水国国会前デモ隊襲撃事件

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水国国会前デモ隊襲撃事件
INCIDENT No.180423

CONTENTS


 

詳細


発端        

新世界歴■■■年(旧世界換算2018年)4月23日水の国国会前では大規模なデモが発生していた。

反能力者デモでありここ数日激しくなっていた。時折デモ隊と警備隊との間で衝突が確認されており、周囲のムードは悪かった。
その最中、一発の銃弾がデモ隊のプラカードを撃ち抜いた。
周囲は騒然とした。銃弾の発信源を辿ると、国会内に併設された時計塔に視線が向いた。

時計塔にたたずむ狙撃銃を掲げた少女。インシデントNo.180410にてNo.180410-Cと分類されていた
カノッサ機関No.3カチューシャその人であった。

周囲は混乱の極みに陥った。我先にと逃げ出す人々。その中に国会内へと向かう一人の姿。
櫻国魔導海軍所属那須翔子曹長であった。

概要        

曹長の姿を確認するとカチューシャは硝子の翼を出現させ降下、曹長と会話を開始する。
会話の最中曹長が小銃を発砲、交戦状態に入る。カチューシャも手持ちの狙撃銃で応戦。
技量差か、或いは曹長の戦いに迷いがあったのか、戦闘はカチューシャが優位に進める。

そんな最中空中に自警団特務部隊『ヴィセリツァ』所属アルベルト・エスカパル副長が出現。
自身の扱う魔法球体から光線を発射、カチューシャに対して戦闘状態へ移行する。
アルベルトの用いる体術と魔術、加えて曹長の援護射撃により、戦闘は一転カチューシャ不利に移行した。

アルベルトによりたたき落とされたカチューシャは再び翼を出現させ上昇、時計塔へと舞い戻る。
時計塔上空から無数の魔法陣を出現させ、周囲に向けて宣戦布告し、言葉を述べた。
直後魔法陣から無数の銃弾が降り注ぐ、その攻撃の余波で曹長は負傷。

被害を確認した後カチューシャは時計塔内部に移動、そのまま退却した。

事後対応        

カチューシャが最終盤放った無数の銃弾により、周囲一帯に銃弾が降り注いだ。
時計塔、国会のみならず、水の国の周辺に居る人物や物に対し、銃弾が放たれた。
その為多くの人間が負傷、その人数は確認できただけでも[編集済み]人に及んだ。

死者は居なかったが、これこそ戦闘中にカチューシャが述べていた言葉通りなのだろう。
被害を受けた人々は皆、元々デモに参加していたり国会の野党議員であったり、と反能力者思想の持ち主であった。
彼らの多くが能力者への憎悪を強め、今後の活動を約束していた。

事件を受け世論は更に反能力者に傾いた。
その一方で■■社出版の雑誌『■■』では、カチューシャの演説全文を掲載し、出版差し止めとなった。
一部の能力者はその言葉を受け、自衛の為の武装を強めたという噂がある。

 

インタビュー記録


インタビューNo.180410-1       

回答者:自警団特務部隊『ヴィセリツァ』所属 ■■

質問者:水の国警察異能捜査特課係員 

前書:■■は当該地域での事件で救護任務に当たっており、アルベルトの部下である。

<記録開始>

係員:それではまず、事件の流れについて説明してください。

■■:その日はデモ隊の警護任務に副長(注:アルベルト)以下数名が着いていました。
  隊長が不在の為副長が中心となって任務を行っておりました。そんな最中一発の銃弾が放たれました。
  副長が現場へ急行、私達は残ってデモ隊の避難任務を手伝ってました。

係員:どんな様子でしたか。

■■:デモ隊の人々は皆戦々恐々としていました。カチューシャの姿を確認すると一目散に逃げ出す人も……。
  事実私も、先の事件は報道で知っており、その存在も知っていました。ですが、実際に相対する気にはなれませんでした。
  これだけの距離があっても恐ろしいのに、実際に戦うだなんて……副長は本当に凄い、と思いました。

係員:では、その後どうなりましたか。

■■:上空に魔法陣が出現した瞬間、空が真っ暗になりました。当時は月の明るい夜だったんですが。
  空を覆うほどに魔法陣が出現したと気づくには時間は必要ありませんでした。
  能力者とはここまでの事ができるのか、と戦慄しました。

係員:被害について教えてください。

■■:魔法陣から降り注いだ銃弾は、多くの人々を負傷させました。
  ……ただ、私をはじめとした自警団の面々は無傷です、或いは周囲の歩行者も。
  負傷したのは皆、デモ隊の人々でした……まるで、あれだけの銃弾を狙撃していたかのように。

係員:狙撃手であると、そんな噂を聞いていますが。

■■:私も知っています。……ですが、狙撃手であったとしても、どれだけの技量があれば出来るのか。
  本当に能力者とは化け物である、と認識しました。だからこそ、そんな相手に互角以上の戦いをした副長を誇りに思います。
  我々自警団でも、能力者と戦える。彼らに立ち向かえると確信しました。

係員:なるほど。ありがとうございました。

<記録終了>

インタビューNo.180410-2       

回答者:水の国■■大学異能社会学教授■■

質問者:水の国警察異能捜査特課係員 

前書:反能力者の急先鋒として知られている。メディアにも多く露出し、著作も有名。

<記録開始>

係員:事件の見解について教えてください。

■■:最近の反能力者運動に対する能力者サイドの宣戦布告でしょう。最初のプラカードを撃ち抜くデモンストレーションからも分かります。
  これはきっかけに過ぎません。カチューシャのみならず多くの能力者が、これから我々に牙を向けます。
  我々はこれに真っ向から立ち向かいます。正義がどちらにあるかを示さなければなりません。

係員:各メディアにて世論は反能力者に傾くと主張されていますが。

■■:間違いないでしょう。今回の事件で能力者の恐ろしさをより強く認識したでしょう。
  カチューシャの武器は狙撃銃一丁でした。その一丁でこれだけの被害を出したのです。
  爆弾テロなら事前のチェックで予防できます、しかし能力者はそう行きません。

係員:一部の団体からは能力者の人権や、好戦的ではない能力者への対応を主張されていますが。

■■:彼らを人間と考えるから無理が生じるのです。彼らは獣と何ら変わりない。
  野に放たれた野獣は危険です。一刻も早く確保し、収監し、処刑するべきです。
  見た目が人に似ているだけで別種と考えるべきなのです。手から火を出せる人間など、あり得ないでしょう。

係員:先生の主張では能力者の親族も規制すべきという意見ですが。

■■:能力は遺伝するという可能性は否定できません。事実、文献にはある種の系統性のある能力が確認できます。
  代々火の能力を使ってきた家系なども確認できています。そうであれば能力が発現する可能性も十分考えられる。
  ここから発展して、能力を使う為の因子等も確認できるかもしれません。そうすれば、能力という異常も根治できるでしょう。

係員:質問は以上です。

<記録終了>

 

補遺


『■■』に掲載されたカチューシャの演説を、全文引用して以下に記す。

ねぇ、おじ様、しょーこ──ううん、之を聞いている皆様方
能力者はお嫌い? そうよね、きっとそう、だーって、有り得ない存在だもの
危険で不安で野蛮で、素っ首切り落として柱に晒さなきゃって思っちゃうのね

じゃあ別の皆様は? この状況を如何にかしたいだなんて、思ってるのかしら
それも分かるの、昨日までの宿り木が朽ち果てて、帰るべき場所を蝕んで、それは不安だもの
だからね、どうにかしなきゃってきっとそう思う

でもね、私はこうも思うの──その何方も、正しくて間違ってるって
結局ね、けーっきょく、私も貴方達もただ交合うだけの存在よ
堕ちてしまえば意外と楽なの、悪徳は栄え、清廉は穢れるの

愛しましょう、私も貴方もお互いを、傷つけ傷つけられ、後にはぎゅっと抱き締めて
分からないかしら、ならば素敵な痛みを教えて差し上げるの
それが私── 世界中に愛を、咲かせましょう

アルベルト様は私がお嫌い? それとも能力者が嫌いなのかしら
その言葉、表情、仕草──その全てが私を否定していらして
良いわ、それでこそ啓蒙のし甲斐があるの、私の言葉を無碍にされる価値があるの

蹂躙されるのに苦しみは必要無いのだから、そこに残るのは僅かな無情でいいの
嫌いなら嫌いでいて欲しいの、それがささやかな願い
そこが反転した時に無常の喜びが残るのだから

ねぇ、恐ろしいでしょう、能力者ってこんな事も出来るの
そうよ、一人で国を滅ぼすなんて出来るの── それが無垢な顔して無辜な顔して
貴方達の側で微笑んでるの、恐ろしくって堪らないわ、でもね、でも

私達も、同じ人なの、柔肌を割けば中から真っ赤な血が覗いて
苦しければ泣いて、痛ければ啼いて、あまりにも普通の存在よ
だからね、だから、殺したければ殺せるわ、どんな時でも隙はあるのだから

こんな風に言っちゃったらね、大変よ、能力者は隠れちゃうもの、隠しちゃうもの
だからね、怪しい人は狙わなきゃ、割っ捌いて腑を覗いて探してしまうの
疑わしきは罰して、殺して── 安眠を、貪りましょう

傷つけて傷ついて、苦しんで苦しむ── その先に至上の愛があるのだから
素敵な終末を、私は貴方達に告げに来たのだから
響くギャラルホルン、ふふ、歌声は何処まで、届くのかしら


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最終更新:2018年04月24日 11:46