流浪の心 ◆QpsnHG41Mg
E-4も半ばまで差し掛かってきたところで、
イカロスは一軒の家屋のベランダへ降りた。
さっきまで自分達がいた家屋とよく似た、ごく一般的な日本の家屋だった。
屋内への鍵は開いていたので、イカロスは躊躇いもなく不法侵入、
子供が住んでいたのであろう部屋のベッドにフェイリスを寝かせた。
“きっと……マスターなら……”
今はいない
桜井智樹なら、どうするか……考える。イカロスは考える。
きっとマスターなら、気絶している少女を抱き抱えたまま、自分の都合を優先させて飛行することを許さない。
一旦休憩するべきだと何処かでフェイリスを寝かせ、それから王子様のキスを試す――
そんな下らないことを何の衒いもなく実践するような男が、桜井智樹という男だ。
“そう、それがマスター……”
ほんの数時間前の、平和だった頃の日常に想いを馳せて、イカロスは小さく微笑んだ。
“けど――、”
そんな微笑みもすぐに消える。
マスターの安否も分からない現状、偽物だらけの世界。
それを思えば、幸せな想い出は逆にイカロスの心を苛む茨となる。
一応マスターのためを思って、フェイリスをここに寝かせはしたが――しかし。
“フェイリスは、私の記憶にはいない……”
偽物の
ニンフと、偽物のマスターがいる、偽物の世界で出会った少女。
彼女の発言はどれも荒唐無稽で、そこに「本当」があったのかどうかも定かではない。
此処が、何もかも偽物の世界なのだとしたら、この少女の存在だって――
“でも……それは……”
この少女を傷付けることを、マスターは許してくれるだろうか?
偽物かもしれないという理由でこの少女を殺せば、マスターは何と言うだろう?
イカロス自身は、出会ったばかりの偽物かもしれない少女など、正直どうでもいい。
この少女がイカロスの日常を否定する存在であるなら、排除することにも躊躇いはない。
ここにはいない本物の智樹に逢うには、偽物の世界は破壊するのが手っ取り早いのだから。
“だけど……、だけど……マスターは……”
きっと、それを望まない。
それでもイカロスはマスターに逢いたい。
偽物の世界の破壊と、マスターの優しさ。
どちらを取るべきか、二つの選択肢を迫られたイカロスは――
○○○
「オイ、起きろ猫女! この女はヤベーっつってんだよ! オイ、オーイ!」
「ちょっと落ち着きなって先輩、まだイカロスちゃんがフェイリスちゃんをどうこうするって決まったワケじゃあないんだから」
「せやけど亀の字、イカロスがニンフにやったこと、オレらも見てたやろ!」
「ボク、イカロスきらーい! だってニンフは何も悪いことしてなかったじゃんかー!」
「でも、気絶したフェイリスちゃんをここまで連れてきて寝かせてくれたのもイカロスちゃんだからねえ」
「それが解らんのや……一体この女ぁ、何を考えとるんや?」
「もー! 何考えてるとかカンケーないでしょ! ボクらでニンフの仇取りだー!」
「だーかーら、ちょっと落ち着きなってば、リュウタ!」
「ええいもう何でもいいからとにかく起きろッ猫女ァァァーーーーーッ!!!」
○○○
「……ンニャッ!」
頭の中で絶え間なく響き渡る喧騒に耐えかねて、フェイリスは目を覚ました。
脳内で響き渡る四人分の声は、どれもこれも慌しく大議論を繰り広げている。
しかし、さっきからほとんどの時間を寝て過ごしていたフェイリスには状況が分からない。
ベッドから身を起こしたフェイリスは、まず目の前にあった時計に目を向ける。
時計が刺す時間は五時前――あと一時間ちょっとで放送が始まる時間だ。
随分と長時間眠ってしまったなと内心僅かに焦りを感じるフェイリス。
とりあえず、現状把握が優先だ。フェイリスは隣にいるイカロスに視線を向けた。
「アルニャン……?」
「……なに?」
「ここはどこニャ?」
「知らない……民家……」
そう、浮かない面持ちでイカロスは言った。
知らない民家にいるとは、一体どういう状況なのか。
どうしてさっきの民家から移動する必要があったのか。
沢山の疑問が起こるが、フェイリスはとりあえず次の質問をした。
「……ベーニャンはどこにいったのニャ?」
「…………消滅した……と、思う…………」
「えっ――――――」
短い絶句ののちに、
「消……滅、した……?」
いつもの演技でも何でもなく、フェイリスは目を剥いて呟いた。
消滅した……というのは、つまり、一体、どういうことだ……?
さっきまで一緒にいた、あの面倒見がよくて優しい女の子は――
『ソイツの言う通りだ猫女、ニンフはなぁ……その女に殺されたんだよ!』
『ちょっと先輩っ……って、ああもう、ストレートに言いすぎ……』
『何だ亀公、だったらコイツに嘘教えた方がいいってのかよ!?』
『そうは言わないけどさぁ……混乱してる女の子にいきなり言う事ないじゃない』
ニンフの脳内で口論を始めるモモタロスとウラタロス。
ウラタロスの言葉に、ギャーギャーと騒ぎたてるモモタロスの声が頭にうるさく響く。
フェイリスは、どんな状況であれ、言葉がわからないほど馬鹿ではない。
二人の会話の内容をすぐに理解してしまったフェイリスは。
「どういう、ことニャ……?」
眼前で沈鬱な面持ちで目を伏せるイカロスに問い掛ける。
どうしてイカロスが大切な友達のニンフを殺さなければならなかったのか。
彼女を殺さなければならない何らかの理由が、そこにはあったのだろうか。
「どうして……アルニャンがベーニャンを……!?」
「…………偽物、だから……」
「偽物……? あの優しかったベーニャンが、偽物……?」
フェイリスには、イカロスの言葉が理解出来なかった。
あんなに優しくて、面倒見がよくて、イカロスやフェイリスを心配してくれた彼女が。
あの笑顔も全部偽物で、その裏ではイカロスの命を狙っていただとか、そういう話ならまだわかる。
だが――
『嘘だー! ニンフ、最後までイカロスを説得しようとしてたの、ボク見てたもん!』
脳内に響くリュウタロスの声が、イカロスの言葉を否定する。
フェイリスは、無邪気なリュウタロスが嘘をつくような子ではないことを知っている。
あのニンフの優しさが、嘘偽りのないものであることだって、フェイリスには分かる。
目の前のイカロスは、じっと押し黙ったまま何も口にしようとはしなかった。
その沈黙が嫌に不気味で、フェイリスはただ、絶句するしか出来なかった。
放送まで残り一時間……友達の命を奪った友達に、フェイリスは――。
【一日目-夕方】
【E-4/民家二階の子供部屋】
【イカロス@そらのおとしもの】
【所属】赤
【状態】健康、とてつもなく不安、とてつもなく冷静
【首輪】20枚:0枚
【コア】クジャク(使用済み)
【装備】なし
【道具】基本支給品×2
【思考・状況】
基本:本物のマスターに会う。
1.本物のマスターに会う。
2.嘘偽りのないマスターに会う。
3.共に日々を過ごしたマスターに会う。
4.鴻上ファウンデーションビルまで飛んで休むか、E-4の街中のどこかで休むか
【備考】
※22話終了後から参加。
※“鎖”は、イカロスから最大五メートルまでしか伸ばせません。
※“フェイリスから”、電王の世界及びディケイドの簡単な情報を得ました。
※このためイマジンおよび電王の能力について、ディケイドについてをほぼ丸っきり理解していません。
※「『自身の記憶と食い違うもの』は存在しない偽物であり敵」だと確信しています。
※「『自身の記憶にないもの』は敵」かどうかは決めあぐねています。
※最終兵器『APOLLON』は最高威力に非常に大幅な制限が課せられています。
※最終兵器『APOLLON』は100枚のセル消費で制限下での最高威力が出せます。
それ以上のセルを消費しようと威力は上昇しません。
『aegis』で地上を保護することなく最高出力でぶっぱなせば半径五キロ四方、約4マス分は焦土になります。
※消費メダルの量を調節することで威力・破壊範囲を調節できます。最低50枚から最高100枚の消費で『APOLLON』発動が可能です
【
フェイリス・ニャンニャン@Steins;Gate】
【所属】無所属
【状態】健康、混乱
【首輪】100枚:0枚
【コア】ライオン
【装備】なし
【道具】デンオウベルト&ライダーパス@仮面ライダーディケイド
【思考・状況】
基本:脱出してマユシィを助ける。
1.アルニャン(イカロス)……どうしてベーニャンを!?
2.凶真達と合流して、早く脱出するニャ!
3.変態(主にジェイク)には二度と会いたくないニャ……。
4.桜井智樹は変態らしいニャ。
5.イマジン達は、未来への扉を開く“鍵”ニャ!
6.世界の破壊者ディケイドとは一度話をしてみたいニャ。
【備考】
※電王の世界及びディケイドの簡単な情報を得ました。
※モモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロスが憑依しています。
※イマジンがフェイリスの身体を使えるのは、電王に変身している間のみです。
最終更新:2012年12月18日 15:30