―――― 対 戦 車 戦 用 意 ! ――――
【♪】
始まりは一発のレーザーだった。
美樹さやかに向けて放たれたそれは、彼女の身体を掠りもせずに何処かへと飛び去っていく。
レーザーをかわしたさやかは、瞬く間にその姿を魔法少女としてのそれに変化させる。
そして一振りのサーベルを手の中に召還し、レーザーが飛んできた方向を見据えた。
さやかの視線の先に居たのは、戦車である――いや、果たしてそれを戦車と言っていいものなのだろうか。
何しろ、さやかと対峙しているそれは、一般的な戦車とはどこか"ずれて"いるのだ。
キャタピラは間違いなく戦車の有するそれであり、堅牢なその図体も、やはり戦車特有のものである。
しかし主砲と呼ばれる部分――そこが何故か、髑髏の仮面のようなもので覆われてしまっているのだ。
あの髑髏面は何の意味があるのかとさやかが思った直後、それの眼球部分からレーザーが再び発射される。
なるほど、どうやらあそこにレーザーの発射装置が存在するようだ。
そんな事を考えながら、さやかは襲いかかるレーザーを難なく回避する。
敵は不動のまま攻撃を放っており、そこからどこを攻撃するかなど容易に想像できる。
それに彼女は、期間は短いながらも魔女と命懸けの戦いをしてきたのだ。
この程度の動作は、できて当然と言えた。
「……アンタも殺し合いに乗ってるの?」
乗り物である以上、内部に操縦者が存在する筈だ――そう考えたさやかが、戦車に向けて問いかける。
戦車からは何の返答もなく、その代わりと言わんばかりにレーザーを放ってきた。
それも避けたさやかは、サーベルの切っ先を、敵意を込めた視線と共に戦車の方に向ける。
支給された戦車を人殺しの為に使おうとしているのは、誰が見ても明白だった。
「だったら、アンタは私が倒す……絶対に」
さやかは「正義の味方」であろうとする魔法少女だ。
そんな彼女にとっては、殺し合いに乗った敵は魔女と何ら変わり無い。
誰かを殺めて絶望を振りまく前に、何としてでも切り裂かなければ。
「それが自分の使命なんだ」と言い聞かせて、さやかは剣の柄を強く握った。
戦車の方からは、相変わらず返答はない。
髑髏面の目の奥で、赤い光を不気味に揺り動かすだけである。
【^U^】
さやかと戦車の戦いを傍観する男が、一人。
張り付いた笑みを浮かべながら、戦車の立ち回りを見つめている。
「勘違い、ですか。子供らしい」
男は、今戦車と交戦している少女の言葉を思い返していた。
聞けば聞くほど滑稽な台詞だ――あの女は、戦車の中に人がいると思いこんでいるのである。
あれに操縦者なんて居ないと言うのに、何とも笑わせる話だ。
「まあいい……試してあげよう、お前の力を」
中の人の有無など、彼にはどうでもいい話題だった。
彼が見極めたい事は、ただ一つだけである。
己に支給された決戦兵器――電光戦車の性能とは、如何なるものなのか。
【♪】
この兵器は尋常ではない――さやかは戦車との戦いで、そう判断せざるおえなかった。
まず第一に、この戦車は"世間一般が認識している戦車"とはあまりにも動きが違う。
少なくともさやかの知っている戦車とは、「キャタピラを利用して前方にゆっくりと進んでいく兵器」である。
しかし今対峙している敵は、その常識を嘲笑うかのように縦横無尽に移動しているではないか。
砂煙を上げながら動き回る戦車の髑髏面が、まるでさやかを嘲笑しているようにすら思えた。
さらにこの戦車、レーザー以外にも複数の兵器を搭載している。
前面に取り付けられた機関銃、放物線を描いて飛ぶ爆雷、自身を包むように発せられる電撃……。
戦車一台には多すぎるのではないかと思える数の武器が、それには積み込まれていたのだ。
武器が多いという事はすなわち、戦闘時の手数が増えるという事と同義である。
様々な武器で襲いかかる敵に、さやかは苦戦を強いられざるおえなかった。
だからと言って、戦車が全面的に有利という訳ではないではない。
幸いな事に、移動速度ならまださやかの方に分がある。
いくら相手が多種多様な武器を装備していたとしても、当たらなければ意味がない。
さらに、さやかはまだ「秘策」と言うべき作戦を隠し持っている。
戦車を一撃で無力化できるであろう代物が、彼女には支給されているのだ。
大雑把に言ってしまえば、その支給品とは爆弾である。
「ロットン」なる男が使用したとされる、時限式のダイナマイトだ。
さやかはこれを戦車の足元で起爆させる事により、戦車を横転させる作戦を思いついたのだ。
起動から爆発までが僅か4秒という事に対し、「ロットンはどうやって逃げたのか」という疑問を感じながらも、
デイパックから爆弾を引き抜き、サーベルを持たない方の手で握り締める。
チャンスは一瞬、失敗は決して許されない。
時限装置を起動させ、さやかは戦車に向かって走り出した。
それに対し戦車も、襲いかかる者を撃墜せんと攻撃を始める。
――残り4秒。
戦車が別種の武器を同時に発射できないのは、戦いの中で理解している。
降り注ぐレーザーを、疾走しながらも回避していく。
――残り3秒。
戦車が使用武器を変えた。
現れるのは、前門に取り付けられた機関銃である。
あれは流石にかわし切れないと判断したさやかは、己の肉体にある仕掛けを施した。
――残り2秒。
ある仕掛け――それは「痛覚遮断」。
自身の「痛い」という感情を取り除く事により、彼女は後退を知らない狂戦士となるのだ。
放たれた弾丸が、容赦なく肉体に直撃するが、さやかは怯むことなく戦車と距離を詰めていく。
――残り1秒。
戦車の真下に向けて、爆弾を全力で放り投げる。
爆弾はさやかの思惑通り、二つのキャタピラの間に入り込んだ。
作戦の成功を確信した彼女は、真横に魔方陣を展開。
そして、すぐさまそれを思い切り蹴る事により、無理やり移動方向を変更させる。
この僅かな時間で、可能な限り遠くに行かなければ、自身も爆発の煽りを受けてしまうからだ。
勢い良く転びながらも、どうにか距離を離す事には成功する。
――残り0秒。
戦車の真下で産声を上げた爆発は、街を一瞬だけオレンジ色に照らした。
轟音が辺りに轟き、さやかの肌を爆風が打ちつける。
立ち上がり、己の肉体に回復魔法をかけて傷を癒すと、さやかは安堵の息を吐いた。
この威力だ――瞬く間に赤黒い煙に包まれた戦車は、無事では済まされないだろう。
戦車の内部の者も、あの爆発を受ければ相当な傷を負っている筈だ。
少なくとも、もう悪事はできない状態にはなっているだろう。
そう思いながら、痛覚のシャットダウンを解除し、戦車に背を向けて歩き出す。
その瞬間――さやかの身体に、灼熱の弾丸が埋め込まれた。
激痛が全身を駆け巡り、頭が一瞬だけ真っ白になる。
肉体のバランスは崩れ、さやかは地面に倒れ伏した。
全身が爛れそうな痛みが体内で暴れ狂い、さやかの肉体を蝕んでいく。
最早、悲鳴すら挙げられない――それ程までに、凄まじいものだった。
痛みを忘れていたせいで、痛みから目を背けていたせいで、忘れていた。
普通の人ならば、銃で撃たれれば悶え苦しみながら死ぬ、という事を。
一体どこから、誰が撃ったのか。
激痛に耐えながら、さやかは頭を上げて振り返る。
彼女の真後ろにいたのは――戦車だった。
「そんな……!どう……し、て……!?」
驚愕せざるおえなかった。
あの爆発を受けても、戦車には傷一つ付かなかったのである。
会心の一撃と成りえる筈だった一撃は、全て無駄に終わっていたのだ。
さやかが知る由もないが、電光戦車が無傷だったのは、「攻性防禦」と呼ばれる特殊な構えを使ったからだ。
人の心を持たぬ兵器が、人間が編み出した構えなど取れる訳がないと思うだろう。
しかし生憎、電光戦車は一般的な兵器とは一線を隔す兵器である。
「攻性防禦」が可能なようにプログラムが組まれていても、何らおかしくはないだろう。
戦車は無言のまま、さやかへとにじり寄ってくる。
逃げようにも、自分の足が言う事を聞いてくれない。
今まで対峙した事のない圧倒的な脅威に対し、本能が恐怖しているのだ。
先の銃撃が、押し殺してきた"恐怖"という感情を解き放ってしまったのである。
「……ぁ…………嫌……」
髑髏面の奥底で、赤い光が妖しく蠢いている。
それはまるで、これから獲物を食らわんとする肉食獣の瞳に見えた。
あと数秒もすれば、髑髏面の目からレーザーが発射され、さやかは消し炭となるだろう。
「嫌…………こんなの…………」
どうして今になって体が動かなくなる。
自分はそんな弱い生き物ではなかった筈だ。
そう言い聞かせても、身体は震える事しかできない。
「こんなの……満足できないよ……」
泣きそうな声で、無意識の内にそう呟いていた。
あらゆる希望を失って、唯一残った"正義の味方"としての役目すら真っ当できないまま、自分は死ぬ。
そんな不幸だらけの人生、満足できるわけがない。
しかし、どれだけ嘆いたとしても、状況は決して変わりはしないのである。
「もうどうにもならない」と諦めかけた、その時だった。
さやかの耳に、何かの音が入ってきた。
戦車の方もそれに気付いたのか、レーザーの発射を中断する。
耳を澄ましてみると、それがハーモニカの音色である事が分かった。
それも、ただ我武者羅に音を立てているのではなく、ちゃんとした曲を演奏している。
鳴り響くその音楽は、どこか寂しさを感じさせるものだった。
音色は段々と近づいてきている。
それはつまり、この戦場に乱入者が現れた事を示していた。
【0】
「……何してるんだ、お前」
演奏者は、髪を肩まで伸した青年だった。
彼はハーモニカを口から離すと、戦車に目を向けながらそう言った。
戦車の方は、やはり何も語ろうとはしない。
「ダンマリか……まあ、大体分かってはいるんだけどな」
そう言いながら、彼は戦車からさやかへと視線を移した。
それに気付いたさやかは、掠れた声で青年に呼びかける。
「逃げ、て……アイツに、殺され……ちゃう……!」
「"私なんか無視して逃げて下さい"ってか?それは無理だな」
それを聞いたさやかは、青年の正気を疑わざるおえなかった。
彼の自信は、一体どこから出てくるものなのか。
魔法少女でもない男性が、無敵の戦車に立ち向かうなんて、無謀としか言い様がない。
「なん、で……!?」
「決まってるだろ――"満足"したいからだ!」
その言葉と同時に、青年はさやかに向かって駆けだした。
戦車の方も、獲物を奪おうとする敵を撃ち落とさんと、レーザーを放とうとする。
しかし、発射される前に機体に凄まじい衝撃が襲いかかった為、
着弾箇所がずれてしまい、結果レーザーは明後日の方向に飛ばされる事となってしまう。
「俺はスピード・ウォリアーを召還して"いた"!」
戦車に打撃を加えたのは、青年ではなく見た事もない戦士だった。
全身に近未来風の鎧を纏い、足にはローラブレードを装着している。
青年が現れた時には気配を感じなかったが、どこから来たのだろうか。
戦士はそのまま、戦車と交戦を始める。
それを尻目に、青年はさやかのいる場所に到着した。
「……逃げるぞ」
さやかの返答を待たずに、青年はデイパックに手を突っ込んだ。
彼のデイパックから出てきたのは――派手な彩色が施されたオープンカーである。
人間が移動の際に使うあの車が、決して大きいとは言えない収納袋から出てきたのである。
さやかが驚愕しているのには目も暮れずに、青年は彼女を助手席に運び込む。
そしてすぐさま運転席に移動すると、エンジンをかけて車を走らせた。
しかし、車が走り始めた瞬間を電光戦車は見逃さなかった。
スピード・ウォリアーに放電攻撃を叩きこんで再起不能にすると、戦車は前門を車の方向に向ける。
戦車の前門が開かれ、出現するのは二台の大型砲台。
機体を震わせながら、そこにエネルギーを集結させていく。
これこそが、電光戦車が所持する中でも最強の兵器。
数秒のチャージによって、エネルギーの充填が最大規模になった、その瞬間。
終末の笛――ギャラルホルンの名を冠する必殺の砲撃が、車を飲み込んだ。
【^U^】
この殺し合いでは電光戦車が二台支給されている事は、周知の事実だろう。
一方はアカツキという人物に破壊され、もう一方は無人の街の中で佇んでいる。
二台の顛末を見た者は思う筈だ――この二台の力差は、あまりにも離れてすぎているのではないか、と。
すぐさま破壊された方は、相手が電光戦車を知り尽くしていたのもあるが、
それを考慮したとしても、この格差は知識だけで開くものだとは考えられない。
では何が、さやかと交戦した電光戦車を強大な存在に至らしめたのか。
その答えは、戦車を支給され、さやかにそれを仕向けた者が知っている。
電光戦車が佇む空間に、軍服の男が姿を現した。
彼こそが電光戦車を所持している者――つまりこの戦いの元凶なのだ。
「いいAIだ、感動的だな」
「だが無意味だ」とは言わずに、男は戦車の傍らにまで歩み寄り、その鋼鉄の身体に手をかざす。
すると、触れた部分からCDディスクが顔を出したではないか。
半分機体に埋まっているそれを、男は丁寧に引き抜いてやった。
そう、これこそが電光戦車を強化させた支給品――「外部AI」である。
「MUGEN」と呼ばれる格闘ゲームで、キャラクターの頭脳の役割を果たすのがこれだ。
早い話が、簡単な人工知能である――優秀であれば優秀な程、高い技量を手にする事ができる。
男に支給されたAIは、その中でも特に良質なものだったのだ。
これなら、電光戦車が異様な立ち回りを見せたのにも納得がいくだろう。
彼は支給された兵器にAIを搭載する事によって、達人並みのテクニックを与えたのだ。
「お陰であの二人も始末できた……やはり俺はツイている」
張り付いたような笑みを浮かべて、男が呟いた。
最初に電光戦車の説明書きを読んだ時は、運が悪いとばかり思っていた。
何故なら、彼に支給されたそれは、個人の力では動かす事すらままならない代物だったのである。
ゲゼルシャフトではなく「新聖堂騎士団」が扱っている電光戦車には、暴走を危惧した為か、自律稼動機能が取り除かれていたのだ。
しかし、戦車と共に支給された「外部AI」によって、落胆は一転して歓喜となった。
これを用いた電光戦車は圧倒的な強さを有している。
上手く利用すれば、あのディケイドにすら勝てるのではないか、と思える程だ。
(だが、これは切り札だな……乱用はできない)
しかし、やはり強力な道具にはデメリットがあるようだ。
「外部AI」の効果は10分しか持続せず、一度使用してしまうと4時間は使えなくなってしまうである。
つまり、10分以内に決着を付けなければ、戦車はたちまちただの鉄屑になってしまうという訳だ。
支給品の圧倒的な力には満足していたが、この制約に対しては、不満感を覚えざるおえなかった。
(フォーティーンの時の様に身を潜めるべきだな……少なくとも、今は)
現在の武装だけでは、無差別殺人だけで優勝を目指すのは厳しい。
今は集団の中に潜んで、情報や武器を入手するのが、最も利口なやり方だろう。
表向きは善良な人間として振る舞い、他者からの信頼を手に入れる――しばらくはこの方針で行こう。
(となると、戦車は隠した方がいい)
デイパックを広げ、電光戦車に被せる。
すると戦車は、デイパックの中へ吸い込まれる様に入って行った。
理屈は不明だが、この袋の中にはどんな物でも収納できるのだ。
未知の技術を改めて目の当たりにし、改めて男は思う。
この殺し合いを開いた者は、男が元居た世界よりも遥かに優れた技術を保有しているに違いない。
それらを元の世界に持ち帰られれば、確実に元居た世界の支配者として君臨できる。
千載一遇のチャンスだ――これを狙わない訳がない。
「では、行きましょうか」
かつて演技として行っていた「にやけ面」のまま、男は夜の街を進み始めた。
男――海東純一はまだ知らない。
葬ったと思っている二人は、まだ生きている事を。
自身の表情が、人から見れば大変胡散臭く、同時に気持ち悪い事を。
【D-2/1日目深夜/市街地】
【海東純一@仮面ライダーディケイド】
[状態]:( ^U^)申し訳ございません、このような健康体で。
[装備]:グレイブバックル@仮面ライダーディケイド
[道具]:基本支給品、電光戦車@エヌアイン完全世界、外部AI@MUGEN(4時間使用不可)
[思考・状況]
基本:優勝して、元の世界を支配する。
1:表向きは対主催として振る舞い、集団の中に潜む。
2:ノーリスクで殺人が可能な武器が欲しい。
3:AIを搭載した電光戦車は切り札。
※「ディエンドの世界」編終了後からの参戦
※鬼柳とさやかを死んだと思っています。
※大変胡散臭い表情をしていますが、本人はそれに気付いていません。
※グレイブバックルに制限があるかは今の所不明です。
【0】
「……寝ちまったか」
助手席で眠っている少女の顔を見て、青年――鬼柳京介は呟いた。
命の危機に晒されていた緊張感から開放されて、安心しきってしまったのだろう。
先程も言った通り、二人は生きている。
これは鬼柳が所持していたカードの一つ、「くず鉄のかかし」のお陰だ。
「くず鉄のかかし」は、相手の攻撃を無効化できる罠(トラップ)カードであり、
一度使ってもまた元の場所にセットされるという、防御面では大変満足できるカードである。
砲撃をいち早く察知した鬼柳がこのカードを発動した事によって、どうにか難を逃れる事に成功したのだ。
運が良かったとしか言い様がない、と鬼柳はつくづく思う。
少女の危機に気付けた事、移動手段――スパイダーマシンという代物らしい――が支給されていた事、
3枚のカードが支給され、その内2枚が「くず鉄のかかし」と「スピード・ウォリアー」だった事。
これらの要素の内どれか一つでも欠けていたとしたら、少女は救えなかったし、最悪鬼柳も殺されていたかもしれない。
「しかしこんな子供まで巻き込むなんて……ますます許せねえ」
彼女は見た目からして、恐らく中学生だろう。
このような子供まで殺し合いの場に放り込むとは、主催者はどこまでも腐った連中のようだ。
まだ20年も生きていない少年少女が、殺し合いで"満足"できないまま死ぬのを、鬼柳は容認する事ができなかった。
(こんな殺し合い、優勝したって"満足"できねえよ……!)
殺し合いの始まりを宣告された場での出来事を思い返し、怒りに身を震わせる。
あの場所で殺された女は、果たして自身の人生に"満足"できただろうか?
そんなわけがない、あんな結末を迎えた人間が"満足"なんてできるわけがない。
(だったら……こんなゲームぶっ壊して"満足"するしかねえよなぁ!)
故に、鬼柳はこのゲームを否定する。
善良な人々から"満足"を奪い取るこのゲームに、反旗を翻したのだ。
「……とりあえず、この娘から話を聞くのが先だな」
やるべき事は多いが、まずは傷だらけの少女から聞くべきだろう。
そう思いながら、鬼柳は彼女が眠りから覚めるのを待ち始めた。
【0】
鬼柳を象徴している言葉を挙げるとすれば、誰もが"満足"と断言するだろう。
彼の人生は、"満足"を手にする為の戦いと言っても過言ではない。
サテライトの統一を進めていた頃も、ダークシグナーとして不動遊星を追い詰めていた頃も、
クラッシュタウンに平和を取り戻そうとした頃も、全て己の"満足"への欲求が原動力となっていた。
今回も彼は、己の"満足"の為に戦おうとしている。
ゲームの破壊によって、彼はこの殺し合いの場において真の"満足"を得られるのだ。
【D-2/1日目深夜/市街地】
【鬼柳京介@遊戯王5D's】
[状態]:健康、さやかを助けられて満足
[装備]:鬼柳のハーモニカ@遊戯王5D's、スパイダーマシンGP-7@東映版スパイダーマン
[道具]:基本支給品、「スピード・ウォリアー」のカード(六時間使用不可)@遊戯王OCG、「くず鉄のかかし」のカード(六時間使用不可)@遊戯王OCG、
「???」のカード@遊戯王OCG、不明支給品0~1
[思考・状況]
基本:この殺し合いをぶっ潰して満足するしかねェ!
1:少女(さやか)が目覚めるのを待つ。
2:元満足同盟のメンバーがいるのなら合流する。
3:謎の戦車を警戒。
※ハーモニカは没収漏れです。
※クラッシュタウン編終了後からの参戦
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:ダメージ(大)、肉体的疲労(中)、精神的疲労(大)、全身に銃撃の痕、気絶
[装備]:さやかのソウルジェム(濁り:中)@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:基本支給品、不明支給品0~3(確認済み)
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない。
1:???
2:謎の戦車を警戒。
※ショウさんの話を聞く直前からの参戦。
ですが、もしかしたら別の動画の要素が入っているかもしれません。
|sm24:[[冷静になった結果がこれだよ]]|[[時系列順>第一回放送までの本編SS]]|sm26:[[有野課長と白濁少女とガンガン行く僧侶と]]|
|sm24:[[冷静になった結果がこれだよ]]|[[投下順>00~50]]|sm26:[[有野課長と白濁少女とガンガン行く僧侶と]]|
||海東純一|sm:[[]]|
||鬼柳京介|sm:[[]]|
||美樹さやか|sm:[[]]|
*対戦車戦で満足するしかねぇ!鬼柳京介のバトルロワイアル ◆RXvcy0alTE
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#center(){―――― 対 戦 車 戦 用 意 ! ――――}
【♪】
始まりは一発のレーザーだった。
美樹さやかに向けて放たれたそれは、彼女の身体を掠りもせずに何処かへと飛び去っていく。
レーザーをかわしたさやかは、瞬く間にその姿を魔法少女としてのそれに変化させる。
そして一振りのサーベルを手の中に召還し、レーザーが飛んできた方向を見据えた。
さやかの視線の先に居たのは、戦車である――いや、果たしてそれを戦車と言っていいものなのだろうか。
何しろ、さやかと対峙しているそれは、一般的な戦車とはどこか"ずれて"いるのだ。
キャタピラは間違いなく戦車の有するそれであり、堅牢なその図体も、やはり戦車特有のものである。
しかし主砲と呼ばれる部分――そこが何故か、髑髏の仮面のようなもので覆われてしまっているのだ。
あの髑髏面は何の意味があるのかとさやかが思った直後、それの眼球部分からレーザーが再び発射される。
なるほど、どうやらあそこにレーザーの発射装置が存在するようだ。
そんな事を考えながら、さやかは襲いかかるレーザーを難なく回避する。
敵は不動のまま攻撃を放っており、そこからどこを攻撃するかなど容易に想像できる。
それに彼女は、期間は短いながらも魔女と命懸けの戦いをしてきたのだ。
この程度の動作は、できて当然と言えた。
「……アンタも殺し合いに乗ってるの?」
乗り物である以上、内部に操縦者が存在する筈だ――そう考えたさやかが、戦車に向けて問いかける。
戦車からは何の返答もなく、その代わりと言わんばかりにレーザーを放ってきた。
それも避けたさやかは、サーベルの切っ先を、敵意を込めた視線と共に戦車の方に向ける。
支給された戦車を人殺しの為に使おうとしているのは、誰が見ても明白だった。
「だったら、アンタは私が倒す……絶対に」
さやかは「正義の味方」であろうとする魔法少女だ。
そんな彼女にとっては、殺し合いに乗った敵は魔女と何ら変わり無い。
誰かを殺めて絶望を振りまく前に、何としてでも切り裂かなければ。
「それが自分の使命なんだ」と言い聞かせて、さやかは剣の柄を強く握った。
戦車の方からは、相変わらず返答はない。
髑髏面の目の奥で、赤い光を不気味に揺り動かすだけである。
【^U^】
さやかと戦車の戦いを傍観する男が、一人。
張り付いた笑みを浮かべながら、戦車の立ち回りを見つめている。
「勘違い、ですか。子供らしい」
男は、今戦車と交戦している少女の言葉を思い返していた。
聞けば聞くほど滑稽な台詞だ――あの女は、戦車の中に人がいると思いこんでいるのである。
あれに操縦者なんて居ないと言うのに、何とも笑わせる話だ。
「まあいい……試してあげよう、お前の力を」
中の人の有無など、彼にはどうでもいい話題だった。
彼が見極めたい事は、ただ一つだけである。
己に支給された決戦兵器――電光戦車の性能とは、如何なるものなのか。
【♪】
この兵器は尋常ではない――さやかは戦車との戦いで、そう判断せざるおえなかった。
まず第一に、この戦車は"世間一般が認識している戦車"とはあまりにも動きが違う。
少なくともさやかの知っている戦車とは、「キャタピラを利用して前方にゆっくりと進んでいく兵器」である。
しかし今対峙している敵は、その常識を嘲笑うかのように縦横無尽に移動しているではないか。
砂煙を上げながら動き回る戦車の髑髏面が、まるでさやかを嘲笑しているようにすら思えた。
さらにこの戦車、レーザー以外にも複数の兵器を搭載している。
前面に取り付けられた機関銃、放物線を描いて飛ぶ爆雷、自身を包むように発せられる電撃……。
戦車一台には多すぎるのではないかと思える数の武器が、それには積み込まれていたのだ。
武器が多いという事はすなわち、戦闘時の手数が増えるという事と同義である。
様々な武器で襲いかかる敵に、さやかは苦戦を強いられざるおえなかった。
だからと言って、戦車が全面的に有利という訳ではないではない。
幸いな事に、移動速度ならまださやかの方に分がある。
いくら相手が多種多様な武器を装備していたとしても、当たらなければ意味がない。
さらに、さやかはまだ「秘策」と言うべき作戦を隠し持っている。
戦車を一撃で無力化できるであろう代物が、彼女には支給されているのだ。
大雑把に言ってしまえば、その支給品とは爆弾である。
「ロットン」なる男が使用したとされる、時限式のダイナマイトだ。
さやかはこれを戦車の足元で起爆させる事により、戦車を横転させる作戦を思いついたのだ。
起動から爆発までが僅か4秒という事に対し、「ロットンはどうやって逃げたのか」という疑問を感じながらも、
デイパックから爆弾を引き抜き、サーベルを持たない方の手で握り締める。
チャンスは一瞬、失敗は決して許されない。
時限装置を起動させ、さやかは戦車に向かって走り出した。
それに対し戦車も、襲いかかる者を撃墜せんと攻撃を始める。
――残り4秒。
戦車が別種の武器を同時に発射できないのは、戦いの中で理解している。
降り注ぐレーザーを、疾走しながらも回避していく。
――残り3秒。
戦車が使用武器を変えた。
現れるのは、前門に取り付けられた機関銃である。
あれは流石にかわし切れないと判断したさやかは、己の肉体にある仕掛けを施した。
――残り2秒。
ある仕掛け――それは「痛覚遮断」。
自身の「痛い」という感情を取り除く事により、彼女は後退を知らない狂戦士となるのだ。
放たれた弾丸が、容赦なく肉体に直撃するが、さやかは怯むことなく戦車と距離を詰めていく。
――残り1秒。
戦車の真下に向けて、爆弾を全力で放り投げる。
爆弾はさやかの思惑通り、二つのキャタピラの間に入り込んだ。
作戦の成功を確信した彼女は、真横に魔方陣を展開。
そして、すぐさまそれを思い切り蹴る事により、無理やり移動方向を変更させる。
この僅かな時間で、可能な限り遠くに行かなければ、自身も爆発の煽りを受けてしまうからだ。
勢い良く転びながらも、どうにか距離を離す事には成功する。
――残り0秒。
戦車の真下で産声を上げた爆発は、街を一瞬だけオレンジ色に照らした。
轟音が辺りに轟き、さやかの肌を爆風が打ちつける。
立ち上がり、己の肉体に回復魔法をかけて傷を癒すと、さやかは安堵の息を吐いた。
この威力だ――瞬く間に赤黒い煙に包まれた戦車は、無事では済まされないだろう。
戦車の内部の者も、あの爆発を受ければ相当な傷を負っている筈だ。
少なくとも、もう悪事はできない状態にはなっているだろう。
そう思いながら、痛覚のシャットダウンを解除し、戦車に背を向けて歩き出す。
その瞬間――さやかの身体に、灼熱の弾丸が埋め込まれた。
激痛が全身を駆け巡り、頭が一瞬だけ真っ白になる。
肉体のバランスは崩れ、さやかは地面に倒れ伏した。
全身が爛れそうな痛みが体内で暴れ狂い、さやかの肉体を蝕んでいく。
最早、悲鳴すら挙げられない――それ程までに、凄まじいものだった。
痛みを忘れていたせいで、痛みから目を背けていたせいで、忘れていた。
普通の人ならば、銃で撃たれれば悶え苦しみながら死ぬ、という事を。
一体どこから、誰が撃ったのか。
激痛に耐えながら、さやかは頭を上げて振り返る。
彼女の真後ろにいたのは――戦車だった。
「そんな……!どう……し、て……!?」
驚愕せざるおえなかった。
あの爆発を受けても、戦車には傷一つ付かなかったのである。
会心の一撃と成りえる筈だった一撃は、全て無駄に終わっていたのだ。
さやかが知る由もないが、電光戦車が無傷だったのは、「攻性防禦」と呼ばれる特殊な構えを使ったからだ。
人の心を持たぬ兵器が、人間が編み出した構えなど取れる訳がないと思うだろう。
しかし生憎、電光戦車は一般的な兵器とは一線を隔す兵器である。
「攻性防禦」が可能なようにプログラムが組まれていても、何らおかしくはないだろう。
戦車は無言のまま、さやかへとにじり寄ってくる。
逃げようにも、自分の足が言う事を聞いてくれない。
今まで対峙した事のない圧倒的な脅威に対し、本能が恐怖しているのだ。
先の銃撃が、押し殺してきた"恐怖"という感情を解き放ってしまったのである。
「……ぁ…………嫌……」
髑髏面の奥底で、赤い光が妖しく蠢いている。
それはまるで、これから獲物を食らわんとする肉食獣の瞳に見えた。
あと数秒もすれば、髑髏面の目からレーザーが発射され、さやかは消し炭となるだろう。
「嫌…………こんなの…………」
どうして今になって体が動かなくなる。
自分はそんな弱い生き物ではなかった筈だ。
そう言い聞かせても、身体は震える事しかできない。
「こんなの……満足できないよ……」
泣きそうな声で、無意識の内にそう呟いていた。
あらゆる希望を失って、唯一残った"正義の味方"としての役目すら真っ当できないまま、自分は死ぬ。
そんな不幸だらけの人生、満足できるわけがない。
しかし、どれだけ嘆いたとしても、状況は決して変わりはしないのである。
「もうどうにもならない」と諦めかけた、その時だった。
さやかの耳に、何かの音が入ってきた。
戦車の方もそれに気付いたのか、レーザーの発射を中断する。
耳を澄ましてみると、それがハーモニカの音色である事が分かった。
それも、ただ我武者羅に音を立てているのではなく、ちゃんとした曲を演奏している。
鳴り響くその音楽は、どこか寂しさを感じさせるものだった。
音色は段々と近づいてきている。
それはつまり、この戦場に乱入者が現れた事を示していた。
【0】
「……何してるんだ、お前」
演奏者は、髪を肩まで伸した青年だった。
彼はハーモニカを口から離すと、戦車に目を向けながらそう言った。
戦車の方は、やはり何も語ろうとはしない。
「ダンマリか……まあ、大体分かってはいるんだけどな」
そう言いながら、彼は戦車からさやかへと視線を移した。
それに気付いたさやかは、掠れた声で青年に呼びかける。
「逃げ、て……アイツに、殺され……ちゃう……!」
「"私なんか無視して逃げて下さい"ってか?それは無理だな」
それを聞いたさやかは、青年の正気を疑わざるおえなかった。
彼の自信は、一体どこから出てくるものなのか。
魔法少女でもない男性が、無敵の戦車に立ち向かうなんて、無謀としか言い様がない。
「なん、で……!?」
「決まってるだろ――"満足"したいからだ!」
その言葉と同時に、青年はさやかに向かって駆けだした。
戦車の方も、獲物を奪おうとする敵を撃ち落とさんと、レーザーを放とうとする。
しかし、発射される前に機体に凄まじい衝撃が襲いかかった為、
着弾箇所がずれてしまい、結果レーザーは明後日の方向に飛ばされる事となってしまう。
「俺はスピード・ウォリアーを召還して"いた"!」
戦車に打撃を加えたのは、青年ではなく見た事もない戦士だった。
全身に近未来風の鎧を纏い、足にはローラブレードを装着している。
青年が現れた時には気配を感じなかったが、どこから来たのだろうか。
戦士はそのまま、戦車と交戦を始める。
それを尻目に、青年はさやかのいる場所に到着した。
「……逃げるぞ」
さやかの返答を待たずに、青年はデイパックに手を突っ込んだ。
彼のデイパックから出てきたのは――派手な彩色が施されたオープンカーである。
人間が移動の際に使うあの車が、決して大きいとは言えない収納袋から出てきたのである。
さやかが驚愕しているのには目も暮れずに、青年は彼女を助手席に運び込む。
そしてすぐさま運転席に移動すると、エンジンをかけて車を走らせた。
しかし、車が走り始めた瞬間を電光戦車は見逃さなかった。
スピード・ウォリアーに放電攻撃を叩きこんで再起不能にすると、戦車は前門を車の方向に向ける。
戦車の前門が開かれ、出現するのは二台の大型砲台。
機体を震わせながら、そこにエネルギーを集結させていく。
これこそが、電光戦車が所持する中でも最強の兵器。
数秒のチャージによって、エネルギーの充填が最大規模になった、その瞬間。
終末の笛――ギャラルホルンの名を冠する必殺の砲撃が、車を飲み込んだ。
【^U^】
この殺し合いでは電光戦車が二台支給されている事は、周知の事実だろう。
一方はアカツキという人物に破壊され、もう一方は無人の街の中で佇んでいる。
二台の顛末を見た者は思う筈だ――この二台の力差は、あまりにも離れてすぎているのではないか、と。
すぐさま破壊された方は、相手が電光戦車を知り尽くしていたのもあるが、
それを考慮したとしても、この格差は知識だけで開くものだとは考えられない。
では何が、さやかと交戦した電光戦車を強大な存在に至らしめたのか。
その答えは、戦車を支給され、さやかにそれを仕向けた者が知っている。
電光戦車が佇む空間に、軍服の男が姿を現した。
彼こそが電光戦車を所持している者――つまりこの戦いの元凶なのだ。
「いいAIだ、感動的だな」
「だが無意味だ」とは言わずに、男は戦車の傍らにまで歩み寄り、その鋼鉄の身体に手をかざす。
すると、触れた部分からCDディスクが顔を出したではないか。
半分機体に埋まっているそれを、男は丁寧に引き抜いてやった。
そう、これこそが電光戦車を強化させた支給品――「外部AI」である。
「MUGEN」と呼ばれる格闘ゲームで、キャラクターの頭脳の役割を果たすのがこれだ。
早い話が、簡単な人工知能である――優秀であれば優秀な程、高い技量を手にする事ができる。
男に支給されたAIは、その中でも特に良質なものだったのだ。
これなら、電光戦車が異様な立ち回りを見せたのにも納得がいくだろう。
彼は支給された兵器にAIを搭載する事によって、達人並みのテクニックを与えたのだ。
「お陰であの二人も始末できた……やはり俺はツイている」
張り付いたような笑みを浮かべて、男が呟いた。
最初に電光戦車の説明書きを読んだ時は、運が悪いとばかり思っていた。
何故なら、彼に支給されたそれは、個人の力では動かす事すらままならない代物だったのである。
ゲゼルシャフトではなく「新聖堂騎士団」が扱っている電光戦車には、暴走を危惧した為か、自律稼動機能が取り除かれていたのだ。
しかし、戦車と共に支給された「外部AI」によって、落胆は一転して歓喜となった。
これを用いた電光戦車は圧倒的な強さを有している。
上手く利用すれば、あのディケイドにすら勝てるのではないか、と思える程だ。
(だが、これは切り札だな……乱用はできない)
しかし、やはり強力な道具にはデメリットがあるようだ。
「外部AI」の効果は10分しか持続せず、一度使用してしまうと4時間は使えなくなってしまうである。
つまり、10分以内に決着を付けなければ、戦車はたちまちただの鉄屑になってしまうという訳だ。
支給品の圧倒的な力には満足していたが、この制約に対しては、不満感を覚えざるおえなかった。
(フォーティーンの時の様に身を潜めるべきだな……少なくとも、今は)
現在の武装だけでは、無差別殺人だけで優勝を目指すのは厳しい。
今は集団の中に潜んで、情報や武器を入手するのが、最も利口なやり方だろう。
表向きは善良な人間として振る舞い、他者からの信頼を手に入れる――しばらくはこの方針で行こう。
(となると、戦車は隠した方がいい)
デイパックを広げ、電光戦車に被せる。
すると戦車は、デイパックの中へ吸い込まれる様に入って行った。
理屈は不明だが、この袋の中にはどんな物でも収納できるのだ。
未知の技術を改めて目の当たりにし、改めて男は思う。
この殺し合いを開いた者は、男が元居た世界よりも遥かに優れた技術を保有しているに違いない。
それらを元の世界に持ち帰られれば、確実に元居た世界の支配者として君臨できる。
千載一遇のチャンスだ――これを狙わない訳がない。
「では、行きましょうか」
かつて演技として行っていた「にやけ面」のまま、男は夜の街を進み始めた。
男――海東純一はまだ知らない。
葬ったと思っている二人は、まだ生きている事を。
自身の表情が、人から見れば大変胡散臭く、同時に気持ち悪い事を。
【D-2/1日目深夜/市街地】
【海東純一@仮面ライダーディケイド】
[状態]:( ^U^)申し訳ございません、このような健康体で。
[装備]:グレイブバックル@仮面ライダーディケイド
[道具]:基本支給品、電光戦車@エヌアイン完全世界、外部AI@MUGEN(4時間使用不可)
[思考・状況]
基本:優勝して、元の世界を支配する。
1:表向きは対主催として振る舞い、集団の中に潜む。
2:ノーリスクで殺人が可能な武器が欲しい。
3:AIを搭載した電光戦車は切り札。
※「ディエンドの世界」編終了後からの参戦
※鬼柳とさやかを死んだと思っています。
※大変胡散臭い表情をしていますが、本人はそれに気付いていません。
※グレイブバックルに制限があるかは今の所不明です。
【0】
「……寝ちまったか」
助手席で眠っている少女の顔を見て、青年――鬼柳京介は呟いた。
命の危機に晒されていた緊張感から開放されて、安心しきってしまったのだろう。
先程も言った通り、二人は生きている。
これは鬼柳が所持していたカードの一つ、「くず鉄のかかし」のお陰だ。
「くず鉄のかかし」は、相手の攻撃を無効化できる罠(トラップ)カードであり、
一度使ってもまた元の場所にセットされるという、防御面では大変満足できるカードである。
砲撃をいち早く察知した鬼柳がこのカードを発動した事によって、どうにか難を逃れる事に成功したのだ。
運が良かったとしか言い様がない、と鬼柳はつくづく思う。
少女の危機に気付けた事、移動手段――スパイダーマシンという代物らしい――が支給されていた事、
3枚のカードが支給され、その内2枚が「くず鉄のかかし」と「スピード・ウォリアー」だった事。
これらの要素の内どれか一つでも欠けていたとしたら、少女は救えなかったし、最悪鬼柳も殺されていたかもしれない。
「しかしこんな子供まで巻き込むなんて……ますます許せねえ」
彼女は見た目からして、恐らく中学生だろう。
このような子供まで殺し合いの場に放り込むとは、主催者はどこまでも腐った連中のようだ。
まだ20年も生きていない少年少女が、殺し合いで"満足"できないまま死ぬのを、鬼柳は容認する事ができなかった。
(こんな殺し合い、優勝したって"満足"できねえよ……!)
殺し合いの始まりを宣告された場での出来事を思い返し、怒りに身を震わせる。
あの場所で殺された女は、果たして自身の人生に"満足"できただろうか?
そんなわけがない、あんな結末を迎えた人間が"満足"なんてできるわけがない。
(だったら……こんなゲームぶっ壊して"満足"するしかねえよなぁ!)
故に、鬼柳はこのゲームを否定する。
善良な人々から"満足"を奪い取るこのゲームに、反旗を翻したのだ。
「……とりあえず、この娘から話を聞くのが先だな」
やるべき事は多いが、まずは傷だらけの少女から聞くべきだろう。
そう思いながら、鬼柳は彼女が眠りから覚めるのを待ち始めた。
【0】
鬼柳を象徴している言葉を挙げるとすれば、誰もが"満足"と断言するだろう。
彼の人生は、"満足"を手にする為の戦いと言っても過言ではない。
サテライトの統一を進めていた頃も、ダークシグナーとして不動遊星を追い詰めていた頃も、
クラッシュタウンに平和を取り戻そうとした頃も、全て己の"満足"への欲求が原動力となっていた。
今回も彼は、己の"満足"の為に戦おうとしている。
ゲームの破壊によって、彼はこの殺し合いの場において真の"満足"を得られるのだ。
【D-2/1日目深夜/市街地】
【鬼柳京介@遊戯王5D's】
[状態]:健康、さやかを助けられて満足
[装備]:鬼柳のハーモニカ@遊戯王5D's、スパイダーマシンGP-7@東映版スパイダーマン
[道具]:基本支給品、「スピード・ウォリアー」のカード(六時間使用不可)@遊戯王OCG、「くず鉄のかかし」のカード(六時間使用不可)@遊戯王OCG、
「???」のカード@遊戯王OCG、不明支給品0~1
[思考・状況]
基本:この殺し合いをぶっ潰して満足するしかねェ!
1:少女(さやか)が目覚めるのを待つ。
2:元満足同盟のメンバーがいるのなら合流する。
3:謎の戦車を警戒。
※ハーモニカは没収漏れです。
※クラッシュタウン編終了後からの参戦
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:ダメージ(大)、肉体的疲労(中)、精神的疲労(大)、全身に銃撃の痕、気絶
[装備]:さやかのソウルジェム(濁り:中)@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:基本支給品、不明支給品0~3(確認済み)
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない。
1:???
2:謎の戦車を警戒。
※ショウさんの話を聞く直前からの参戦。
ですが、もしかしたら別の動画の要素が入っているかもしれません。
|sm24:[[冷静になった結果がこれだよ]]|[[時系列順>第一回放送までの本編SS]]|sm26:[[有野課長と白濁少女とガンガン行く僧侶と]]|
|sm24:[[冷静になった結果がこれだよ]]|[[投下順>00~50]]|sm26:[[有野課長と白濁少女とガンガン行く僧侶と]]|
||海東純一|sm69:[[嗤うJ/這いよる邪悪]]|
||鬼柳京介|sm55:[[ゆっくりだと思った? 残念! さやかちゃんでした!]]|
||美樹さやか|sm55:[[ゆっくりだと思った? 残念! さやかちゃんでした!]]|
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