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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第05話07

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だれでも歓迎! 編集
「はぁはぁはぁ…」
内心焦りを感じながら、チャーリーは荒く息を吐いた。
敵…たった1人で魔人に挑んできた、カゲモリの隊長と戦いながら。
バスッ!
「ぐぅ!?」
目に止まらぬ死角から飛んできて刺さった手裏剣にチャーリーは顔をしかめる。
「ちぃ!大して威力もねえくせに…うぜえんだよ!」
チャーリーが実際陰守マモルと戦ってみて、分かったことは2つ。
1つは、マモルの攻撃の威力は大したことが無いこと。
こちらが受けるダメージは、先ほどまでの戦士2人と戦っていた時の方がよっぽど辛い。
だが、もう1つ。それが最大の問題だった。
「そこかぁ!」
飛んできた方向に現れた黒い影に対して一気に距離を詰め攻撃を加える。
ドゴォ!
拳が触れる寸前、その影は再び消え、チャーリーの拳が壁にめり込む。
ザシュッ!
同時に背中に痛みが走る。忍者刀で切られたのだ。
「逃がすか、クソッたれがぁ!」
怒りと共にマハラギダイン…強大な炎の魔法で辺り一面を焼き払う。
「…ざまあ…みやがれ」
黒焦げになり、崩れていくそれを見たチャーリーが笑い…その笑い顔を凍りつかせる。
「変わり身の術って奴かよ!?」
気づいたのだ。燃え尽きたのは…忍者服を着せられた丸太だってことに。
「…上か!?」
辺り一面を焼き払った以上、逃げ道は空にしか無いはずだ。
そう思い見上げた、結果…チャーリーは致命的な隙を作ってしまった。

ボゴッ

煉瓦に覆われた地面の“下”から飛び出してきたマモルに対して。
「陰守忍法…」
チャーリーの腰をしっかりと抱き抱え、マモルは上に飛ぶ。
空中で反転し、チャーリーの頭を下に向けて、凄まじい勢いで回転を始める。
「逆さ人柱落し!」
そしてその地面を掘削するドリルのような勢いのまま、地面に激突する。
「ぐ…なめんなよ!」
地面を掘るドリル代わりに使われ、地面にめり込んだ上半身を引き抜き、態勢を整えたときにはもはやマモルの姿は無い。
「クソったれ!」
マモルと戦って覚えた感覚…徐々に体力を削られていく“恐怖”を必死に否定しながら、チャーリーは毒づく。
チャーリーは気づいていた。奴が…マモルが1人で残った理由。それは。
「攻撃があたりゃしねえ…」
陰守マモル…彼が並みの攻撃などたやすく避ける、最強の“デコイ”であるがためだと言う事に。
「…どうする…ユミたちにゃあ悪いが退くか…?」
弱気になったチャーリーがポケットの中の転送用の石に触れた、その時だった。
「…!?」
戦いが始まってすぐに発生した、辺りを覆う、異界化の空気が消える。
それが意味することは…
「まさか…佐藤の野郎…死んだのか?」
チャーリーが、呆然と呟いた。


―――佐藤

「…そうか、これが、狙いだったのか」
佐藤は茫然と言葉と血を吐きだした。
マハラギオン…玲子の使う"炎"は佐藤には効かなかった。元よりケルベロスに、炎は効かない。
だが、それ自体が玲子の狙い。
「…前にマスターが教えてくれたんです。明らかな"悪手"は…相手の油断を誘うには有効だって」
力を使い果たし、へたり込んだ玲子が佐藤に応える。
「なるほど…強くなったんだな…玲子さんは…」
呟き、佐藤は確認する。
「なんとか、間に合いましたね…」
佐藤の腹から飛び出した、刀の使い手の名は、斎堂一狼。
「そうね。オウカが最後まで守りぬいたお陰だわ」
佐藤の右胸を貫いた細剣の使い手の名は、ライズ・ハイマー。
「…治療が必要。オウカが危ない」
佐藤の全身を貫いた、無数の氷の矢を生み出す魔法の使い手の名は、タバサ。

佐藤が自らには通用しない炎に気を緩めた、一瞬の出来事だった。
佐藤はこの場に駆け付けた3人のカゲモリたちの奇襲により…致命傷を負った。
「…負けるかも知れないとは、思っていたけど…まさか玲子さんに出し抜かれるとは思っていなかったよ」
玲子に顔を向け、告げる佐藤の顔には、怒りも悲しみも無い。
理解したのだ。1ヶ月の間、カゲモリの中で鍛えられ、玲子は強くなった。
…魔人皇と戦えるかもしれないほどに。
「…ストップ!戦わなくていい…戦いは、終わったんだ…」
気色ばみ、彼らに襲い掛かろうとする仲魔たちを佐藤は制止する。
これ以上は、戦う意味も、理由も無い。
「…玲子さん。よく…見ていて。そして、覚えて…欲しい」
佐藤は玲子に話しかける。
「僕が…ケルベロスが使える、たった1つの『魔法』…」
悪魔の強靭な生命力が佐藤を辛うじて動かしてはいるが、それでも命が尽きるのは、時間の問題。
それを悟った佐藤は、最後に自分の為すべきことを果たすべく玲子と桜花に歩み寄る。
「…桜花さん。死なないで…ってのは…変かも…知れないけど…とにかく、まだ、こっちで…玲子さんを…守って…あげて…欲しいんだ」
しゃがみ込み、今にも消滅しそうな桜花に手をかざす。そして、佐藤が使った魔法の名は。
「…リカーム」
死せるもの、冥府へと旅立とうとするものを呼び戻す魔法。
温かな光が桜花へと流れ込む。桜花を現世につなぎとめるべく。
「…佐藤、さん?」
「…ああ、そう、さ…」
うっすらと目を開けた桜花が、その名を呼んだ瞬間。
佐藤は笑顔で倒れ、2度と目を覚まさなかった。


「それで、貴方達は、どうするつもりかしら?」
佐藤が息絶えたのを確認し、ライズたちは佐藤の召喚した悪魔たちの方に向きなおる。
戦いは、まだ終わっていない。へたり込んだ玲子と回復したばかりで本調子ではない桜花を守るように3人と1匹が2人を囲む。
「…契約者たるサマナー佐藤が死した今、私たちに貴方がたと戦う理由はありませんね」
言い知れぬ緊張を破ったのは、天使パワーの一言だった。
「失礼」
剣を捨て、つかつかと佐藤に歩み寄り、抱き上げる。
そして、他の4体の悪魔の元へと運ぶ。そっと地面に下ろされた佐藤を5体の悪魔たちが取り囲む。
「サマナー佐藤…」
死ぬことで本来の人間の姿へと戻った佐藤に、パワーは語りかける。
「私は、貴方と共に戦えたことをうれしく思います」
その言葉に、他の4体も同意する。
短い付き合いであったが、彼らは確かに仲魔であり、パートナーであり…友人であった。
「貴方の現生での戦いは終わりました。共にゆきましょう。彼方へ」
悪魔たちは佐藤の遺骸を抱え上げる。そして、ゆっくりとその姿を薄れさせていく。
「サマナー佐藤を倒した…勇者たちよ。聞きなさい」
パワーが玲子たちに向きなおり、最後の言葉を残す。
「サマナー佐藤の遺産は貴方がたにお譲りします。それを使い、魔人皇を討ち果たしなさい…頼みましたよ」
そんな言葉を最後に、佐藤の仲魔たちは魔界へと帰って行った。
「…どうやらここは終わったみたいですね」
“使い手”の死を悟ったかのように、佐藤のアームターミナルは機能を止め、異界化が解かれる。
「エヴァさんたちと隊長殿の援護に行きましょう。玲子さんと桜花さんは休んで…」
一狼が今後の指示を出そうとした、そのときだった。

パチパチパチ…

場違いな拍手の音が響き渡る。何事かと6人が同時にそちらへ向きなおる。
「…やるじゃないか。カゲモリの諸君。一番弱いとは言え、魔人である佐藤を倒すとはね」
そこに立っていたのは白い学ランに身を包んだ、線の細い少年。
透けているところから見ると、幻影なのだろう。
「…何者だ?」
幻影からでも分かる、強大なプラーナに内心冷汗をかきながら、一狼は問いかける。
ふと目をやればそれはライズとタバサも同様なのだろう、各々剣と杖を構え、様子をうかがっている。
「何者か…か」
その問いかけに少年はちらりと玲子の方を見て、言う。

「玲子に聞いていなかったのか?僕の名は…挟間偉出夫」

その見覚えのある姿に震える玲子を見ながら。

「…魔神皇だ」


―――ユミ

そのとき、魔神皇は3か所同時に姿を現していた。

「そうか。貴様が魔神皇か…」
戦いを中断し、油断なくユミを見据えながら、エヴァが挟間に確認する。
「そう。この学園世界を支配するのにふさわしい存在。それが、僕だ」
そして、ユミの方に向きなおる。
「ユミ、チャーリー。一旦こちらへ戻れ。佐藤がやられた。もうすぐそちらにも敵の増援が来るだろう…貴様らはまだ利用価値があるから、生かしておいてやるよ」
まるでモノに対するような扱い。だが、今のユミにそれを非難することはできない。
「…っち。分かったよ」
悔しげな表情で魔界転送用の石を起動する。ユミの足元に魔法陣が現れて、ユミを転送するべく輝き出す。
「…佐藤君。ごめんね」
悲しげな表情を一瞬だけ浮かべユミは姿を消す。
「さて、これでゆっくり話が出来るな」
ユミとチャーリー、2人が魔界へ帰ったことを確認し、魔神皇は目の前の…カゲモリたちに向きなおる。
「カゲモリの諸君…先ほども言ったとおり、僕は、この世界を支配する予定だ」
それは、彼ら“カゲモリ”に対する宣戦布告。
「その方策は、既に見つけた。僕はこの学園世界の“神”を手にいれる」
「…神?」
「ああ、そうだ。この神を支配したとき、僕は完全なる存在となり、永遠にこの世界に君臨し続けるだろう」
その言葉を口にする挟間に、迷いの文字は無い。少なくとも彼は、それを信じている。
「その時を楽しみに待っているがいい。カゲモリの諸君…」
その言葉を最後に、挟間の幻影が消滅する。
「神、ねえ…ずいぶん大きく出たもんだな」
魔法とは縁のない世界の出身である玲二がため息と共に言う。
自分の“過去”も大概酷い冗談みたいなもんだが、今回の事件はそれに更に輪をかけてぶっ飛んでいる。
「もっとも、あのユミって子を見る限りあながちウソじゃないってのが厄介だが」
戦いのさなかのユミの言葉を思い出して呟く。
あの、ユミとか言う魔人は、女神…神の力を得たと言っていた。
そして、エヴァたちと力を合わせ4人で挑んでもほぼ互角だった辺り、それは嘘じゃあない。
「どちらにしてもやることは変わらんさ」
肩をすくめ、エヴァが言う。
「戦い、叩き潰す。それだけだ」
魔神皇が消えた後を見ながら、エヴァが不敵な笑みを浮かべたまま、言う。
「さて、あの口ぶりだと、どうやら他のところの戦いも終わったようだな」
気を取り直し、エヴァが茶々丸に言う。
「作戦終了だ。撤退すると全員に通達しろ。異界化が消えた今、通信は復活しているはずだ」
「はい。了解しました…全チームに通達。作戦は終了。各自速やかに作戦地域より撤退してください」
通信機から次々と了解の言葉が返ってくる。その中に玲子と桜花の声が混じっていたことにかすかな満足感を覚え、エヴァがにやりと笑う。
「これからやるべきことは多いが…」
「ああ、とりあえずは任務完了ってところか」
同じく笑みを浮かべ、玲二が言う。
「よし、さっさと帰るぞ。執行部の連中が来る前にな」
この時間なら、やってくる執行部はまず間違いなくあのウィザードの魔剣使いだろう。
この辺りの転送陣は全部作戦開始前に一時的に無力化しておいたが、奴は“飛べる”分到着も早い。
「さっさと行くぞ。吾妻兄妹」
「ああ、了解だ」
そして、彼らは姿を消し、居住区に再びいつものような昼の平穏な時間が戻ってきた。

作戦は、終了したのだ。


―――居住区広場

「ひでえな…」
居住区で謎の異空間発生。転送魔法陣は全て使用不能。
そんな話をノーチェから聞き、箒で事件現場に駆け付けた柊蓮司が、戦場さながらの惨状に目を丸くする。
「一体何が…うん?」
事態を把握しようとしていた柊が、その人影に気づく。
今どき黒い忍者装束をまとった、場違いな姿の少年。
「え~っと…お前は確か…マモルだっけか?」
その姿に柊は見覚えがあった。数ヶ月前、この学園世界が成立した直後に、1度だけ組んだことがある。
本能のままに学園世界を崩壊させようとした冥魔が生み出した月匣内部に、“うっかり”迷い込んだ幼馴染を助けに来たと言うすご腕の忍者。
「ああ、久し振りだな。柊。お前の活躍は色々噂で聞いてるよ」
マモルが気さくに柊に話しかける。柊には最初に組んだ時に既にお隣さんを守ることを使命とする忍者だと言う正体は伝えてある。
今さら隠しだてする必要も無い。
「おう。お前の方もな。黒い謎の忍者ってお前だろ?」
執行部や選抜委員が時々目撃すると言う、謎の忍者。今どき時代劇にでも出てくるような目立ち過ぎる忍者装束をまとった、黒い影。
何処からともなく現れて事件を片づけては去っていく、正体不明な都市伝説的存在。
「ああ。ゆうなが相変わらず過ぎて、ちょっぴり嫌になるよ」
溜息をつき、マモルが答える。
あの、ありえないレベルでありえないトラブルに巻き込まれる、幼馴染の不運っぷりは学園世界でも如何なく発揮されている。
そんなわけで、マモルは普段は“ゆうなの護衛”と言う高難易度任務に従事していた。
「しっかし、何でお前がこんな所にいるんだ?」
柊は首をかしげる。マモルはいつもあの天然っぽい幼馴染と一緒にいるはずじゃあなかったか?
「あれ?僕の仲間が前に言ってたぞ?柊は僕らのこと、薄々は知ってるって」
「僕ら…ってまさか!?」
マモルの謎の発言に、柊がハッと気づく。
最初に自己紹介しあった時に言っていたのを思い出したのだ。マモルの本名が…“陰守”マモルだと言う事を。
「“カゲモリ”って…お前が関わってたのか!?」
「ああ、一応僕が隊長ってことになってるらしい」
ジジイ四天王との約束はあるが、相手が知ってるのなら、隠してもしょうがない。
そう判断し、マモルは頷いて見せる。
「じゃあこいつは…」
辺りの惨状に目をやって、柊が尋ねる。
「うん。詳しくは言えないけど僕らが今関わっている事件で、戦いになってね。一応爺さんたちが事後処理はしといてくれることになってる」
「そうか…」
一応納得した様子の柊に、マモルは今後のことを頼むことにした。
「ま、そう言うわけだから、僕らのことは秘密にしといてくれるかな?僕もゆうなにバレるわけにはいかないし、メンバーにも正体がばれちゃまずい人がたくさんいるんだ」
カゲモリは正体がバレては困る者たちが集い戦う組織であると同時に、そう言う者たちをいざと言うときにかくまう『保護機関』でもある。
故にその実態は謎に包まれていなくてはならないのだ。
「ああ、それは構わないけどよ…」
マモルの頼みを柊は承諾する。そして、柊もまた、自らの"頼み"を告げる。
「もし、本気でやばそうなら、俺らにも言えよ?学園世界を守ってるのは、お前らだけじゃあないんだからさ」
それは、柊の偽らざる本音。カゲモリの事情も分かるが、1人で背負い込んでも良いことは無い。
「…ああ、分かってるさ。本気でダメそうなら爺さんたちに言ってそっちにも頼むことになると思う。だから、そのときはよろしく頼むよ」
マモルにもそれは分かっている。1人で全部出来るほど、自分は凄くない。だからこそ時に組織を頼る。
そのことに、表も裏も無いのだ。それに…
「おう。任せとけ」
1度組んだからこそ、柊の性質をマモルは知っていた。柊蓮司は困っている人間を絶対に見捨てない。
そう言う性質の奴が代表だからこそ、『学園の敵』との戦いの一部は彼ら『執行部』に安心して任せられるのだ。
「ありがとう。それじゃあ、僕はもう行くよ」
柊の言葉にわずかに微笑み、マモルはしゅばっと姿を消す。
この学園世界の“表”を守る組織のことを、頼もしく思いながら。


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