少女は静かに暮らさない
光綾学園から少し離れた、“通学路”の一角。
あの時感じた“異様な気配”を再び感じ取った少女は、歩みを止めた。
「…思ったより早かったわね」
空を見上げれば、そこには女の顔をした鳥がぎゃあぎゃあと不快な声を上げている。
恐らくは、少女の居場所を告げているだろう。
しばらく空を旋回していた鳥が舞いおりてくる。
その先にいるのは、あのとき見かけたやせぎすの少年。
「よくやった。戻れ。凶鳥フリアイ」
傍らの鳥に話しかけると鳥の姿が幻であったかのように消える。
「見つけたぜえ…」
少年が大きめの辞典くらいの大きさの箱を開き、いじりながら少女に話しかける。
見慣れないデザインの制服。そしてその眼に宿るのはどろりとした殺意。
「言われたんだよ…マグネタイトを集めてきたら、強制労働から解放するって…
悪魔使って、ここの連中ぶっ殺して来いって…こいつ渡されてよぉ…」
まるで悪夢にうなされるように、少年は呟く。
「俺の悪魔…勝手に殺すんじゃねえよ。邪魔すんなよ。うぜえんだよ…」
カタカタと、箱をいじる音と少年の声だけが響き渡る、静寂の空間。
「まずはお前から、ぶっ殺してやるよぉ…」
タン!とどこか小気味よい音を立てて、少年は箱をいじるのをやめる。
「…来い!邪鬼オーガ!妖獣ヌエ!」
少年の呼びかけと共に、少年の前の地面に魔法陣が描かれる。
そしてその魔法陣から現れるのは昨日倒した“鬼”が2体とサルのような顔をした、奇妙な“獣”
「1人だろうが女だろうが丸腰だろうが関係ねえ…ぶっ殺してやる!」
その様子を見ても冷めた目のままの少女に少年が吠える!
あの時感じた“異様な気配”を再び感じ取った少女は、歩みを止めた。
「…思ったより早かったわね」
空を見上げれば、そこには女の顔をした鳥がぎゃあぎゃあと不快な声を上げている。
恐らくは、少女の居場所を告げているだろう。
しばらく空を旋回していた鳥が舞いおりてくる。
その先にいるのは、あのとき見かけたやせぎすの少年。
「よくやった。戻れ。凶鳥フリアイ」
傍らの鳥に話しかけると鳥の姿が幻であったかのように消える。
「見つけたぜえ…」
少年が大きめの辞典くらいの大きさの箱を開き、いじりながら少女に話しかける。
見慣れないデザインの制服。そしてその眼に宿るのはどろりとした殺意。
「言われたんだよ…マグネタイトを集めてきたら、強制労働から解放するって…
悪魔使って、ここの連中ぶっ殺して来いって…こいつ渡されてよぉ…」
まるで悪夢にうなされるように、少年は呟く。
「俺の悪魔…勝手に殺すんじゃねえよ。邪魔すんなよ。うぜえんだよ…」
カタカタと、箱をいじる音と少年の声だけが響き渡る、静寂の空間。
「まずはお前から、ぶっ殺してやるよぉ…」
タン!とどこか小気味よい音を立てて、少年は箱をいじるのをやめる。
「…来い!邪鬼オーガ!妖獣ヌエ!」
少年の呼びかけと共に、少年の前の地面に魔法陣が描かれる。
そしてその魔法陣から現れるのは昨日倒した“鬼”が2体とサルのような顔をした、奇妙な“獣”
「1人だろうが女だろうが丸腰だろうが関係ねえ…ぶっ殺してやる!」
その様子を見ても冷めた目のままの少女に少年が吠える!
最初に動いたのは獣だった。
吠え声を上げ、よだれを垂らしながら少女の喉笛を噛みちぎろうと少女に迫る。
そして一方の少女は。
「…別に、貴方がここで何をしようと、興味は無いわ」
目の前の非現実を見てなお、冷めた目のまま、虚空に手をやる。
「私は火の粉が降りかかれば、それを払う。それだけだもの」
そして何かを握りしめる動作と共に引きぬいた瞬間、少女の手にひと振りの細剣が現れる!
「グァ!?」
目の前の少女が突然武器を持ったことに動揺するものの、既に走り出して止まることも出来ずに獣が突っ込む。
細剣を構え、万全の迎撃態勢をとった少女に対して。
その結果。
その場には少女の代わりに眉間を貫かれた獣が倒れ伏すこととなった。
(…あのフィクサー。ふざけた格好だったけど腕は確かなようね)
獣の眉間から剣を引き抜きながら少女は考える。
吠え声を上げ、よだれを垂らしながら少女の喉笛を噛みちぎろうと少女に迫る。
そして一方の少女は。
「…別に、貴方がここで何をしようと、興味は無いわ」
目の前の非現実を見てなお、冷めた目のまま、虚空に手をやる。
「私は火の粉が降りかかれば、それを払う。それだけだもの」
そして何かを握りしめる動作と共に引きぬいた瞬間、少女の手にひと振りの細剣が現れる!
「グァ!?」
目の前の少女が突然武器を持ったことに動揺するものの、既に走り出して止まることも出来ずに獣が突っ込む。
細剣を構え、万全の迎撃態勢をとった少女に対して。
その結果。
その場には少女の代わりに眉間を貫かれた獣が倒れ伏すこととなった。
(…あのフィクサー。ふざけた格好だったけど腕は確かなようね)
獣の眉間から剣を引き抜きながら少女は考える。
光綾学園の購買は、アイテムか金貨、銀貨でし払えば他校生にもアイテムを売る。
以前仕入れた情報を元に調達に訪れた、光綾学園。
妙に軽い口調ながら“裏”の人間であることを匂わせる彼女から、少女が買ったもの。
それはあの店で一番出来が良かった、“ファルネーゼ”と言う細剣を1本と…
(“時空鞘”と言ったかしら。こうも簡単に武器が隠せては、護衛も大変ね)
彼女が異世界の学生から買い取ったという、武器を隠し持つための“異空間”を作り出すアイテム。
本来ならば少女のような“一般人に武器を所持していることを知られてはいけない人間”くらいにしか用が無いはずなのだが、
何故かその学園から持ちこまれるものではありふれたものらしく、比較的安価で譲ってくれた。
妙に軽い口調ながら“裏”の人間であることを匂わせる彼女から、少女が買ったもの。
それはあの店で一番出来が良かった、“ファルネーゼ”と言う細剣を1本と…
(“時空鞘”と言ったかしら。こうも簡単に武器が隠せては、護衛も大変ね)
彼女が異世界の学生から買い取ったという、武器を隠し持つための“異空間”を作り出すアイテム。
本来ならば少女のような“一般人に武器を所持していることを知られてはいけない人間”くらいにしか用が無いはずなのだが、
何故かその学園から持ちこまれるものではありふれたものらしく、比較的安価で譲ってくれた。
「く、クソ!オーガ、行け!あの女を俺に近づけさせるな!」
少年の命令を受けて鬼たちが突っ込んでくる。戦術も何も無い、突撃。
「…あなたたちも大変ね。馬鹿な指揮官を持って」
その様子に、少女は憐れむように呟き。
放った2回の突きは、2体の鬼の喉元を正確に貫いた。
少年の命令を受けて鬼たちが突っ込んでくる。戦術も何も無い、突撃。
「…あなたたちも大変ね。馬鹿な指揮官を持って」
その様子に、少女は憐れむように呟き。
放った2回の突きは、2体の鬼の喉元を正確に貫いた。
「ひぃ!?」
自らの戦力を全滅させられた少年がおびえた悲鳴を上げる。
「な、何かないか…」
“彼”に託された悪魔召喚プログラムをいじくって目の前の“化け物”を倒せるような悪魔を探す。
(コイツじゃダメだ。これもダメ。駄目駄目駄目駄目…これだ!)
必死に調べ、少年はそれにたどり着く。“彼”が最後の切り札として用意していた、強力な悪魔。
「こ、こい!邪鬼ギリメカラ!」
そして、その言葉が響くと同時に、魔法陣が再び現れ、1つ目の、象の頭を持つ悪魔が現れる。
「やれ!その女をぶっ殺せ!」
その悪魔は召喚されるとほぼ同時に。
“主”の命令を忠実に実行してみせた。
自らの戦力を全滅させられた少年がおびえた悲鳴を上げる。
「な、何かないか…」
“彼”に託された悪魔召喚プログラムをいじくって目の前の“化け物”を倒せるような悪魔を探す。
(コイツじゃダメだ。これもダメ。駄目駄目駄目駄目…これだ!)
必死に調べ、少年はそれにたどり着く。“彼”が最後の切り札として用意していた、強力な悪魔。
「こ、こい!邪鬼ギリメカラ!」
そして、その言葉が響くと同時に、魔法陣が再び現れ、1つ目の、象の頭を持つ悪魔が現れる。
「やれ!その女をぶっ殺せ!」
その悪魔は召喚されるとほぼ同時に。
“主”の命令を忠実に実行してみせた。
ドスゥ!
「…な、何で…」
自らの胸を刺し貫いた“悪魔の”剣に少年は茫然と呟く。
自らの胸を刺し貫いた“悪魔の”剣に少年は茫然と呟く。
グシャアッ!
少年が思わず落した箱を、悪魔が踏みつけて粉々に粉砕する。
悪魔は“主”に命令されていた。
自分が“召喚”された場合、“召喚者”を殺し、パソコンを破壊せよ、と。
「ぐ…ぐふぇ…」
主の手駒が事切れたのを確認し、悪魔は少女の方に向きなおる。
「…どうやらあなたを倒せば、終わりのようね」
構える。少女は経験と勘で悟っていた。目の前の“化け物”は強い、と。
そんな少女に、悪魔は無造作に近づき、剣を振り下ろす。
悪魔は“主”に命令されていた。
自分が“召喚”された場合、“召喚者”を殺し、パソコンを破壊せよ、と。
「ぐ…ぐふぇ…」
主の手駒が事切れたのを確認し、悪魔は少女の方に向きなおる。
「…どうやらあなたを倒せば、終わりのようね」
構える。少女は経験と勘で悟っていた。目の前の“化け物”は強い、と。
そんな少女に、悪魔は無造作に近づき、剣を振り下ろす。
ブオンッ!
技も何も無いが、恐ろしく早いその一撃を少女は紙一重でかわし、反撃にうつる。
剣を振り下ろしたことで無防備に曝された、悪魔の胸、そこにめがけて神速の突きを繰り出す。
「プレシズ・キ…!?」
技名と共に、必殺の一撃を繰り出そうとした瞬間だった。
ぞくりと。
少女の背筋に何かとてつもなく恐ろしい予感が通り過ぎる。
それを受けて、剣の軌道がそれる。胸…心臓から大きく離れた、右肩へ。
そして、少女の剣が悪魔の右肩に届いた瞬間。
辺りにパッと鮮血が舞った。
剣を振り下ろしたことで無防備に曝された、悪魔の胸、そこにめがけて神速の突きを繰り出す。
「プレシズ・キ…!?」
技名と共に、必殺の一撃を繰り出そうとした瞬間だった。
ぞくりと。
少女の背筋に何かとてつもなく恐ろしい予感が通り過ぎる。
それを受けて、剣の軌道がそれる。胸…心臓から大きく離れた、右肩へ。
そして、少女の剣が悪魔の右肩に届いた瞬間。
辺りにパッと鮮血が舞った。
2
「…つくづく非常識な、世界ね…」
少女が初めて顔を歪めて見せる。その、痛み故に。
力の入らない右手を必死で握りしめる。零れおちそうになる剣を取り落とさないように。
少女が初めて顔を歪めて見せる。その、痛み故に。
力の入らない右手を必死で握りしめる。零れおちそうになる剣を取り落とさないように。
距離を取って、少女は悪魔をにらみつける。
…左手で“自らの”負傷した右肩を抑えながら。
剣が悪魔の右肩に届いた瞬間、少女は右肩に傷を負った。
…まるで、“自分の攻撃を受けた”かのように。
そらさなければ、心臓を破壊され、少女は死んでいただろう。
(困ったわね)
おまけに悪魔は完全に無傷だ。どうやら自分の剣は通用しないらしい。
少女は、魔法を使えない。
戦う術は剣の技しか知らぬ少女には最悪と言ってもよい相手だった。
(撤退したいところだけど…)
逃がさないとばかりに距離を詰めた悪魔が斬りかかって来る。
その攻撃を剣で弾く。
「くぅ!?」
悲鳴を飲み込む。
剣がぶつかり合うたびに震動が右肩に伝わり、新たな血があふれ出る。
(…難しいわね)
無理とは思わない。撤退に失敗すれば、ほぼ間違いなく、死ぬ。
生き残るには、何としてでも逃げ出さなくてはならないのだ。
防御に徹しながら、少女は必死に辺りの状況を探る。何でもいい。逃げ出せるだけの隙を作るなにかを。
…左手で“自らの”負傷した右肩を抑えながら。
剣が悪魔の右肩に届いた瞬間、少女は右肩に傷を負った。
…まるで、“自分の攻撃を受けた”かのように。
そらさなければ、心臓を破壊され、少女は死んでいただろう。
(困ったわね)
おまけに悪魔は完全に無傷だ。どうやら自分の剣は通用しないらしい。
少女は、魔法を使えない。
戦う術は剣の技しか知らぬ少女には最悪と言ってもよい相手だった。
(撤退したいところだけど…)
逃がさないとばかりに距離を詰めた悪魔が斬りかかって来る。
その攻撃を剣で弾く。
「くぅ!?」
悲鳴を飲み込む。
剣がぶつかり合うたびに震動が右肩に伝わり、新たな血があふれ出る。
(…難しいわね)
無理とは思わない。撤退に失敗すれば、ほぼ間違いなく、死ぬ。
生き残るには、何としてでも逃げ出さなくてはならないのだ。
防御に徹しながら、少女は必死に辺りの状況を探る。何でもいい。逃げ出せるだけの隙を作るなにかを。
だからこそ、少女は気づいた。
「伏せて!」
そんな声と共に小型の何かが投げ込まれた瞬間。
既に少女はバックステップで十二分に距離を取っていた。
そんな声と共に小型の何かが投げ込まれた瞬間。
既に少女はバックステップで十二分に距離を取っていた。
3
爆音。
小型の炸裂弾が爆発し、辺りに火が飛び散る。
小型の炸裂弾が爆発し、辺りに火が飛び散る。
グォォォォ…
怒りと痛みに悪魔が声を上げるなか、斎堂一狼は少女と悪魔の間に降り立つ。
「大丈夫ですか?」
一狼がこの戦いに気づいたのは、偶然だった。
得た情報を元に、輝明学園に戻り、少女について調べてもらおうと思った直後。
“月匣”に似た何かの発生を察知したのだ。
そして、やってきた先にいたのは…
「あなたですよね?昨日、モンスターを倒した、剣士の少女と言うのは」
黒髪のお下げと、血まみれの手袋。そして手にしている業物の細剣。
状況から見て、間違いないだろう。
「ここから先は任せて下さい。コイツは、僕が倒します」
そう言うと自らの月衣から忍者刀を引き抜き、構える。
その直後だった。
「…待って。そいつに剣は効かないわ」
「え…?」
「実証済みよ」
少女が一狼に対して最初に言ったのは、冷静な戦況分析。
「それと…」
少女は一狼との悠長なおしゃべりを許している悪魔の方を見る。
攻めあぐねている様子だ。何かを警戒するように、距離をつめようとしない。
良く見れば、あちこちにかなりの火傷を負っている。大した威力でもない、炸裂弾で。
続いて、一狼を見る。今駆けつけたばかりの“無傷の”一狼を。
少女は一狼に問いかける。
「あなた、“火”を使った攻撃は出来るかしら?」
「火?」
「そうよ。魔法でも爆弾でも何でも良いわ。火を使って、攻撃してみて。一撃目は…かすり傷程度の浅い攻撃でお願い」
「…分かりました。炎よ纏え…《エンチャントフレイム》!」
一狼が魔法を使って武器に炎を纏わせ、悪魔に切りかかる。
「てやあ!」
シュッ
その攻撃は狙い通りに悪魔の腕にごく浅い傷をつける。
「やはりね…」
傷がついた悪魔の腕と無傷の一狼の腕を見比べて、少女は確信し、少年に叫ぶ。
「そいつ、炎が弱点よ。炎をまとった攻撃ならば、跳ね返せないみたい」
「了解!」
少女の言葉に応え、再び《エンチャントフレイム》を纏わせた刃を鞘に納め、居合の形を取る。
「…プレシズ・ヘル!」
続いて少女が斬りかかる。ただし、今度は攻撃する代わりに、当てないように気をつけてのフェイントの応酬。
舞いのように繰り出されるそれは、巧みに悪魔の視界を遮り、悪魔の剣を跳ね上げて弾き飛ばし、悪魔を無防備にするそれは、一狼の攻撃へとつながる準備。
「…今!」
体勢を完全に崩し、無防備な姿をさらさせたところで少女が離れ、一狼に合図を送る。
「斎堂一狼…参る!」
そして、最良の一瞬をつかんだ一狼の一撃が悪魔を捉え。
「大丈夫ですか?」
一狼がこの戦いに気づいたのは、偶然だった。
得た情報を元に、輝明学園に戻り、少女について調べてもらおうと思った直後。
“月匣”に似た何かの発生を察知したのだ。
そして、やってきた先にいたのは…
「あなたですよね?昨日、モンスターを倒した、剣士の少女と言うのは」
黒髪のお下げと、血まみれの手袋。そして手にしている業物の細剣。
状況から見て、間違いないだろう。
「ここから先は任せて下さい。コイツは、僕が倒します」
そう言うと自らの月衣から忍者刀を引き抜き、構える。
その直後だった。
「…待って。そいつに剣は効かないわ」
「え…?」
「実証済みよ」
少女が一狼に対して最初に言ったのは、冷静な戦況分析。
「それと…」
少女は一狼との悠長なおしゃべりを許している悪魔の方を見る。
攻めあぐねている様子だ。何かを警戒するように、距離をつめようとしない。
良く見れば、あちこちにかなりの火傷を負っている。大した威力でもない、炸裂弾で。
続いて、一狼を見る。今駆けつけたばかりの“無傷の”一狼を。
少女は一狼に問いかける。
「あなた、“火”を使った攻撃は出来るかしら?」
「火?」
「そうよ。魔法でも爆弾でも何でも良いわ。火を使って、攻撃してみて。一撃目は…かすり傷程度の浅い攻撃でお願い」
「…分かりました。炎よ纏え…《エンチャントフレイム》!」
一狼が魔法を使って武器に炎を纏わせ、悪魔に切りかかる。
「てやあ!」
シュッ
その攻撃は狙い通りに悪魔の腕にごく浅い傷をつける。
「やはりね…」
傷がついた悪魔の腕と無傷の一狼の腕を見比べて、少女は確信し、少年に叫ぶ。
「そいつ、炎が弱点よ。炎をまとった攻撃ならば、跳ね返せないみたい」
「了解!」
少女の言葉に応え、再び《エンチャントフレイム》を纏わせた刃を鞘に納め、居合の形を取る。
「…プレシズ・ヘル!」
続いて少女が斬りかかる。ただし、今度は攻撃する代わりに、当てないように気をつけてのフェイントの応酬。
舞いのように繰り出されるそれは、巧みに悪魔の視界を遮り、悪魔の剣を跳ね上げて弾き飛ばし、悪魔を無防備にするそれは、一狼の攻撃へとつながる準備。
「…今!」
体勢を完全に崩し、無防備な姿をさらさせたところで少女が離れ、一狼に合図を送る。
「斎堂一狼…参る!」
そして、最良の一瞬をつかんだ一狼の一撃が悪魔を捉え。
スパァン!
一刀のもとにその首を切り落とした。
4
報告書
作成者:輝明学園所属 斎堂一狼
作成者:輝明学園所属 斎堂一狼
モンスターによる襲撃の犯人は、所持していた学生証より“軽子坂学園”の男子学生と判明。ただし、現在学園世界に該当する学園は発見できず。
なお、調査中、襲撃犯より襲撃を受け、交戦。襲撃犯はその戦闘中にモンスターの暴走に巻き込まれて死亡。
遺留品は破壊されたモバイルパソコンが1台。回収するものの、損傷激しく内容等の確認は困難。
モンスター召喚の媒体となっていたことから何らかの特殊なプログラムが入っていたものと思われる。
なお、調査中、襲撃犯より襲撃を受け、交戦。襲撃犯はその戦闘中にモンスターの暴走に巻き込まれて死亡。
遺留品は破壊されたモバイルパソコンが1台。回収するものの、損傷激しく内容等の確認は困難。
モンスター召喚の媒体となっていたことから何らかの特殊なプログラムが入っていたものと思われる。
―――輝明学園 屋上
荻原への報告を終え、少女と一狼は人気のないベンチで話をしていた。
「本当に良かったんですか?」
治療のためと、共に報告してもらうためについてきてもらった少女が荻原に言った言葉について、一狼は再度問いかける。
「よかったって…何が?」
「あなたが“カゲモリ”になるって言いだしたことについて、ですよ」
“カゲモリ”として、輝明学園と契約を結びたい。そう、少女が言いだした時には、本当に驚いた。
「…ドルファン学園側には私の存在を知らせない、また、その存在を悟られぬよう輝明学園が最大限の便宜を図る。
その一環として私に輝明学園の“ウィザード生徒”としての身分とその証明書を発行し、女子用の呪錬制服を支給。
ドルファン学園の外では輝明学園に所属する“強化人間”として扱い、購買の利用等の権利基準は輝明学園所属のウィザード生徒に準ずる。
なお、私の身元等については一切の詮索を行わないこととする。任務に必要な装備等はそちらが用意する。
報酬は別途結んだ契約に基づき決定。…契約条件に特に問題は感じないけど?」
首をかしげ、すらすらと先ほど結んだ契約内容を羅列する少女に、一狼は心配そうな顔で聞く。
「ですが、いつ死ぬかも知れない、危険な仕事ですよ?」
「…それも問題ないわ」
一狼の問いに、少女は遠い目をしてみせる。
「帰還すること自体は私にとっても必要だもの。そのために動くのは、当然でしょう?それに、死ぬ覚悟ならとうの昔にできてるわ」
それを当然のように言う彼女に、一狼は何も言えなくなる。
しばしの沈黙。その気まずい空気に耐えられず、一狼は自己紹介を始める。
「…そう言えば、まだ名乗っていませんでしたね。僕は斎堂一狼と言います」
「そう。私はライズ。ライズ・ハイマーよ」
それに答える形で少女…ライズが名乗る。
そしてまた、沈黙が訪れる。
(ど、どうしよう…すっごく気まずい)
って言うか今まではそれどころじゃなかったけど、よく考えたら女の子と2人きりなのだ。
まずい。実にまずい。
(最近は、姫宮で慣れたと思ったのに…思ったのにぃ~!?)
意識を始めたら、一気に気になる。どうしよう。
「…どうかしたの?」
「へ!?あ、いや、その…」
そわそわと落ち着かない様子の一狼を訝んだライズに話しかけられ、一狼は、更に動揺する。
(ま、まずい何か話題、話題…)
必死で考え、言葉を絞り出す。そう言えば言って無かったなあとかそんな感じで。
「あ、そ、そうだ!薙原さんが、あっと、あ、その、ライズさんが助けた執行委員の人がありがとうって伝えてくれって言ってました!」
(し、しまったあ~!?)
別に今言うこっちゃないだろと後悔しきりの一狼。
治療のためと、共に報告してもらうためについてきてもらった少女が荻原に言った言葉について、一狼は再度問いかける。
「よかったって…何が?」
「あなたが“カゲモリ”になるって言いだしたことについて、ですよ」
“カゲモリ”として、輝明学園と契約を結びたい。そう、少女が言いだした時には、本当に驚いた。
「…ドルファン学園側には私の存在を知らせない、また、その存在を悟られぬよう輝明学園が最大限の便宜を図る。
その一環として私に輝明学園の“ウィザード生徒”としての身分とその証明書を発行し、女子用の呪錬制服を支給。
ドルファン学園の外では輝明学園に所属する“強化人間”として扱い、購買の利用等の権利基準は輝明学園所属のウィザード生徒に準ずる。
なお、私の身元等については一切の詮索を行わないこととする。任務に必要な装備等はそちらが用意する。
報酬は別途結んだ契約に基づき決定。…契約条件に特に問題は感じないけど?」
首をかしげ、すらすらと先ほど結んだ契約内容を羅列する少女に、一狼は心配そうな顔で聞く。
「ですが、いつ死ぬかも知れない、危険な仕事ですよ?」
「…それも問題ないわ」
一狼の問いに、少女は遠い目をしてみせる。
「帰還すること自体は私にとっても必要だもの。そのために動くのは、当然でしょう?それに、死ぬ覚悟ならとうの昔にできてるわ」
それを当然のように言う彼女に、一狼は何も言えなくなる。
しばしの沈黙。その気まずい空気に耐えられず、一狼は自己紹介を始める。
「…そう言えば、まだ名乗っていませんでしたね。僕は斎堂一狼と言います」
「そう。私はライズ。ライズ・ハイマーよ」
それに答える形で少女…ライズが名乗る。
そしてまた、沈黙が訪れる。
(ど、どうしよう…すっごく気まずい)
って言うか今まではそれどころじゃなかったけど、よく考えたら女の子と2人きりなのだ。
まずい。実にまずい。
(最近は、姫宮で慣れたと思ったのに…思ったのにぃ~!?)
意識を始めたら、一気に気になる。どうしよう。
「…どうかしたの?」
「へ!?あ、いや、その…」
そわそわと落ち着かない様子の一狼を訝んだライズに話しかけられ、一狼は、更に動揺する。
(ま、まずい何か話題、話題…)
必死で考え、言葉を絞り出す。そう言えば言って無かったなあとかそんな感じで。
「あ、そ、そうだ!薙原さんが、あっと、あ、その、ライズさんが助けた執行委員の人がありがとうって伝えてくれって言ってました!」
(し、しまったあ~!?)
別に今言うこっちゃないだろと後悔しきりの一狼。
だが。
「…別に、私は生き残るために戦っただけよ。助けたわけじゃないわ」
ライズはそっけなく呟くと、ぷいっと視線を横にそらす。その反応に。
(もしかして…照れてる?)
少しだけ、ライズを近くに感じる一狼だった。
「…別に、私は生き残るために戦っただけよ。助けたわけじゃないわ」
ライズはそっけなく呟くと、ぷいっと視線を横にそらす。その反応に。
(もしかして…照れてる?)
少しだけ、ライズを近くに感じる一狼だった。
…ちなみに。
その後、「斎堂一狼が屋上で美少女と2人っきりで会っていた」と言う話は尾ヒレどころかむなびれと背びれまで生えて
とある人造人間の少女に伝わり、それがまた新たな騒動を引き起こすのだが、それはまた、別の話。
その後、「斎堂一狼が屋上で美少女と2人っきりで会っていた」と言う話は尾ヒレどころかむなびれと背びれまで生えて
とある人造人間の少女に伝わり、それがまた新たな騒動を引き起こすのだが、それはまた、別の話。