バジリスク

巨大な蛇。また、30センチくらいの大きさともいわれる。猛毒を持つが、視線だけでも生き物を殺すことができる。コカトリスと同一視されることもある。

弱点は雄鶏の鳴き声と鼬である。

 プリニウス『博物誌』によれば、この生き物はキュレナイカ*1に生息し、全長は12ディジット*2、頭に王冠のような白い印を持ち、「シュッ」と鳴くとその辺の蛇がビビって引く、と言われる。
 毒を持ち、接触する他、吐く息でも「藪を枯らし、草を燃やし、岩を砕く」ので、頭を地べたからちょっと上げて歩くという。
 鼬がその天敵で、その凶悪な毒はイタチには効かないという。

 また、29巻によれば、マギ僧は、この生き物の血液を高く評価し、その凝血はピッチの如くであるが、薄めるとキリンのソレの如く赤くなり、この、別名を「サトゥルヌスの血」と呼ばれるものを以てすれば権勢者への懇願、神への祈り、あらゆる病気に対する薬、また魔術への防御として使えると称していると言う。

 ホルヘ・ルイス=ボルヘスによれば、これの名前はギリシア語で「小さな王」を意味する語からとられた。また、ボルヘスはバジリスクの別名を「コカトリス」とし、ウルガタ聖書に「Tsepha」の訳文で「コカトリス」が使われていたため、6世紀ころの人はこれを実在するものとせざるを得ずこれについて「雄鶏が産んだ卵を蟾蜍が孵すと出て来る怪物」としていたとする。

 また、ワニを指すココドイルの語感のコケコケから、中世のヨーロッパでは、雄鶏のトサカを持つとか羽毛でもふもふしているとか言われる。なお荒俣宏によれば、エジプトでは「トキが産んだ」卵から出て来ると言われる。

参考文献


 ホルヘ・ルイス=ボルヘス『幻獣辞典』河出書房刊 202頁~
 荒俣宏『世界大博物図鑑 両生・爬虫類』平凡社刊
 プリニウス『博物誌』第一巻、第三巻

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最終更新:2021年06月12日 15:49

*1 荒俣宏『世界大博物図鑑』両生類爬虫類篇156頁によると、アフリカ北西部

*2 日本語訳版の『博物誌』一巻360頁の注釈によると「約24㎝」 荒俣宏『世界大博物図鑑』156頁によると「30cm位」