無題
耳当てが落ちて、拾ったら雪が付いていた。
黒鉄亜子はまたそれを耳に当てたら、すぐに溶けて冷たさは気にならなくなったけど、溶けて垂れた滴が頬を伝った。
それのほうが冷たかった。
缶コーヒーを開けようとしたら、手袋が邪魔でなかなか開けられない。意固地になって開けようとしてたら、横から手が伸びて缶コーヒーを奪われた。
黒鉄亜子はまたそれを耳に当てたら、すぐに溶けて冷たさは気にならなくなったけど、溶けて垂れた滴が頬を伝った。
それのほうが冷たかった。
缶コーヒーを開けようとしたら、手袋が邪魔でなかなか開けられない。意固地になって開けようとしてたら、横から手が伸びて缶コーヒーを奪われた。
「あっ!」
パキッと音が鳴る。
帰ってきた缶コーヒーは開けられていた。
帰ってきた缶コーヒーは開けられていた。
「……ありがと」
「なんでもっと厚着しないの?」
「そっちこそ」
「なんでもっと厚着しないの?」
「そっちこそ」
そっぽを向いて一人先に歩いたけど、連れ合いはのんびり歩いて寒そうに手をポケットに突っ込んで、時折思い切りくしゃみをした。
襟のファーが鼻をくすぐるらしい。
まだのんびり歩いていて、急ぐ様子はなく、亜子は急かした。
襟のファーが鼻をくすぐるらしい。
まだのんびり歩いていて、急ぐ様子はなく、亜子は急かした。
「お兄ちゃん!」
「急がなくても蕎麦は逃げないってばー」
「急がなくても蕎麦は逃げないってばー」
また、黒鉄懐はだらだら歩いた。
仕方ないと、亜子は数歩戻って、兄の手を掴んで急げ急げと引っ張った。脚をもつらせて転びそうになりながら懐は付いていく。やがて二人とも走り出して、寒い夜の街を二人で急いだ。
亜子の首に巻いて肩にかけただけのマフラーがはためいた。
仕方ないと、亜子は数歩戻って、兄の手を掴んで急げ急げと引っ張った。脚をもつらせて転びそうになりながら懐は付いていく。やがて二人とも走り出して、寒い夜の街を二人で急いだ。
亜子の首に巻いて肩にかけただけのマフラーがはためいた。
「走らないのー!」
「急がないと!」
「だーかーらー蕎麦は逃げないってばー!」
「逃げちゃうんだから! 鈴江先輩のとこの年越し蕎麦!」
「喰いそびれてもいいじゃないのー!」
「食べたいっていいだしたのそっちでしょ!」
「テンション上がってついて来るって言ったのそっちでしょー!」
「だってせっかく大晦日だし!」
「毎年くるでしょー」
「あっ!」
「急がないと!」
「だーかーらー蕎麦は逃げないってばー!」
「逃げちゃうんだから! 鈴江先輩のとこの年越し蕎麦!」
「喰いそびれてもいいじゃないのー!」
「食べたいっていいだしたのそっちでしょ!」
「テンション上がってついて来るって言ったのそっちでしょー!」
「だってせっかく大晦日だし!」
「毎年くるでしょー」
「あっ!」
亜子が立ちどまって、つられて走っていた懐は止まれずに、雪に脚を滑らせて派手に転んだ。
小さくジャンプして足元を滑って行く懐をスルーして、亜子は天を見上げた。
小さくジャンプして足元を滑って行く懐をスルーして、亜子は天を見上げた。
「お兄ちゃん雪!」
電信柱に激突して停止した懐が涙目で天を見上げた。
雪だ。
雪だ。
「あーほんとだー」
「お兄ちゃんなんでそんなテンション低いのよ!」
「えー寒いしー」
「お兄ちゃんなんでそんなテンション低いのよ!」
「えー寒いしー」
立ち上がって体に付いた雪を払う。
亜子が寄ってきて、また手を掴んだ。
亜子が寄ってきて、また手を掴んだ。
「急ごう?」
「あー。うん」
「あー。うん」
歩き出す。
「あっ」
「今度は何?」
「あけましておめでとう」
「え?」
「日付かわったよ」
「ほんと?」
「うん」
「あけましておめでとう。お年玉はあげないぞ」
「いらないもん」
「ほら急ぐよ。神社のタダ蕎麦が売り切れる」
「うん」
「今度は何?」
「あけましておめでとう」
「え?」
「日付かわったよ」
「ほんと?」
「うん」
「あけましておめでとう。お年玉はあげないぞ」
「いらないもん」
「ほら急ぐよ。神社のタダ蕎麦が売り切れる」
「うん」
兄の手に抱き着いた。
急ごう。
急ごう。
「離しなさいよー」
「やだ」
「やだ」
また兄の手を強くつかんだ。
初詣だ。
初詣だ。
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