シマフクロウのカムイ


北海道に生息する大型のミミズク、シマフクロウのカムイ。一般に
コタンコロカムイ「kotan(集落)kor(領有する)kamui(カムイ)」
のアイヌ名で知られる(コタンクルカムイと誤記されていることも多い)。

ほか、
カムイチカプ「kamui(カムイchikap)(鳥)」
カムイチカッポ「kamui(カムイ)chikappo(本来「小鳥」の意だが、ここでは親愛の情を込めていう)
カムイエカシ「kamui(カムイ)ekasi(長老)」
コタンコッチカプ「kotan(集落)kot(領有する)chikap(鳥)」
モシリコロカムイ「mosir(大地)kor(領有する)kamui(カムイ)」
ニヤシコロカムイ「niyas(木の枝)kor(領有する)kamui(カムイ)」
モシリコトロカムイ「mosir(大地)kotor(ふところ)kamui(カムイ)」
アノノカカムイ「anonoka(人間の形)kamui(カムイ)」
などの多くの異称を持つ。


闇の中で光る目と、恐ろしげな声で、集落に近づく悪神を追い払う善きカムイであり、地方によっては熊のカムイより尊ばれた。
送り儀礼も、釧路地方、日本海側、十勝地方、胆振地方では熊より厳粛に行われ、婦女子の列席を禁じている地方もあった。また、作法を少しでも誤ると怒って災いを為すともいわれ、次第に行われなくなっていった地方も少なくない。また、最高位のカムイであるため、シマフクロウを送った村は熊のほうが遠慮して来ないといい、一年間熊狩りを控えたという。

噴火湾地方では、鳴き声から「フムフム(humhum)」としか呼ばれず、送るときも難しい作法はない。

このような信仰の差は、川漁が盛んか否かによるとされる。集落は通常川の近くに作り、川魚を主食とするシマフクロウの生息域と重なり、姿を見たり声を聞く機会が多かったことと、シマフクロウは鮭を好んで捕まえるものの喉の肉しか食べず(実際には皮が硬くて食べられないという)、残した鮭を人間に分け与える川漁のカムイだからである。寡婦に魚を分け与えるカムイとして尊ばれたのはオオカミのカムイと同様である。

参考資料

北海道の項を参照のこと。
山北篤監修『東洋神名事典』172p

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最終更新:2021年07月04日 15:59