カップルウォッチャーととろの冬
おはー?近森ととろだよ!
みんな、今日も素敵なデート日和だね!わたしたち高校生は金も名誉もないけれど、自由と可能性を秘めたお年頃だから、
過ぎ行く毎日を謳歌しなくちゃね!さもなければ、恋愛の神様からの激おこぷんぷんなバチが当たるんだぞ?
さて。今年もあとわずか!寒くなって久しいし、日も落ちるのも早いけど、想い合う二人が急接近するには、絶好のチャンスだよ。
恋愛だってフリーダム!当たって砕けてイチャコリャしあって、一冬の過ち……いや、正しい恋だよ!ハイスクールをエンジョイだよ!
そんな二人を陰ながらこっそりひっそりちゃっかり応援しちゃうのは、カップルウォッチャーの指命なんだよね。
過ぎ行く毎日を謳歌しなくちゃね!さもなければ、恋愛の神様からの激おこぷんぷんなバチが当たるんだぞ?
さて。今年もあとわずか!寒くなって久しいし、日も落ちるのも早いけど、想い合う二人が急接近するには、絶好のチャンスだよ。
恋愛だってフリーダム!当たって砕けてイチャコリャしあって、一冬の過ち……いや、正しい恋だよ!ハイスクールをエンジョイだよ!
そんな二人を陰ながらこっそりひっそりちゃっかり応援しちゃうのは、カップルウォッチャーの指命なんだよね。
ただ、応援してるだけではもったいない!MOTTAINAI!わたし、近森ととろは二人を美味しくつまみ食いしちゃいますです!
触れるとやけどしちゃいそうな男子女子を遠くからのぞき見……いやいやいやいやいやいや!つまみ食いするだけですから。
今日もわたしのオペラグラスが火を噴くぜ!
触れるとやけどしちゃいそうな男子女子を遠くからのぞき見……いやいやいやいやいやいや!つまみ食いするだけですから。
今日もわたしのオペラグラスが火を噴くぜ!
風は寒いけど、空は鉛色だけど、笹森公園のお子様滑り台の上でのカップルウォッチング、はっじまるよー!
「何か見えますか」
おっと、黒咲あかねちゃん。
演劇部の台本片手に恥ずかしそうにほっぺを赤くしてる様は、待ち合わせの時間迫った女の子みたいだね!
黒髪ロングにクローバーの髪留め、黒タイツのおみ足は少女からオトナへの中途半端なお年頃を演出してるんだよね?知らないけど。
そんなあかねちゃん、滑り台の上に登ってきやがれ!わたしのオペラグラスをのぞいてみるかい?
凍てつく冬のささやかなホットココアだと思って、はい。召し上がりやがれい。
演劇部の台本片手に恥ずかしそうにほっぺを赤くしてる様は、待ち合わせの時間迫った女の子みたいだね!
黒髪ロングにクローバーの髪留め、黒タイツのおみ足は少女からオトナへの中途半端なお年頃を演出してるんだよね?知らないけど。
そんなあかねちゃん、滑り台の上に登ってきやがれ!わたしのオペラグラスをのぞいてみるかい?
凍てつく冬のささやかなホットココアだと思って、はい。召し上がりやがれい。
「どう?恋したくなった?」
「え……うそ?」
「え……うそ?」
え……って、それはわたしのセリフだよ?あかねちゃん。オペラグラスから何が見える?
「ちょ、そんな大胆な……」
「なに?」
「見えちゃう……見えちゃうかも」
「ええ?」
「わたし……恥ずかしいですっ」
「なに?」
「見えちゃう……見えちゃうかも」
「ええ?」
「わたし……恥ずかしいですっ」
待って!なぜ顔を赤くする?あかねちゃん?わたしがのぞき見してたのは、恋愛若葉の男子とゆるっと背伸び女子だよ?
指触れ合うのもためらう時期なのに、いきなりR指定の展開はいくらなんでもビター過ぎます!映倫が許してもわたしは許しません!
わたしはとんびが油揚げをさらうようにあかねちゃんからオペラグラスを引ったくり、目の前モザイク覚悟でのぞいてみるっ。
指触れ合うのもためらう時期なのに、いきなりR指定の展開はいくらなんでもビター過ぎます!映倫が許してもわたしは許しません!
わたしはとんびが油揚げをさらうようにあかねちゃんからオペラグラスを引ったくり、目の前モザイク覚悟でのぞいてみるっ。
「あれ……いない」
「うそですっ」
「うそですっ」
あかねちゃん!更に顔赤くするなら、なぜうそをつく!
恥ずかしそうにあかねちゃんは滑り台をつるっと滑っていった。
恥ずかしそうにあかねちゃんは滑り台をつるっと滑っていった。
「わおっ。ハスキーがやって来たよっ。これで連合犬隊の完成だっ」
「久遠っ」
「久遠っ」
相変わらず、荵ちゃんはわんわんわんわんだね。スマホをいじくりながらわんわんわんわんだっ。
わんわんわんわんと滑り台を駆け上る姿は雪やコンコと庭駆け回るマメシバだっ。
わんわんわんわんと滑り台を駆け上る姿は雪やコンコと庭駆け回るマメシバだっ。
「あっ。ととろのお姉さまっ。マフラー暖かそうですねっ。アマガミさせて下さいっ」
「荵ちゃん、そうは簡単にラブラブなおすそ分けはしてあげないぞ」
「うーっ、いけっ!ハスキーにボーダーコリー!ととろのお姉さま、雁首揃えて堪忍しろいっ」
「うーっ、いけっ!ハスキーにボーダーコリー!ととろのお姉さま、雁首揃えて堪忍しろいっ」
スマホの中の『わんこれ(わんわんこれくしょん)』は三次元には効かないと思うよ……。
「ふわぁ。サモエドがお年玉持ってきてくれないかなっ」
荵ちゃんもあかねちゃんも演劇部の一年生。かわいい後輩なのに、白馬の王子さまの影も形も見えないのは、お姉さん悲しいぞ。
いつか、荵ちゃんやあかねちゃんがラブラブどきゅんなピンライトを浴びるシーンをのぞき見してやんからね。
いつか、荵ちゃんやあかねちゃんがラブラブどきゅんなピンライトを浴びるシーンをのぞき見してやんからね。
「新年ですね!」
そう。世間はお正月まっしぐら。おかっぱ黒髪ショートのあの子も滑り台の下からそう叫ぶ。
「後鬼っ」
「黒咲さん、上の名前で呼ばないで!」
「閑花ちゃん静かにっ。ハスキーが逃げちゃうっ」
「荵ちゃんは上手い事言ったつもりだけど、小さい頃からそう呼ばれ慣れてますから」
「黒咲さん、上の名前で呼ばないで!」
「閑花ちゃん静かにっ。ハスキーが逃げちゃうっ」
「荵ちゃんは上手い事言ったつもりだけど、小さい頃からそう呼ばれ慣れてますから」
後鬼閑花。人呼んで後輩ちゃん。彼女はハートが強い。
世間は間もなく大晦日
なのに、ケンカなんてめっだぞ。
なのに、みんな……さみしくないの?
初詣は憧れのあの人と密着するチャンスなのに。
熱々の屋台のタコ焼きをお互いにあーんしあったり。
神様に「誰それと結ばれますように」と無茶振りしたり。
なのに、ケンカなんてめっだぞ。
なのに、みんな……さみしくないの?
初詣は憧れのあの人と密着するチャンスなのに。
熱々の屋台のタコ焼きをお互いにあーんしあったり。
神様に「誰それと結ばれますように」と無茶振りしたり。
そんな風潮を物ともせずに、閑花ちゃんはスカートを翻しながら滑り台の階段を駆け上がってきた。
わんわんわんと荵ちゃんは滑り台から飛び降りる。
わんわんわんと荵ちゃんは滑り台から飛び降りる。
「わたしも先輩と年越しにひめはじめです。の、予定です。プリンセススタートです」
そうね。閑花ちゃんには先崎くんっていう、素敵な王子さまがいるしね。王子さまというより、みどりの黒髪をなびかせた
剣の腕立つ幕末の志士って感じだけど。ツッコミがまるで抜けば球散る、名匠が鍛えた氷の刃のようなんだよね。
閑花ちゃんと先崎くんとのコンビはこの学園に通う者なら誰しも知っているだろうなあ。この!この!ね!閑花ちゃん!
剣の腕立つ幕末の志士って感じだけど。ツッコミがまるで抜けば球散る、名匠が鍛えた氷の刃のようなんだよね。
閑花ちゃんと先崎くんとのコンビはこの学園に通う者なら誰しも知っているだろうなあ。この!この!ね!閑花ちゃん!
「あれ?荵ちゃんと黒咲さんは?」
きょとんと取り残された閑花ちゃん。気が付いたらわたしとふたりぼっちだよ?
本当だ。
マジだ。
マジだ。
「あれ?メール?……あかねちゃんからだ」
「ととろ先輩!そんな二人より、わたしの先輩との甘くてミルキィーな年末年始計画を聞いて下さい!
まず、冬風寒い仁科橋の上で待ち合わせをします。真っ暗な中、川の流れを聞きながら待つ先輩を背後から襲撃します」
「『オペラグラスで公園の入口方面を見てください』?」
「ととろ先輩!そんな二人より、わたしの先輩との甘くてミルキィーな年末年始計画を聞いて下さい!
まず、冬風寒い仁科橋の上で待ち合わせをします。真っ暗な中、川の流れを聞きながら待つ先輩を背後から襲撃します」
「『オペラグラスで公園の入口方面を見てください』?」
あ。
見えた。
見えた。
あかねちゃんだ。
荵ちゃんだ。
あかねちゃんは誰かの役を演じてるみたいだ。
同じく荵ちゃんも誰かの役を演じてるみたいだ。
声は聞こえないけれど、この学園に通う者なら誰しも知っているようなやり取りを完全完璧に演じてる。
荵ちゃんだ。
あかねちゃんは誰かの役を演じてるみたいだ。
同じく荵ちゃんも誰かの役を演じてるみたいだ。
声は聞こえないけれど、この学園に通う者なら誰しも知っているようなやり取りを完全完璧に演じてる。
言わずと知れた……先崎くんと閑花ちゃんだ。
「新年の刹那は先輩と閑花ちゃんとの鼓動を分かち合いながらスタートです!
わたしは両手で、先輩は背中でお互いのドキドキを伝えあうんです!当ててんのよ!」
わたしは両手で、先輩は背中でお互いのドキドキを伝えあうんです!当ててんのよ!」
閑花ちゃんの浮足立つ演説に一秒違わずにシンクロする荵ちゃんの演技。それを先崎くんのツッコミを憑依させたと言っても
過言でないあかねちゃんの切り返し。わたしの目には、どう足掻いても閑花ちゃんと先輩くんのやり取りにしか見えない。
もしかして、あかねちゃんが持っていた演劇部のノートに、そんなこんななストーリーが書かれているのかもしれないけれど、
それを確かめる術をわたしが持ち合わせているはずはなかった。聞けばいいんだけどねっ。
過言でないあかねちゃんの切り返し。わたしの目には、どう足掻いても閑花ちゃんと先輩くんのやり取りにしか見えない。
もしかして、あかねちゃんが持っていた演劇部のノートに、そんなこんななストーリーが書かれているのかもしれないけれど、
それを確かめる術をわたしが持ち合わせているはずはなかった。聞けばいいんだけどねっ。
遠くで丁々発止なサイレント劇が開演しているのも知らずに閑花ちゃんは桃色の目をしてわたしにラブプロジェクトを話し続けていた。
「ふと先輩が見せる少年にわたしは大人の舌を教えてあげるんです!『先輩も初めてですか?はい!わたしもです!』って」
わたし、近森ととろはオペラグラスを手にしながら、閑花ちゃんの年明けに幸多かれと祈ったのだった。
おしまい。
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