アットウィキロゴ
私立仁科学園まとめ@ ウィキ
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

私立仁科学園まとめ@ ウィキ

初詣

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集

無題




 耳当てが落ちて、拾ったら雪が付いていた。
 黒鉄亜子はまたそれを耳に当てたら、すぐに溶けて冷たさは気にならなくなったけど、溶けて垂れた滴が頬を伝った。
 それのほうが冷たかった。
 缶コーヒーを開けようとしたら、手袋が邪魔でなかなか開けられない。意固地になって開けようとしてたら、横から手が伸びて缶コーヒーを奪われた。

「あっ!」

 パキッと音が鳴る。
 帰ってきた缶コーヒーは開けられていた。

「……ありがと」
「なんでもっと厚着しないの?」
「そっちこそ」

 そっぽを向いて一人先に歩いたけど、連れ合いはのんびり歩いて寒そうに手をポケットに突っ込んで、時折思い切りくしゃみをした。
 襟のファーが鼻をくすぐるらしい。
 まだのんびり歩いていて、急ぐ様子はなく、亜子は急かした。

「お兄ちゃん!」
「急がなくても蕎麦は逃げないってばー」

 また、黒鉄懐はだらだら歩いた。
 仕方ないと、亜子は数歩戻って、兄の手を掴んで急げ急げと引っ張った。脚をもつらせて転びそうになりながら懐は付いていく。やがて二人とも走り出して、寒い夜の街を二人で急いだ。
 亜子の首に巻いて肩にかけただけのマフラーがはためいた。

「走らないのー!」
「急がないと!」
「だーかーらー蕎麦は逃げないってばー!」
「逃げちゃうんだから! 鈴江先輩のとこの年越し蕎麦!」
「喰いそびれてもいいじゃないのー!」
「食べたいっていいだしたのそっちでしょ!」
「テンション上がってついて来るって言ったのそっちでしょー!」
「だってせっかく大晦日だし!」
「毎年くるでしょー」
「あっ!」

 亜子が立ちどまって、つられて走っていた懐は止まれずに、雪に脚を滑らせて派手に転んだ。
 小さくジャンプして足元を滑って行く懐をスルーして、亜子は天を見上げた。

「お兄ちゃん雪!」

 電信柱に激突して停止した懐が涙目で天を見上げた。
 雪だ。

「あーほんとだー」
「お兄ちゃんなんでそんなテンション低いのよ!」
「えー寒いしー」

 立ち上がって体に付いた雪を払う。
 亜子が寄ってきて、また手を掴んだ。

「急ごう?」
「あー。うん」

 歩き出す。

「あっ」
「今度は何?」
「あけましておめでとう」
「え?」
「日付かわったよ」
「ほんと?」
「うん」
「あけましておめでとう。お年玉はあげないぞ」
「いらないもん」
「ほら急ぐよ。神社のタダ蕎麦が売り切れる」
「うん」

 兄の手に抱き着いた。
 急ごう。

「離しなさいよー」
「やだ」

 また兄の手を強くつかんだ。
 初詣だ。





前:]] 次:[[

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
人気記事ランキング
ウィキ募集バナー