アッラー

アッラー(allah)という語はal-ilahが発音上詰って出来た言葉で「神(The God)」を意味する。
イスラームにおける全知全能にして唯一絶対の神であり、聖書が説く唯一神ヤハウェと同一視される。
コーランによれば彼は6日で世界を創造し、光から天使を、火からジンを、土からは人間を創造した。
多くの預言者を遣わし、モーセにトーラーを、ダビデに詩篇を、イエスに福音(インジール)を
授け、最後の預言者としてムハンマドを選び、彼にクルアーン(コーラン)の言葉を授けた。
彼は「慈悲あまねく慈悲あまねき御方」と讃えられる一方で
不信心者には苛烈な裁きを与え、審判の際に地獄に叩き落とす存在である。
ただし一身に神に服従し信仰する者に対しては死後の救済を約束する。

イスラム発祥前のジャーヒリーヤ(無明時代)の信仰においては
アッラーはアラブの多神教の最高神であり、重要視された三人の女神アッラート、マナート、ウッザーの父とされていた。
また、アッラーという語は当時から既にユダヤ教徒・キリスト教徒から聖書の神を指す言葉として使用されていた。

クルアーンの神としてのアッラーと聖書の神を同一とするかには立場によって違いがある。
三つの一神教を「アブラハムの宗教」「セム系一神教」として一系列としてとらえるなら、
同じ神を崇拝していると言える。しかし、クルアーンではイエスの神性や磔刑が
否定され、他にも聖書と矛盾する箇所がある。ムスリム側はこれを捏造や改竄のためとする。
聖書の記述を否定する存在が、聖書の神と同一であるわけがない、とする見方をとるなら、
クルアーンの神と聖書の神は別の存在ということになる。
同じ神、とする場合は、お互いの聖典・宗教は同じ神を崇拝するものだが、
誤解を含んでいる、という見方になる。
どちらにせよ、「同じ神を信仰する」「同じ神から啓示された」という主張を
但し書き無しですることは、信仰する当事者にしてみれば難しい。

参考文献

井筒俊彦訳「コーラン」岩波文庫
井筒俊彦著「イスラーム生誕」中公文庫

参考サイト

イスラム教とその神観を好意的にとらえたカトリック文書に対し、プロテスタント信者が批判を加え、イスラム教の神は聖書の神ではない、と書いたもの。

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最終更新:2010年11月15日 12:16