山の中の森。 少女、千矢が木の上で寝ていた。 その目の前にたぬきが来た。 千矢「ん・・・んあっ!?」 千矢は起きたが、木の上から落ちかけた。 津や「は~~~びっくりしたぁ。あれ?何でこんなところで寝てたんだっけ・・・あ、そうだ、朝!!朝が来るのが待ちきれなくて、お日様出るの待ってたんだった!」 「まだかな、まだかな―――」 千矢の周りには、犬やら狐やら蛇といった動物たちが集まっていた。 千矢(だって今日は待ちに待った、迷路町に旅立つ日―――) 「だけど、皆とお別れする日でもあるんだよね」 千矢が動物たちを抱きしめた。 千矢「・・・セツがお手紙くれたの。町に行く日に読みなさいって。えっと、迷路町での心得そのいち・・・?町では毎日、服を着ること、川があっても水浴びしないこと、夜になっても遠吠えしないこと、食べ物はからずにかう・・・?ていうか、長っ」 「セツってば、こんなにいっぱい守れないよ・・・」 「どんな時も笑顔で前をみて、歩くこと・・・」 千矢が前を見上げると、そこには朝日が昇ろうとしていた。 紺「・・・ついにこの日が来たのね。待っていって母様、紺も今日そちらへ参ります」 小梅「すみませーん、運転手さん!迷路町までお願いします」 そう人力車の運転手に頼んだ少女、小梅は大量の荷物を持っていた。 運転手「・・・これ全部お客さんの?」 小梅「うんお願い?」 棗屋。 ニナ「ノノったらどうしたの。そんなにくっついてたら動きにくいわ」 ノノ「だ・・・だって今日、知らない子が三人もうちに来るんでしょ?」 ニナ「大丈夫よ、心配しないの。きっとすぐに仲良くなれるわよ!だけど三人とも遅いわね、門まで迎えに行きましょうか。ノノも行く?」 ノノ「い・・・っ、いく!」 ニナ「どんな子達に会えるのかしら、とっても楽しみだわ!」 運命の行方、人生の岐路。日常の迷路で人は時に道を見失う。 そんな時道を尋ねる案内人、占師は君に選択の矢を与えるだろう。 時に薬、時に毒。道標となる不思議な力。 それを操る条件は十五を過ぎた少女であること――― 時に女神、時に魔女、占い町の乙女達。人呼んで、うらら。 ここは迷路町。うららと呼ばれる占師の町、迷い人達の桃占郷。 うららを目指す少女達は夢を抱いてこの町の門をくぐるのです。 さて、ここにもまた一人――― と、たくさん? 迷路町に来た千矢の後ろに、大勢の動物たちが着いていた。 「なにあれ」「見世物?」 千矢「わ―――っ、大っきい!」 「わ―――っ、おいしそ―――xち」 「はあ---。山じゃ見たことないものばっかり!」 団子屋「あらまぁ、見るからにお上りさんの。お嬢ちゃん買ってくかい?」 千矢「えっ、狩っていいの!?」 千矢が杖を団子屋に向けた。 団子屋(どこの山賊!?) 団子屋「そ・・・その動物達は全部あんたの連れ?かわった子ね――」 千矢「ううん、知らない子達。いつのまに」 「いつも知らない間に集まってくるの、仲間だと思ってくれるのかなぁ」 「私ずっと人のいない山奥で育ったけど、そのかげで全然さみしくなかったよ!」 団子屋「へぇ・・・いい話だねぇ」 集まった動物たちは食べ物を持っていた。・・・そうして商品を奪われた三人の店主達が追いかけてきた。 店主「あっ、いたわよ―――!きっとあいつが屋台泥棒の親玉だわ!!」 千矢「えっ?」 団子屋(やっぱり山賊!?だまされるところだった!) 店主たち「さぁ、どうしてくれるの?大事な商品食い散らかして」 「飼い主ならきっちり責任とって貰うわよ」 千矢「かいぬし・・・?あっ・・・あの」 (どうしよう、何かみんな怒ってる。こんな時どうすればいんだっけ!?こんな時は―――) 「ごめんんさいっ!!」 千矢が服をめくって、自分のお腹を見せた。 店主たち「・・・?」 そこへ警ら隊の佐久が来た。 佐久「何の騒ぎだ?」 店主「あっ隊長さん!それが妙な屋台泥棒が出て」 佐久「屋台泥棒?童女相手に何を大げさな・・・」 佐久は千矢のお腹を見て、顔を赤らめながら覆った。 佐久(なんという痴女!) 佐久「私は迷路町警ら隊十番隊隊長、佐久。町の平和を守るのが私の任務だ」 「聞くところ、動物を操り、無銭飲食を企て、あまつさえ街の風紀を乱すはっ・・・破廉恥な行いっ!」 「子供とはいえ見逃すわけには―――・・・」 千矢は動物たち共々、寝転がって全面降伏のポーズを取った。 佐久「言ったそばから何の真似だ!!ねるな!!」 千矢「謝ってるのに何で怒るの!?」 佐久から逃げ出した千矢は、紺という少女とぶつかった。 千矢「ひやっ!?」 紺「きゃっ!」 千矢「ごめんなさいっ、大丈夫!?」 紺「いいえ、私も急いでいたから。あなたこそ大丈夫?怪我はないかしら」 千矢(通じたー!!)「ごめんね―――!!」 千矢はまたお腹を出していた。 紺「な・・・何かあったの?おなかいたいの?」 千矢「私、千矢!今日十五になったの。君は?」 紺「私は・・・紺。十五歳よ」 千矢「こん!?私の友達と同じ名前だっ」 紺「えっ、本当?」 千矢「そういえば名前だけじゃなくて顔もそっくりかも!」 「その子すっごく可愛くてあたたかくて柔らかくて皆の人気者だったん だ~、つやつやさらさらでね-」 紺「やだ、そんな人に似てるなんて」 千矢の言うコンとは、狐のことだった。 千矢「えへへ嬉しいな。私同い年の女の子と話したの初めてで―――」 小梅「えくすきゅぜもわ――――!!」 「あんしゃんて、お嬢さん♡ちょっと道を聞いてもいいかしら、棗屋ってお店を知らない?」大量の荷物を持った小梅が来た。 千矢「わ---、あの子もおんなのこ!」 紺「しっ、あれは怪しい物売りよ。気をつけなきゃダメよ」 小梅「って、ちょっと待ちなさいよ!人が道尋ねてるのになにその態度!!」 「・・・・ん?なあに、あんた。ヘンな格好!」 千矢「えっ、へんかな!?」 小梅「へんよ!!でもそのロックさ悪くないわ!」 紺(二人ともいい勝負な気がする・・・!) 小梅「もういいわよ、じゃあね。あたし棗屋を探さなきゃ。おるぼわーる!」 紺「棗屋!?奇遇だわ、私もそのお店に用があるの」 千矢「あっ、私も同じ紙持ってる!」 紺「ええっ、ホント!?」 紺と千矢は棗屋への紹介状を持っていた。 小梅「じゃあ私達っ、もしかして皆おんなじ「うららの見習い」!?」 千矢「うららって何?」 小梅と紺がずっこけた。 小梅「あんたねー、何言ってんのよ、常識でしょ!?国中の女の子の憧れじゃない」 紺「どういう事?それ紹介状でしょう?うららになりたくて迷路町へ来たんじゃないの?」 千矢「え?えっと」 小梅「そーよそーよ、第一そうでなきゃ門番が町に入れてくれる訳ないわ」 千矢「えっと・・・セツはこれさえ持ってけば優しい人が何でも教えてくれるって、行ってたんだけど・・・あの、ごめんなさい・・・」 千矢がお腹を出して謝った。 小梅「えっ、なんでお腹出すの?」 紺「よくわからないけど、お腹出して泣いちゃう子なの」 小梅「わっ、わかったわよ、よくわかんないけど!そんな捨て犬みたいな顔しないでっよねっ」 千矢「わぅ」 小梅「ちょっと言い方がきつかったわ・・・ごめん」 紺「そうね、お詫びに私がわかる事なら教えるわ」 千矢「ム―――」 小梅「・・・なによ、そのかお。なんか文句あんの」 千矢「だめだよ、謝る時はちゃんとおなか見せなきゃ」 小梅「は・・・っ?ちょっ、きゃーっ!?」 佐久「見つけたぞ逃亡犯!!まったく手間をかけさせてくれるな。大人しく反省するなら大目に見てやる所を・・・ん?」 佐久が来た時、千矢は紺と小梅の服をめくろうとしていた。 佐久「ままま、町中で何やってんだこの破廉恥娘どもー!!」 小梅「こっちが聞きたいわよ!!」 紺「お・・・およめにいけない」 そのまま、三人とも怒られた。 佐久「三人とも見ない顔だな、新参者か。みさか不法侵入じゃないだろうな」 小梅「まっ、まさか!!私達、今日うららの見習いになりに来たの!」 佐久「まあいい、何者だろうが迷路町の規律を乱す奴は許せない。十番地隊長の名において―――お前達三人を迷路町から追放する!」 小梅・紺「「え――――っ!?」」 千矢「?」 紺「そっ、そんな・・・」 小梅「あたし達何も悪いことしてないわよ!」 そこへ一人の女性が来た。 ニナ「佐久!いつもお仕事お疲れさま、でもちょっと待って貰えないかしら。その子達私の生徒なの」 「初めまして、可愛い見習いさん達、私はニナ。今日からあなた達を預かる棗屋の主人よ」 ニナは佐久に詰め寄った。 ニナ「ねえ佐久、この子達を追放なんてされたら困るわ、私の初めての生徒達なのよ。それにもしそんな事になったら四代続いた棗屋の名に傷がついてしまうの。ただでさえ巽屋さんに差をつけられて久しいの」 佐久「早っ、近い近いってニナ!」 ニナ「大丈夫よ、この子達きっと悪い子じゃないわ。きまじめも程々になさいな。あいかわらずあたま固いんだからも―――」 佐久「仕事に真面目で何が悪い」 ニナ「そう言わずに今回ばかりは目をつむって、今後何かあったら主人の私が責任持つから」 佐久「尚更駄目だ。ニナにそんな事させられる・・・ん?」 ニナ「腹を切るわ・・・棗屋が私の代で途絶えたりしたら先代に申し訳が立たないもの。佐久、介錯はお願いね」 佐久「わ、わかった、わかったから!追放なんてしないって、しっかりしろ!!」 小梅「助かったみたい・・・ね?」 千矢「?」 ニナと千矢達は棗屋に来た。 ニナ「さっきは取り乱しちゃってごめんなさいね。さて、あなた達のことは紹介状で見せて貰ったわ。まずは・・・巽屋さんの一人娘の紺ちゃんね」 紺「紺です、よろしくお願いします」 ニナ「それから次に、雪見財閥のご令嬢の小梅ちゃん」 小梅「その名前古臭くって嫌なの。ミス・プラムって呼んで下さる?」 ニナ「じゃあ、ぷーちゃんって呼ぶわね」 千矢「ぷー!かわいー」 小梅「もっと嫌!!」 ニナ「最後にあなたが・・・五殿山から来た千矢ちゃん?」 千矢「はいっ!」 紺「ごでんやま・・・って、あの人里離れた秘境の地?あんな所からどうやって・・・」 千矢「?、走ってきた」 小梅「どんな野生児なの!?」 紺「そんな山奥から、うららの事も迷路町の事も何も知らずに・・・?あなた一体何しに来たの?」 千矢「お母さんに会いに」 紺「え・・・?」 千矢「私のお母さんはこの町のどこかにいるんだって。だから会ってみたくて」 「小さい頃からずっとずっとこの町に来る日を楽しみにしてた。どんな町なんだろう、どんな人達がいるんだろう。どんな未来が待ってるんだろうって!」 ニナ「・・・未来を決めるのはあなた達次第よ。どんな時も四人で力を合わせて、一緒に頑張って頂戴ね」 小梅「ん?四人?」 紺「?」 ニナ「ノノ!!」 ニナが手を叩くと、その背中から少女が出て来た。 ノノ「はっ、はじめまして・・・ノノです」 小梅「ええっ、いつからいたの!?」 ニナ「ちょっと人見知りなのよ~~~~~~~!!、妹なの」 紺「ちょっと!?」 ニナ「二階があなた達の部屋よ-」 千矢「わ―――っ、いい眺め!」 千矢達四人が窓から身を乗り出して、外を眺める。 ―――とまれかくまれ、占の都の迷路帖。 少女の夢はいかにやいかに。 これより開幕です! 千矢「ちょっ、そんなに押したら・・・きゃ―――――っっ」 四人が寄りかかってた窓枠が折れた。 ニナ「棗屋にキズが!!」 (続く)