インキュバスあるいはインク―ブスは、
夢魔の一種である。
娘さんのベッドへ忍び込み、性交渉をするというより胸を押さえつける。
アンナ・フランクリンによれば、インクボ(上に乗る)、という説の他に夢魔の意のインクベレから だそうである。
出る際のそれは、被害者が知ってる彼の姿をしているらしいのだが、偶蹄の足と異臭で判明するそうである。またフォーンの子供で、芍薬をベッドに飾ると避けられる。
キャサリン・メアリー=ブリッグズ『妖精事典』によれば、インク―ブスが繁栄した15世紀に登場したレジナルド・スコットが、ソレは
ブラウニー系の大地の精霊で、夜中にミルクを捧げる儀礼があったといっている。またローズマリ・エレン=グィリーは、レジナルド・スコット先生はスケプティカルでスピリチュアルなものに当時としてはかなり懐疑的で、インク―ブスなる者は存在せず、お腹のガスが脳みそへ影響を及ぼしてそういう妄想を出すんだと言っている。また、ゲーテ『
ファウスト』でもコーボルトと共に4大元素精霊の土の元素として
登場している。
キャロル・ローズによれば、
フランスで「フォレ」イタリアで「フォレット」ドイツで「アルプ」
スペインで「
ドゥエンデ」というものがそれである。同著によれば、フュスリの描く夢魔の人は、コシュマール(Cauchemar)と言う。
ギリシャではエピアルテス(「飛んだり跳ねたりするもの」)だかエピアルテース(「急襲するもの」)、またプリガニオン(「窒息」)という。
ハンガリーにはLidercと呼ばれるスピリチュアルなものが、寂しい娘か人妻のベッドへ行ってアレをすると言われる。その際ブーツなどで隠しているガチョウの足を見破ればなんとかなるという汎世界的な降魔破邪しぐさがある。
イタリア・ルネサンス期の悪魔祓いジローラモ・メンギによれば、アウトカーストな最低階級のDemonインフィモ・ショーロ(infimo choro)はインキュバス的なことをする。
最終更新:2021年10月10日 10:48