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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第05話06

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だれでも歓迎! 編集
「死ねやおらぁ!」
怒号と共に振り下ろされる、力任せの拳。
技も何も無いが、悪魔の膂力と速度でもって凶器と化したそれが、回避不能な速度でライズに迫る。
「…っく!」
とっさにライズは剣を我が身とその拳の間に滑り込ませ、後ろへと飛ぶ。
軽く浮いた身体に、拳の衝撃と加速度が加わり、殺人的な速度でもって寮の壁へと叩きつけられる。
「…っくう…」
受け身には成功したものの、それでも逃がし切れなかった衝撃に、ライズは歯を食いしばる。
「大丈夫ですか!?ライズさん!」
「問題無いわ!」
一瞬だけ後ろを向いた一狼に怒鳴り返し、ライズは自らの剣を己の前に掲げ、刃を確認する。
「…あれで折れないなんてね」
冒険者向けの荒い運用に耐えられるよう幾多の強化魔法が施された、異世界製の細剣の丈夫さに感心しつつ、ライズは立ちあがる。
息を吸いこみ、止めてまっすぐに駆ける。
「―――プレシズ・ヘル!」
駆けた勢いを乗せて、ライズは一狼に向いた魔人の背に対して必殺の技を繰り出す。
「ぐお!?」
繰り出される連撃が流れるように魔人たるチャーリーの身体に傷を刻みこむ。
「はぁぁぁぁぁ!殺人舞!」
その一撃に気を取られた一瞬を、一狼もまた見逃さず、自らの大技を繰り出す。
前と後ろ、その両方に、無数の傷が刻まれた。だが。
「くそったれが!痛てえだろうが!」
並みの悪魔ならとうに力尽きている一撃を受けてなお、チャーリーの命は尽きない。
「邪魔くせえ!」
力任せに拳を振りまわして2人を牽制しつつ、体内の魔力を練り上げる。
「燃えちまえ…マハラギダイン!」
言葉と共に魔界の炎が辺りを赤く染め上げる。
かつて、狐の悪魔に憑かれた少女が放った爆炎にも勝るとも劣らぬ炎の渦が、2人を焦がそうと襲いかかる。
「…ジャベリン」
だが、その炎が2人に到達する直前、空中のシルフィードの上で様子をうかがっていたタバサの作り出した特大の氷の塊が地面に突き刺さる。
2人はそれを見て即座に意味を理解し、その氷の塊にその身を滑り込ませ、盾代わりにする。
「なんだと!?」
回り込んできた炎が身を焼くものの、その程度では、高い魔法防御を誇る呪錬制服を着こんだ戦士2人を倒すには程遠い。
「ちぃ!」
舌うちし、炎が消えると同時に襲い来る2人の剣をかわす。
「なんて奴らだ…」
思わず漏らしたその言葉には、わずかながら恐怖が宿っていた。

(それは、こちらの台詞だわ)
剣を構えながら、ライズは表情に出さず考える。
この相手…目の前の魔人には技術も、経験も足りていない。だが、それを補って余りある"力"がある。
筋力、体力、反応速度、そして魔力…どれを取ってもこの場にいる誰よりも強い。
まさに人間とは一線を画す、"化け物"と呼ぶに相応しい存在。
それが、ライズたちが3人と1匹掛かりで挑んでようやく対等と言える、魔人と言う存在だった。
相手に与えたダメージは既に相当なものとなっている。だが、こちら側に蓄積した疲労とダメージも既に限界近い。
(そろそろ、決着をつける必要があるわね…)
このまま戦い続ければ、潰される可能性がある。そうなる前に倒さなければならない。そう判断したライズが構えた、その瞬間だった。
「…ライズさん、撤退です」
囁くような、一狼の声がライズの耳に届く。
(…撤退?)
その言葉の意味を飲み込めず、ライズが怪訝そうに一狼の方を見た、その瞬間だった。

―――お隣は
        関係ないけど
                400年

朗々と、よく通る声が辺りに響いたのは。

「あぁ?なにも…は?」
その声に反応し、その声のした方向、近くに立つ寮の1つの屋根を見たチャーリーが間抜けな声を上げる。
そこに立っていたのは、1人の少年。堂々と、見せつけるように腕を組み、屋根の上に立った細い避雷針の上でチャーリーを見下ろしている。
だが、チャーリーが驚いたのは、その少年の格好。
少年はひたすらに黒づくめだった。彼を目撃した悪魔がことごとく"黒い男"と呼んだのも頷けるほどに。
黒い道着とその下に着こんだ黒い鎖かたびら。黒い脚絆が巻かれた、黒いズボン。足もとにはこれまた黒い足袋と黒く塗られた草鞋。
背中には黒い鞘におさめられた忍者刀を背負い、その指にはこれまた黒光りする手裏剣が挟まれている。
そして、とどめとばかりに黒い覆面を顔に巻いた、その少年。
戦国の世の夜闇の中ならいざ知らず、この学園世界の真昼間と言う条件では、あまりにも目立つ、ステレオタイプなその姿。
"日本人"ならば99%くらいの確率でその正体を見抜くであろう、その姿。
「黒い男っつうか…まんま"忍者"じゃねえか!?って言うかマジでなにもんだてめえ!?」
ご多分にもれず一発でその正体を見抜いたチャーリーが思わず突っ込みを入れる。
「…なにものか、か…」
その突っ込みを物ともせず、少年が少しだけ目を細める。そして…

「陰に名などないっ!」

言った。言いきった。そりゃあもうはっきりと。
「何で自信たっぷり何だよ!?って言うか少しは忍べよ忍者野郎!?」
チャーリーのもっともと言えばもっともな突っ込みに、少年はふっと表情を緩める。
「…あいにくだけど、必要があれば"忍ばない"のも"うち"のやり方だ」
「…なんだと?」
その少年の言葉に、チャーリーはハッと気づいた。その少年の狙いに。
「…いねえ!?」
辺りを見回して、気づく。いつの間にかその場にはチャーリーと少年…"たった2人"しかいないことに。
「こうして目立って、相手の注意をそらすのも、お隣さんを守るのには必要な忍術。それが僕のうちでの教えでね」
いつの間にか地面に降り立った少年がチャーリーを見据えて、言う。
「…そうか。てめえが…」
目の前に立たれて、少年の放つ気配の強さで、悟る。この少年は…強い。この場に"1人で"残ろうと考えられるほどに。
そうなれば、この少年の正体は、1つしかない。
「…カゲモリ。あいつらの…」
「隊長だよ。一応、だけどね」
背中に背負った忍者刀をさらりと抜いて少年…カゲモリの隊長、陰守マモルは戦いの構えを取った。


―――佐藤

ワォォォォン!

佐藤の遠吠えを切っ掛けにに、前衛の3体が攻撃を開始する。
バサッ!
ジャターユがその場で羽ばたきを繰り返す。その羽が旋風を巻き起こし風の刃が玲子たちを襲う。
ギャオオオオオオオオ!
ミズチが咆哮を上げ、その尻尾を振り下ろす。巨体から繰り出される一撃は、玲子たち人間の体などたやすく砕く威力を秘めている。
「行きますよ…ヒートウェイブ!」
パワーが気合と共に、卓越した天使の剣技を繰り出す。その鋭い一撃が正確に玲子を狙う。

だが。
「届かせません。私がいる限りは~」
玲子にはそれを阻む、絶大なる"壁"がいる。壁…ガーディアンである桜花を倒すには、その攻撃はあまりにも貧弱。
人魂で風を焼き払い、ミズチの尾とパワーの剣を霊体の手で受け止める。
「…今ですよ~玲子!」
「はい!」
桜花の声に反応し、玲子は魔法を完成させる。
「…マハラギオン!」
渦巻く炎が玲子と桜花を除く悪魔たちを飲み込み、荒れ狂う。
「…やはり、前よりパワーアップしてるな」
炎をその身に受けながら、佐藤が冷静に呟く。
ケルベロスの相性は、『火炎吸収』
そのケルベロスの力を引き継いだ佐藤に炎は意味をなさない。
だが、その炎は他のもの…佐藤の配下たる悪魔たちには十分な攻撃となっていた。
「くっ…やはり少々、答えますね…」
炎に巻かれ、焼かれる痛みに顔をしかめながら、パワーが呟く。
他の悪魔たちもかなりのダメージを受けている。いくら佐藤が無傷だと言っても部下たちが倒されては意味がない。
「…バステト、頼む」
佐藤は冷静に傍らに立つ、猫の顔を持つ女神に命令を下す。バステトは頷き、魔法を唱えた。
―――メディラマ
ユミには遠く及ばないものの、それでも強力な癒しの魔法が、悪魔たちの傷を癒していく。
「…セルケト」
その様子に満足し、佐藤は同じく傍らに控える、蠍の魔獣に次の指示をだす。
―――ラクンダ
「…っくう!?やりますね~」
自らのプラーナの守りが削られる感覚に、桜花が顔をしかめる。
「…言っただろ?次に戦うときは、サマナーとしての力を見せるってね」

ワォォォォォン!

佐藤が再び吠え声を上げると同時に、回復と桜花の弱体を受けて勢いづいた前衛の2体が攻撃を仕掛ける。
「きゃあ!?」
攻撃手段は先ほどと同じ、だが、今度は桜花は無視できないほどのダメージを受ける。
「何で…」
苦痛を受け、桜花は考える。
おかしい。いくらラクンダを受けたとは言え、受けるダメージがあまりにも多い。
明らかに攻撃の威力が上がって…
「…パワーブレス!?」
からくりに気づいた桜花が驚愕の叫びを上げる。それに佐藤はにやりと笑って、答える。
「…正解だよ。僕が何の意味も無しに遠吠えをしてたとでも思ってのかい?」
パワーブレス。攻撃力と攻撃の命中率を上げる、ケルベロスのエクストラ。
「僕だけじゃない。パワーブレスの効果は"味方全体"…僕の仲魔たちにも及ぶ」
2度にわたる強化と、桜花たちの防御力の低下。2つの相乗効果は、桜花の絶大な防御力と言うアドバンテージを奪っていた。
「それと…ミズチ。壁を張れ」
更にダメ押しをするべく、佐藤は先ほど攻撃に参加しなかった竜の王に命令を下す。
ギャオン!
ミズチが一声鳴いた瞬間、地面から大量の水が噴き出して佐藤とその仲魔たちを包む。
「さて、これで玲子さんのマハラギオン…炎は僕らには効かなくなった…」
勝つための方策は充分に終えたとばかりに佐藤…この中で最高の攻撃力を持つケルベロスの魔人が悠然と前に踏み出す。
「…チェックメイト。諦めて、僕らについてきてくれ」
殺気を放ちながら、佐藤は一応降伏を迫る。
「…くぅ」
玲子が唇をかみしめる。
玲子には痛いほど分かっていた。このままでは勝つどころか"持ちこたえられる"かも怪しい。
「…玲子」
不安と恐怖で折れそうになる玲子に、桜花はそっと声をかける。
桜花とて怖くないわけではない。冷静に戦力差と逃げられるかを考えれば今の自分たちが絶望的かは分かっている。だが。
「…諦めないで。信じてください。私と…あの人たちを~」
それでも、まだ負けは確定していない。
「…分かっています。もう少しだけなら、私も頑張れる。だから…」
ディアラマ…癒しの魔法を桜花に掛けながら、佐藤の方を向く。
「言ったはずです。殺されたって、最後まで戦います。私も…桜花さんも」
はっきりと口にする。
「…桜花さん、最後まで」
「付き合わないって選択肢は最初からありませんよ~。私は…」
―――玲子のガーディアンなんですから。
にっこりとほほ笑んで桜花は玲子に告げた。

そこからは、酷く一方的な戦いとなった。
佐藤、パワー、ジャターユの攻撃とミズチの水の壁に手も足も出ず、為す術なく桜花はダメージを受け続ける。
「くぅ!?分かってましたけど、痛いですね~」
何度目になるかも分からない玲子のディアラマによる回復を受けながら、桜花が呟く。
「―――もう、諦めたらどうだい?そろそろだろう?」
そんな様子を見ながら、佐藤が顔をしかめて玲子に言う。
「…そろそろ?」
「…桜花さん、すみません」
佐藤の指摘に顔を歪めた玲子が、桜花に告げる。
「魔力が、ぎりぎりです。多分、使えてあと1回」
魔力とて、無限ではない。使い続ければ、いずれ尽きる。
「…そうですか~」
ふっと息を吐き、桜花は空を見上げ…ほほ笑む。
「…玲子~」
「分かっています」
流石は自分が護る存在。玲子の方も気づいたらしい。

「いいでしょう。最後の賭けって奴です~」
そのまま佐藤に指を突き付けて、桜花が言う。
「次で決着をつけます。玲子、最後の切り札って奴を、佐藤君に見せてあげてください」
「そのつもりです」
不敵に笑う。
「…いいだろう。本気で行かせてもらう!」
その言葉に何かを感じ取ったのだろう、佐藤もまた、全力で応じる。
「全員、攻撃だ!」
佐藤の号令を受けて、5体の佐藤の仲魔が初めて全員攻撃に転ずる。
バサァ!
最初に動いたのはジャターユ。その羽ばたきによって生み出された衝撃波を桜花にぶつける。
―――マハザンマ!
それに合わせるようにバステトが衝撃波を生み出す魔法を唱える。
2つの衝撃が合わさって、玲子を守る桜花のプラーナを容赦なく削り取っていく。
ピシュ!
セルケトが鋭い針を桜花に向けて飛ばす。強化を受けて並みの銃弾を遙かに超える威力となったその針が桜花へとつき刺さる。
「…ぐぅ!?」
その針に込められた、呪いにも似た魔獣の毒で、桜花の動きが鈍る。
ギャオオオオオ!
その瞬間を見逃さず、ミズチが全身で体当たりをかましてくる。
巨体から生み出される、大きな力に吹き飛ばされないよう、桜花はプラーナを振り絞り、その場に立ち続ける。
そして…。
「とどめです。倉沢、桜花!」
天使が自慢の剣を振りかざし、剣技を繰り出す。
「ヒートウェイブ!」
4度に渡る連撃で、既にボロボロになった桜花にそれをどうにかする力は残っていなかった。

「…ごめんなさい~」
「いいえ。ありがとうございました」
ついに力尽き、くずおれた桜花に、玲子は礼を言う。桜花が必死に守ってくれた。そのおかげで、最後の手が打てる。
「これで、君を守るものはいなくなった!これで…オワリダァー!」
いい知れぬ高揚感を感じながら、佐藤…否、魔人ケルベロスが玲子を倒すべく、攻撃へと転ずる。
まっすぐな、だが玲子では避けきれないほどの素早さを持つ攻撃。だが、玲子はそれを恐れない。

―――確かに速いけど、軌道が単純。常にまっすぐ、確実に玲子が死ぬ軌道しか取らないから、予測は容易
銃を構える。正面から突っ込んでくる佐藤に対して。狙うのはもちろん…

―――腹。一番動きが少なくて、警戒もうすい、そして多少それてもどっかには当たる“当てやすい場所”だ
佐藤の中心とでも言うべき腹をとらえ、一息に16発を撃ち尽す。
「グォ!?」
結果は腹に6発、胸に2発、左足に2発に右足に1発。後は外れ。だが、それで問題は無い。
動きを止めるための護身用に、そこまでの期待はしていない。
佐藤の動きが少し…“魔法一発分”止まればそれで良い。
そして。
「…マハラギオン!」
玲子は最後の一手。自らの残りの魔力を全て注ぎ込んだ、全力の魔法を放つ。
「馬鹿ダナ…僕二、炎ハキカナイ!」
燃え盛る炎に視界を覆われて、ケルベロスは哄笑する。ケルベロスにとって、炎は糧。
炎では決してケルベロスは倒せない。
「最後ノ賭ケハ…」
その言葉を続けようとした瞬間…

“佐藤の負け”は、確定した。


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