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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第02章

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だれでも歓迎! 編集
 あーるひー、はーれたー昼下がりぃ。
 おいっちにい♪ さんっ、しい♪

「ふうー、今日もいい天気だ」

 死ぬにはいい天気だとサムズアップしたいぐらいに晴れ渡った空を見ながら、当麻はラジオ体操を行なっていた。
 自慢ではないが、毎日の柔軟運動と欠かさず続けているジョギングに、最後に飲み干す宅配の牛乳瓶を一口で飲む速度には誰にも負けない自信があった。
 狂ったような速度で体を廻し、あはははと笑っているのは何故か朝起きたらぶっ壊れていた電化製品の残骸と買っておいたアイスがデロデロに溶けていた冷凍庫の悲劇のせいではないのだ。
 おいっちに♪ さんっ、しい♪
 踊る、回る、狂う、エレガントに回転し――当麻は唐突に床に倒れこんで。

「ちぃきしょーっ!!」

 楽しみに取って置いたハーケンダッツのアイスのご臨終にもがいた。じたばた、じたばた。
 五分ほど奇声を上げながら暴れたのだが、不意に正気に戻り、恥ずかしくなったので起き上がる。

「あーくそ、とにかく飯食わないと死ねる」

 二十分前に掛かってきたロリ神に愛されて、いつか失うはずの甘酸っぱい少女時代を過ごし続ける担当からのラブコール。

『あははー、上条ちゃん。頭はそこそこですけど、出席日数と単位がやばいから補習デース☆』などという言葉があったので、多少はお腹を膨らませないと不味い。

 どうせ能力開発の粉末なり錠剤などを飲むのだろうから、胃になんか入れないと痛めるだろうし(食後服用とかいうな)、
 下手すると透視能力開発などをさせられて、夕方まで見えることのないトランプの柄を当てる嵌めになる。
 くーくーお腹を鳴らす時間など一秒でも短いほうがいい。
 故に、当麻はため息を吐きながら、台所から取ってきた鍋掴みを“右手に嵌めて”、寝室のベットにまで戻るとその上に乗っていたクッションを持ち上げた。
 ベットの下に隠しておいた金庫のような物体。
【内蔵式月匣発生器】
 昔のつてで手に入れて、友好関係を築いている某錬金術師が時たまメンテするたびに魔改造しているそれの取っ手を鍋つかみ越しに右手で掴んで、押し開く。
 中に広がるのは魔法のような広い空間に、詰め込まれたものの数々の物品。
 現代技術では多分製造出来ない【異世界の産物】
 そして、その中に上半身ごと入り込んで、目的の物体を何個か掴むと、当麻は自然な動作で這い出てきた。

「ふいー」

 手に持ったのは非常用のインスタント食品数個とエネルギーメイト。

「壊れてねえよな?」

 当麻は月匣発生装置の中を除き見るが、別段異常は無さそうだった。
 当麻の“特異体質”と呼ぶべきそれによる破壊。
 散々苦労したが、右手による直接接触が無ければ五分の耐久仕様を約束すると言われているそれ。
 とはいえ、やはり心臓に悪く、不安に煽られるが、今日もまた無事に壊さずに済んだようだ。
 月匣発生装置の蓋を閉じて、再び同じようにベットを戻すと、当麻はそれを台所に運び、水を入れた薬缶に火を掛けながら軽く首を動かして。

「布団でも干すかー」

 手に嵌めていた鍋掴みとテーブルの上において、丁度いいとばかりに外しておいた布団を抱えて、当麻はベランダに出た。
 チュンチュンと素敵に目障りな声で鳴り響く鳥の声を聞きながら、ベランダの窓を開けて、布団を干し――
 なんか白い布団のようなものが既にベランダに掛かっていた。
 具体的に言うと白い服を着た少女だった。

「あ?」


 こうして、上条当麻の不幸との遭遇は決定事項となった。



 とある偽善使いと魔剣使い
 二章 迷子の迷子の少女ちゃん 貴方のおうちはどこかしら?



 七階のベランダ。
 周りに歩いて渡る場所などないベランダの手すりで圧し掛かっている少女を見た当麻の反応は呆然でも驚愕でもなく。

「少女、だ、と?」

 ――戦慄だった。
 激しく濃ゆさを感じさせる表情を作り、まるで「親方! 空から豚が落ちてきた! 紅い豚だ!」と叫ぶ少年のような顔つき。
 少女に手を伸ばすよりも早く、当麻は周囲を見渡し、身を屈めて、まるで狙撃にでも注意するかのような厳しい目つきをとる。

「やべえやべえ、激しくデンジャラスにやばい。こ、これはまさかついに世界の危機か!?」

 ダラダラと汗を掻きながらも、ついに来る時が来たのかとどこか納得した表情。
 持っていた布団を部屋に投げ飛ばすと、右手をきつく握り締めて、当麻は周囲の索敵を続ける。

「……うにゅ」

 その時だった。
 どこか蕩けるような甘い声がしたのは。

「ん?」

 当麻がようやく少女本人に注目する。
 のろのろと鉄棒の上に乗り掛かったような体勢で手すりに被さっていた少女が指を動かし、続けて顔を上げた。
 絹糸のように細く滑らかな銀色の髪、透けるように白い肌、緑色の瞳がゆっくりと焦点を当麻に合わせていく。
 まるで美しい人形のような少女。
 されど、当麻はどこか慣れ切ったような態度で少女の顔を見て、その服装を認識し、困ったように手を額に当てると。

「アー、どちら様でしょうか?」

 半眼とした目つきで訊ねる当麻。
 それに対し、少女は可愛らしい唇を動かして、掠れた声を洩らす。

「ォ、――」

「お?」


「おなかへった」


「…………」

 キュイーと薬缶の湧いた蒸気音が響き渡る。
 当麻は答える術を持たない。

「おなかへった」

「……」

「おなかへった」

「……」

「おなかへった、って言ってるんだよ?」

 ムスッと少しだけ頬を膨らませて、正体不明の少女はそんなことを言いやがりました。
 それに優しい優しい上条当麻君はこう答えます。

「KA☆E☆RE」

 素敵なスマイルで即答だった。
 何でお前、外国人のスタイルと格好で超日本語ペラペラなんだよ。とか。
 なんでそんなとこにかかってるんだ。とか
 色々と突っ込みたかったが、全てをかるーくスルーして当麻は優しい笑みで切り替えした。

「ええー!」

 ガビーンとした顔を浮かべる少女。
 まあそれを無視して、当麻は床に落とした布団のシーツを“右手に”巻きつけると。

「で、なに? どう見ても行く途中にはないこのベランダにかかっていて、君は行き倒れとかおっしゃるつもりデスか?」

「倒れ死に、とも言う」

 ふてぶてしいな、おい。
 などと当麻は心の中で某親友にして恩人でもある魔剣使いから授かったツッコミ技術で、突っ込んだが口には出さない。
 多分話を聞かないやつだと即座に見抜いたから、というわけでもない。

「まああれだ」

「なに?」

「飯なら食わせてやるから――」

 ガンガンガンとヤバイ音を立てながら、お湯を噴いているだろう薬缶の断末魔が響き渡り。

「取りあえず中入れ。俺の世間体がやばいから」

 と、告げて当麻はシーツで覆った右手と左手で少女を持ち上げる。

「ほえ?」

「軽いなお前。まあいいや、てーいっ」

 ポーイと部屋に放り込んだ。

「あーれー」

「お代官様お許しを~、じゃねえよ!?」

 何気に素敵なボケを発する少女に思わず突っ込み、彼らしい理不尽に対する悲鳴が上がった。




 取りあえず五個ぐらいのカップヤキソバとカップラーメンにお湯を注ぎ込み、昨夜炊きすぎたので電源を落としていた電子ジャーから盛った冷や飯にお茶漬け用のふりかけとお湯を注ぎ込んだものを目の前に少女に与えた。
 ガツガツとグーで握った箸でお茶漬けを掻き込む少女に、餌付けという言葉が脳裏に過ぎったのは多分気のせいだ。
 京都風に言えばお茶漬け出されたら帰れという意味なのだが、多分知らないんだろうな、ははは。と、当麻は内心涙したのも内緒だ。

「まずは自己紹介しないといけないね」

 そして、少女が口を開いたのは丼に持ったお茶漬けを全て胃に収めてからだった。

「まずは、というわりには茶漬け喰い終わってるけどな」

「いいの! 細かい疑問は!」

 ベシベシと頬を膨らませて、ガラステーブルを叩く少女。
 お見合いという感じでガラステーブルを挟んで、正座をする少女を見下ろす当麻は胡坐を掻いていた。

「はいはい、んで?」

「なんかあしらわれているような気がするけど、まあいいや。私の名前はインデックスっていうの」

「……すっげえ人名じゃねえな、それ。どう見ても偽名だし。目次とか、そういう意味じゃなったっけ?」

 ――ん?
 インデックスってどっかで聞いたことがあるような?
 当麻が内心首を傾げるが、インデックスと名乗った少女は言葉を続ける。

「見ての通り教会のものです、ここ重要ね。あ、バチカンじゃなくてイギリス清教の方だから」

 当麻が思い出す前に、インデックスが言葉を続けたため、彼は思考を中断。
 言葉を返した。

「見ての通り……まあシスターだな」

 当麻がインデックスの上から下まで一瞥し、以前にも何度か見た修道服とでもいうのだろうか?
 そういった格好だと判断する。

「ちなみに俺は宗教には詳しくないので、区別を言われても分からん。仏教と密教の差もわからんぐらいだ」

「インデックスも分からない、かな?」

 ハハハ、駄目じゃねえか。

「それで目次でいいのか? 君、何者なんだ?」

「うーん目次じゃなくて、【禁書目録】。それと、教会のものだって」

 半眼になって訊ねる当麻に、話聞いてよーとばかりにプーと頬を膨らませるインデックス。
 当麻の目から見ても中々に可愛らしい仕草と思ったが、生憎美少女の類に表向きときめくような性根は持っていない。

「あのな。俺の知っているシスターは空を飛んだり、箒で人を斬殺しても、平凡な一般市民のベランダで行き倒れなんてしないですー」

「空飛んだり、斬殺するシスターの方が聞いたことないよ!」

 バシッとインデックスがガラステーブルを叩いた。
 ああ、やめて。それ普通の家具だから!

「まったくもう、私が頑張って説明しているのに」

 プンプン怒りながら、インデックスはテーブルに置いておいたカップヤキソバの一つに手を付けて。

「おい、それ、まだお湯抜いてないんだけど」

「インデックス知ってるよ? これって、ラーメンっていうんだよね」

 お湯に入ったままのカップヤキソバを啜り始めました。
 味薄いけど、おいしいねー。と嬉しそうな顔で言うので、当麻は止めることも出来ずに。

「ああ、それは新発売の奴でな。まあそれとそれは喰ってていいぞ、オレはちょっとこれのお湯捨ててくるから」

 ぎこちない笑顔で、ふやかしタイムの終わったカップヤキソバをおぼんに乗せて、台所でお湯を捨てた。
 インデックスはちゅるちゅるとお湯漬けヤキソバを食べ終わると、当麻が指定したカップラーメンを食べ始める。
 その姿を当麻はお湯を捨てながら、欠伸をして。

(あーこれも、不幸かねぇ)

 災厄が飛び込んでくるのは当麻にとっては慣れっこだった。
 最大級の不幸といえば中学一年生の頃の失踪。

 ――“神隠し”

 一時期世間を賑わせた事件の被害者。
 二年間もの間消息不明となり、そして三年前に当麻はこの世界に帰還した。
 その頃にあった出来事を、当麻はこの世界では二名の人間にしか洩らしていない。
 両親にすらナイショにしている。
 その間の経験は当麻の常識を破壊し尽くし、友人を作り、得難い経験と共に彼を構成する大切な部分となって生きている。
 そして、その経験が囁くのだ。

 ――厄介ごとになるぞ、と。

「放置も出来ねえけどなぁ」

「なんかいったー?」

「なんでもねえよ」

 お湯を切ったカップヤキソバに、付いているソースをぶっ掛けながら当麻は答えた。
 あー、世界の危機にならないといいけど。
 そんな彼の願いは叶うだろうか。
 正直当麻本人すらも信じていない願いだった。



 その後、ガツガツと家中の食料を食い終わったインデックスがゲプッと可愛らしい息を洩らしたのを見ながら、当麻はようやく確保した自分の分のヤキソバを胃に収めた。

「なあ、お前ちょっと食いすぎじゃねえ? 少し遠慮しろよ」

 ヤキソバ五個、カップラーメン二個を貪ったロリ顔シスターの顔を睨みながら、当麻はぼやく。

「んー、ごめんなさい。実はちょっと前からご飯食べてなかったから」

「ちょっとって、どれぐらい前からだ?」

「二日ぐらい、前、かなぁ?」

 小首を傾げながら告げたインデックスの言葉に、当麻は眉をゆがめた。
 不快そうな顔だった。

「欠食児童は関心しねえぞ。お金とか持ってなかったのか?」

「さ、財布は一週間前に落としたから」

 うぐぅ、などと声を洩らしてインデックスが視線を落とす。
 苦労したんだなぁ、と少し遠い目で同情した。財布を落とすのはまあ当麻にも何度か経験があったからだった。

「まあいいや。んで、お前うちのベランダに引っかかってたんだ?」

 気を取り直し、当麻は相対するインデックスの目を覗き込むような姿勢で言った。
 真面目に答えろよ、と前置をして。

「えーとね。本当はベランダに引っかかるつもりはなかったんだけど、落ちたの。多分」

「落ちた?」

「そう。屋上から屋上に飛び渡っていたんだけど、へまして落ちちゃったの、かな?」

 思わず当麻は上を見上げる。
 この周辺には同じような学生寮用のマンションやビルが乱立しており、まあ隙間は精々二メートルぐらいだから常人でも頑張れば飛び渡れるだろう。
 とはいえ。

「ここは八階立てのビルだぞ? 一般人だと落ちたらぐちゃーとなって、トマトみたいになっちまうじゃねえか。死ぬ気か、おまえ」

「そこはかとなく詳しい説明はやめてよ。私だって自殺して、お墓に入れなくなるのはいやだし」

 嗚呼、そういえばキリスト教だと自殺したら天国いけなかったんだっけ。でも、墓に入れなかったっけ?
 などと当麻が少し考えるが、インデックスは少しぶるっとした体を押さえて。

「けど、仕方なかったんだよ。あの時、ああするしか逃げる方法なかったし」

「に、逃げる?」

 不吉な言葉に、当麻の表情は少し固まった。
 インデックスはそんな当麻の顔を見て、「うん」と頷くと。


「追われてたから」


 と告げた。

「……」

 当麻はしばしの間沈黙する。
 だけど、それはインデックスの予想していた驚愕でも、困惑でもなくて。

「……あ~……あ~……ああ、あるある。あるわな、うん」

 と、どこか諦めた顔で頷き出した。

「へ? なに? なんでそんな態度なの?」

 不可思議な当麻のリアクションに、インデックスが逆に困惑した。
 しかし、当麻は気にせずに顔を押さえたまま、左手を振って「いや、気にせずに話を続けてくれ」 と疲れた顔で呟いた。

「で、追われてたって、どこのどいつに追われたんだ? 世界を滅ぼすつもりの魔王に生贄にしてやるーとか? それとも悪の秘密結社か?」

「君、常識的に考えなよ。魔王とかいるわけないじゃん」

 悲しいけれどいるんだよなぁ。と内心思う当麻。
 後お前に常識的とか言われたくねえわ。

「でも、悪の秘密結社は近いかも」

「マジで?」

 キター!? とばかりに顔を上げる当麻を余所に、顎に指先を当てて考えるインデックス。

「多分薔薇十字(ローゼン・クロイツ)とか黄金の夜明け(S∴M∴)か。その手の集団だと思うんだけど、名前までは分からないかも……連中、名前に意味を見出す集団じゃないし」

「れ、連中?」

 複数形ですか。
 集団で、組織か。と当麻が厳しく目つきを変えて、インデックスを見つめた。
 銀髪の少女はおごそやかな口調で告げる。


「そう、連中は――魔術結社だよ」


「…………そうか」

 ならいいや。とばかりに、当麻は流した。

「へ? 驚かないの?」

「いや、まあ……うん。途中から諦めてた」

 そこはかとなく、諦めたような口調と目つきで当麻は淡々と告げて。

(まああれだよな。錬金術師がいるし、超能力もあるし、そういえば昨日侵入した魔術師がいるって言ってたよなぁ)

 などとボソリと口の中で噛み砕き、当麻の頭の中で大体の構図が形成される。
 激しく悲しいことだが、遭遇したくなかった魔術師との関係性を得てしまったようだった。
 一応当麻の住居には学園都市の誇るセキュリティがあるし、そこらへんを警備員(アンチスキル)が歩いているから治安は激しく安全だ。
 不法侵入者の魔術師が、彼の知るトップクラスの“魔法使い”レベルでなければあえなく逮捕されるだろうことは想像出来る。


「まあいいや。魔術結社だか、聖王庁だが、そんなのはどうでもいいし」

「どうでもよくないよ!」

 こらーと怒るインデックスの頭を、当麻は左手でよしよしと撫でると。

「んで、まあ一応訊ねるけど、なんでお前狙われるんだ? なんか追われる理由とかあんのか?」

 金とか持ち逃げしたとかー、知ってはいけない秘密を知ったとか色々ありそうだが。
 原因次第では対処方法もあるだろう。
 そう思ってインデックスを見たのだが、彼女は静かに当麻の左手をどかして。

「私は禁書目録だから」

「あ?」

「私の持ってる十万三千冊の魔導書。それがきっと連中の狙い」

 ふむと、当麻は首を捻って。

「で、それどこにあるんだ? 金庫とかか?」

「……なんで、そんなに軽く流すかなぁ。結構ババーンと驚くことを言ってるつもりなんだけど、リアクション薄いよー」

「突っ込むのに疲れたからだ」

 そういって当麻は息を吐き出すと。

「で、どこにあるんだよ。隠し場所をお前が知っていて、それを吐かされるために狙われているとか?」

「ううん、違うよ? 十万三千冊全部今も持ち歩いているし」

「……お前月衣(カグヤ)持ちなのか?」

 その言葉にピーンと来て、思わず当麻が呟くが。

「へ? かぐや? なにそれ?」

 インデックスが逆に小首を傾げた。
 どうやら違うらしい。と当麻は判断。

「あ、いや。そういう名前の超能力があってな、この学園都市にはそういう物品を納めたまま持ち運べる力があるんだよ」

 正確には異能に当たるのだろうか。
 嘘はついてなーい。
 超える能力って書いて超能力だからだ。

「そうなのかー。でも、違うよ。そういうのじゃなくてね」

 インデックスは考えてから、答えようとして。

「いや。ごめん。これ以上は話せないよ」

「あー? なんで?」

「教えたら巻き込んじゃうから」

 少し喋りすぎちゃった、とインデックスは口元を押さえた。

「すげえ今更な気もするんだが……色々知っちまったし」

「うぅっ」

 涙目になるインデックスに、はぁっと当麻はため息を吐き出して。

「まあいいけどな。こういう面倒ごとは慣れてるし」

 正真正銘本当のことを告げながら、当麻は立ち上がり。

「で、一つ聞きたいんだが」

「な、なに?」

「ここに来る時に、追っ手に姿とか見られてるか?」

「う、ううん。多分平気だと思う、多分だけど」

 自信なさそうに告げるインデックスを見下ろしたまま、当麻はガシガシと頭を右手で掻いて。

「んじゃあ、しばらくここにいていいぜ」

「え?」

「この学生寮ならオートロックだし、怪しい奴らが空でも飛ばない限り窓からは入ってこねえし」

 当麻はベランダの手すりを指差す。
 正確にはその脇にある非常用の脱出器具を指差して。

「なんかあったら其処から逃げろ」

「え、え?」

「それにな」

 立ち上がりながら、当麻は転がっていた学生服のシャツを羽織り。
 ズボンを掴みながら、軽く指を上げて。

「俺が一緒の時は守ってやるよ」

 大気に響かせるように声を上げた。

「で、でも。危ないんだよ! 私と一緒にいると! 君には迷惑はかけられないよ!」

「君じゃねえよ」

 右手を胸に押し付けて、インデックスに振り返り。

「俺は――上条 当麻。レベルゼロの無能力者で、少しだけ逃げ足に自信がある【偽善使い(フォックスワード)】」

 堂々と微笑んで、まるで世界でも殴り飛ばしてやると告げるかのように歯を剥き出しに。


「よろしくな」


 それが上条 当麻とインデックスの名前を交換した時であり。


 この学園都市で発生する世界の危機となる発端を叩き潰すための物語の開幕である。

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