登場人物の容姿

  個人的には、容姿・身体的な特徴についてはさほど詳しく決める必要はないと考えている。
  これらの要素にある程度のブレ幅を持たせることで、その詳細な部分を読み手の想像力にゆだねたい、というのが主な理由で、これは挿絵などのビジュアルがウリのひとつであるライトノベルであっても、最終的には小説のイメージは読者にゆだねられるものであるから、同様であろう。
  また、こういった要素は物語の本質的な部分ではないというのも、理由の一つとしてあげられる。その登場人物の髪の色が何色だろうが、背が高かろうが低かろうが、痩せていようが太っていようが、その身体的特徴が物語に何の影響も与えないのであれば、その設定はあってもなくても同じ、すなわち無意味なのである。
  逆に考えれば、特異な身体的特徴を持った登場人物は、それを物語に関連づけるべきだ、ということができる。

  大塚英志氏は「キャラクター小説の作り方」の中で、オッド・アイ(左右で瞳の色が違う目)を例に取り上げている。左右の瞳の色が違うのであれば、そこには明確な意味づけが必要だといい、氏は、色の違う目に特殊な能力を設定する、という例を挙げている。
  さらに突き詰めれば、左右の色が違うという点だけに意味を持たせるのではなく、その瞳の色にも何らかの意味を持たせたい。陳腐な例で恐縮だが、赤と青の瞳であれば赤の瞳は炎を象徴し、青の瞳は水を象徴する、といった具合である。
  ただし、容姿に関してはその人物を表す「記号」として使うことができる、という側面も持つことも覚えておきたい。「色白で漆黒の髪を肩まで伸ばした女性」と書けば、そこには「おしとやかな女性」というイメージが出てくる。もちろん、そのイメージとのギャップを狙い、そのような女性に「がさつで乱暴」といった性格付けをすることも(もはや使い古されてはいるが)テクニックのひとつである。
 このように、登場人物の印象をより強めるために容姿を用いるのは、有用な手段であることを頭に入れた上で、どこまでを設定するかを見極めていきたい。

最終更新:2007年05月29日 23:52