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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第01話02

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少年は英雄を目指す


―――光綾学園、男子学生寮

「…ってえ…やっぱ無茶だったか…」
その一室で、薙原ユウキはベッドの中で痛みに顔をしかめて呟いた。

あの後は大変だった。
居住区で簡単な治療を受けた後は光綾に運ばれ、神術での治療を受けながら、校長先生に叱られた。
1日たった今も、身体中が痛くてベッドから起き上がれずにいる。それに。
「フィルには泣かれるし、リナとセンパイには怒られるし…本当に大変だった」
昨日1日の間に起こった出来事を思い出しながら、目を閉じて昨日の自らの行動を反省する。
「勇気と無謀は違う…か」
ベッドのそばで校長先生から言われた言葉が頭をよぎる。
「分かっていたつもりなんだけどな…」
苦笑する。考えなしに動く無謀と、見て見ぬ振りができない勇気。
もしユウキがそれらを併せ持った少年で無かったならば、今頃彼は光綾学園にはいなかっただろう。
「しっかし俺なんかが執行委員で良かったのかな?」
薄々感じていた疑問が鎌首をもたげる。

ほっとけない。
そんな気持ちで光綾学園と他の学園とのいざこざに関わっているうちに、いつしか自分が選ばれていた、極上生徒会執行委員。
ユウキの頭に他の極上生徒会執行委員たちの雄姿が思い浮かぶ。
同世代の少年少女とは思えぬほどのとてつもない力を持った“ヒーロー”と呼ぶにふさわしい連中。
その中に混じって、彼らの実力に驚いてばかりいる、ちょっと剣が使えるだけの冒険者“見習い”
それが今のユウキの姿であり、実力だった。
「今にして思えば、あれは失敗だったな」
あの時、戦う術を持たない普通の学生たちがモンスターに襲われているのを見た瞬間、気がついたらユウキは飛び出して、モンスターに斬りかかっていた。
そのことは反省も後悔もしない。あの場で自分が戦わなければ、戦う術を持たない普通の学生にもっと被害が出ていた。
だが、もう少しやりようはあった。
例えば0-phoneで仲間を呼んで、到着まで守りに徹する余裕と機転があれば、あんな結果にはならなかった。冷静に振り返ってみるとそう思う。

『忘れないでください。あなたは1人ではありません。必要な時には遠慮なく仲間を頼ること。それは決して恥ずかしいことでは無いのです』

校長先生直々のお叱りから飛び出した、1つの言葉がユウキの頭に反響する。
春からのダンジョン実習で身にしみて分かってたはずの言葉。
なぜあの時は頭に思い浮かびもしなかったんだろう?

そんなことを1人考えていた、そのときだった。
「…薙原ユウキさん、ですね?」
どこからともなく響いた声に、ユウキはビクリと身を震わせる。
「…だ、誰だ?」
ユウキのわずかに震えた声に答えるように景色がわずかに揺らぎ、忽然と少年が現れる。
「…すみません。故あって、勝手に上がらせていただきました。僕は、斎堂一狼と言うものです」
丁寧な口調。だが、今まで何も無かったはずの空間から現れた少年を、ユウキは油断なく観察する。
「その制服、確か輝明の…もしかして柊先輩の言ってた“ウィザード”って奴か?」
前に極上生徒会でもひときわ目立つ、特別執行委員が言っていた。輝明学園では異能の力を持った奴を、そう呼ぶと。
「はい」
ユウキの問いに一狼は短く応じ頷いてみせた。

「…なるほど、昨日のモンスターのことか」
「はい。今のところこの件について最も詳しいのは、あの場にいたあなたでしょう。ですから…」
「っと、ストップ」
挨拶もそこそこに昨日の件について問いかける一狼を遮り、ユウキは先ほどから気になっていたことを言う。
「とりあえずさ、敬語はナシで話そうぜ。俺も斎堂も学生同士なんだしさ」
「…分かった」
言われて口調を改め、一狼はユウキに再度問う。
「何でもいいんだ。昨日薙原が倒したモンスターのこと、気がついたことがあったら教えて欲しい」
「倒した…か。それなんだけどさ、あいつら倒したの、俺じゃないぜ」
昨日の出来事を思い出しながらユウキは答える。
「俺じゃない?どういう事だ?」
「いや、あんとき…モンスターに吹っ飛ばされた所にさ、女の子がいたんだ。
 その後のことは気絶してたから分からないが…モンスターぶっ倒したのは多分、その子だ」
少なくとも自分があの後無意識のうちに全滅させたと言うよりはしっくり来る。
自分より強い、剣士の女の子。
条件を満たす人間は極上生徒会には何人もいたし何より光綾学園にもユウキより腕の立つ剣士で、同時に女の子である“センパイ”がいる。
“ユウキにとっては”幸運なことにそんな女の子が戦いに巻き込まれた。
だからこそ、自分は今こうして寮の自室で痛いとか悠長なことを言っていられる。
それがユウキなりの結論だった。
「黒髪でお下げの女の子だ。後は…そういや昨日は結構暑かったのに手袋をつけてたかな」
あのときの一瞬で見た少女のことを必死に思い出しながら、ユウキは思い出せる限りの特徴を説明する。
「斎堂がモンスターについて調べてるってんなら、多分俺よりその子のが詳しいと思う」
「そうか…ありがとう。今度はその子を探してみるよ」
黒髪のお下げと手袋。そして剣の使い手。少女の特徴を一狼が頭の中に刻み込んでいるところに、ユウキが声をかける。
「あっと、そうだ。頼みがあるんだ」
「頼み?」
不思議そうな表情をする一狼にユウキは自らの頼みを告げる。
「その子に会ったらさ、伝えて欲しいんだ。『あんとき助けられた執行委員が“ありがとう”って言ってた』ってさ」
裏表のない笑顔で。
「…分かった。伝えとく」
その屈託のない笑顔に釣られるように、一狼も笑顔で答えた。

「それじゃあ、僕はもう行くよ」
「ああ、気をつけてな。それと、あんがとな」
「ん?ありがとうって…?」
ユウキの返答にちょっとだけ疑問を覚え、一狼は問い返す。
「いやそのさ、斎堂は、あのモンスターの襲撃事件を調べて、止めるつもりなんだろ?」
「うん。そのつもりだ。それが僕が受けた任務だしね」
「今回のこと、悔しいが俺の今の実力じゃあこれ以上のことはできない。
 だから、代わりに解決してくれるって言う斎堂には感謝してもしたりないくらいだなって思ったんだよ。そう思ったら自然に、な」
ちょっとくさかったかなと照れて笑う。
「…えー、その、うん。分かった。今回の事件は、絶対解決してみせる。だから薙原も、早く元気になってくれ」
任務で動いている自分にそんな言葉が掛けられると思っていなかった一狼はちょっとだけ驚いてどもったあと、言葉を絞り出した。
「当然。俺はさっさと怪我を治して、もっと強くなるつもりだ。困ってる人を、ちゃんと助けられるくらいにな。
 斎堂も、困ったことがあったらいつでも言ってくれよ。お前は俺の恩人なんだ。大概のことなら相談にのるぜ」
「ああ、その時は頼むよ」
今度は素直に、言葉が出てきた。

「…薙原。お前は強いな」
去り際。一狼は思い浮かんだ思いを言葉にする。
「へ?全然だろ。斎堂みたいな“力”も無いし、実力だって生徒会の中じゃあ多分下から数えた方がはやいぜ?」
一狼の言葉にユウキはきょとんとして答えた。
「いや、強いよ」
かつて、自分の実力不足を痛感させられた経験がある一狼には分かる。
自分の“弱さ”を素直に認めること、その上で“出来ること”を考え行動すること、自分に“出来ないこと”ができる奴を素直に頼り感謝すること、
そして“出来なかったこと”を悔み続けず、次出来るように努力すること…
それらは本当は、ものすごく難しいことだ。
「薙原みたいな奴が、極上生徒会の執行委員で良かった。僕は心からそう思う」
そんな、心からの言葉を残し。
一狼はユウキの部屋から去った。

「…俺みたいな奴が、執行委員で良かった、か…」
1人部屋に残ったユウキが、一狼の残した言葉を噛みしめる。
「…俺って現金な奴だったんだなあ」
その言葉に励まされ、先ほどまでの悩みが消えているのを確認し、苦笑する。
「ま、そう言われちゃあ頑張るしかねえよな」
気力が充実している。少しでも早く怪我を治して、学校に行きたい。そう考えている。

コンコン
『おーいユウキ、起きてるか?お見舞いに来たぞ。みんなも一緒だ。開けてくれ』

外から声が聞こえる。光綾学園の愛すべき友人たちの声。
「おう、今開ける」
その声に答え、ユウキは笑顔でドアの方へと歩いて行った。

…極上生徒会の執行委員に、1人の少年がいる。
優秀な戦士ではあるものの、つわものぞろいの極上生徒会の中では並みの強さ、そんな少年だ。
だが、彼には多くの友がいた。自らの学園で共に学ぶ友と、様々な学園の生徒と交流を結ぶうちに見つけた、新たな友が。
多くの生徒にしたわれた彼は、多くの友の助けを借りて、1つの“学園世界”の危機を救い、『赤毛の冒険者』と呼ばれるようになるのだが、それはまた、後の話。


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