オグン(Ougun)とは、ヴードゥー教におけるロアの一つ。
一応軍神。火、戦争、鍛冶、鉄を司る。
彼は現ナイジェリア(
アフリカの真ん中辺ちょい西部)で営々と文化を築き上げていたヨルバ族の代表的な精霊(オリシャ)で、サンテリア(キューバの信仰)やニャニーゴ(キューバの秘密結社的な信仰)、ウンバンダ(
ブラジルの信仰で仏教入る)でも重要な役割を果たす。ヴ―ドゥ―の基本では、フォン人という一族が築き上げた信仰体系をメインとするのだが、こっちにGuという金属を司るロアがいらっしゃるのだが、民族の混交と信仰の体系化で、オグン大明神がヴ―ドゥ―でも拝まれることになった。しかもキューバの方でフォン人が興したレグラアララというヴ―ドゥ―ぽい宗教で、この方ぽい「アファングン」というロアがおられ、さらにこっちはサンテリアという結構でかい信仰に吸収されている。
ヴ―ドゥ―では、聖ジャック、聖ゲオルギウス、聖ジェイムズ、聖ヤコブで表されるほか、
フランス風の帽子を被り赤い軍服を着た姿もとる。
火を神聖なものとし鍛冶と戦争を司るオグン・フェライユ、戦争のみを司るオグン・バダグリ等、ラダ群で派生したペルソナを持つ。
サンテリアでは、オグンは黒い犬を伴い、皮膚病や腫瘍の治療も司る。エレッグア(ブードゥーおける
レグバにあたる)と親友であり、彼の相の一つ
エシュ・オグアニレッペはオグンの犠牲獣である黒犬を提供するために奮闘すると言われる。
檀原照和によればサンテリアで、それぞれのオリシャに、スペイン語で道を意味するカミーノで称される派生神がおり、オグンにはオグン・アレレ(屠畜屋)、オグン・アラグベデ(鍛冶屋)、オグン・チビリキ(鍛冶屋で暗殺者)、オグン・コブ・コブ(鞭を持った職長)、オグン・オニレ(農業者)、オグン・メジ(冷静さと凶暴さを持つ者)、オグン・アグアニレ(大地の征服者)がいる
檀原によれば、キューバでは初期にバントゥー系の黒人が連れてこられ、パロモンテと呼ばれる信仰を細々と伝えていたが、この信仰を受け継ぐ人が自身のンプンゴと呼ばれる神々の内のサラバンダと呼ばれるものと習合し、なんか土着の人がやってたらしい「霊(ヨルバの信仰ではアシェという)を入れた石」を拝んでいる。
キャロル・ローズによれば、「ヨルバの神に由来」するオグンは、ブラジルのアフリカ系信仰で「戦士のエンカンタード(Encantado 皆さんのお願いをかなえてくれるスピリチュアルな者)」として崇拝されるという。
ここでは「一族」が何人か存在するとされ、その皆さんであるオグン・ベイラマール、オグン・イアラ、オグン・メルガ、オグン・デ・ロンダ、オグン・セテ・オンタスははウンバンダで崇拝され、C・ローズ『世界の妖精、妖怪事典』381頁によれば「エクスス(Exus エシュのポルトガル語訛り)」から発生した戦士の精霊で、樹木のエンカンタードであるジュレマの養子になったホンピ・マトゥがオグンの一族とされる。ただ彼はベレンでのみ崇拝される。
参考文献
立野淳也『ヴ―ドゥー教の世界』134~5頁
ローズマリ・エレン=グィリー『魔女と魔術の事典』
キャロル・ローズ『世界の妖精・妖怪事典 (シリーズ・ファンタジー百科) 原書房2003年刊 松村一男訳 ISBN-10:4562037121
檀原照和『ヴードゥー大全』夏目書房2006年刊 ISBN-4860620070
最終更新:2024年06月13日 14:36