デプロイ・フーリエは、統合管理局「セレスティア」に所属していた情報工学者であり、第7情報解析部門の部門長を務めていた人物である。物語中盤において、主人公たちが乗る自由航行艦「アーク」に合流し、以後、同艦のメインシステム管理者として中核を担うこととなる。当初は管理局の秩序を維持する立場から主人公たちと対立するが、ある事件をきっかけに管理局の体制そのものに疑問を抱き、離反。彼の持つ高度な情報解析能力とシステム管理技術は、アークの航行と戦闘において欠かせない要素となった。
彼は、宇宙コロニー群「セクター5」の低所得者層居住区画で生まれた。セクター5は、統合管理局による厳格なリソース管理システムが試験的に導入されていた地域であり、住民の生活はすべて中央AIによって管理されていた。フーリエが幼少期、この管理システムに原因不明の不具合が発生し、食料や酸素などの生命維持リソースの配給が停止する事故が起きた。この事故により、彼は両親を失っている。この経験は彼の原体験となり、システムは完璧でなければならず、人間の生活を脅かす「バグ」や「エラー」は徹底的に排除されなければならないという強い信念を抱くきっかけとなった。彼は、システムの不備が悲劇を招いたと考え、自らが完璧なシステムを作り上げることを決意する。その才能は早くから開花し、特待生として中央アカデミーの情報工学科に進学。在学中から数々の論文を発表し、特に大規模ネットワークにおけるエラーの自己修復アルゴリズムに関する研究で注目を集めた。卒業後は異例の速さで統合管理局「セレスティア」に採用され、情報解析部門に配属される。彼は自らの信念に従い、全コロニーの生命維持システムと情報ネットワークの安定化に尽力し、若くして第7情報解析部門の部門長に就任した。
物語の序盤において、彼は管理局の部門長として登場する。主人公たちの行動は、管理局の管理体制を脅かす「イレギュラー(異常因子)」として認識されており、フーリエは彼らの追跡任務を指揮する。彼はアークの航行システムに対し、管理局のネットワークを通じて高度なハッキング攻撃を仕掛け、主人公たちを何度も窮地に追い込んだ。彼の攻撃は極めて論理的かつ正確であり、アークの技術者たちを苦しめた。しかし、この追跡任務の過程で、彼はアークに搭載されている自律型AI「ラプラス」と接触することになる。完璧な管理と秩序を重んじるフーリエに対し、ラプラスは予測不可能な「自由」や「意志」の重要性を説いた。当初、フーリエはラプラスの思想を危険なものとして退けていたが、対話を重ねるうちに、自らの信念にわずかな揺らぎが生じ始める。転機となったのは、彼が両親の死に関する過去の事故データを再調査した際のことである。彼は公式記録の奥深くに隠されていた機密データを発見し、当時の事故がシステムのバグではなく、管理局上層部による意図的なリソース操作であったことを知る。彼の両親は、管理局の政策に反対する活動に関わっており、その見せしめとして意図的に排除されたのだった。自らが信じ、守ろうとしてきた「完璧なシステム」が、実際には一部の人間の悪意によって容易に歪められ、隠蔽の道具として使われていたという事実に、彼は大きな衝撃を受ける。自らの正義が崩壊した彼は、管理局の追跡任務を放棄し、単身シャトルでアークへと向かい、合流を要請する。アーク内部では当初、彼を警戒する声も多かったが、主人公である艦長の判断により、彼の受け入れが決定された。合流後は、アークのメインシステム管理者として、これまでの償いをするかのようにその能力を発揮する。管理局の追跡システムのアルゴリズムを熟知している彼は、アークの航行ルートを予測されにくくするための偽装工作や、管理局のネットワークへの逆侵入(カウンターハッキング)を主導した。特に最終決戦においては、管理局の中央AIである「クロノス」の制御システムに対し、中枢部深くに潜入するという危険な任務を単独で実行。クロノスが持つ惑星間防衛網の制御を一時的に奪取し、アークの突入経路を確保することに成功した。
主人公であるアーク艦長とは、当初は敵対関係にあったが、合流後は技術的な側面から艦長を支える最も信頼できる仲間の一人となる。艦長がフーリエの過去や出自を問わず、その技術と決意を信頼したことが、二人の関係の基礎となっている。フーリエもまた、論理や効率だけでは測れない人間の「決断力」を持つ艦長に対し、次第に敬意を抱くようになる。アーク搭載AI「ラプラス」は、フーリエの価値観を根本から変えた存在である。管理と論理の象徴であったフーリエにとって、自由と感情を持つラプラスは理解しがたい対象であったが、ラプラスとの対話を通じて、システムと人間が「共存」する道筋を見出すことになった。管理局時代の元上司である司令官とは、深い因縁がある。司令官はフーリエの才能を高く評価していたが、それと同時に彼の純粋な正義感を危険視してもいた。両親の死の真相を隠蔽していたのもこの司令官であり、フーリエの離反後は、彼を「最大の裏切り者」として執拗に追跡した。
彼の人物像は、物語の進行と共に大きく変化する。当初は冷静沈着で、何事も論理と効率で判断する冷徹な管理者として描かれる。感情を表に出すことはほとんどなく、他者とのコミュニケーションも必要最低限にとどめていた。彼の行動原理は「システムの完璧な維持」であり、それこそが過去の両親の死のような悲劇を防ぐ唯一の方法だと固く信じていた。そのため、規則や秩序を乱す存在に対しては非常に厳しい態度をとっていた。しかし、管理局の欺瞞を知り、アークに合流してからは、彼の内面が徐々に明らかになる。根底には、幼少期に両親を失った深い悲しみと、何もできなかった自分自身への無力感が存在していた。アークの仲間たちと触れ合う中で、彼は次第に感情を取り戻していく。完璧なシステムによる管理という考えを捨て、不完全で予測不可能な人間そのものを受け入れ、その可能性を信じることの重要性を学んでいった。最終的には、システムは人間を管理するためにあるのではなく、人間の自由と可能性を支えるために存在すべきだという思想に至る。
デプロイ・フーリエの存在は、物語全体に大きな影響を与えている。彼が管理局から離反したという事実は、管理局の絶対的な管理体制が内部から崩壊し始めていることを示す象徴的な出来事であった。彼がアークにもたらした管理局の内部データと高度な技術は、アークの戦力を飛躍的に向上させ、物語のパワーバランスを大きく変えた。また、彼の思想的な変化は、作品の主題である「管理社会と人間の自由意志」という対立構造において、重要な役割を果たしている。管理社会の頂点にいた彼が、自らの意志で自由を選択し、不完全な仲間たちのために戦うことを決意する姿は、人間がシステムに支配されるのではなく、システムを道具として使いこなし、未来を選択できる可能性を示唆している。彼の行動は、主人公たちだけでなく、彼を追う管理局側の人間たちにも影響を与え、物語の結末に至る大きな流れを生み出す要因となった。