ラ・ヨローナ(La Llorona)


ラ・リョローナやラ・ジョローナと表記される場合もある。
中南米各地に伝わる幽霊。泣きながら川で子供を探してさまよう。その名前はスペイン語で泣く女を意味する。
ラ・リョローナは白一色または黒一色の服を着ている。背が高く、色白で、黒髪を腰まで伸ばし、話によっては目が無い。または目も鼻も口も無いとされる。足も無く地面から浮いた状態で音も無く移動するといわれることもある。目撃者によるととても嫌な妖気を漂わせていたともいう。また骸骨のような姿であったり、頭部が馬であったりする場合もある。パナマに伝わる話では彼女は神に呪われてぞっとするような恐ろしい姿にされてしまい顔には痘痕、身体は毛に覆われ、足は鶏の足であった。チリではラ・リョローナを見ることができるのは、犬と瀕死の人間のみだとされる。また犬の涙を目に擦り付ければ見ることができるようになるともいう。様々なバリュエーションが語られる。
田舎の古い家にも都会の高層マンションにも現れ、ラ・リョローナが現れた家では誰かが重病にかかってしまう。また病人がいた場合はその病人が命を落とすことになる。
ラ・リョローナは死の前兆である。水場(プールや洗濯桶を含む)に一人でいる子供、両親に対して無礼な子供、そして男性を溺れさせるといわれる。
バイクの後部座席にラ・リョローナが現れ、細くて冷たい腕で抱きついてくることもある。抱きつかれた者のほとんどはその直後に命を落とす。死を逃れた者の話によると、ラ・リョローナがいなくなった瞬間、骨が地面に落ちるような奇妙な音がしたという。
ラ・リョローナは何マイルも先まで聞こえる声で嘆き、その姿を見た男性は正気を失ってしまう。だが、ラ・リョローナは祈りの言葉によって払い除けることができる。
ラ・リョローナを追い払うには、銀製の十字架や2つのナイフをX型に交差させて見せるのも効果がある。
ラ・リョローナの物語には多くのバージョンがあるが、登場人物としては子持ちの美女マリア、そしてその彼氏が登場することが多い。だいたいのバージョンでマリアは彼と結婚している。文化的、世間的、経済的な理由から結婚のことは秘密にしている場合もある。しかし彼氏はどのバージョンでも必ずマリアと別れるか見捨ててしまう。
彼氏に見捨てられて怒り狂ったマリアは子供たちを殺害し、その後に自らの命も絶ってしまう。マリアの遺体は村人たちに見つかったが、子供たちの遺体は見つからなかった。そしてマリアはすすり泣く幽霊となって地上に戻ってきた。
いくつかのバージョンでは、自分の子供を見つけるまでは神が天国に入れてくれないのでラ・リョローナは泣いているのだとされる。川岸に座って自らの行為に悲嘆し泣いたり、子供の遺体を探して川岸を歩き回る。
より新しいバージョンでは、マリアは多くの子を持った未亡人で、マリアは男性と恋に落ちたが彼は子供嫌いであった。彼のために、マリアは子供たちを刺殺して死体を川に投げ捨てる。しかしそれを知った彼は、マリアのことを拒絶したのだった。自らの行為の重大さに気付いたマリアは、自らも川に身投げしてしまう。マリアの幽霊は、やけになりながら子供を探してさまよっている。
また別の話。彼女は禁断の肉体関係から身籠った子を川に投げ捨てた。罪悪感を一生忘れることのできなかった彼女は、死後も幽霊となってすすり泣きながら自分の子を探して回る。
また別の話。彼女は交接を生業として自分の体を売っており、結果的に身籠ってしまった不要な赤児を中絶したり川に投げ捨てたりしていた。彼女の死後、神様は「捨ててきた赤児たちを全員見つけるまで天国に行かせるわけにはいかない」と彼女に告げ、地上へと送り返した。
また別の話。マリアは子持ちの未亡人であった。ある夜、マリアは子供をたった1人で留守番させて出かけていた。おそらく彼氏の元へと会いに行っていたのだろう。すると突然、洪水が起こってマリアの家は押し流されてしまった。それからマリアは子供を探して延々と岸をさまよっている。
また別の話。彼女の外出中に家が火事になって、家にいた自分の子供を失う。にもかかわらず、彼女は瓦礫の中で自分の子供を探したためにひどい火傷を負った。それから、彼女は黒いボロ布を着た姿で子供を探して路上をさまよっている。
ラ・リョローナは夜になると「私の子供たちはどこ?」「ああ、私の子供たち!」「私の乳を飲みなさい、私はあなたの母よ」「私の子供を見なかった?」「私の子供、子供!」と言って泣き叫ぶ。

参考文献

 アダム・オールサッチ・ボードマン/ナカイサヤカ『イラストで見るゴーストの歴史』94頁
 森野たくみ『ヴァンパイア 吸血鬼伝説の系譜』145頁
 トニー・アラン/上原ゆうこ『ヴィジュアル版 世界幻想動物百科』244頁
 エリアス・セレドン/山中和樹『コスタリカ伝説集』186, 217, 223頁
 朝里樹/えいとえふ『世界怪異伝説事典』199頁
 野宮麻未『世界に伝わる本当に怖い話 上巻』40頁
 キャロル・ローズ/松村一男『世界の妖精・妖怪事典』443頁
 ホセ・サナルディ/セーサル・サナルディ/寺井広樹『南米妖怪図鑑』103頁
 テリーザ・ベイン『Encyclopedia of Demons in World Religions and Cultures』207頁

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2023年10月28日 18:59