セツ・プロイド(Setsu Ploid)は、SFシミュレーションRPG『クロノ・ギア』シリーズの登場人物。 第1作『クロノ・ギア:鉄の黎明』で初登場して以来、シリーズの全編(『鉄の黎明』『星系の内乱』『神々の黄昏』)に渡って物語の中核を担う主要なキャラクターの一人である。
当初は主人公アリス・シンクレアが所属する「自由辺境同盟」と敵対する「惑星連合軍」のエースパイロットとして登場。物語の進行と共にその立場や思想が大きく変化し、アリスの宿敵、そして後には最も信頼できる共闘者として、複雑な立ち位置を担った。
その出自と作中での変遷から、シリーズのテーマである「正義の相対性」や「秩序と自由の対立」を象徴するキャラクターとして、プレイヤーから高い人気を得ている。
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来歴
生い立ちと「イオリアの悲劇」 セツは、惑星連合の統治下にある辺境の植民惑星「イオリア」で生まれた。当時のイオリアは、連合中央政府からの重税と資源の収奪により経済が疲弊しており、一部の住民による独立運動が活発化していた。
セツが8歳の時、独立派の武装蜂起をきっかけに、連合軍による大規模な武力鎮圧作戦が開始される(後に「イオリアの悲劇」と呼ばれる)。この紛争は泥沼化し、独立派と連合軍の双方による無差別な攻撃が横行。セツは戦闘の混乱の中で両親を失い、孤児となった。
この時、彼は「力を持たないが故に秩序が失われ、全てが破壊される」という現実を目の当たりにする。この原体験が、彼の後の思想や行動原理に決定的な影響を与えた。
紛争終結後、セツは連合の戦災孤児保護施設に収容される。そこで彼は、同じくイオリア出身の孤児であったライナス・ヘルトと出会う。境遇を同じくする二人は一時的に友情を育むが、後にセツが連合軍への入隊を選んだことで、彼らの道は分かたれることとなる。
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連合軍士官学校時代 施設を(編注:原作中では「卒業」と表現される)出た後、セツは「失われた秩序を自らの手で構築する力」を求め、惑星連合軍の士官学校に入学する。彼はイオリア出身という出自から周囲の偏見や差別に晒されるが、それを意に介さず、学業と訓練に没頭した。
在学中、彼は模擬戦闘において驚異的な才能を開花させる。特に、思考(脳波)パターンを機体の制御システムに反映させる「P.L.O.I.Dシステム」の初期型(当時は欠陥が多く、扱える者がいなかった)との適合率が極めて高いことが判明。彼はこのシステムを駆使し、教官や他の生徒を圧倒する戦果を挙げ続けた。
この時代、彼は後に最大の宿敵となるゾルタン・“獣”・イェーガーと出会っている。ゾルタンもまたイオリアの悲劇の生存者であったが、彼は連合への憎悪と破壊衝動を糧としており、秩序を重んじるセツとは思想的に対立。二人は模擬戦で幾度も激突し、互いを強く意識するようになる。
セツは士官学校を首席で卒業。その功績とP.L.O.I.Dシステムへの適性を認められ、卒業と同時に連合軍内部でも特に秘匿性の高い特殊作戦部隊、通称「ケルベロス」への配属が決定した。
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作中での活躍
序盤(『鉄の黎明』編) 物語の序盤、セツは「ケルベロス」部隊の隊長(階級:少佐)として登場。連合に反旗を翻した自由辺境同盟の鎮圧任務にあたり、同盟の主力艦隊と交戦する。
彼の搭乗する専用機「ナイトメア」は、完成形となったP.L.O.I.Dシステムを搭載しており、戦場では彼の思考と直結したかのような超人的な機動を見せた。
主人公アリス・シンクレアが率いる部隊の前に「連合の白い悪魔」(編注:これはプレイヤー間の通称であり、作中では「ケルベロスの隊長」と呼ばれる)として何度も立ちはだかり、アリスたちを窮地に追い込む。
この時点での彼は、連合の掲げる「秩序の維持」を絶対的な正義と信じ、そのためには辺境惑星の切り捨てもやむを得ないとする冷徹な軍人として描かれている。彼はアリスの掲げる「自由」を「無秩序な混沌」と断じ、一切の対話を拒否する姿勢を見せた。
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中盤(『星系の内乱』編) 物語が中盤に入ると、セツの信念に揺らぎが生じ始める。きっかけは、かつての同期であったゾルタンが、連合軍内部で過激派を率いてクーデターを画策していることを知ったことだった。
ゾルタンは、連合上層部が「イオリアの悲劇」を意図的に引き起こし、新型兵器の実験場として利用していたという情報を掴んでいた。連合の腐敗した実態を知ったセツは、自らが信じてきた「秩序」が、単なる上層部の利権を守るための口実に過ぎなかったのではないかと苦悩する。
時を同じくして、アリスとの戦闘中に偶然にも直接対話する機会を得る。アリスの「全ての人が尊厳を持って生きる自由」という純粋な信念に触れたセツは、彼女がかつて自分が否定した「混沌」ではなく、守るべき「未来」を体現している可能性に気づき始める。
最終的に、ゾルタンがイオリアの悲劇の真相を暴露すると同時に、惑星破壊兵器「ラグナロク」を使用して連合中央への報復(=大量虐殺)を計画していることを突き止めたセツは、連合軍からの離反を決意。 彼は単機でアリスの艦隊に投降し、連合の内部情報と引き換えに「ゾルタンの阻止」という一点での共闘を持ちかける。
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終盤(『神々の黄昏』編) 終盤、セツはアリスたち自由辺境同盟と行動を共にする。当初、同盟のクルーたちは彼を「元・敵」として警戒するが、セツは言葉ではなく行動で信頼を得ていく。特に、幼馴染であったライナス・ヘルトとの再会と和解は、彼の心情に大きな変化をもたらした。
惑星連合、自由辺境同盟、そしてゾルタン率いる反乱軍、さらに突如出現した第三勢力「古き者(エンシェント)」の四つ巴の戦いが激化する中、セツは「ナイトメア」を同盟の技術で改修した「ナイトメア・レクイエム」に搭乗。
ゾルタンとの最終決戦において、彼は「過去の憎しみに囚われた秩序(ゾルタン)」と「未来へ繋ぐための秩序(セツ)」の対決に臨む。激闘の末、セツはゾルタンを破るが、同時にゾルタンもまたイオリアの被害者であったことを受け入れ、その最期を見届ける。
最終決戦では、暴走する連合の超兵器と「古き者」の艦隊からアリスたちを護るため、P.L.O.I.Dシステムをオーバーロードさせ、自身ごと敵の中枢を破壊するという自己犠牲的な行動に出る。
エンディングでは彼の生死は明確に描かれていないが(機体は大破、本人は行方不明)、彼が遺した「道筋」によって連合は内部から浄化され、辺境同盟との間に和平交渉のテーブルが用意されることとなった。
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対人関係・因縁
アリス・シンクレア 本作の主人公。セツにとっては最大のライバルであり、同時に彼を過去の呪縛から解放した「光」のような存在。 当初は互いの正義のために激しく衝突したが、中盤以降は互いの立場や背負うものを理解し合い、戦場において最も信頼できるパートナーとなった。セツがアリスに寄せる感情は、恋愛とも戦友ともつかない複雑なものであり、プレイヤーの解釈が分かれる点でもある。
ライナス・ヘルト アリスの補佐官を務める青年。セツとはイオリアの孤児院で共に育った幼馴染。 ライナスは連合を「家族の仇」として憎み、辺境同盟に参加したため、連合軍に入隊したセツを「裏切り者」と長らく誤解していた。中盤での再会と和解のシーンは、シリーズ屈指の名場面として知られる。セツにとってライナスは、失った故郷と守るべき日常の象徴であった。
ゾルタン・“獣”・イェーガー セツの士官学校時代の同期であり、シリーズにおける最大の宿敵。 セツと同じくイオリアの悲劇の生存者だが、彼は憎しみを原動力に破壊を望む道を選んだ。セツの「秩序による平和」を「偽善」と断じ、彼の前に幾度も立ちはだかる。ゾルタンはセツの「もしも道を踏み外していた場合の自分」であり、二人の対決は物語の核心的なテーマを担っていた。
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性格・思想 初登場時は、極めて冷徹なリアリストとして振る舞う。任務の遂行を最優先し、私情を挟むことを極端に嫌う。これは、幼少期に「感情(憎しみや絶望)に任せた行動」が悲劇しか生まないことを学んだためである。
彼の根底にある思想は「力による秩序の維持」である。無秩序な状態(=紛争)こそが最大の悪であり、それを防ぐためには強力な統制力(=連合軍)が必要であると信じていた。
しかし、物語を通じてアリスやライナスと触れ合い、また連合内部の腐敗を知ることで、彼の思想は変化していく。 中盤以降、彼は「上から押し付けられる秩序」ではなく、「人々が尊厳を持って生きる未来を守るための力」を模索するようになる。
連合を離反してからは、かつての冷徹さは影を潜め、仲間を(表向きは突き放しながらも)深く気遣う一面や、背負った罪の重さに苦悩する人間らしい姿を見せるようになった。 趣味は古典音楽の鑑賞とチェス。いずれも論理的な思考と静寂を好む彼の性格を表している。
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物語への影響 セツ・プロイドの存在は、『クロノ・ギア』シリーズの物語に多大な深みを与えている。 彼の役割は、プレイヤー(主人公アリス)側から見た「敵」である惑星連合側の視点と論理を提示することにあった。
彼が序盤で冷徹なエリート軍人として描かれたことで、プレイヤーは連合という組織の「力」と「正当性(彼らなりの)」を強く認識させられた。 そして、その彼が葛藤の末に主人公側と共闘する展開は、物語を単純な「善悪の戦い」から、「異なる正義を持つ者同士の模索の物語」へと昇華させた。
彼が最終的に選んだ行動(自己犠牲)は、アリスたちに未来を託すと同時に、彼自身がイオリアの悲劇から始まった自らの戦いに一つの「秩序」をもたらすための「ケジメ」であったとも解釈できる。 彼が遺したP.L.O.I.Dシステムのデータは、後のシリーズで人類と「古き者」との対話を可能にする鍵となり、文字通り物語の「橋渡し役」となった。