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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第02話

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休日の過ごし方(同好会編)

休日。
学園が転移して出来たこの世界に、休日出勤などと言うサラリーマン的なものは存在しない(一部教師除く)
毎週1度、所により2度は訪れる休日。学園世界において、その過ごし方は様々である。

学園都市や真帆良、蓬莱など“学生の遊び場”が充実している学園に遊びに行くもの。
購買で依頼を受けたり、自主的にダンジョンに向かったりして“冒険”に明け暮れるもの。
“研究者の楽園”ザールブルグアカデミーで学業を忘れてひたすら研究に勤しみ、議論を戦わせるもの。
自らの学園で、次の“学園対抗競技大会”に向けて練習や部活動に勤しむもの。
学園海や学園都市で“アルバイト”に精を出すもの。

そして、彼女、“元ウィザード:至宝エリス”の選んだ、休日の過ごし方は…

―――学園世界輝明寮

「ふんふんふ~ん♪」
寮のサロンで鼻歌を歌いながらエリスは準備にいそしんでいた。
「飾り付けもお茶の準備もOK。あとは…」
てきぱきと的確に準備を進めながら時計を確認する。
「もうそろそろ来るころだし、出しておこうかな」
とてとてと、寮に備え付けのキッチンに向かう。
完成させて、冷蔵庫で冷やしていたそれを取り出す。
艶やかな“黒”で覆われた、甘い匂いのケーキ。
「うん。ザッハトルテは初めてだったからちょっと不安だったけど、これならお2人にもお出しできそう…あ、生クリーム泡立てておかないと」
チョコレートケーキの王様と称されるそのケーキの出来栄えに満足し、エリスは“お客様”を迎える準備を再会する。
「ホタルさんとシャオちゃんは、今日はどんなお菓子を作ってくるのかな…?」
“お客様”の今日の“作品”に思いをはせながら…

“部活動”と“同好会活動”。この2つは学園世界においては、普通とは異なる意味を持つ。
部活動が“学園内のみで行われる活動”であるのに対し、同好会活動は学園の垣根を超えて集まった、趣味人たちの活動なのだ。
そんなわけで、学園世界には普通のものから奇妙なものまで含む同好会が多く存在する。

和洋中にとどまらず、ファンタジー系未来系魔界系など、様々な分野の料理人たちがその腕を磨き合う『美食倶楽部』
“俺よりも強い奴と戦いたい”をモットーにタイマン限定での真剣勝負を繰り広げる『新白連合学園世界支部』(最近武器の使用も認められた)
学園内に持ち込んでいた様々な世界の漫画、ゲーム、DVDを持ちよって鑑賞、堪能するオタクの聖地『異世界視覚文化研究会』
そこから派生し、分裂した“特殊な趣味”の女子の集団『柊蓮司総攻め同盟』&『柊蓮司総受け連盟』(両者は混ぜるな危険と言われている)

大小様々、玉石混交、多種多様。この学園世界の混沌っぷりを表すかのように、同好会は星の数ほど存在する。
そして、その中に1つに至宝エリスが所属する、幻と呼ばれる同好会があった。

様々な伝説、名勝負、阿鼻叫喚を生んだと語り継がれる大会、『学園対抗競技会パティシエ部門』
その大会において和、洋、中。それぞれの分野のお菓子において“最高点”を叩きだした“お菓子つくりの女王”たちの、たった3人の同好会。


輝明寮に2人が到着したのは、ほぼ同時だった。
「御苦労さま。軒轅」
美しい銀色の髪を持つ少女が彼女を乗せてきた“星神”をねぎらい、なでる。
「…少し、遅くなってしまいましたね」
寮から少し離れた露地の屋根から華麗に着地し、軽く服装を“着替え”て、ポニーテールの少女が歩き出す。
「こんにちは」
「こんにちは」
のほほんと挨拶をかわしあう、2人の少女。
そして。
「「ごめんください」」
いつものように2人で扉を開けて、中の少女に呼びかける。
「いらっしゃい!シャオちゃん!ホタルさん!」
その2人を、エリスは最高の笑顔で出迎えた。

精密極まりない匠の技と生活に根ざした温かい心使いを併せ持つ“和菓子の達人”雲隠ホタル。
神に祝福されたと評される溢れる才能を、常に努力を忘れない謙虚さで磨いた“洋菓子の天使”至宝エリス。
悠久の中国の歴史と共に歩み、料理の腕を磨き続けた“中華菓子の仙女”守護月天 シャオリン。

『お菓子作り同好会』
ごく普通の名前でありながら、伝説と言われる同好会の会合が、今日もまた始まった。

―――1時間後

「やっぱりシャオちゃんもホタルさんも凄いですね。私なんて、まだまだです」
こころなしシュンとして、エリスが2人に言う。
エリスは恥ずかしかった。お菓子の中でも特に難しいとされるケーキに挑戦して、うまくできただけで満足していた自分が。
やはり、この2人は凄い。エリスは2人のお菓子を食べて改めてそれを感じていた。
エリスが他の2人のお菓子を評する。

「シャオちゃんのお菓子、複雑なのにちゃんと1つにまとまっていて…凄く美味しかったです。それに、なんだか食べただけで元気が出てきたような気がします」
シャオが作って来たのは、八宝飯(フルーツを使った中国のおはぎ)だった。
中華菓子の宿命で見た目に派手さは無いものの、学園世界で取れる“異世界”のフルーツを数多く取り入れ、それを調和させた、絶品。
味だけで無く、食べた後のことまで考え抜かれた薬効の数々は、まさに数千年の歴史と知識の集大成とでも言うべき代物だ。

「ホタルさんのお菓子は…すごくシンプル。それなのに…私、食べた瞬間に“あ、私負けたな”って思っちゃうくらい、おいしさが伝わってきました」
ホタルが作ったのはごくごくシンプルな干菓子。口さがの無い人間なら“砂糖を固めただけ”と言うかも知れない。
だが、その余りのシンプルさはごく僅かなミスも許さない厳格さを持つ。最高の素材の、最高の瞬間。それをわずかでも間違えれば、ここまでの味には仕上がらない。
それを完璧に仕上げられるのは、やはりホタルの“心配り”と“鍛練”がなせる技と言えるだろう。

だが、そんなエリスの評価を聞いて、2人はそれぞれにそれを否定する。

「いいえ。そんなことないです。出来が良かったのは、私が作り慣れたお菓子なのと、材料集めを八穀に手伝ってもらったからだと思います。
 …私はあまり要領がよくないから、エリスさんのように新しいお料理には中々挑戦できないんです」
ふるふると首を振り、シャオが言う。それはシャオの素直な気持ちだった。常に新しいお菓子に挑戦し、確実に上達していくエリス。
今の“主”との交わりから生まれた、自らの“変化”を受け入れるまで大変な苦労をした経験から、シャオはその“変化”を恐れない姿勢に憧れすら抱いていた。

「…私も、今回はあまり自分を褒められないですね。エヴァさ…知り合いから最高級の和三盆を頂き、それを生かしたシンプルなお菓子に仕上げましたので、
 どちらかと言うと腕よりは素材の良さに頼ったものになっていたんじゃないかなって。やはりエリスさんは凄いと思います。
 私も、エリスさんのケーキを食べてどうせならば他のお菓子の材料に使えば良かったなあって思いましたもの」
ここまでの“高級素材”を扱うのは初めて。そのことが材料を無駄にしないことがモットーのホタルに餡に和三盆を使う事をためらわせた。
それが悔やまれる。餡子に和三盆を使って和菓子を仕上げれば、より上を目指せた。そこに踏み込む“勇気”が足りなかった。
“普通の食材”でここまでの味を出すエリスのケーキを食べ、それを痛感したからこそ、失敗を恐れずに挑戦していくエリスが、ホタルには眩しく見えた。

「…えへへ」
「…ふふ」
「…くす」
そして、誰からともなく笑いだして、その沈黙を破る。
それがいつものパターンだった。
“知識”のシャオに“技”のホタル。そして“努力”のエリス。タイプの違う達人3人。“友人”であり“ライバル”である3人がお互いに認め合い、高め合う。
その姿勢が、この同好会の最大の特徴である。

それからしばし世間話に花を咲かせる。
「そう言えばさっきのケーキ…どうやって作るんですか?」
きっかけは、その話の中で何気なく飛び出したホタルの発言。その言葉にエリスが首をかしげる。
「ザッハトルテの作り方ですか?」
「はい。マモル様はどちらかと言うと洋菓子の方が好きらしいんです。これだけおいしいケーキならば是非作って上げたいなって」
「あ、私も聞きたいです。太助様に作ってあげたいので」
ホタルの発言に乗る形で、シャオも頷く。よく見ると、2人とも少しだけ、顔が赤い。
その2人を見て、乙女の直感で何となく察したエリスが、自分も顔を赤らめて、言う。
「…そうですね。じゃあ、みんなで作りましょうか。私も、柊先輩に何か作って行きたいなと思っていたところなので」
そして、恋する乙女3人は、いそいそと厨房へ向かった。

―――更に数時間後

「…凄い」
完成した“ザッハトルテ改”の会心の出来栄えに試食したシャオは思わず息をのんだ。
「…そう言えば私たち全員で作るのは、初めてでしたね」
いずれ劣らぬ達人たちの、己の得意分野を最大限に生かした合作。
「…驚きました。お2人が凄いと言うのは十分に分かっていたつもりでしたけど。ここまでとは」
それはまさに最高傑作と言っても差支えない代物だった。
「と、とりあえず、私、部屋に戻ってラッピングの道具取ってきますね」
とにかく、これだけおいしく出来たのだから、柊先輩に早く食べてもらいたい。そう考えてエリスはいそいそと自室に戻る。
次にホタルがぶるぶると震える“任務用”の0-phoneに気づき、言う。
「…すみません。ちょっと電話がかかってきたので、少しだけ失礼します」
そう言うと文字通り疾風のごとく、ホタルが姿を消す。
「あ、そう言えば私も遅くなると伝えないと」
そのことに気づき、携帯電話を持っていないシャオが寮の入口にとてとてと据え付けられた電話へと向かう。
そして、厨房にはわずかな時間、誰もいなくなった。

「…うお!?こりゃすげえ!」
…“人間”は。

そして数分後、事件は起こった。
「け、ケーキが食べられてる!?」
エリスが驚きの声を上げる。
みんなでつくったケーキが、何者かに食い荒らされていたのを見て。
「いったい誰が…」
(ルーアンさんは今から先生がたの飲み会に行くって張り切ってましたから、違いますよね?じゃあ…)
「ほかの人が入った形跡はありませんね」
(先ほどの電話では山芽さんと耳之介はタバサさんと任務に出ていると言う話ですし…となると…)
エリスの言葉を受けお互いやらかしそうな“身内”の顔を思い浮かべながら、シャオとホタルは考える。
そして。
*1
ほぼ同時に同じ結論に至る。
「とにかく、今は犯人を逃がさないようにしないと!」
「はい!任せて下さい!」
ホタルとシャオが頷き合い、連携して行動を開始する。
「…天、明らかにして、星、来たれ…」
懐から古びた“環”を取り出し、シャオが朗々と吟ずる。
「月天は心を読ませたり…」
心清きものの前に現れ、主を不幸から守ると言う月の精霊、守護月天。
「…来々、塁壁陣!」
彼女に仕える星神の一柱。何人たりとも通さぬ結界を作り出す星神で持ってシャオは辺り一帯を封鎖した。

「なんだこりゃ!?通れねえぞ!?」

ざっくばらんな口調の可愛らしい声をホタルは聞き逃さない。
傍らにあったケーキ用のフォークを取り、目を閉じる。
視覚など、必要ない。音の方向と気配…それさえ追えれば、外したりは、しない。
「はぁ!」
そして、弾丸の如く飛び出したフォークが。
ビィィィィン
床にささり“それ”を床に縫い止めた。

「くっそ!何しやがる!あぶねえじゃねえか!」

うまく見動きが取れず“魔法”が使えないことに焦りながらそれは悪態をつく。
手のひらに乗るくらいの小さな身体。三角帽子とぷくぷくとしたまんまるほっぺ、そして手にはマラカス。
それの正体は…
「「「妖精さん!?」」」
「…おい!?お前らもしかして俺が見えてるのか!?」
3人の言葉に“妖精の王子ミルモ”が驚愕して聞き返した。


―――学園世界B-38区画付近

「それにしても驚きましたね」
「ええ…まさか妖精さんの“学校”があるなんて」
「私も、精霊ですが精霊学校と言うのは聞いたことが無かったので、気づきませんでした」
この区画に昨日転移してきたと言う、その“学園”を訪れた3人が口々に感想を口にする。
妖精界にある“妖精学校”。当然通っているのは妖精のみだ。
本来妖精は妖精と契約した人間にしか見ることができないと言う。
だから“人間”がたくさんいても声をかけず、冒険していたところ、あのケーキを見つけてついつまみ食いをしてしまった。
それが先ほど出会った妖精、ミルモの弁だった。
あの後、ミルモに案内されて、3人は妖精学校を訪れていた。
今日作ってきた各々の“作品”と食い荒らされたケーキを持って。
妖精はみな、お菓子が非常に好きだと言う話で、大変喜ばれた。
「…そう言えば、お2人は、“これ”使いますか?」
ふと、何気ない様子を装ってはいるが少し赤い顔で、エリスは妖精たちに託されたものについて、2人に問う。
「…えっと」
「…ひ、秘密です」
他の2人も顔が真っ赤だ。

『あんがとな。お礼っつっちゃなんだが、こいつをもってけ。このマグカップがあれば、妖精を呼び出して契約できるんだ。
 …何ができるかって?そりゃあおめえ俺らがやる手伝いっつったら“恋”に決まってんじゃねーか。
 俺は楓の恋をかなえたから修業は終わってるが、他の奴はまだだからな。いつでも呼んでくれ』

そう言われて1人1つ妖精のマグカップを託された。使えば妖精が“恋”を応援してくれると言う。
恋する乙女であるところの3人には、とても嬉しい特典だ。
「ちなみに、エリスさんは…?」
ホタルがエリスに聞き返す。
「えっと、その…ひ、秘密です」
その問いに、耳まで真っ赤になりながら、エリスが俯いた。

全員、色々と考えながら、黙って居住区を目指し歩く。その空には、月と、いくつもの星が瞬いていた。

その後、彼女たちが妖精と契約したのか、恋の行方はどうなったのかは…秘密です。

―――― 一方その頃。

「ええい何をするこの下がる男め!それはわらわがヒョロ夫のために作ったものだぞ!貴様が食ってどうする!?」
「そ、そうですよ!それは神様のために作ったものです!柊さん、食べちゃ駄目です~!」
「柊蓮司。それは命のためのもの。だから、食べちゃ、ダメ」

「黙れお前ら!ってかよく見ろ!どう見ても俺が“喰われて”んだろ~がああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

様々な伝説、名勝負、阿鼻叫喚を生んだと語り継がれる大会、『学園対抗競技会パティシエ部門』
その大会においてそれぞれの分野のお菓子において“評価不能”を叩きだした“お菓子つくりの大魔王”たちの、たった3人の同好会。

その“作品”と某極上生徒会特別執行委員が文字通りの意味で喰うか喰われるかの戦いを繰り広げていたのだが、それはまた、別の話。



  • “和菓子の達人”雲隠ホタル@陰からマモル! 浅間山高校
  • “洋菓子の天使”至宝エリス@ナイトウィザード! 輝明学園
  • “中華菓子の天女”守護月天シャオリン@護って!守護月天 鶴ケ丘中学校
  • “妖精の王子”ミルモ@わがままフェアリーミルモでポン!
  • “お菓子作りの大魔王”の3人@小ネタにつき割愛

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注釈

*1 …部外者!?