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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第05話05

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だれでも歓迎! 編集
ユミから少し離れたその場所で、佐藤はただじっと待っていた。
(あいつらは…カゲモリは玲子さんを守ろうとしていた)
この2週間、戦い続けて気づいたのは、彼らが本人に気づかれぬように玲子を守っていたことだ。
銃で、剣で、魔法で。佐藤の仲魔たちはカゲモリらしき者たちに何度となく殺されている。
(魔神皇は、玲子さんを連れ戻すか、殺せと言っていた)
魔界からの逃亡者が発生したことは、魔神皇の支配に甘んじていた軽子坂学園高校の人間に、希望を与えた。
密かに魔界に潜伏するもの、強制労働に従事するもの、そして、実験台となる日をおびえながら待つもの…
最大の抵抗者であった佐藤たちが捕まり、1度は失われた、帰れると言う希望。
それは、最後の1人、玲子が"外"の人間と共に魔界から逃げ出したことにより、再び取り戻された。
だからこそ、魔神皇は、逃亡者を決して許さない。
(…けれど玲子さんには桜花さんがついている)
それを為すのに最大の障害となるのが、玲子のガーディアンである、桜花。
攻撃力こそさほどでもないものの、味方を守ることにかけては桜花以上の存在を佐藤は見たことが無い。
(…そう、"守護霊"なんだ)
そこに佐藤たちがつけこむ隙がある。だからこそ、ユミを1人で行かせた。
(あとは、僕次第…)
前回と同じ手は通じない。桜花がプラーナと呼ぶ力を開放すれば、佐藤のバインドボイスなどたやすく弾かれる。
玲子をどうにしかしようとするならば、あの桜花を真っ向から倒すしか無い。
(僕は桜花さんを倒して…)
―――イキタママ、クウ
「違う!」
頭に浮かんだ考えに佐藤は思わず叫び声を上げる。
(…頼む、待ってくれ。ケルベロス。あとほんの少しなんだ。その後だったら、僕の魂だってくれてやる)
自らと一体化した、かつての仲魔に懇願する。
自分の中の悪魔としての本能はどんどん強くなっている。多分そう遠くない未来、佐藤は完全に魔獣となる。
それを悟ったからこそ、佐藤はこの方法を選んだ。
(玲子さんを連れ戻して、魔界皇を油断させる。そして…)
「…来い。ミズチ、パワー、ジャターユ、セルケト、バステト」
自らの仲魔、厳選したベストメンバーを召喚する。これでアームターミナルの中には、もう仲魔はいない。
アームターミナルを外し、佐藤はそれをパワーに渡す。
「パワー。これを安全な場所に。壊されたら、替えが効かないからな」
「承知しました、サマナー佐藤」
パワーが頷き、それを少し離れた寮の屋上にそっと置く。
(あれを解析すれば、かなりの情報になる)
その様子を見ながら、佐藤は思う。
あの中の情報があれば、奴らは、カゲモリはいずれ必ず魔神皇にたどり着く。そして…
(頼む。魔神皇を倒してくれ)
自分たちに為せなかったことを託す。それが、佐藤のやりたかったことだった。
はぁはぁはぁ…
佐藤の耳が、聞きなれた声を拾い上げる。ああ、彼女だ。他の足音は聞こえない。
どうやらユミはうまくやってくれたらしい。
「…佐藤、くん?」
「やあ、玲子さん、桜花さん」
振り向いた顔にもう迷いはない。佐藤は冷酷な魔人としての顔で玲子に言った。


―――ユミ

時は少しだけ、遡る。
「行くよ」
その言葉と同時に、ユミがふわりと浮きあがり、弾丸の如く突撃してくる。
「当たるか!」
玲二が横飛びに回避すると同時にライフルで攻撃する。
「はん!効かないね!」
それを急停止して翼で受け止め、返す刀とばかりに玲二に翼を振り下ろす。
「ぐう!?」
頭を守るべく、クロスさせた腕にもたらされた、巨大な槌を叩きつけられたような衝撃に、脳を揺らされた玲二が膝をついてうめき声を漏らす。
「まずはアンタから…っくう!?」
そのまま追い打ちをかけるべく、玲二に向きなおった直後、翼の根元に差し込まれた金属の冷たさと痛みにユミが顔をしかめる。
「…玲二は殺させないわ」
大ぶりなコンバットナイフをユミの翼の付け根に深々と差し込んでなお、エレンの表情は変わらない。
「ちぃ!?」
ナイフのせいで動きが鈍くなった翼に舌打ちしながら、嫌な予感を感じたユミはとっさに横に飛ぶ。
バンッ!
まさにそのユミのいた場所に、踊るように横に回ったエレンが手にした熊狩り用のショットガンの弾丸が撒き散らされる。
「…玲子、玲二の傷を治して。アレは、私が引き受けるから」
距離を取るべく後ろに飛んだユミに油断なく銃を向けながら、エレンは冷静に玲子に指示を出す。
「は、はい!」
突如始まった戦闘にようやく対応した玲子が、慌ててディアラマを玲二にかける。
「…ありがとう。玲子」
傷が治った玲二が立ち上がり、再び銃をユミに向ける。
「やっぱり、一筋縄じゃあいかないか」
明らかに人間以上の存在である魔人との戦いの厳しさに嫌な汗をかきながら。

「…ただものじゃないね」
迷いのない、並みの悪魔ならあそこで穴だらけになって死んでいたであろう連続攻撃にたらりと汗を零しながら、ユミがひゅうと口笛を吹く。
「桜花さん以外はいくら強いって言っても正直人間相手だと思ってたけど、どうやら考えを改めた方が…!?」
慌てて移動した、さっきまで立っていた場所に玲二とエレンの2人の銃弾が叩き込まれる。
「…容赦ないね」
「あいにく、手加減出来るほど、俺たちは強くないからな」
「だろうね…」
ばさりと翼を閉じる。銃弾への盾となるように。
「アンタらは、強い。けど、生命力は…"人間並み"だ」
先ほどの翼での攻撃。あの程度でディアラマが必要になるほどのダメージを受ける。
その生命力の差が、"人間"である彼らと"魔人"であるユミとの最大の違いであり、戦闘経験で劣る由美がつけいる隙。
「その人間が…絶対零度の空間に耐えられるか…見せてもらおうじゃないか」
「こ、これは…!?」
魔力が集中していく気配に玲子はぞくりと身を震わせる。膨大な魔力の量。
玲子はただ1度だけ見たことがある。これに匹敵する“魔法”を。
「玲二さん!エレンさん!こちらへ!」
慌てて再び攻撃しようとした2人に呼びかける。2人が頷き、無言で玲子と桜花のそばに滑り込む。
「桜花さん!」
「はい~!任せてください!」
ありったけの人魂を召喚し、巨大なバリアを形成する。そして…
「マハラギオン!」
同時に玲子が新たに習得した炎の魔法で"壁"を作り出した次の瞬間。
「―――マハブフダイン!」
辺り一帯が、絶対零度の空間に凍りついた。

「…とんでもないな」
炎の壁でへただれた向こう側、空気が凍結し、瞬時にすべてが白く染まった空間に玲二が息を飲む。
「はい~。私でも玲子の援護がなければ大変なことになってました~。ナイス判断です、玲子」
自らの分身たる人魂のダメージがわが身に返ってきた痛みに顔をしかめながら桜花が言う。
「いえ…前にマスターのあれを見て無かったら、対処しきれませんでした…」
あと少しでも対処が遅れていたらと考えて、玲子はあの厳しい特訓に感謝しつつ、ぶるりと身を震わせる。
あの地獄の特訓でエヴァが"見本"と称して1度だけ使って見せた、学園世界においては修錬場の中か、満月の晩にしか使えない、『闇の福音』の最強魔法。
「"おわるせかい"…今の魔法はあれに匹敵します」
ユミが魔人となっている以上、強い力を得たのは分かっていた。事実、パワーもスピードも以前とはケタ違いだ。
だが、それ以上に…
「驚いたかい?これが今のアタシ…魔人の魔力って奴さ」
ただでさえユミが得意としていた魔法の威力がとてつもないことになっている。
「…桜花さんがこれでも倒せないとは思わなかったがね」
そう言いながら、次の魔法に集中する。
「アタシと合体したのは、"ノルン"とか言うどっかの神話に出てくる女神でさ、時と…生き物の生死を操る力を持ってる」
対象は、桜花。
「こいつは、そのうちの1つ」
他の連中にはともかく、"桜花には"危険な魔法をユミは発動させる。
「成仏しなよ―――ハマオン!」
「…!?きゃああああああああああああああああ!?」
桜花の足元から光が噴き出す。
温かい、死者を慈しむ光。それは容赦なく桜花と"現世"へのつながりを断ち切り、桜花を"昇天"させようとする。
「私は…玲子を置いていくわけにはいかないんです~!」
必死にプラーナを開放し、現世との繋がりを保つ。そして…
「はぁはぁ…な、なんとか耐えました…」
脂汗を流しながら、桜花が言う。
「けど、何度も喰らったら…」
人ならざるものの存在そのものを削り取る、"破魔"の魔法。現世との繋がりを削り切られれば、待っているのは、"成仏"だ。
「…玲子」
その様子を見て、玲二が玲子に言う。
「ここは、一旦退却だ。相性が悪い。一旦引いて体勢を立て直す。いいな?」
玲二の提案に、3人が頷く。
「いいか?いち、にの、さんで逃げる。後ろを向かずに一気に走れ」
3人が再び頷くのを見て、玲二が掛け声をかける。
「行くぞ…いち、にの、さん!」
玲二の掛け声と同時に玲子が桜花と共に駆けだす。
「待ちな!逃がさないよ!」
桜花を倒せなかったのが痛いが、それ以外は佐藤の読み通りの展開に、ユミが内心ほっとしながら2人を追いかける。
後は、向こうで待ち伏せしている佐藤と合流して、不意を突いてこいつ等を倒し、玲子を捕まえる。これで終わりだ。
「…それは、こっちのセリフだ」
そんなことを考えていたせいか、ユミは、反応が遅れた。
「な…アンタ!?」
玲二とエレンはその場から1歩も動いていない。その場にとどまり、ユミを待ち受けていた。
玲二は時空鞘から一丁の、拳銃と呼ぶにはあまりにも大きな銃を抜く。しっかりと鳩尾を狙って構え、反動に備える。
元々"人間用"じゃないそれは、威力がでかい分、反動も洒落にならない。

ドゥン!ドゥン!ドゥン!ドゥン!ドゥン!ドゥン!ドゥン!ドゥン!

8発の弾丸を全て打ち尽す。反動がきついが何とか全弾肺と鳩尾に叩き込む。
ユミはそのあまりの衝撃に動けない。音が響くたびに身体に大穴が開いていく。
「ぐっ…め、メディアラハン!」
飛ぶほどの力も残らず、ユミは地面に落ちる。このままでは死ぬことを確信し、とっさに回復魔法を自らに施す。
「なんとか、効いたか」
ユミの様子に幾分ホッとして、玲二が言う。
玲二が使った銃の名は、デザートイーグル.50AEマキシマムカスタム。
50口径のマグナム弾が使える最強の拳銃を更に対化け物用に威力強化改造した、人間相手に使えば間違いなくオーバーキルとなる…通称"モンスターマグナム"
「…ちきしょう、さっきのは、ブラフかよ」
はめられた。その事に悔しさをにじませながら、ユミが呟く。
「悪いが、アンタはここで足止めだ。俺たち4人の相手をしてもらう」
4人?ユミがその言葉の意味を理解するより先に。
―――こおる大地(クリュスタリザティオー・テルストリス) !
地面から突き出した氷柱がユミの右の翼を貫く。翼から力が抜け、だらりと垂れさがる。
「やれやれ。ずいぶんと苦戦しているじゃないか?」
「…ダメージは軽微。お2人とも、戦闘行動の続行に問題はありません」
その魔法の使い手と彼女の従者が玲二のそばに降り立ち、思い思いの言葉をかける。
「よお。遅かったじゃないかエヴァ」
組織最強の氷魔法の使い手に、玲二がマガジンを交換しつつ、言う。
「フン。途中で茶々丸のブースターが切れてな。走って来た。多少は遅くなるのも仕方あるまい」
魔法の媒体となる魔法薬を指の間に挟みつつ、エヴァが玲二に返答する。
「それより、玲子と桜花はどうした?姿が見え無いが」
「ああ、コイツと桜花の相性が最悪だったからな。逃がした」
「…そうか」
短い会話を交わしたのち、玲二とエヴァがユミに向きなおる。
「強いか?」
「ああ、化け物並みの体力に傷を治す回復魔法とお前並みの攻撃魔法の使い手、あとは幽霊を成仏させる…お前、やばくないかエヴァ?」
「心配するな。死者向けの魔法は私には効かん」
「そうか」
ユミから一瞬も目を離すことなく、玲二がエヴァに相手の情報を伝える。
「ちぃ…何を悠長な…」
もう、桜花はいない。まとめてマハブフダインで凍りつかせるべく、ユミが集中しようとした時だった。
「させません」「やらせないわ」
ゴンッ!ザシュ!
茶々丸の鋼の拳と、エレンのコンバットナイフ。2つの凶器が同時にユミを襲う。
「くぅ!?」
鈍い衝撃と鋭い痛みに集中を乱され、ユミは魔法を発動できない。
「…1つ忠告しといてやる」
魔法薬を媒体に生み出した氷の矢を浮かせて、エヴァが言う。
「妨害と護衛用の戦士(ぜんえい)くらい用意しろよ…魔法使い(こうえい)」
いつもの皮肉げな笑みを浮かべて、挑発するように。


―――佐藤

「な、なんで…」
目の前に立ちふさがる、佐藤とその仲魔たちの姿と、玲二たちがついて来ていないことに気づいた玲子が茫然と呟く。
「ああ、やっぱりか…」
玲子と桜花が2人だけでこちらへ来た。その予想通りの展開に佐藤が言う。
「こっちは3人だけど、足止めしてるのはチャーリーだけ。ちょっと考えれば1人足りないことなんてすぐに気づく。
 玲子さんはともかく、一緒にいるのはカゲモリの連中…あいつらなら気づくことくらい、分かってたさ」
身構え、戦闘態勢をとりながら、更に言う。
「一番弱い魔人であろう僕と、桜花さんをも1撃で殺しうる、強力なハマオンが使える由美さんだったら、危険でもこっちと戦う方がマシ。大方そんな考えじゃないかな」
「じゃ、じゃあ玲二さんたちは…」
「ああ、多分向こうで由美さんと戦ってるんだろうね」
玲子の問いかけに頷く。今頃はユミも足止めを食らっているのだろう。
もしかしたらすぐに残った2人を倒してこっちに来るかも知れないが、そんな希望的観測は、しない方がいい。
「玲子さん、僕らと学園のみんなのために、君には向こうに戻ってもらう」
淡々と、こちらの要求を告げる。
「一応言っとくけど、僕らの仲魔をなめない方がいい。いくら桜花さんがいるって言っても、君たちだけじゃあ、僕らには勝てない」
佐藤と、その忠実な仲魔たち。彼らのコンビネーションは、完成されている。確かに
「諦めて大人しくついてきてくれるなら、僕らはこのまま帰る。他の2人と一緒にね。これなら誰も死なずに済む」
佐藤の言葉に、玲子が戸惑う。
「…玲子?」
「桜花さん」
俯いたまま、桜花に聞く。
「桜花さんは、私たちだけで、佐藤君に勝てると思いますか…?」
不安げな問いかけ。それに桜花は悲しそうな顔をしたあと、言う。
「…難しいかと」
桜花のウィザードとしての経験からの答えを、正直に告げる。今の玲子に嘘は通じないことは、分かっていたから。
「そうですか…」
玲子は唇をかみしめて、この1ヶ月のことを思う。
輝明学園での新しい生活と、新しい友達。
強くて、親切に銃の扱い方を教えてくれた玲二と、ひたすらに厳しいけど確かに強くなれる道を示してくれたマスター。
そして…魔界に残してきた、大切な友達を助けたい。そんな、意思。
それらが頭の中を巡る。そして…
―――…。……。
耳元で聞こえた、囁くような、ごく小さな声。それに後押しされて、玲子は決断する。
「桜花さん、前に言いましたよね?諦めなければ…」
顔をあげて、傍らの桜花に尋ねる。
「…はい。何とかなるって考えるのが、ウィザードです」
前に進むことを選んだ、宿主に、嬉しそうな声で桜花が答える。
「分りました。答えは…」
きっと佐藤の方を向いて、言う。
「…Noです。例え殺されても、私は最後まで戦います」
強い決意を込めて。
「…そうか。残念だ」
はぁ、とため息を吐いて、佐藤が言う。
「悪いけど、手加減はしない…本気で行くよ」
佐藤の言葉に、佐藤の仲魔たちが反応し、行動を開始する。
逃がさないよう周りを囲み、戦闘態勢を取る。
「サマナー兼魔人である僕の…最後の戦いだ」
相手が魔人皇では無く、玲子なのが残念だけど、生き残る道を探った結果だ。後悔はしない。
そして佐藤は。

ワォォォォォォン!

高らかに仲魔たちに戦いの始まりを告げる、遠吠えを上げた。


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