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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第06話07

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邪神は学園世界の夢を見る 07
―――極上生徒会保健室

薬品のにおいが幽かにただよう、暗い部屋。
その部屋のベッドで姫宮空は意識を取り戻し、ぼんやりと天井を眺めていた。
「え?っと…」
空は困惑して、辺りを見回す。
「私は…」
「帰って来たんだよ。それで、保健室に運ばれたの」
困った様子の空に、声が掛けられる。
「…フィル?」
その声に答え、空は声の方向を見る。
「うん。3人とも…あ、ちなみにライズも無事だよ。怪我の治療だけ受けてさっさと帰っちゃったみたいだけど」
そこには既に蒼い冒険服に着替えたフィルが笑顔でベッドに腰かけていた。
「ああ、そっか…私…気絶しちゃったんだ」
それで空は思い出す。
あの巨大なドラゴンとの命がけの戦いと、それと合体した女の人を全力で攻撃して、倒したと思って安心したら、意識が飛んだことを。
「疲労と力を使い果たした反動だって。2~3日は無理しないように、って空が起きたら伝えてくれって言われてたんだ」
「…無理は、どっちにしても難しいかも」
フィルの言葉に、空は自然と自らの状況を確認する。
傷はすべて塞がっているが、ちょっと身体を動かすだけで引き攣るような鋭い痛みが走るし、身体が重くてしょうがない。
戦闘での負傷の経験は余りない空でも無理しない方がよさそうだと分かる。
「うん。よろしい。じゃ、ボクはもう行くね」
そこまで伝え、フィルは軽やかにベッドから飛び降りる。
「もう、動いても大丈夫なの?」
「いや、まだ身体のあちこちが痛いし、疲れてるけど…」
そこで一旦言葉をきり、少しだけ意地悪な顔になって言う。
「空たち見てたら、すぐにでもユウキのところへ行きたくなっちゃった」
「…たち?」
その言葉に空はゆっくりと辺りを見渡し。
「い、一狼くん!?」
ベッドのすぐそば。空の傍らでかすかな寝息を立てる少年に気づいた。
「しーっ。病院では、お静かに。一狼君が起きちゃうよ」
意地悪な笑みのまま、心持ち小さな声でフィルが口元に指を当てる。
「な、なんで一狼くんが…?」
フィルに指摘され、かなりトーンダウンした声で、空がフィルに問う。
そんな、空の問いかけにフィルが笑顔で答える。
「気絶したボクらを運んでくれたんだってさ。ボクをユウキが運んで、空は一狼君が運んだって。
 帰ってくるまでずっと心配してたんだってさ。それで、空が中々目を覚まさないからってずっとついてたんだよ」
「そっか…」
フィルの言葉を聞き、空は身を起し、慈しむように一狼を撫でる。
「一狼くん…」
空の心に温かいものが満る。改めて思う。彼がいるから、自分はここに帰ってこれた…何があっても帰ろうと思えた、と。
「…空は一狼君が大好きなんだね」
そんな空の様子に自分を重ね、フィルがと言う。
「…うん。私は、一狼くんが大好き、だよ」
その言葉にいつもだったら照れて口ごもるところだが、心の中に温かいものに満ちた空はそれに動かされるように素直に答える。
「ふぅ~ん。だったら…ね」
それに何かを思いついたらしきフィルが耳元に口をよせ、空にごにょごにょと何かを伝える。
「へぅあ!?」
それを聞いた空が耳まで真っ赤になり、思わずフィルの方を見る。
「そ、そんなの…え!?でも!」
「大丈夫大丈夫。ユウキもあれで結構まんざらじゃ無かったみたいだしさ…きっと喜んでくれるって」
まるで、いたずらをたくらむ子供のような笑顔で、フィルが空に促す。
「それじゃ頑張って…またね!」
そして、言いたいことを言うと、保健室から颯爽と去っていく。
そして、その場に2人だけで取り残された空は。
「…うん。せっかくだし頑張ってみようかな」
顔を真っ赤に染めたまま、ごそごそと動きだした。



―――ドルファン学園女子寮

夜中。
「…まだ、疲労が残ってるわね」
エヴァたちに今回の事件を報告し、ドルファン学園の女子寮に戻ってきたライズは、冷静に自らの状態を診察する。
急激な負傷と治療を繰り返した影響か、身体の節々が痛む。
保健室で治療を受けたお陰で傷そのものは痕すら残っていないが、それでも明日は療養する方が賢明だろう。
「まったく、飛んだ災難だったわ」
そう結論づけたライズは、眉を潜めて言う。
思えば、今回の事件は"カゲモリ"として依頼を受け動いたわけではない。
偶然が重なり、巻き込まれたものだ。そして、その発端は…
「剣も早く調達しないとならないわね」
「だと思った~」
ライズの呟きに答えた声の方を、時空鞘から咄嗟に護身用の短剣を抜いて、ライズは見据える。
「…だれ?」
月灯りに照らされてそこに立っていたのは、ピンク色の髪を短く切りそろえた女だった。
年は一見ライズとそう変わらないように見えるが、その瞳から幽かにうかがえる老獪な瞳は、数十年の経験を感じさせる。
更に、話しかけられるまでまるで気配が感じられなかった。恐らく純粋な隠密としての腕はライズ以上。
「もう、そんなに怖い顔しちゃダメダメよ~?」
貼り付けたような、能面のような笑顔にライズは見覚えはない、だが…
「どもども~。謎の行商人さんで~す♪」
その声と、ふざけたような軽い口調に、ライズは覚えがあった。
「…貴方、光綾学園のフィクサーね?」
あの時のふざけた姿…全身をフルプレートアーマーで包み、着ぶくれした姿とは今一つつながらないが、声と口調は同じ。
間違いない。
「さてさてどうでしょ~。ただ~、女の秘密には気安く触れない方がいいと思うの。そう思わない?サ・リー・ちゃん?」
ライズの問いかけを軽く受け流し、女は気安くライズに話しかける。それに対しライズは溜息をつき、言う。
「…そうね。それには同意しておくわ。行商人と言ったわね?商品を見せていただけるかしら?」
カゲモリのメンバーにも話していない自らの『異名』を知っているそぶりを見せる女相手に、下手な詮索は危険だ。
そう判断し、ライズは目の前の女の正体を探るのを諦める。


「はいはいは~い。こちらをどうぞ、騎士様」
そんなライズの様子に満足したのか女はどこからか一振りの細剣を取り出して膝を折り、ライズの前に恭しく差し出す。
従者が騎士に剣を渡すように。
「試させてもらうわ」
それを受け取り、眺める。美しい刀身が、月の光を反射して星のようにキラキラと輝いている。
ライズが手にしていた短剣を刃にそっと押しあて…その瞬間。2つに"斬れ"た短剣の刀身が軽い音を立てて床に落ちる。
「なるほど斬れ味と強度は前以上。ならば…」
剣を握り直したあと、一度だけ呼吸を整えたライズは舞うように剣を振る。剣を持ったライズの演武。
それは1度として狭い室内の調度品に当てること無く、またほとんど音すら立てること無く繰り出される。
「すご~い」
その演武を見てなお、女は笑顔を崩さず、ぱちぱちと拍手をする。
「なるほど、押し売りに来るだけはあると言ったところかしら」
剣をゆっくりと鞘に納め、ライズは言う。
時間にしてわずか数分振っただけで、この剣の素晴らしさは理解できた。
剣は触った瞬間、まるで一体化したかのように手に馴染み、ライズの思ったとおり…否、それ以上の動きで剣は閃いた。
「でしょでしょ?これは~、コルウェイドで伝説作ったパーティー『夜を護るもの』が使ってた武器の1つ、星の刃『サン・テグペジュリ』。
 その刃に貫けぬものはなし、なんて言われてる逸品よ~」
女が笑顔のまま、解説しつつ、電卓を取り出す。
「それで、肝心のお値段はねぇ…これぐら~い♪」
手早く操作してその数字を見せる。
「…輝明学園の戦闘用箒がフルチューンで買える値段ね」
それを見て、ライズは無表情に言う。
「ライズちゃんにとってはそれだけの価値がある。違わない?」
対する女も笑顔を崩さず言う。2人の間に無言の空気がしばし流れる。そして。
「…いただくわ」
ライズは懐から0-Phoneを取り出して女の方に向ける。
「…まいど~♪」
それに女も0-Phoneを取り出して応じる。
お互いが素早く操作して電子マネー化された大金のやり取りをあっさりと終え、サン・テグペジュリはライズのものとなった。
「それじゃ、お大事に~。あ、それと…」
これで用事は終わりとばかりに女はすっと窓の縁に腰かけて、ライズの方に顔をむけて言う。
「うちの学校の生徒、助けてくれてありがとね~」
そう伝えた瞬間。その時だけ女の表情が変わる。貼り付けたような笑顔から、純粋な感謝が込められた微笑みに。
その微笑みを残し、女は窓から飛び出していく。乱立する学生寮の壁や屋根を器用にわたり、あっという間に見えなくなる。
「…別に、そんなつもりは無かったのだけれど」
その場に残されたライズは、その手に握られた剣を見て1人呟く。
「確かにこれからを考えるのならば、これ以上ない報酬だわ」
ライズはもう1度だけ、剣を軽く振り、時空鞘へと納める。
魔人、悪魔、魔人皇…そして邪神。
それらとの戦いの予感を感じながら。



―――極上生徒会保健室

朝。
カーテンの引かれていない保健室の窓から差し込む朝日に、斎堂一狼は目を覚ました。
(ああ、なんだか温かいな…)
昨日の心労の反動か、いつもとは比べ物にならぬほど暖かい布団の中で一狼はまどろむ。
昨日は本当に酷かった。
姫宮空が謎の時空転移に巻き込まれたと聞き、慌てて駆けつけたものの、原因も分からず、無事なのかも分からぬ不安な数時間。
その後、ライズと共に死にかけで帰って来たときは心臓が止まるかと思った。
慌てて空を抱えて保健室に駆け込み、治療をしてもらった後も目を覚まさぬ空に、まさかこのまま2度と目を覚まさないんじゃないかと不安なまま共に過ごし…
(…あれ?)
まどろみながら、一狼は違和感に気づいた。
(僕はいつの間に寮に戻ったんだ?)
空のベッドのそばに座っていたあとの記憶が無い。
そして、その違和感に気づいたことを引き金に、一狼は恐るべき状況に徐々に気づいて行く。

余りにも変なのだ。

鼻腔をくすぐるのはどこかで幽かに嗅いだ覚えのある、甘い香り。
耳に届くのは、穏やかな心安らぐ呼吸の音。
寝ているベッドのシーツは一狼には覚えのない白い清潔なシーツ。
…と言うか。
(今、僕の周りにあるあったかくてやわらかくてすべすべした感触は…)
それは、一狼が生まれてこの方覚えのない感触であった。それは忍者として並の男子を遙かにしのぐ筋力を持つ一狼でも振り払えぬほどがっちりと固定されている。
その事実に確信にも満ちた恐怖すら覚えながら一狼は目を見開き…
(○×□〒*+QWWDFJOGSVJGIOIJB,;…!?)
その恐るべき事実に一狼は声にならない叫び声を心の中であげ、その事実に耐えられなくなった精神は強制的にブラックアウトした。

…数分後

「…ん」
何か叫び声のような声を聞いたような気がする。
それに反応し、姫宮空はゆっくりと目を見開いた。
そして、しっかりと抱き抱えたそれに目をやり、安心していまだ眠る彼を起こさぬように小さな声で言う。
「おはよ。一狼くん」
昨晩、フィルに教えてもらった秘策。それを忠実に実行した空は、耳まで真っ赤になりながらも満足な気分であった。
「昨日はよく眠れたかな…そうだったら、嬉しいな」
まるで気絶したかのように目を覚まさぬ一狼に対し、空は密かに秘めた決意を口にする。
「あのね、一狼くん、私、決めたよ…」
表情が引き締まる。
「一狼くんが私を守ってくれるのならば…私は一狼くんを守るよ」
その顔はいつもの温和な"姫"ではなく、強い心を持つ"戦士"のそれ。
「私、強くなる。一狼くんを守れるくらい、強く」
脳裏に浮かぶのはあの凍るような絶望しか無い未来。
それを振り払うように、空はほほ笑む。堅い決意と共に。



―――エヴァの茶室

月曜日の放課後。
「邪神ディー。それが敵の狙いだそうだ」
ライズからの報告を受け、傍らに茶々丸を侍らせたエヴァは目の前の茶室に備え付けられたテーブルについた、カゲモリのメンバーたちを見る。
男女混合、何人かのメンバー。カゲモリの中でも特に"諜報"に長けたものたちと、"魔術"に詳しいものたち。
魔神皇対策のために選ばれた、エキスパートである彼らは静かに、エヴァを見る。
「属する世界は『光綾学園』と言う学園のものだと見てほぼ間違いない。そうだな。タバサ?」
エヴァの問いかけにそのうちの1人であるタバサが頷く。
「以前光綾学園に所属する友人から聞いた。光綾学園の世界には4柱の神がいる。
 人間に信仰によって奇跡を起こす、神術を教えたそれら4柱の神の名は、パヴァーヌ、クープラン、ラヴェル…そして、ディー。
 彼らは始祖ブリミル…1つの世界の主神クラスの力を有していると思われる」
淡々と告げるタバサの言葉に、無言の緊張が走る。
無理も無い。如何に常軌を逸した実力の持ち主が揃っているカゲモリと言えど、神を相手にしたことがあるものなど、数えるほどしかいない。
それが収まるのを待ち、エヴァは言葉を続ける。
「ここにいる連中は知っているだろうが、魔神皇は化け物クラスの召喚術士だ。アクションが鈍すぎることから察するに何かしらの準備は必要だろうが、
 神を支配する方法と実力は持っていると考えて動いた方が良いだろう。私たちでも止めきれるかは微妙なところ、だろうな」
そこで一旦言葉を切り、待つ。カゲモリに強制任務は無い。受けるのも去るのも…すべては本人の意思に任せられる。
その原則にのっとり、各自が結論を出すまでの時間を。
「…話を続けるぞ」
1人として席を立たなかったことを少しだけ意外に思いつつもエヴァは話を続ける。
「もちろん、私とて黙って指をくわえて見ている気はない。対策を講じ、魔神皇が邪神の力を手にする前に叩き潰す。そのために…」
エヴァが傍らに茶々丸を見る。それにうなずくことで応じ、茶々丸は案件を説明する。
「現時刻を持ってカゲモリが組織として活動する案件が追加されます。
 内容は『邪神ディー』の対策研究、『光綾学園』の内偵、『対魔人皇攻略戦』の準備。以上3案件となります」
「対策研究班には邪神ディーの資料を調査してどういう神かを見極めてもらう。これにはタバサと翻訳に茶々丸。
 それと元春、お前、前に一応は"教会"の一員だとか言ってたな。お前にまかせる。
 光綾学園の内部調査は卑怯と羽月、お前らに任せる。光綾学園は冒険者学校だ。教師や生徒に気づかれないよう慎重に動け。
 最後に対魔神皇の人選。これは組織のメンバーに詳しい私とさつきが当たる。説明は、以上だ」
エヴァがそう言うと同時にあるものは席を立ち、またあるものは残された"同僚"たちと話を始める。
陰が動き出した瞬間だった。
「首を洗い、待っているがいい。魔神皇」
そして、陰の中でエヴァが不敵に嗤い、言う。
「カゲモリは指を加えて待っているほど、甘くも、悠長でも無いぞ」
その嗤みは、暗く、深く、そしてそれ故に何色にも染まらぬ陰の色を宿していた。



―――軽小沢学園高校 最上階

「暴走はおさまったか…完成だな」
暴走の果てに魔人を完全に取り込み、知性を得たそれを、魔神皇は満足げに眺める。
オオオオオ…
漆黒の人型。
それは器であった。真の神を降ろすために用意された、神の器。
「名乗れ。邪神。今のお前ならば可能なはずだ」
マグネタイトと悪魔の肉で出来たそれに、魔神皇は言い放つ。
「ワ…レ…」
その言葉に答え、それは名乗る。
「ワ…レ…ハ…邪神…ディー…コンゴトモ…ヨロシク…」
「そうだ。ディー。僕こそが…今のお前の主だ」
真に完成し、従属した邪神。それこそがこの学園世界で魔神皇が真の力を手にするための第1歩。
そして。
「…ご報告します。神の力を呼ぶための神の遺産。『光綾学園』なる学園にて発見いたしました」
次なる1歩のため。男が報告する。
「そうか」
その言葉に魔神皇は更に嗤みを深め、言い放つ。
「…1ヶ月後。学園世界においての新月の日、光綾学園を魔界に堕とす。その時こそ、僕は真の神になる」
最終段階の宣言を。
「…分りました…ところで、魔神皇様」
それに男は深く頭を垂れたのち、言葉を口にする。
「なんだ?」
「用済みになりました我が科学的魔界はいかがなさいますか?」
そこに込められたのは、期待。男は期待を込め、魔神皇の次の言葉を待つ。
「…好きにしろ」
そして、魔神皇は男の期待通りの返答を告げる。
「ありがとうございます!実は私には、貴方様の力をさらに増すための案が1つございましてですね…」
「それも好きにするがいい。あの魔界は貴様にくれてやる」
「はい!」
喜色満面といった風情で男は立ち上がり、自らの策へと動き出す。

「…そう、あんなもの、ディーの力を手にしてしまえば、どうでもいい」
それをどこか冷やかに見つめ、魔神皇は1人呟く。
「ディーの力。それさえ手に入れれば、俺は無敵となる。ありとあらゆるものに負けぬ力を手にする。そして俺は―――」
その瞳に宿るは燃えるような決意。妄執にも似たそれを宿し魔神皇はその願いを口にする。
あの戦いで失った全てを思い出したが故の、願いを。

「――――――世界を救う」

かつて破れ、果たしきれなかったそれを。
カゲモリと魔神皇、2つが激突する日は、近い。


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