火のカムイ
普通アペフチ「ape(火)huchi(老婆)」
アペフチカムイ「ape(火)huchi(老婆)kamui(カムイ)」
アペカムイ「ape(火)kamui(カムイ)」
とよばれる。
女性。老婆の姿で、六枚の小袖を着て帯を締め、六枚の小袖を羽織り(色はいずれも赤または金)、ねじり合わせたような(あるいは断面が三角形の)金属の杖を持つ姿で描写されることが多い。
正式には
アペメルヤンコヤンマッ・ウナメルヤンコヤンマッ
「ape(火)mer(光)yan(上がる)ko(こちらに)yan(上がる)mat(女性)
una(灰)mer(光)yan(上がる)ko(こちらに)yan(上がる)mat(女性)」
という名前とされ、この名は極度に秘密にされた。囲炉裏の灰は彼女の垢とされ、魔除けに使われる。
カムイユカラにおいては、妙齢の美しい女神とされる場合もあり、そのような場合はたいてい夫が他の女神と浮気をしているのを懲らしめに行くか、悪神に囚われた夫を助けに行く話となっている。夫は家の
カムイ「チセコロカムイ」や「ピトシルピトイトゥンチ・カムイシルカムイイトゥンチ」という神であったりする。害をなそうと家に来た悪神を眷属のカムイたちによって退ける、猿蟹合戦によく似た話の主人公になることもある。
両親は
雷のカムイと春楡の
カムイであるという神話があり、落雷による発火からの連想と思われる。
また十勝地方などではアペウチエカシという老爺のカムイと夫婦神であるとされる。
人間と他の
カムイの仲介役であり、何においても真っ先に祈りをささげる
カムイ。あらかじめ火のカムイに用件を述べてから、改めて目的の神に「火のカムイから聞き及びとの事とは思いますが……」と口上を述べた。またそのような性質から、沙流郡二風谷地方ではうっかり囲炉裏端などで猟の予定を話すと、鹿や
熊のカムイに知らせてしまうので不猟の原因になるとされ、パケトゥナシカムイ(口が早い神、すなわち告げ口の神)ともよばれた。
祝詞においては
イレスカムイ「iresu(育ての)kamui(神)」
モシリコロフチ「mosir(大地)kor(領有する)huchi(老婆)」
チランケピト「chirankepito(天から降ろされた人)」などの呼び方がある。
参考資料
北海道の項を参照のこと。
山北篤監修『東洋神名事典』291頁
最終更新:2021年07月04日 15:50