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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第05話03

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―――通学路

「…戻れ。パワー」
気絶したパワーをアームターミナルに戻し、佐藤は舌うちをする。
「クソったれ!」
その心の中に宿るのは、大切な仲魔を攻撃された憤りと…殺すこと無くそれを成し遂げたものへの恐れ。
「とにかく、ユミとチャーリーにも知らせないと」
そう呟くと、佐藤はその姿を獣へと変え、辺りを異界化させる。
「…急いで戻らないと」
辺りに“何の気配”も無いことを確認し、佐藤は夜の街を駆けた。
…その時、佐藤は未だ理解していなかった。

―――更に1時間後

「やれやれ。ゆうなの奴、輝明学園でモンスターに襲われる、なんてな」
先ほど天使を放置した場所へと舞い戻り、マモルは溜息をついた。
「しかも椿でも斬れないなんて…」
学園内で行われていた“送別会”の最中の襲撃。
突然『家庭科室の冷蔵庫』から現れたそれに椿は文字通り手も足も出ず、苦戦していた。
一応こっそり手助けしたあとは椿の知り合いらしき、大きな刀を持った女の子が仕留めたので後は任せて戻ってきたが…
「…まさかあいつ、“あれ”なんてことは無いよな」
マモルの頭に浮かんだ突拍子のない考えに自分自身で吹き出す。
椿が斬れない相手。そう考えたら、何となく思い浮かんでしまったのだ。
「いやいやどこの世界に人を襲う“あれ”なんてもんが…ん?輝明学園ならありえるのか?」
これ以上考えても仕方がない。そう考え、先ほど思い浮かんだ、多分正解なんだろうな~と言う“答え”を打ち消す。
「さてと、どうやら、網にはかかったみたいだな」
気を取り直してその場から消えた天使を確認し、マモルはすぐそばにいる、迎えに行ってたそれに話しかける。
「ぶる丸。追えるか?」
―――ばうっ!
一声なき、マモルの相棒である忍犬がしゅばっと消える。
「さてと、さっさと見つけないと」
続いてマモルもしゅばっと消える。
そう、佐藤は気づいて無かった。それはある意味において当然のこと。
彼らが敵に回して戦っているのは、カゲモリと言う名の“組織”だってことを。


―――エヴァの茶室

「…分かった。少し待ってろ。作戦を立てる」
玲子とマモルのから0-phoneで報告を受け、エヴァはこの部屋にいるもう1人の“教育係”に目を向ける。
「聞いた通りだ。悪魔が玲子と接触してきた。“罠”にもかかったらしい」
「…やっぱり、巻き込まれたか」
吾妻玲二はため息をついた。
「出来れば取り越し苦労で終わって欲しかったんだがな」
日常から非日常…平和から闘争へ。その事の意味を“実体験”から痛いほど理解しているだけに、玲二の声は暗い。
「それで、どうするんだ?他の奴らにも声をかけるか?」
玲子を狙う“敵”が動き出したのが2週間ほど前。今までは玲子に気づかれる前に“処理”してきたが、
相手が直接接触してきたとなれば、今の人数ではこれ以上玲子を蚊帳の外に置いておくのは難しい。
「そうだな…いや」
エヴァは少しだけ考え、そして結論を出す。
「これ以上長引かせるのも面倒だ。明日の昼、今の人数でかたをつける。お前は妹と一緒に玲子と行動しろ」
エヴァが飄々と玲二に命令を下す。
それに、玲二は納得いかないと言う顔でエヴァに問う。
「…どういう事だ?護衛としてならマモルの方が俺たちよりはるかに優秀だろう」
玲二とて“襲う”方の元プロとして、護衛もその応用である程度はこなせる。
だが、持てる才能と努力全てを“護衛”につぎ込んだ忍者が相手では、明らかに見劣りするのも事実だ。
「せっかく相手の尻尾を掴んだんだ。マモルも“潰す”方に回す」
その玲二の問いかけに、エヴァはいつもの皮肉げな笑みを浮かべ、宣言する。
「いいのか?俺は“潰す”方が得意なんだが。それに輝明学園の中でまで護衛は必要ないだろう?」
玲二が問い返す。“俺たち”とは言わない。エレンには、あまり手を汚させたくない。
例え2人ともあと戻り出来ないほどその手を血で染めていようと。
だが、そんな玲二の問いに、エヴァは言う。
「聞いて無かったのか?私は、玲子と“一緒に行動しろ”と言ったんだ。“守れ”なんて、誰が言った?」
「…そう言うことか」
エヴァの出した“答え”を理解した玲二が顔をしかめる。
「あいつはよくやったよ。正直、1ヶ月で課題まで乗り切るとは思っていなかった。
 週末か来週の頭くらいまではかかると思っていたんだがな」
そんな玲二に言い聞かせるように、エヴァは初めて玲子を褒めてみせる。
「…気が進まないな。俺は殺しをさせるために銃を教えたつもりはないんだが」
「知るか」
それでも浮かない顔のままの玲二の言葉を、エヴァは一刀のもとに切り捨てる。
「あいつ自身が選んだんだ。“光”の中で生きる道を捨て、“陰”として悪魔と…“闇”と闘りあう、とな。
 本当にそのつもりがあるのなら、桜花以上のお守りは必要あるまい?」
玲子をいつまでも守っているだけの“お姫様”扱いなど、してやる気は微塵も無い。
この案件の当事者でいたいなら、“戦士”として、実力を示せ。
それがエヴァの出した答えだった。
「…つまりは卒業試験、って奴か…」
玲二が苦々しげに吐き出す。脳裏に宿るのはかつて、初めて人を殺したときの記憶。
自分が“暗殺者”として完成されるために行われた、儀式のこと。
「そんなところだ」
―――どうやらコイツはまだ玲子を“護衛対象”と認識しているらしい。
そんな甘い考えをエヴァは鼻で嗤い、言う。
「心配するな。闇を食い破るための“牙”はこの私が直々に研いでやった。
 あとはそれを使いこなす“頭”と“覚悟”があるか。それだけだ」
今回の案件、“魔人皇との戦い”に参加するだけの資格があるか。それを見極める。
「なければ…死ぬかも知れんがな」
例えそれが、どんな結果を招こうとも。


―――輝明学園 通学路

「う~ん。家庭科室が謎のモンスターによって崩壊したので調理実習中止だなんて~実に残念でしたね~」
昨日の出来事など、嘘だとでも言うように、桜花が務めて明るく振舞う。
「…まさか、佐藤君が…」
一方の玲子は通学路を歩きながらも、浮かない顔をしていた。
正直今でも信じられない。あの日、玲子たちが魔界で見たこと。
佐藤が、ケルベロスと合体した魔人になり、魔神皇の手下になっていたこと。
そして…再び玲子の前に現れたこと。
「他の2人も、やっぱり魔人になってて…ハザマ君に従っているのかな?」
そう考えるのが妥当だと言うのは分かっている。分かっているが…認めたくない。
今の自分は“カゲモリ”なのだ。
カゲモリのことはまだ全てを知ったと言うわけでは無いが、カゲモリが何をしようとしているかは知っている。
玲子が自分の知る情報を伝えてすぐ、“カゲモリ”に1つ案件が発生した。その案件は…魔神皇の討伐。
今も各方面での情報収集や『旧校舎』を経由しない潜入ルートの確立に動いているメンバーがいると言う。
『参加するのなら、恐らく貴方にとっては実力的にも精神的にも辛い任務となる。
 戦力は足りている。貴方が参加する必要は無い。どうするかは貴方が選んで』
カゲモリに加わるとき、タバサから発せられた問いかけ。その問いかけに玲子が一晩悩んで選んだ道は、自らも参加すること。
覚悟はしたつもりだった。だが…
「…やっぱり戦わなくちゃいけないんでしょうか?」
知り合いの登場で決心が鈍った。そんな不安を打ち消すように玲子は桜花に聞いた。
「そうよ」
だが、その答えは、桜花からでは無く、その背後から返ってくる。玲子には余り聞き覚えのない、澄んだ声。
玲子が泡を食って振り向く。そこには…
「戦いなさい。死にたくなければね」
セーラー服に身を包んだ、吾妻エレンが立っていた。

―――居住区 無人学生寮

「おはよう。茶室以外で会うのは初めてだったか?」
エレンに連れられてやってきた玲子と桜花に、玲二は軽く挨拶をする。
「玲二さん…その格好は?」
見慣れた顔にほっとし、ついで玲二の格好に眉をひそめる。
玲二が身につけているのは急所を覆うプロテクターがついた黒いボディースーツ。軽装ながらいかにも戦うための格好だ。
「ああ、今回の“任務”は人目は気にしなくていいって話だったからな。準備してきた。何でも輝明学園の世界の特殊戦闘服って奴らしい。
 エレンと玲子の分は隣の部屋においてある。着替えてきてくれ」
「分かったわ。玲子、ついてきて」
何でも無いことのように2人に促す。エレンが頷き、玲子を隣の部屋へと連れて行く。
「…玲子まで呼ぶ必要は無かったんじゃないんですか~?」
部屋に残った桜花が、訝しげに玲二に問いかける。
「すまないな。桜花」
その問いかけに、玲二は心底すまなそうに謝る。
「エヴァの意向でな。今後、本当にあいつらとやりあえるのかを見極める。
 ダメならこの案件には関わらせない。なんならカゲモリをやめてもいい、だそうだ」
玲二は淡々とエヴァに伝えるよう言われたことを口にする。
「…酷い“試験”もあったものですね~」
桜花がため息をつく。かつて、ウィザードとして多くの侵魔と戦ってきた身としては、何をしたいのかは分かる。
もしもの時、躊躇しない覚悟。それがあるのかを見極めようと言うのだ。
「頼りにしている。玲子を守ってやってくれ」
「言われなくても。今の私は玲子のガーディアンですから~」
2人して、示し合わせたように笑いあう。短いやり取りだが、お互い理解した。
“守護霊”と、“教育係”。2人とも、玲子のことを守りたいと思っている。
「…着替え終わったわ」
笑顔で見つめ合う2人に僅かに目を開き、戦闘服に着替えたエレンと玲子が入ってくる。
「よし、あとは武器の点検をしたあとは学生の登校と人ばらいが済むまで2時間はこのまま待機だ。適当に寛いでてくれ」
「似合ってますよ玲子~」
主に玲子に聞かせるために玲二が今後の予定を確認し、桜花が玲子の格好を褒める。
「あの、一応は年頃の女の子としてはそれは複雑です桜花さん…」
ボディラインがくっきり出てしまう格好に玲子は恥ずかしそうだ。玲二がいるのでなおさらだ。

「…武器の点検?」
一方で同じような恰好でプロポーションもかなりのものであるエレンは慣れたものでその手の照れは見受けられない。
淡々と、玲二に疑問点を尋ねる。
「ああ、整備はちゃんとしてるが、今回は普段使わないような大物も持ってきてるだろう?
 時間はあるんだ。お互いの武装を確認する意味でも、ちゃんと見ておいた方がいい」
「…分かったわ」
玲二の答えに納得し、エレンが頷く。
そして2人は次々と“虚空から”大量の武器を取り出した。
「ええっ!?」
その光景に思わず目を見開き、玲子が声を上げる。
「…何を驚いているの?」
むしろ玲子が驚いたことを訝しみながら、エレンが玲子に尋ねる。
「え?だって今何も無いところから銃が…」
「…すまん。俺のミスだ。まだ教えて無かった」
混乱する玲子に玲二がため息をついて教える。
「“時空鞘”って言う、武器とかを異空間にしまって見つからずに持ち歩けるようになる装備があるんだ。
 武器を使う、ウィザードじゃないカゲモリは大体持ってる。茶室の武器庫に予備が何タイプかあったはずだから、あとで貰ってくるといい」
そう言うと玲二は床に並べられた武器の中からエレンの取り出した拳銃を拾う。
「俺のデザートイーグルじゃあ玲子には重すぎる。いいか?」
「…構わないわ」
エレンに確認を取った後、玲子にそれを放る。
「っと!」
反射的にそれを受け取った玲子に、玲二が説明する。
「そいつはベレッタ。玲子がずっと練習に使ってたのと同じ型だ。中には一応侵魔用の月衣貫通弾が入ってる。
 まあ、茶々丸の話じゃあガンの効かないタイプの悪魔には効かないらしいから、気休め程度だけどな…さてと」
伝え終えると玲二は自分の持ってきた武器を1つ1つ手に取り、確認していく。エレンと共に。
「あ、あの…?」
「ああ、玲子はそいつを確認したら終わりでいい。まあエレンが普段使ってるやつだから大丈夫だとは思うけどな。整備の仕方は前に教えただろ?」
もはや玲子の方を見ようともせず、玲二は銃を確認しながら呟くように言う。
「あ、はい…」
その、引きしまった玲二の真剣な表情に何となくドキドキしながら、玲子も手にした拳銃の確認を始めた。

―――2時間後

「…そろそろだな」
腕時計を確認し、玲二が立ち上がる。それと同時に玲二の0-phoneに連絡が入る。
「―――“ルーク”の玲二だ。ああ、“ポーン”の2人も一緒だ。いつでもいける。分かった。10分後だな」
エヴァからの連絡を受けて玲二が頷き、電話を切る。
「“キング”から連絡があった。ついさっき“クイーン”がターゲットの周辺に残ってた一般人を全員眠らせて運びだし終わった。
 ターゲットの半径300m以内に一般人はいない。人目は気にしなくても良いが、時間はかけるなだとさ。執行部が動く前に片をつけるらしい」
淡々と必要事項を3人に伝える。エレンが無表情に、桜花は心なし険しい顔で、そして玲子は緊張しながら、頷く。
「よし。行こうか」
命令を伝え終え、玲二は時空鞘から取り出したアサルトライフルを手にする。そして。
「…ルーク、ポーン、行動を開始する」
作戦の開始を宣言した。



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