大黒天

(1)ヒンドゥー教の三大神であるシヴァの戦闘と破壊をつかさどる暗黒面を指す異称、マハーカーラが仏教に取り込まれたのが大黒天である。マハーは「大いなる」、カーラは「暗黒」を意味し、意訳して大黒天、音訳して摩訶迦羅、摩訶伽羅とよばれた。「カーラ」には「時間」の意味もあるため、「大時」ともよばれる。

仏教においても時間、死、破壊をつかさどる神であり、また寺院の守護神でもある。

その姿は憤怒形で象の皮や刀を持った形相で描かれている。三つの目を持ち、腕の数はふつう二臂か六臂で、八臂、十六臂のものも見られる。

密教では大日如来の化身とされる重要な神である。

(2)中国には仏教とともに伝わったが、生贄を捌く包丁と血を受ける皿を持っていたせいか、唐の時代には寺院の食堂・厨房の守護神として信仰されるようになった。この信仰はそのまま日本にも伝わり、比叡山延暦寺で食堂の神として祀られ、天台宗の広まりとともに各地の寺院で、また一般家庭においても台所の神として信仰を集めた。

この時代には柔和な表情で、打ち出の小槌と袋を持った姿で表されるようになっている。これは日本神話の神、大国主命?と同一視されたからである。「大国」は「だいこく」とも読め、「大黒」と読みが同じになること、大物主(大国主命の別名などとされる)が比叡山に祀られていたため天台宗や、密教系の宗派である真言宗が両者の習合を推し進めたことなどによるとされる。

民間においては主に主婦によって恵比寿とともに台所に祀られ、僧侶の妻を大黒と呼ぶのもここに由来する。旅芸人による大黒舞などによっても親しまれ、早い時期に他の神々とともに祀られ七福神の原型となる。

ネズミが使いとされるが、もともとネズミは家の変事を予知する聖獣とされていたこと、大国主命が須佐之男命の策により焼き殺されそうになった際に、ネズミによって救われた事などに由来するとされる。


参考

新紀元社 密教曼荼羅
青春出版社 妖怪と絵馬と七福神

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最終更新:2006年11月01日 13:08