Triumphus Serpentis Magni

「どんな罪も背負ってあげる」
——『All Alone With You』p.1


written by egoist





CONTENTS



 

詳細


基本情報        

サーペント・カルト内部にて行使される魔術体系の総称。
カルト内の人員全てが使える"蛇術"と一部の選ばれた人員のみが使える"禁術"の二つがある。
"Triumphus Serpentis Magni"はその二つを合わせた真名であり、"呪術"の一種と分類される。

アルベルト流魔術魔術協会で用いられている魔術理論とは根底から違う。

これは"Triumphus Serpentis Magni"の本質が、"ウヌクアルハイ"の持つ能力の一部を憑依させている事にあり
人の身に相応しくない程の膨大な魔力を強引に、呪いの形で出力させているが為である。
この傾向は特に"禁術"に於いて顕著であり、言わば行使する人身御供とも言えよう。

行使に於いて術式の詠唱や、魔法陣の生成も必要としない。限界まで簡略化されたシステムとなっている。
前述の魔術体系が、魔力の組成を記した計算式として認識されるのであれば、"Triumphus Serpentis Magni"は既に組み立てられたプリセットとして認識すれば良い。
信徒であればそこに魔力を注ぎ込むだけで行使できる反面、身体に掛かる負荷は通常の魔術体系の比にはならない。

つまり、通常の魔術の様な応用性や汎用性、或いは戦闘の最中に計算式を書き換え、新たな術式を生み出すと言った発展性を持たない魔術体系であり
その反面として、魔術の素養の無い人員であっても、魔力とその身を糧に術式を行使できるのである。
信者に"蛇"の奇跡を見せる手っ取り早い手段であり、その真意は一部のメンバーにしか知らされていない。

最も、魔術の素養や類い希なる才能を持つ者であれば、この魔術体系の歪さを正しく認識できる。
それ故に才覚のある者は、説明を受けずとも本能的にこれらの術式を忌避し、拒む事もできるのだろう。
いずれにせよ密教や邪教に於ける、外法と何ら変わらぬ呪術であると言える。

これらの術式を行使すればする程に、自らの身体は基底現実からかけ離れた神話生物のそれへと変容していく。
目眩や頭痛、吐き気や気怠さ等はその予兆であり、身体と精神が乖離していく過程の一つとも言えよう。
しかし、信者にとってそれは偉大なる蛇との同一化を示しており、むしろ喜ぶべき効能として受け入れられる。



 

蛇術


先述した様に、以下に記す"蛇術""サーペント・カルト"の構成員ならば全てが使用できる。
カルト内の人員は全て蛇の刺青である"<蛇神の印/Serpentic Sign>"を所有しており、"蛇術"の行使には
"蛇神の印"に向けて魔力を注ぐ事によって発動する。

蛇念        

所謂"テレパス"であり、"蛇神の印"を通じて信者同士離れた地域でも会話できる。
対象を指定した指向性のメッセージや、双方向の会話の他、信者全体に向けて念を送る事も可能といった高性能の通信システム。
留意点として"サーバント"からのメッセージを、幹部である"オフィウクス"は拒否する事が出来る。

しかし、"オフィウクス"からのメッセージを"サーバント"は拒否する事ができない。
これはカルト内の立ち位置を如実に示しており、一般構成員達には"信仰心の差"として説明されている。
正確に言えば高い魔力耐性を持つ人員であれば拒否する事は可能だが、効率よく一般構成員を支配する為に、上記の認識をさせている。

送られたメッセージは頭の中に直接投射される。その為、悪意あるイメージを送る事で対象の脳を破壊することも可能であるが、
基本的に構成員同士にしか使えない攻撃手段であり、使われる事は滅多になく、失態をしたメンバーへの懲罰として行われる。

蛇視        

所謂"クレアボヤンス"、大幅に劣化した粗製の"邪眼"とも言える。
行使する事により、壁や物をすり抜けて遠くにある物体を視認する事が可能。
また、蛇の持つ器官であるピット器官を模した眼である為、暗闇の中でも熱感知により良く眼が利く。

故に暗闇はカルトの人員にとって絶好の狩り場であり、大きなアドバンテージを持つ。

その他、強く睨む事によって魔力耐性の低い相手の動きを一時的に止めたり、といった芸当も可能。
視界の範囲や規模は術者の持つ魔力量に依存しており、多くの人員は補助的に活用している。

実際的に御船 千里ラピス・アン・グイスの持つ"千里眼""邪眼"には遠く及ばないのが実情である。

破蛇        

所謂"テレキネシス"、ここでの念動力は"蛇"を模した魔力の具現化という形で顕現する。
術者の魔力量により規模は大きく左右されるが、一般的な構成員であっても、蛇を具現化させ、攻撃に用いる事が可能。
蛇の咬噛力を活かした攻撃手段が主であり、ねじ切りえぐり取る戦い方が基本である。

また具現化した蛇の牙には、軽度の対魔性を持った毒があり、触れた魔術物質を破壊する事も可能。
邪を払うという意味の破邪の性質を兼ね備えているとも言える。

単純な攻撃以外にも、遠くの物を手を使わず操作できるテレキネシスとして扱うことも可能。
しかし、蛇が具現化する性質上、本質的なテレキネシスとは言い切れない。

蛇顎        

所謂"メタモルフォーゼ"、肉体変化の一種であり、後述する"蛇鱗"に対して矛の役割を示す。
発動と同時に手の握力が急激に上昇、コンクリートすら素手で砕けるほどの握力をその手に宿す事が可能。
攻撃に特化した変化であり、単純な攻撃の他、素手で肉を引きちぎるという儀式にも用いられる。

その一方で肉体への負荷を考えていないため、使用者の多くは使用後骨が砕け、神経が裂けるといった副作用を受ける。

蛇鱗        

所謂"メタモルフォーゼ"、肉体変化の一種であり、先述した"蛇顎"に対して盾の役割を示す。
発動した箇所が強固な蛇の鱗に覆われ、敵の攻撃を防ぐ役割を果たす。鎧と同じくらいの強度。
正確には皮膚を堅い鱗に変化させている為、堅くできる部位とできない部位が存在している。

 

禁術


先述した"蛇術"が全ての"サーペント・カルト"の人員が扱えるのに対し、この"禁術"は選ばれた人員しか扱えない。
その全てが各神話体系に於ける蛇の神の名を冠しており、"ウヌクアルハイ"が無数に持つ名前の一部とされている。

"蛇術"の本質が主神たる蛇との"同一化"を示すのであれば、"禁術"の本質は蛇の"顕現"を示す。
それ故に習得にはより深い信仰心が不可欠であり、必然的に幹部階級である"オフィウクス"の使用者が大半である。

Itzamna        

『苦痛を司る術』使用者は"ムリフェン"こと蜜姫かえで

彼女自身が体験した、無限に与えられる死の中から死という概念を取り除き、死に至る苦痛のみを対象に与える。
それ故に永劫にも近い時間"死"を体験したムリフェンのみが使える禁術となった。

発動と同時に彼女の所持する"蛇神の印"を自由自在に行使出来る様になり、触れた対象に苦痛のみを伝える。
先述した"破蛇"の強化版であり、与える事の出来る苦痛はムリフェンが受けた苦痛から好きに選択できる。

これは彼女が半生の中で受けた痛みから選択出来るため、彼女自身が進んで苦行や儀式を受ける度に強くなる術式とも言えよう。
また、対象者の苦痛を肩代わりする事も可能。他者の痛みを自分自身に受け入れる事で、より高く"ウヌクアルハイ"を感じ取れるのである。

特筆すべきは苦痛を与える事も、苦痛を受け入れる事も、ムリフェンにとっては全てが善意から来るものである。
故にこの術は善意を司る神、温厚で恵み深い蛇の神"Itzamna"の名を得る。

Kukulcan        

『万物を殺戮する術』使用者は"ムリフェン"こと蜜姫かえで

既に故人となった彼女の父親を再び殺害する事によって顕現した、既に死んだ相手すらも殺す禁術。
これにより彼女は空想や幻想、虚構や想像といった存在すらも殺戮する術を得た。

発動と同時に彼女の瞳の中に"蛇神の印"が出現する。所謂"蛇眼"でもあり、先述した"蛇視"の強化版とも言える。
視界の中に対象を捉える事で発動し、その深度に応じて以下の三つの形態を得る。

一つ目が"仮死の蛇眼"。一瞬見ただけでも発動する、一番使い勝手の良い形態。
対象の見た部分を一時的に"仮死状態"にする。一呼吸の時間で"仮死状態"は解除されるが、戦闘中では十分な長さとも言える。
"仮死状態"になった部位は一時的に制御ができなくなる。足を仮死にすれば動けなくなり、手を仮死にすれば防御にもなる。

その他、眼を合わせる事で一時的な視界遮断や自身の痛覚を遮断し、肉体の制御を外す事も可能。

二つ目が"直死の蛇眼"。先述の"仮死"の強化態であり、対象を長く視界の中に捉える必要がある。
この状態で見た部分は解除されない本当の"死"の状態へと移行する。見ただけで対象を殺せる非常に能力。
しかし、見る時間は対象によって大きく左右され、戦闘中では動く対象を長く捉える事が出来ないため実質不可能。

その反面、対物質や儀式に関して言えば非常に有効な能力であり、一般人の大量殺戮等に適している。

三つ目が"万死の蛇眼""Kukulcan"の本質に一番沿った能力であり、念じながら見る事で発動。
死という概念を持たない存在に対して、死を与える能力であり、不死に対抗する完全策とも言える。
逆説的に言えば、死という概念を持つ人間や、人外には無効であり、非常に尖った性能をしている。

効果が最大限に発揮されるのは"非生物""魔術"といった存在に対して行使した際。
脳への負荷を考えなければビルを粉々にしたり、強力な魔術を打ち消したり、という大規模な破壊活動が可能。

また、死者に対して行使する事で、死者を蘇らせ再び死を与える事が出来る。
彼女の前では最早死は安息ではなく、永遠に続く死の苦痛の始まりとなる。

それは即ち創造神たる"Kukulcan"にしか成し得ぬ奇跡であり、その名を冠した。

Crom Cruach        

『因果を逆流する術』使用者は"マルフィク"ことアルクサンデル・タルコフ

マルフィクに用いられた凄惨な儀式を再び行使する事で顕現した禁術。時間という概念すらも踏破する無明の奇跡。
発動と同時に周囲の環境を、固有結界である"Magh Slécht"で塗りつぶしていく。
"礼拝の平原"という名のついたこの結界は、彼自身が儀式を執り行う"祭祀場"であり、この空間に於いて彼は術式を行使できる。

その本質は因果の逆流。原因から結果を生み出すのではなく、既に生まれた結果から原因を作り出す部分にある。

彼の四肢はそれぞれおぞましい儀式によってもがれた。右腕はすり下ろされ、左腕は溶かされ、右足は削がれ、左足は焼かれ。
彼自身の能力によって生まれた"部位"で触れる事により、対象にその苦痛を与える。
"Itzamna"と違うのは、それが確定した結果になるまで続くのである。つまり、身体の一部が欠損するまで苦痛は続く。

よってこの空間の中でマルフィクは、蛇が獲物をなぶるように少しずつ対象を解体できる。それも神聖な儀式を経て。
それこそが人身御供を求める悪しき蛇神、"Crom Cruach"の顕現に相応しいと言わんばかりに。

術式の中で受けた傷は固有結界が解除されると元に戻る。失った部位も元の通りに修復される。
しかし、精神に与えた傷は治らない。この禁術の本懐は、身体を壊さず精神を壊す事にあるから。


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最終更新:2018年06月05日 15:25