竜蛇のカムイ


北海道の各地、厳密には村上健司によれば「日髙から西」*1で畏敬されたカムイ。湿地や湖に住むとされる。おおむね翼の生えた大蛇の姿とされ、ホヤウカムイ、オヤウカムイ(オヤウ、ホヤウはヘビを意味し、その語源は「異形」という)、ラプシホヤウ・ラプシオヤウ(羽のあるホヤウ・オヤウ)、ラプシヌプルクル(羽を持つ霊力強きもの)、ラプシカムイ(羽のあるカムイ)、チャタィ(日本語「蛇体」からか)、ニタトルンニッネカムイ(湿地にいる悪いカムイ)、ニタトルンペ(湿地にいる者)などの呼び名がある。

また、ヘビであるため寒さに弱く暑さを好むので、夏場にその名前を呼んだり、また冬でも火のそばでその名を呼ぶことは禁忌とされていた。そのためアペサムタソモアイェカムイ(火のそばで云わないカムイ)、サクソモアイェプ(夏云われぬ者。いくつかの書物では「サキソマイップ・サクソモエップ」などと記載)などの異称もある。

退治する際には、寒さという弱点を突いてみぞれや雨を降らすカムイを呼び出したり、アメマスやカワウソのカムイの力を借りたりする。逆に火には大変強く、火のカムイが炎を浴びせかけても効かなかったという話がある。

大変な悪臭を放つとされ、その移動したあとを通ったり風下に立っただけでも、毒気に当てられ体が爛れたり、髪が抜けたり、足が動かなくなったりするとされた。住んでいる湿地も、毒気のため草や木が生えていないとされる。火山性のガスが吹き出ている場所などであろうか。水木しげる『憑物百怪』によれば、疱瘡が流行った際、アイヌの人々はかのカムイが住む地の近くへ行き、この悪臭で疱瘡のカムイ(天然痘のカムイ)を払ってもらったという。

水木はこのカムイを「トゥレンペカムイ」即ち「憑依するカムイ」として紹介しているが、その憑き物としてこのカムイが病人の相談に乗った話を紹介する知里真志保は、シャーマニスムに基づく儀礼で使われる動物にかわうそが要る点を指摘している。
 また、湖の主をアメマスとする地方が多くあるとし、そこから獺とホヤウカムイでいいや、が出て来たという伝承を紹介して*2いる。

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最終更新:2021年07月20日 13:38

*1 村上『日本妖怪大事典』302頁「ホヤウ」で収録

*2 『知里真志保著作集2』389頁